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第2節 合併後の職員の職務意欲とメンタルヘルスの維持向上に向けて
初めに,合併後の職場における職員の職務意欲とメンタルヘルスに関して,これま でに明らかになった課題や問題点をまとめる。
職務意欲とメンタルヘルスの維持向上のためには全般的に
①職場での協調体制,職場との一体感,職場での安心安全感が重要 それら以外に
②男性職員と中高年層職員には,能力が重視されていると実感できる職場,自分の意 見をはっきりと主張する姿勢が重要
職場との一体感を高めるには,自治推進を実感することが重要
③女性職員には,他者に順応し過ぎないこと,悲観的になり過ぎないことが重要
④若年層職員には,辞められない気持ち(仕方なく在職している意味合い)を意識し 過ぎないことが重要
性別,年代等にみられる特徴として
⑤女性職員は,情緒的消耗感,職務倦怠感,抑うっ・不安感が強く(特に非管理職の 女性職員はバーンアウト傾向が強い),職務意欲が低い
⑥非管理職員は,情緒的消耗感,空虚感(仕事に意義を感じない),早うつ・不安感,
他者への順応傾向,評価懸念が強く,職務意欲が低い
⑦20代の職員は,情緒的消耗感,評価懸念,他者への順応傾向が強く,50歳以上に 比べて職務意欲が低い
⑧40代の職員は,50歳以上に比べて情熱型と自立型の割合が低く,空虚感が高い
⑨単身や2人世帯のような少人数家族の職員は,情緒的消耗感や悲観的傾向が強い
⑩5万人未満の人口規模の小さな自治体の職員は,情緒的消耗感が強く安心安全感が
低い
⑪2〜3団体による小規模合併の自治体職員は,協調体制,能力重視,安心安全感,
職場への愛着が低い
⑫職場におけるコミュニケーションや人間関係づくりに比べて,勤務時間,人事配置,
昇任行為等の人事労務管理に対する評価が低い
次に,上記の課題等に対する対策を項目別に検討する。
①共通する影響要因
組織が肥大化したことにより,職場での協調体制や職場との一体感,また職場にお ける安心安全感が低下しやすくなることは,合併の短所でもあり,やむを得ないこと である。その短所の克服こそが,合併後の職場の活性化(職務意欲やメンタルヘルス の向上)にとっての重要な課題であることを職場内の共通認識とすることが,まず第 一である。
職場との一体感については,内在化要素(「職場との一体感」に同じ)は組織の価値 が自分の価値と一致しており,組織のために尽力したいという意識を表している(松
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山,2010)ことから,組織の目標や施策の意図が各職員にとって十分に内在化される ような,管理監督職によるきめ細やかなOJT(On the Job Training,職場内の日常的 育成指導研修)が重要となる。そして,特に組織目標と個人目標との接点についての 具体的な説明が必要である。また,安心安全感の高揚のためには,事業所としての安 全衛生活動の取り組みの強化を図ることが重要となる。産業医や保健師等による職場 内研修会や相談会を開催しても,多くの職員の参加が得られないのが現状ではないか と思われる。しかしながら,「安心安全感」の質問内容のように,職場において職員の ための取り組みがなされていると職員が感じることが重要であり,参加人数にかかわ
らず定期的な取り組みの継続と安全衛生活動が実施されている旨のPRが重要となる。
②男性職員と中高年層職員の影響要因
「能力重視」の質問内容である, 人事評価 , 配置希望 , 意見集約 , 職務専門 平等の活用 は,肥大化した職場においては実施せざるを得ない課題であり,その意
味で合併の長所の一つであると考えられる。昇任行為や人事配置,施策方針決定の経 過,専門性の活用等は職員にとって極めて大きな関心ごとであるため,人事評価制度,
配置希望調査制度,事務事業ヒアリング等について早期に実施することが必要である。
そして,実施にあたっては職員に疑念が生じないよう,制度内容や運用についての透 明性と職員の納得性を高める工夫(内容の公開と結果のフィードバック等)が重要と
なる。
また,「自治推進の実感」が職場との一体感を高める要因の一つになっている。自治 推進の実感の質問内容である 自治体の方針 , 組織目標 , 住民サービス , 議会
との関係 , 住民との距離感 等は,これら全てが合併により大きく変化するもので あり,自治体特有の概念でもある。これら推進の実感が自治体職員としての認識と充 実感を高め,職場との一体感が高まることにより,ひいては職務意欲に繋がっている ものと考えられる。そこで,この自治推進の実感の促進のために,特に合併後間もな い時期においては,自治体の責任者としての首長のリーダーシップが重要であると考 えられる。自治体の方針や組織目標,また住民サービスの方向性を明確に示し,住民 代表としての議会との適切な意思疎通を図ることが重要である。そのような姿勢や環 境を職員が敏感に感じ取り,職場が活性化されるものと思われる。自治体新設後の一 定期間においては,特に重要な要素であると考えられる。
③女性職員,④若年層職員の影響要因
職務意欲やメンタルヘルスに関して女性職員と若年層職員にみられる傾向について,
セルフケアに関する共通理解が得られるよう,まず職場研修等による周知が必要であ る。女性職員にみられる他者への順応傾向については,女性職員を含む職員全員を対 象として,職務に関する意見発表の機会を定期的に職場ごとに設けるようにしてはど うだろうか。他者への順応と自己主張とは負の相関関係にあることから,主張訓練の
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ための職員研修会を考えたい。若年層にみられる辞められない気持ちが強い傾向につ いては,「存続的要素」の質問内容が,仕方なく在職しているといった消極的な意味を 含んでいることから,若年層職員の職務への参画意識が高まるよう,管理監督職によ
る丁寧な協議や結果等のフィードバックが特に重要である。いずれの場合においても,
セルフケアのみならず,職場として行われるラインケアも重要な役割を担っている。
⑤女性職員,⑥非管理職員,⑦20代職員,⑨同居家族数,⑩人口規模の特徴
女性職員,非管理職員,20代の職員,少人数家族の職員及び人口規模の小さな自治 体の職員に共通している特徴は,情緒的消耗感が強い傾向にあることである。これら 職員のセルフケアの一つとして,情緒的消耗感冒己診断(Table 30)の活用を考えたい。田尾他(1996)は,看護師976名のバーンアウト3因子の得点分布から,構成割合と 得点範囲を示したバーンアウト自己診断を作成している。その自己診断を参考にして,
本調査の被調査者548名の得点から田尾他(1996)と同じ構成割合となるように情緒 的消耗感の得点範囲を算出したものである(現職自治体職員数名に対して,当自己診 断の得点と診断内容が一致しているかどうか照会したところ,概ね妥当であるとの意 見を得た)。消耗感はバーンアウトの端緒であり,要注意領域以上に入っていた尺度が 情緒的消耗感のみであった場合,今休憩を取らなければ,他の尺度もやがては要注意 領域に到達する可能性が極めて高い(田尾他,1996)との指摘がある。例えば,デス クマットに敷いておき,セルフケアとして随時にチェックしてみてはどうだろうか。
もちろん趣旨の説明や活用の呼びかけについては,安全衛生活動の一つとして位置づ け,安全衛生担当部署から全職員を対象に行いたいと考える。また,パワハラやセク ハラについての職場の雰囲気に対する認識の違いが男女間にあることを,安全衛生活 動の一環として各職場へ周知することも重要であると考える。ハラスメントについて 男性職員ほど女性職員は,職場状況を評価していない現状について啓発することから,
職場の意識改革を進める必要がある。
次に,女性職員は男性職員に比べて職務意欲が低いこと,及び管理職でない女性職 員はバーンアウト傾向が強いことから,可能な限り,女性職員の役職登用拡大を図り たい。内閣府(2012)によると,市区町村の管理職に占める女性の割合は10.4%であ
り,10人に1人と極めて低い状態となっている。男女共同参画社会基本法や男女雇用 機会均等法の制度上の趣旨,そして職員のメンタルヘルス対策の両面から,一定程度 の拡大は大切であり,許容されるものと考えられる。
非管理職員(特に20代)は管理職員に比べて職務意欲が低いこと,及び評価懸念 と他者への順応が強い傾向にあることについては,職務上の評価実施に先立ち,評定 制度の評定項目や評定基準等を被評価者に対して明らかにすることにより,その透明 性を高める必要がある。そして,評定結果について指導育成のためのフィードバック を行う等,評定制度の運用が職員の萎縮を招くことなく,やる気に繋がる工夫が重要 である。また,人員配置や残業時間に対する認識に関して,50歳以上の職員と20代,
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