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同居の家族構成が定住化に与える影響 ―― 2005 年調査の結果から

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はじめに  調査の概要

3.  同居の家族構成が定住化に与える影響 ―― 2005 年調査の結果から

3.1  同居家族の滞日予定とその条件

 2005年の質問紙調査では長浜市の日系ブラジル人に定住化の傾向はあまりみられず、むしろ1年 以内の短期間で他地域(東海地域)に転居する者が多かった(表3)。これは派遣業A社の特徴であっ た。しかし、インフォーマントからの情報やインタビュー調査の結果から、家族滞在者のなかに長浜 に定住することを望んでいる者がいることが予測できた。滞日予定期間をみたところ、家族で滞在し ている者が将来の滞日予定期間が「わからない」と答える者が多かった(25.7%)。予測としては、

子供と同居の夫婦なら、長浜に定住する可能性が高い。とくに日本で子供が成長した家族の場合、日 本滞在が労働による収入を目的にするだけでなく、子供の教育という生活場面に直結した目的にもな る。それゆえ、ブラジルに生活基盤を残してきた日系ブラジル人とは異なり、子供と同居の夫婦は生 活の基盤が日本に移っているといってよい。2005年調査の分析結果から、家族滞在者にはデカセギ の長期化傾向がみられた。家族滞在者は定住へと移行する可能性が高い。

 以下、同居家族の構成によって類型をつくり、滞日期間や滞日予定との関連をみる。それによって 家族構成が定住化の傾向に影響を与えていることを明らかにしたい。ここで2005年調査の注意点を

表 6 永住資格 と 日本滞在予定 (2010 年調査)

*** p<0.001(ピアソンのカイ二乗両側検定:以下同様)

述べておく。2005年調査は派遣業A社の社宅で実施した。そのため、定住もしくは永住を希望する 日系ブラジル人のほとんどは除外されていたと推測できる。2005年時点でも、長浜市では日系ブラ ジル人の定住化が進んでいたと考えられるが、定住を希望する家族はA社の社宅を出て、個人契約 の住居に住んでいたと推測される。しかし、A社の社宅居住者であっても、将来的に定住するか帰国 するかを迷っている層の存在することが、2005年調査にはみられた(近藤2006)。

以下、家族が同居するパターンを4つの類型に分けて考察することにする。

「単身」=「本人のみ:親戚・友人・恋人・その他との同居を含む」(n=73)

「夫婦」=「本人と配偶者:親戚・友人・恋人・その他との同居を含む」(n=46)

「家族」=「本人と配偶者と子供または本人と配偶者と父母:親戚・友人・恋人・

     その他との同居を含む」(n=109)

「親子」=「本人と子供または本人と父母の一方:親戚・友人・恋人・その他との      同居を含む」(n=22)

3.2  渡日した時点での滞在予定年数と今後の日本滞在予定年数

 まず、[渡日時の滞在予定]と家族構成とをクロスさせてみよう(表 7)。「3年以内ぐらい」で帰国 を予定する者が「単身」(77.1%)と「親子」(81.8%)で8割前後と多く、「10年以内ぐらい」に帰 国を予定する者が「夫婦」(31.1%)と「家族」(22.6%)に2割から3割程度いることがわかる。明 確な違いはみられないが、渡日当初から「夫婦」または「家族」で同居する日系ブラジル人は長期滞 在を予定していた。

 つぎに、2005年調査時点での[日本での居住予定]は、同居する家族構成によって顕著な違いが みられた(表 8)。とくに、「夫婦」「家族」の場合、日本での居住予定年数を「10年以内ぐらい」(45.7%)

とする者が半数近くになる。また、「家族」で居住予定が「分からない」(25.7%)と答える者も多くなっ ている。その理由としては、「家族」で同居する者は、デカセギを長期化させるか、定住するかの迷 いがあったと推測できる。

 A社従業員(30代後半女性)の話では、小さい子供をもつ母親同士の間で日本に定住するかブラ ジルに帰国するかが話題になるという。これは子供の教育とその将来のことを考えて、迷っている状

表 7 渡日時点の滞在予定年数

 * p<0.05

態であるといえる。子供が小学校に入学する時点か、少なくとも小学校3年生になるまでに帰国すべ きかどうかの選択を親は行なわなければならないという。

3.3  長浜における居住期間と今後の居住予定

 [長浜での居住期間]をみると、家族構成によって差があり、「家族」は「3年以上」が41.3%と多 い(表 9)。[今後の長浜での居住予定]ではその差がさらに顕著になり、「家族」は「3年以上」が

56.3%と多くなる(表 10)。おおまかな傾向として、子供が長浜で成長した「家族」は、転居するこ

となく長浜に住み続けており、今後も長浜もしくは日本で長期間、居住するつもりであるといえそう である。つまり、居住期間や居住予定のみでみるなら、日系ブラジル人の「家族」は長期滞在または 定住化の傾向にある。

表 8 日本での居住予定

** p<0.01

表 9 長浜における居住期間

* p<0.05

3.4  長浜の居住環境に対する評価

 2005年調査で、[長浜の居住環境に対する評価]をみると、「家族」で暮らす者が他の家族構成よ り高い評価を与えていた(近藤2006:139-144)。例えば、「よい病院がある」(38.0%)、「教育環境が よい」(41.0%)、「趣味やスポーツを楽しめる」(24.0%)、「よい遊び場がある」(24.0%)など、子供 の生活を中心に考える項目であった。「家族」で暮らす者は労働条件だけでなく、子供を含めた家族 が生活する場所として長浜を評価しているといえよう。

 その他の居住環境でも長浜は高く評価されている。日系ブラジル人の「家族」は、長浜が「買い物 に便利」(67.0%)、「災害や事故がない」(37.0%)、「自然環境がよい」(37.0%)、「交通が便利」(34.0%)、

「よい職場がある」(26.8%)の順で評価していた。

 日系ブラジル人にとって長浜市は若者が遊ぶには刺激が少なく面白みのない土地であるが、子供を 中心に考えると学校教育も遊び場所も安心できるところであるという2。また、長浜は自然が豊かで 犯罪も少なく、落ち着いて暮らすにはよいところであるという。居住環境からみると長浜市は定住に 適した場所であると考えられている。

 長浜市への要望をみると、「家族」が要望する項目は、「外国語による情報を増やす」(74.5%)、「日 本語や日本文化を学べる機会をつくる」(70.6%)、「日本人との交流を支援する」(52.9%)の順で高かっ た。日系ブラジル人の「家族」は外国語での情報を求めるとともに、日本語や日本文化を学んで日本 人との交流を求めていることが推測できる。日系ブラジル人の「家族」は子供と一緒に日本人と交流 することを望んでいるといえよう3。また、「家族」は「ブラジル人学校への支援」(47.1%)、「ブラ ジル等の外国の言葉や文化を学べる機会をつくる」(33.3%)、「高校進学への支援」(32.4%)など、

子供の教育に関する要望が強かった。家族構成によって有意な違いはなかったが、「家族」は「外国 語ができる職員を増やす」(61.8%)、「多文化共生の教育や啓発を行なう」(33.3%)にも比較的強い 要望をもっていた。なお、家族構成によって有意な違いがある項目では、すべて「家族」の要望が高 い比率であった。

 以上、2005年調査では、同居形態が「家族」になっている日系ブラジル人にとって、長浜はデカ セギの場所だけでなく、長期滞在もしくは定住の可能性も含めて生活の場所になりつつあると推測で きた。

表 10 長浜での居住予定

** p<0.01

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