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同音語の組数と組の中の単語数

ドキュメント内 博 士 論 文 (ページ 113-147)

第三章  同音語および類音語の様相

第二節  日本語の同音語の性質

2.1.  同音語の組数と組の中の単語数

統合された単語集合のうち「かな表記」が共通する単語を同音語とした。「発音」はア クセント情報が入っているが, 「かな表記」ではアクセントの区別をしていない。本調査で は,アクセントの違うものも同音語として扱う。 

この単語集合のうち同音語を持たない単語は 81,238 語で,全体の 123,768 語の約 65.5%

である。したがって,残りの 34.5%の単語が同音語の組に属していることになる。この割 合は,中野(1989)の調査の助辞を除いた M 単位の異なり語の同音語の割合の 34.9%に近い ものである。 

同音語の組数と,組の中の単語数との関係を調べると,図 3-2 に示すようになる。 

   

<図 3-2> 同音語の組数と,組の中の単語数との関係 

 

1

33 13

7 5 4 3

11 12 9 10 6 2

15

29 26 27 23

21 22 20 18 16 19 14 17 8

35 31

28

24 37

1 10 100 1,000 10,000 100,000

1 10 100

NUMBER OF WORDS IN A GROUP (X, words, Log)

N U M B E R  O F  G R O U P S  ( Y ,  gr o u ps ,  L o g)

NUMBER OF WORDS IN A GROUP

Log Y = (- Log 100,000/Log 30) Log X + Log 100,000

GROUPS OF HOMOPHONOUS WORDS

同音語の組の中の単語数は,この単語集合では,2語から 37 語にまで及んでいる。同音 語の組数は組の中の単語の数に応じて減少する。つまり,単語数の多い同音語の組は,組 数が少ないということであるが,このような多量の単語集合では,それらが正確に反比例 していることを図 3-2 は示している。同音語の組内の単語数の多い単語集合を表 3-2 に示 した。この単語集合では最も同音語が多いのは「コウシ」の 37 語であった。表 3-3 に組内 の単語数が多い同音語(キコウ)の例を示す。表 3-4 に,同音語の組内の単語数が 10 語以 上の語の1,2音節語の音節別の単語数を示す。音節を多い順に 10 あげると,koH, si, syoH,  seH, ka, kaN, ki, soH, siN, toH である。表 3-5 に同音語の組数と組内の単語数の表を 示す。 

 

<表 3-1> 組内の単語数の多い同音語     

         

順位 かな 音素記号 同音語組内の単語数

1 コーシ koH si 37

2 コーショー koH syoH 35

3 カン kaN 33

4 コー koH 31

5 セーシ seH si 29

6 ショー syoH 28

7 シセー si seH 28

8 セーコー seH koH 27

9 センコー seN koH 27

*10 キコー ki koH 26

11 ショーカ syoH ka 26

12 シコー si koH 24

13 カシ ka si 23

14 コーキ koH ki 23

15 シ si 22

16 コーカ koH ka 22

17 コーシン koH siN 22

18 コーセン koH seN 22

19 ショーシ syoH si 22

20 シンコー siN koH 22

21 コーコー koH koH 21

22 コージ koH zi 21

23 コーソー koH soH 21

24 コーテー koH teH 21

25 シショー si syoH 21

26 セーカ seH ka 21

 

 

<表 3-3>  組内の単語数の多い同音語の例  (*キコー  ki koH)          KANJI ENGLISH MEANING

貴公 YOU

貴校 YOUR SCHOOL

機構 THE STRUCTURE OR FRAMEWORK OF SOMETHING 奇功 AN ACHIEVEMENT THAT WAS NOT EXPECTED 奇効 OF SOMETHING, TO HAVE A REMARKABLE EFFECT

奇巧 OF HANDIWORK, A CHARACTERISTIC OF BEING RARE AND INGENIOUS 奇行 AN ECCENTRIC ACTION

奇香 A UNIQUE SMELL

寄港 TO STOP BY SOMEWHERE ON THE WAY TO ONE'S FINAL DESTINATION 寄稿 A CONTRIBUTED MANUSCRIPT

機巧 A DEVICE THAT IS MOST INGENIOUS

機甲 THE ACT OF REARMING WITH NEW WEAPONS 帰校 OF A PERSON, TO COME BACK TO SCHOOL 帰港 OF A SHIP, TO RETURN TO PORT

帰耕 THE ACT OF RETURNING TO WORK AT THE FARM 帰航 THE RETURN ROUTE OF ONE'S VOYAGE

気候 THE LONG-TERM WEATHER CONDITIONS IN AN AREA 気孔 STOMA

季候 THE WEATHER CONDITIONS OF A PARTICULAR SEASON 稀覯 A RARE SIGHT

紀綱 THE FUNDAMENTAL PRINCIPLES UNDERLYING A GOVERNMENT 紀行 A RECORD ONE'S TRAVELS

起工 THE ACT OF BREAKING GROUND IN ORDER TO BEGIN BUILDING 起稿 TO WRITE OUT A ROUGH COPY

輝光 SPARKLING LIGHT

騎行 TO GO SOMEWHERE ON HORSEBACK

<表 3-4>  同音語の組内単語数が 10 語以上の語の音節別の単語数

        : 1ST AND 2ND SYLLABLES ARE THE SAME

1ST SYL ko(')H si(') syo(')H ka(')N se(')H ka(') ka(')I so(')H ki(') se(')N si(')N ta(')I to(')H

2ND SYL GROUPS 38 18 14 12 12 11 9 9 8 7 7 6 6

WORDS 664 305 232 198 194 171 128 124 134 113 111 87 76

NONE 25 ko'H si' syoH ka'N se'H ka' ka'I so'H ki' se'N si'N ta'I to'H

443 31 22 28 33 14 15 19 12 19 15 15 12 14

si(') 22 ko'H si si' si syo'H si ka'N si se'H si ka'si so'H si se'N si si'N si

361 37 19 22 14 29 23 13 15 19

ko(')H 20 koH koH si koH syoH koH kaN koH seH koH ka' koH kaI koH soH koH ki koH seN koH si'N koH taI koH toH koH

352 21 24 17 18 27 20 18 20 26 27 22 20 11

se(('))H 15 koH seH si seH syoH seH kaN seH          ka seH soH seH ki seH siN seH taI seH

231 19 28 12 18 19 16 17 18 13

ka(') 15 ko'H ka si ka' syo'H ka ka'N ka se'H ka          so'H ka ki' ka se'N ka ta'I ka to'H ka

230 22 16 26 16 21 12 11 14 13 17

syo(')H 14 koH syoH si syoH          kaN syoH ka syoH kaI syoH ki syoH seN syoH siN syoH taI sy oH

234 35 21 19 14 14 15 14 14 16

ki(') 9 ko'H ki si' ki syo'H ki se'H ki ka' ki ki' ki si'N ki to'H ki

141 23 20 15 19 14 17 11 11

ka(')N 9 koH kaN si kaN syoH kaN          seH kaN soH kaN ki kaN taI ka N

132 18 20 16 11 12 18 13

to(')H 9 koH toH syoH toH kaN toH seH toH kaI toH soH toH siN toH         

125 20 12 14 12 14 15 12

zyo(')H 7 koH zyoH si zyoH syoH zyoHkaN zyoH ka zyoH kai zyoH seN zyoH

101 20 14 14 15 11 12 15

si(')N 7 ko'H siN si siN syoH siN kaI siN          toH siN

95 22 12 13 13 12

so(')H 6 koH soH si soH kaN soH seH soH kaI soH          ki soH

94 21 19 15 13 15 11

      GROUPS: NUMBER OF GROUPS OF HOMOPHONOUS WORDS WHICH INVOLVE THE SYLLABLE              (SYLLABLES INVOLVED IN MORE THAN 5 GROUPS ARE SHOWN.)

      WORDS: SUM OF THE NUMBERS OF HOMOPHONOUS WORDS IN EACH OF THE GROUPS

 

<表 3-5>  同音語の組数と組内の単語数 組の中の 同音語の組数

単語数 ア行 カ行 サ行 タナ行 ハマ行 ヤラワ行 合計 累計

1 10835 18071 16230 14836 15003 6263 81238 94361

2 1053 1694 1561 1345 1593 660 7906 13123

3 251 583 645 372 382 201 2434 5217

4 93 309 326 146 170 68 1112 2783

5 53 166 181 80 81 41 602 1671

6 20 98 125 53 25 14 335 1069

7 90 93 19 20 16 238 734

8 41 47 15 8 4 115 496

9 35 41 11 17 2 106 381

10 2 25 30 4 3 64 275

11 14 21 6 4 3 48 211

12 15 13 4 1 33 163

13 1 9 7 6 3 1 27 130

14 11 6 17 103

15 9 6 2 1 18 86

16 4 4 8 68

17 7 2 1 1 11 60

18 6 2 8 49

19 1 4 3 8 41

20 2 4 1 7 33

21 4 2 6 26

22 3 3 6 20

23 2 2 14

24 1 1 12

25 0 11

26 1 1 2 11

27 2 2 9

28 2 2 7

29 1 1 5

30 0 4

31 1 1 4

32 0 3

33 1 1 3

34 0 2

35 1 1 2

36

37 1 1  

 

2.2.  同音語の単語の音節構造  2.2.1  日本語音節の定義の修正 

この統計分析において,日本語の音節は, 「先行子音(+半母音)+後続母音」ではなく,

「先行子音(+半母音)+後続母音の後ろにモーラ音素が付く/付かない」として定義した。

これは,服部(1960)の定義に準ずるものである。粕谷・佐藤(1990)は日本語は「モーラで

数える音節言語」であるとしている。それは,東京方言においてアクセント核はモーラ音

素にではなく常に音節主音に付与されることから,日本語ではアクセントという韻律現象

の制御に音節がかかわるという意味で音節言語であり,同時にモーラ音素はあくまでモー

ラであるからそれが属する音節を二モーラと数えるということから「モーラで数える音節 言語」としているものである。粕谷・佐藤(1990)に述べられているとおり,日本語の東京 方言の単語アクセントはモーラ音素には付かないので,本研究の定義による音節は,東京 方言の単語アクセントがひとつ付加され得る最小区分となる。この区分は,後のモーラの 単語アクセントへの影響についての分析に役立つ。 

ここで使われた子音の種類は,/#/(先行子音なし)と,/s/,/k/,/z/,/r/,/g/,/h/,

/b/,/n/,/m/,/p/,/d/(ダデドの音節のみ)とした。母音は,/a/,/i/,/u/,/e/と/o/,

半母音は/y/(ヤユヨ行)と/w/(ワ)である。 

モーラ音素は,/

H

/(母音の長音化した部分),/

N

/(音節鼻子音(撥音)部分),/

Q

/(声に 出さない子音に進む促音化した部分),/

I

/(二重母音/ai, ei, oi, ui/の/i/の部分)であ る。日本語の二重母音については,二重母音ではなく二連母音であるとする説(杉藤 1989)

もあるが,ここでは,/ai, oi/等の/i/の部分にはアクセント核がこないことに注目し,モ ーラ音素としてとりあげることとする。 

 

2.2.2  単語の先行子音 

この単語集合の音節数は,母音型(Vs)が 436,000 音節,半母音+母音型(yVs)が 55,000 音節で,合わせると 491,000 音節あった Vs と yVs の音節の出現頻度の関係を,母音の種類 と先行子音の種類に分けて,それぞれ図 3-3 に示した。 

先行子音の種類の出現頻度は,yVs の音節は平均で Vs の音節の約 1/10 である。yVs の 値は,先行子音が/z/ の場合 Vs に近かったが, /m/では約 1/100 であった。子音の種類に よる出現頻度は,/k/が 100,000 音節,/#/が 72,000 音節,/s/が 71,000 音節,次いで/t/

が 51,000 音節であった。/z/,/r/,/g/,/h/,/b/,/n/,/m/などの出現頻度は,/k/の約 1/5 である。 

同音語 22 語を超える単語を持つ 20 組では,それらの 80%は 2 音節語であり,残り 20%

は 1 音節語であった。先行子音は/k/と/s/だけで,両方とも 50%であった。これらの/k/と /s/の出現頻度は非常に大きい。統合された単語集合の約 491,000 音節の中では,両方とも 約 1/5 程度である。また,/k/と/s/とほとんど同ぐらい高い出現頻度を持つ先行子音の/#/

や/t/が含まれていないことは,注目に値する。またこれらの組のうちモーラ音素の/

H

/は

1/2 の音節についており,/

N

/は 1/6 の音節についていた。モーラ音素/

H

/の出現頻度の 1/2

も,平均である 1/9 に比べて高いものである。 

<図 3-3>  母音型の音節と半母音+母音型の音節の出現頻度の関係  母音による分類(上)と先行子音による分類(下)

NUMBER OF SYLLABLES

GROUPED BY PRECEDING CONSONANTS

 = 100 * CyV  = 10 * CyV

All

z t

s

r

n m

h g

b

10,000

#

CV = CyV

20,000 50,000

100 1,000 10,000 100,000

1,000 10,000 100,000 1,000,000

CV (syllables, Log)

CyV (syllables, Log)

C: CONSONANTS V: a, i, u, e, o yV: ya, yu, yo CV + CyV = 100,000

NUMBER OF SYLLABLES

GROUPED BY FOLLOWING VOWELS

 = 100 * CyV  = 10 * CyV CV + CyV = 100,000

10000

CV = CyV

20000

50,000 CV:CyV

Ca:Cya Cu:Cyu Co:Cyo

Ci 100 Ce

1,000 10,000 100,000

1,000 10,000 100,000 1,000,000

CV (syllables, Log)

C y V  ( sy lla b le s,  L o g)

C: CONSONANTS

V: a, i, u, e, o

yV: ya, yu, yo

さらに,これらのすべてが漢字で表記されるものであった。この割合は,統合された単 語集合の中の漢字だけの単語の割合より多いことから,音読みの語の影響を受けているも のと考えられる。 

 

2.2.3  単語のアクセント型による区別 

これらの同音語の組の中では 2 つ(または 3 つ)の単語アクセント型による部分組が見ら れた。しかし,大きい方の部分組が組の同音語の単語の 80%より多くを占めていたので,

アクセント型による区別は効果的ではなかった。東京方言のアクセントによる同音語の弁 別率は,柴田他(1990)では,13.57%,柴田他(1994)では 12.59%で,柴田は日本語のアクセ ントは語の弁別のためではなく,音声連続をまとめて他と弁別するためにあるとする説を 支持している。本研究の結果からも,アクセントは同音語の弁別には効果的ではないこと が示された。 

   

<表 3-6>  同音語組内語数上位 20 語のアクセント

音素記号 総数 音節数 平板 1音節 2音節 大きい方 小さい方 偏り

コウシ koH si 37 2 4 33 33 4 0.11

コウショウ koH syoH 35 2 34 1 34 1 0.03

カン kaN 33 1 2 31 31 2 0.06

コウ KoH 31 1 31 31 0 0.00

セイシ seH si 29 2 5 24 24 5 0.17

ショウ syoH 28 1 28 28 0 0.00

シセイ si seH 28 2 22 6 22 6 0.21

セイコウ seH koH 27 2 27 27 0 0.00

センコウ seN koH 27 2 25 1 1 25 2 0.07

キコウ ki koH 26 2 24 1 1 24 2 0.08

ショウカ syoH ka 26 2 7 19 19 7 0.27

シコウ si koH 24 2 23 2 23 1 0.04

カシ ka si 23 2 4 19 19 4 0.17

コウキ koH ki 23 2 23 23 0 0.00

シ si 22 1 3 19 19 3 0.14

コウカ koH ka 22 2 2 20 20 2 0.09

コウシン koH siN 22 2 3 19 19 3 0.14

コウセン koH seN 22 2 5 17 17 5 0.23

ショウシ syoH si 22 2 1 21 21 1 0.05

シンコウ siN koH 22 2 22 22 0 0.00

平均 0.09 2等分 0.50

アクセント アクセントで2分した語数

 

第三節  モーラ音素の単語アクセントへの影響     

  本節では,第一節で得られた単語集合を用いて,モーラ音素のアクセントへの影響を考 察する。  

 

  3.1.  アクセントの付く確率   

アクセントの付いた音節と付かない音節との割合を後続母音の種類別に分類したもの を図 3-4 に示した。母音型の音節の出現頻度で/a/,/i/,および/o/が多く,/e/と/u/は少 なかったが,違いは 1/2 以内であった。一方,半母音+母音型の音節では,違いはもっと 大きく,/yo/,/yu/,/ya/の順に 1/2 ずつ減少した。母音の音節にアクセントが付く確率 は平均 13%,半母音+母音型の音節では平均 16%で,母音や半母音の種類による有意な差 はなかった。 

<図 3-4>  母音型の音節と半母音+母音型の音節の出現頻度の関係,母音による分類  

3.2.  モーラ音素を伴う音節   

モーラ音素が付属する音節の全音節に対する比率を,母音の種類と子音の種類に分けて,

13%

16%

16%

Ce Co Ci Cu

Ca

Cya Cyu

Cyo

CV

CyV 50,000

500,000

5,000

100 1,000 10,000 100,000

1,000 10,000 100,000 1,000,000

WITHOUT ACCENT(syllables, Log)

W IT H  A CC E N T  ( sy lla bl e s,  L o g)

NUMBER OF SYLLABLES GROUPED BY FOLLOWING VOWELS

13%

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