強化のために重要な 取組み
1. 国際競争力の維持・強化のため に重要な取組み
⑴ 概要
第7章では、日系製造業企業の東アジア企 業との競合状況などにつき分析を行い、既に 一部では大変激しい競合状態にあることなど がまとめられているが、本章ではそうした外 国企業との、あるいは日系企業同士の厳しい 競合状況なども踏まえ、回答企業は国際競争 力の維持・強化のためどういった取り組みが 重要と考えているかについて調査を行った。
調査は、国際競争力維持・強化のための取 り組みとして 23 の選択肢を提示し、その中 から重要と思われる選択肢を5つまで選択し
てもらう形式をとった。調査の結果は、図表 65 であり、回答の多かった項目順に 20 項目 を表示している。なお、表中の比率は、本質 問に対する回答総数 565 を分母に、各項目の 回答数を分子として計算したものである。
最も回答数の多かったのは、「新製品の開 発」(285 社)で、2番目に回答数の多かっ たのが「グローバル化に対応しうる人材の獲 得」(271 社)である。その後は、「調達部品・
原材料等の原価低減」(247 社)、「海外生産 の拡大」(228 社)、「販売機能の強化」(208 社)
が続く。上位には、開発に関連する項目、生 産に関連する項目、販売に関連する項目が 入っており、いずれのカテゴリーもおろそか にしない、王道と言える結果となっている。
2番目に回答数の多かった「グローバル化に 対応しうる人材の獲得」については、筆者ら の予想に反して大変多くの回答があり、様々 な企業で人材の問題があらわになってきてい ることが確認された。以下の各項では、開発 関連、生産関連、販売関連、グローバル人材 関連に分けて、企業の意見などを紹介しつつ、
図表65 国際競争力維持・強化の重要取り組み
順位 社数 比率
1 新製品の開発 285 50%
2 グローバル化に対応しうる人材の獲得 271 48%
3 調達部品・原材料等の原価低減 247 44%
4 海外生産の拡大 228 40%
5 販売機能の強化 208 37%
6 製品開発の迅速化 192 34%
7 生産工程の効率化 150 27%
8 開発・生産・販売各部門の連携強化 145 26%
9 ブランド力の強化 141 25%
10 財務体質の健全化 103 18%
11 本業を強化する事業資源の獲得 95 17%
12 グローバルなサプライチェーンの最適化 86 15%
13 先進技術の獲得を目的とした基礎研究 84 15%
14 国内外の生産体制の集約化 80 14%
15 新規事業分野への参入 71 13%
16 自社事業分野の見直し 56 10%
16 知財・意匠の保護 56 10%
18 環境・省エネ基準への対応 50 9%
18 国内生産の拡大 50 9%
20 アフターサービスの強化 48 9%
当該項目が上位にある背景などを分析する。
⑵ 開発関連
「新製品の開発」が全体で最も多くの回答 を得ているほか、6番目に「製品開発の迅速 化」(192 社)もある。特に、新製品の開発 に関しては、他社との差別化のためにまっさ きに考えることであるようであり、大変多く の回答を得た。また、製品開発の迅速化につ いては顧客嗜好の変化のスピードが高まって いることや、開発競争の激化などが背景にあ ると思われる。なお、13 番目の項目に「先 進技術の獲得を目的とした基礎研究」(84 社)
があるが、上の2項目に比して回答数は少な かった。以下に代表的なコメントを紹介する。
・ 当社の特色は高い技術力を利用した商品で あり「新製品の開発」は今後も非常に重要 と認識。(化学)
・ 中国において類似品などの問題もあり、当 社としては常に新しいもの、一歩先へ進ん だものを作り続けることが重要であり、当 該取り組みを選択。(その他)
・ 「基礎研究」を選択しているのは、「技術の A」として他社と差別化を図っていく必要 があるため。(一般機械組立)
・ 「新製品の開発」を選択したのは、とにか く新製品を開発していかなければ、という 危機感から選択したもの。競合他社の機能 は日々改善されていくため、「黙っていた ら周回遅れになる」という危機感を持って 取り組んでいる。(一般機械組立)
・ 「製品開発の迅速化」を選択したのは、市 場で求められる製品が日々刻々と変わるた め。2−3年前には自動車部品金型加工に 使う旋盤の需要が強かったが、今年は建機 部品製造の需要が強く、サイズの大きい部 品を扱える加工機の需要が強い。(一般機 械組立)
⑶ 生産関連
「調達部品・原材料の原価低減」が全体の 3番目、「海外生産の拡大」が4番目、「生産 工程の効率化」(150 社)が7番目となって
いる。海外生産の拡大については、国内経済 の成長力が限られる中、海外に活路を見出し ていくという動きが以前にもまして高まって いることを反映していると思われる。また、
原価低減、効率化については、原油をはじめ として各種原材料が高騰を続けているなか で、地道な取り組みであるが、各企業が大変 重要視していることがわかる。以下にて代表 的なものを紹介する。
・ 「調達部品・原材料の原価低減」の選択は、
特に天然資源の価格高騰への対処を念頭に 置いたもの。原価率が高い(2006年度実績:
売上高の 90%)ことが当社の悩みの種と なっているため、まとめ買い等により販売 元に対する価格交渉力を強化したいと考え ている。(化学)
・ 「調達部品・原材料の原価低減」は当社製 品原材料である農産物と容器の原材料であ る石油の値段が高くなっていることから選 択。対策として、当社ではまとめ買いによ る原価低減に取り組んでいる。(食料品)
・ 他の競争力上の課題としては、コストの削 減。常に下げる努力はしているが、日系の メーカーと中国のメーカーが同じように中 国で作ってコストが違う状態。人件費など はさほど変わらず、部品などの違いであっ て、なるべく早く信頼できる部品供給業者 を育成し、調達の現地化を進めたいところ。
(電機・電子部品)
・ 「生産工程の効率化(効率化された工程の 海外生産拠点への導入を含む)」について、
地場資本に資本参加をした中国拠点でも日 本の指導員が入って日本の生産スタイルを 移転している。しかしながら、レイアウト 等の様々な制約から基本的な部分が変えら れずに苦労している例も多いと聞く。(紙・
パルプ)
⑷ 販売関連
「販売機能の強化」が全体の5番目である 他、「ブランド力の強化」(141 社)が全体の 9番目となっている。販売は、開発―生産―
販売のサイクル上でも大変重要な活動であ
り、相応の票を集めたといえよう。従来より、
製品開発や効率的生産で世界をリードする日 系製造業であるが、販売活動はそれらに比し て少し弱いのではと言われているところ、本 調査においては、販売関連の項目は、開発関 連や生産関連の項目に比べると票は少なめで あるものの、力点は置かれているように思わ れる。ただし、企業へのヒアリングなどにお いては、生産などでは、現場に近い生々しい 意見が多いのに対して、若干淡白なコメント が目立つようであり、代表的なものを以下で 紹介する。
・ これまで「いい物を作れば売れる」という プロダクトアウト的な思想が強く、特に海 外での販売力が弱かったことから、特に顧 客層の広い商品群で強化を目指しているも の。(精密機械組立)
・ 「販売機能の強化」及び「アフターサービ スの強化」は製造装置産業において最も重 要な点。当社の現地販売拠点で採用した ローカルスタッフや代理店内で対応する 他、日本からの出張者がアフターサービス を行うケースもある。(一般機械組立)
・ 低価格な汎用品ではアジア等の新興国にも 十分な規模の市場があるが、そこでは、地 場の競合企業が①地場顧客にうまく訴求す る売り込み方で②非常に安価な製品を打ち 込んでくるため、競合が厳しい。一方、当 社が差別化された強みを発揮できる中・高 付加価値品ではまだ十分な市場規模がない というジレンマあり。(化学(医薬品を除 く))
・ 日系顧客向けの販売では、同じ日系として 売り込みもかけやすく、購入後の品質保証 等が顧客にとっての安心感として評価され る。従って、日系企業向け販売では地場系 企業との競合はあまりない。しかしながら、
更なる売上拡大を模索していく場合に、地 場企業向け販売の拡大は避けて通れない道 である。(化学(医薬品を除く))
・ 中国企業は「儲かる事業」に殺到するため、
過当競争に陥る傾向あり(一方でこれら企 業は退くのも速い)。当社では、品質の違
いを評価してくれる日系企業等を主な販売 先として狙っていくことで、これらと正面 からぶつからないようにしている。(化学
(医薬品を除く))
⑸ グローバル人材関連
「グローバル化に対応しうる人材の獲得」
は、国内における海外部門の人材、海外現地 の人材といった区別は特にしておらず、広く グローバル人材についての取り組みが重要と 思われれば選択してもらっている。当該項目 が全体の2番目となっており、企業の規模や 業種を問わず様々な会社で重要取り組みと認 識されているようだが、裏を返せば多くの企 業がグローバル人材で課題を抱えていること となる。開発、生産、販売のサイクル、また そのサイクルを支える総務・管理部門など、
円滑な企業活動に際しては様々な部門が機能 的に動く必要がある。現状、日系企業の海外 での事業活動がますます拡大していくなか で、海外現地や国内の国際部門でそれら機能 を円滑に行っていくだけの人材が不足がちに なってきているようであり、海外展開に際し てのボトルネックになる可能性あると思われ る。以下で代表的なコメントを紹介する。
・ 海外展開のためには、現状でも新工場立ち 上げ等で不足感のある国内から人を派遣す る必要がある。海外生産への傾斜により、
国内では生産現場などのレベルの維持が難 しくなってきており、即戦力を求めている。
また、海外では一人で様々な業務をこなす ことが求められるところ、そういった人材 はまれ。現地人材の育成が課題であるが、
生産の早期立上や増産対応に追われてお り、技術やノウハウの移転を行っている余 裕がないのが実情。また、現地マネージャ で定着する人がいないのも問題。高い給料 を提示すれば人は集まるだろうが、そう いった予算的余裕もない。(自動車部品)
・ 「グローバル化に対応しうる優秀な人材」
は「海外生産の拡大」と「販売機能の強化」
を支える人材が必要ということで選択。主 に念頭にあるのは各種意思決定を掌る本社