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各電位窓における XRD 測定

ドキュメント内 誘電体界面の導入による (ページ 83-91)

BaTiO 3 -LiCoO 2 複合正極における出力特性

3.4. 電池 ex-situ XRD

3.4.2. 各電位窓における XRD 測定

82

83 3.4.2.1. 電位範囲3.3-4.2Vにおける電池評価

図3.4.1にBT複合正極,Al2O3複合正極,未処理LCの10Cにおけるサイクル特性結果を

示す.BT 複合電極は他試料に対し 80 サイクルという多サイクルにもかかわらず容量が劇 的に改善されていることがわかった.特に80サイクル目のBT複合正極では初期容量に対 する容量保持率が86%であり,これは未処理LC(19.9%),Al2O3複合正極(71.5%)と比較して も非常に高容量保持率である.このことは、担持BTが高レートで電池作動させるときに活 物質/電解液界面での化学的副反応を抑制しつつ活物質の結晶構造を安定化させた可能性が ある.この可能性を検証するために,4.9Vまでの高電圧におけるBT複合正極の電池性能を 検討した.

3.4.2.2. 測定電位範囲3.3-4.5V3.3-4.7V3.3-4.9Vにおける電池評価

図3.4.2 にBT複合正極と未処理LCにおける各測定電位範囲で電池評価を行ったときの

1,5,10,20,50サイクル目の充放電曲線を示す.予想通り,BT複合正極では未処理LC に対してどの測定電位範囲においても優れた初期容量を示す.またBT複合正極では充放電 のどちらでもプラトー(平坦)領域がより多く存在した.さらに4.5Vと4.7VにおけるBT複 合正極の50サイクル目の容量保持率は未処理LCよりも非常に高い.一方最もカットオフ 電位が高い4.9Vでは20サイクルまではBT複合正極と未処理LCの間に大きな容量差があ ったにも関わらず, 50サイクル後の両方の試料において~10mAh/g以下となった.

図3.4.3にBT複合正極及び未処理LCの10Cでの放電容量を示す.さらに図3.4.3に示し

た結果から求めた初期容量、50サイクル目の放電容量、50サイクル後の容量を表 3.4.1 に 示した.まずカットオフ電位を4.5V から 4.7Vまで上昇させたとき両方の試料について初 期容量が向上した.未処理LCでは,4.5Vでの初期容量は119.2mAh/gで 4.7Vについては

148.7mAh/gにと増加し,BT複合正極では4.5Vでの初期容量が147.8mAh/gおよび4.7Vで

の初期容量は216.7mAh /gであった.この現象は印加電圧上昇に伴って増加した挿入脱離反 応時の Li イオン量に起因するものである.次に 50 サイクル後の容量保持率はは 4.5V と 4.7Vにおいて未処理LCよりもBT複合正極の方が明らかに向上した.例えばBT複合正極 の4.7Vにおける50サイクル目の放電容量は初期放電容量の52.6%に相当する114mAh/gで あった.この容量保持率は未処理 LC(13.6%)の容量保持率よりも劇的に向上している.

一方,4.7から4.9Vへカットオフ電位を上昇した際に初期容量はあまり増加しなかった.こ れは4.7V以上の高電位にしても電池の容量に関わるLiイオンの挿入/脱離反応に用いるLi イオンは4.7V以上に動員することはできないからと判断した.4.9VにおいてBT複合正極 は 30 サイクルまでは優れたサイクル特性を示したが,50 サイクルで両方の試料において

10mAh/gに収束した.以上の結果より人工SEIとして担持したBTは,安定したサイクル特

性を維持しつつLCの動作電圧の上限レベルを約4.7Vまで向上させることを示唆した.

84 3.4.2.3. ex-situ XRD

表3.4.1で示した電池評価結果になった原因究明のため、電池試験前の正極シートと電池

試験終了後に電池を分解して取り出した正極シートのXRD分析を行った.図3.4.4にXRD 測定結果を示す.30°未満のブロードなハローパターンはアモルファス相に由来するもので あり,正極シート作製に使用したポリマー結着剤(PVDF)および導電助剤として用いたアセ チレンブラックによるものである.31.5°にある BT の(110)/(101)ピークはブロードなハロ ーパターンの尾部と重なってしまったためピークが弱まったように見える.元々BT添加量

が1mol%と少なかったこともあり,粉末XRDと比べ正極シートXRDではBTのピークが

見えにくくなった.

活物質 LC は充放電時,活物質に存在する Li 量によって 4 つの六方晶構造(H1、H2、 O1a、およびO1)に順次変化することが知られている(26-31).充電時LCからLiが脱離,

つまりLC内に存在する Li量が減少するにつれて、充電電圧の上昇により元の層状岩塩六 方晶相H1よりもc軸が長くなった層状岩塩六方晶相H2に遷移する.この相転移は約4.1V で発生し,4.1V以上ではH1とH2の2相共存状態になる.この状態はLi量の変化に伴いc 軸格子に由来する(003)ピークがスプリットすることから観察できる.これはLi量が0.1 < x

< 0.25 (Li1-xCoO2) のときに対応している.H1相は4.5Vで完全にH2相へ相転移する.この ときのLi量はx=0.6-0.7 (Li1-xCoO2)である.4.5V以上の高電位ではc軸が長くなった層状岩 塩六方晶相H2から中間単斜晶相M1を介してO1a相(CdI2型六方晶構造)に遷移する.最 終的にLi1-xCoO2構造においてLi量が0.9 <x <1であるO1相(CdI2型単層六方晶構造)に変 化する.

図3.4.4に示した通り,電位窓が3.3-4.5Vでは未処理LC,BT複合正極の結晶相はH1相を

示す.未処理LCにおいて六方晶(003)ピーク分離によるH2スプリットはカットオフ電位が 4.7Vのときに生じた.興味深いことに同カットオフ電位であっても BT 複合正極では観察 されなかった.それゆえ電位窓が3.3-4.7Vでは未処理LCの一部は放電後もH2相が残った ままになっている.言い換えると,充電時活物質から脱離したLiイオンが充放電反応時の 副反応によるSEI形成に消費及びLiイオン欠乏層として知られる正極/電解液界面の電気二 重層中の低拡散によって放電時にH1相に転移できるほどのLiイオンが挿入できなかった ことを示している.図3に示した通り,4.7Vまでの BT複合正極におけるサイクルの安定 性が劇的に向上した.これはBT担持によって活物質LCの構造が安定化し可逆性が向上し たからである.この安定性は4.9Vでも存在する.4.9Vにおいて未処理LCの結晶相は完全 にH2相に遷移するが,BT複合正極ではH1相とH2相の共存に起因する(003)ピークスプリ ットがわずかに存在する.カットオフ上限電位4.9V時のBT 複合正極におけるH2相の存 在は不可逆容量の存在を現し,これにより図 3.4.3 で観察されたサイクル安定性低下した.

4.5V以上では H2 相はO1a 相とO1 相に変化することが知られているがこの実験では H1-H2相しか観察することができなかった.しかし得られた結果より,最も安定性が低い低電 位で表れる H1相において BT 担持による電気化学的特性向上につながることを見出した.

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図3.4.1 各試料における10Cにおけるサイクル特性結果

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図3.4.2 BT複合正極と未処理LCにおける1,5,10,20,

50サイクル目の充放電曲線

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図3.4.3 各カットオフ電位におけるBT複合正極及び未処理LCの10Cの放電容量

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表3.4.1 各カットオフ電位における初期容量,50サイクル目の容量,容量保持率

図3.4.4 各カットオフ電位における充放電前後のXRD

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ドキュメント内 誘電体界面の導入による (ページ 83-91)