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各国の取り組みや課題の比較対照と整理

VI. 各国の取り組みと課題等に関する比較・整理

2. 各国の取り組みや課題の比較対照と整理

図表- 59 受入に係る各国の主要課題と特徴的な取り組み

課題と取り組みの概要 取り組みのメリット

*経済成長の持続と高齢化に伴い深刻な労働力不足に陥ったため、

国際競争力維持・向上に向け、高度技能者や熟練労働者を対象と した規制緩和措置が求められた。

■高度技能移 民プログラム の導入

・高学歴者や高度技能者の移住を促進するために導入されたポイン ト制度。技能レベルを客観的基準で点数化し、一定水準以上の場 合は労働市場テストの対象とならずに入国・滞在が可能となる。

・受入区分は5つの階層に分かれている。

・この制度により入国が認められた外国人は、2年間の滞在が許可 された後、3年間の滞在延長が可能となり、合計5年間高度移民 として就労した後、永住権の申請が可能となる。

・入国を希望する外国 人 に と っ て 基 準 が 明 確 で わ か り や す く、対応が容易。

*国際競争力の維持・向上のため、経済界からIT技術者等の専門 知識を有する外国人の導入に関する要請が高まっていた。

■在留資格の 簡素化と高度 技能者への無 期限定住許可

・従来、4つあった在留資格を在留期限の有無による2つに簡素化 した。

・従来、新規移民は期限付き在留資格しか得られなかったが、先進 国 の 大 学 卒 業 者 等 高 度 技 能 者 は 当 初 か ら 無 期 限 定 住 許 可 を 得 る ことが可能となった。

・入国を希望する外国 人 に と っ て わ か り やすい。

・高度技能者の手続き 負担が軽減される。

*国際競争力を高めるため、高技能労働者の受入を積極的に進める ことが求められた。

■高度技能労 働者受入手続 きの緩和措置

・新規に入国する外国人のうち、上級管理職等、一定の条件を満た す高度技能労働者について、臨時滞在許可証がスピード発行され る等、高度技能労働者の入国条件や受入手続きを緩和。

・臨時滞在許可証は1年間有効で更新可能。

・別途、国内各分野の発展に寄与すると考えられる「能力と才能」

という区分に該当する場合は、3年間有効な滞在許可が付与され る。

・臨時滞 在許 可証を5 年間 保持する と、 10 年間有効な正規滞 在許 可証を受ける権利が得られる。

・入国を希望する高度 技 能 者 の 手 続 き 負 担、時間的ロスが軽 減される。

資料)三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成

(2)在留管理に関する取り組み

在留管理制度では、滞在中の居住状況や就労等の諸活動の管理のあり方や手法に差 異がみられ、英国のように原則として外国人の居住状況を把握・管理する制度がない 国もある。

各国の特徴的な取り組みとしては、英国における企業・大学が実質的な在留管理を 行う保証人制度の導入、独国における登録情報の管理円滑化と政策検討への活用等を 可能とする登録情報の一元管理とデータベース化、仏国における滞在許可付与の要件 となる正規滞在期間の延長等の滞在許可制度の強化等が挙げられる。

図表- 60 在留管理に係る各国の取り組みの概要

取り組み

日本

■入国後 90 日を超えて国内に滞在する外国人、日本国内で出生あるいは日本国籍を離脱した 外国人が、外国人登録による在留管理の対象となる。

滞在中の就労等の諸活動は、在留資格ごとに定められた範囲内においてのみ認められる。

■出入国管理制度(入国時の審査)、外 国人登録制度(滞在中の管理)で在留管理を実施して いる。外国人登録業務は、法定受託事務として市町村が実施している。

英国

■6か月以上国内に滞在する場合、事前に査証を取得しなくてはならない。

入国後に滞在理由や帰還等に変更が生じた場合のみ、居住許可証を申請する。

■原則として、在留管理を目的とした日本の外国人登録に類する制度はない。しかし、例外と して、当局の指定した要注意国からの移民を対象とした登録制度、A8を対象とした労働者 登録制度がある。

一般の外国人の在留管理を行う制度がないため、移民を受け入れる企業や大学を認証し、さ らに当該企業・大学が労働者や学生を認証する保証人制度を導入する。

独国

■90 日以上国内に滞在する場合、滞在許可の取得が必要である。

■連邦法が定める外国人登録制度に基づき、市町村が業務を実施している。

登録情報は中央政府に集約され、外国人中央登録簿に登録されている。

仏国

■90 日以上国内に滞在する場合、臨時滞在許可証の取得が必要である。

■外国人には居住地での登録制度があり、住居を変更した場合、以前の居住地と職業について 新しい居住地において申請する必要がある。

資料)三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成

○シェンゲン協定について

1985年にルクセンブルグのシェンゲンで締結された「共通国境管理の漸進的撤廃に関する 協定」、1990年に締結された「シェンゲン実施条約」からなり、協定国間の出入国手続きを 簡素化し、協定国間の移動を国内移動と同等の扱いとすることを目的とするものである。

協定国は以下の 26か国。

ベ ル ギ ー 、仏 国 、独 国 、ル ク セ ン ブ ル グ 、オ ラ ン ダ(1985614日 調 印 、1995326日 実 施 )、イ タリ ア(19901127日 調 印 、19971026日 実 施 )、ポ ル ト ガ ル 、ス ペ イ ン(1992625日 調 印 、1995 326日 実 施 )、ギ リ シ ャ(1992116日 調 印 、1997128日 実 施 )、オ ー ス ト リ ア(1995428 調 印 、1997 12 1日 実 施 ) 、 デ ン マ ー ク 、 フ ィ ン ラ ン ド 、 ア イ ス ラ ン ド 、 ノ ル ウ ェ ー 、 ス ウ ェ ー デ ン (1996 1219日 調 印 、2001325日 実 施 )、キ プ ロ ス 、チ ェ コ 、エ ス ト ニ ア 、ハ ン ガ リ ー 、ラ ト ビ ア 、リ ト ア ニ ア 、 マ ル タ 、 ポ ー ラ ン ド 、 ス ロ バ キ ア 、 ス ロ ベ ニ ア (200451日 調 印 、 未 実 施 ) 、 ス イ ス (20041016 日 調 印 、 未 実 施 )

なお、独仏国はシェンゲン協定の締結国であるため、90日以内の域内滞在であれば、査証 が不要とされている。一方、シェンゲン協定に参加していない英国は、これを6か月として いる。

図表- 61 在留管理に係る各国の特徴的な取り組み

課題と取り組みの概要 取り組みのメリット

*不法在留者対策として、在留管理の仕組みを確立することが求 められていた。

■保証人制度 の導入

・不法在留者対策として、移民を受け入れる企業・大学を認証し、

認証を受けた企業・大学が労働者や学生を認証するという形式 で在留管理を行う制度。保証人となった外国人に不審な行動や 雇用条件、職務内容等の変更があった場合は、企業・大学は内 務省移民国籍局に速やかに報告することが義務付けられる。

・適切な 管理 を行わな ければ 認証を 失うた め、企 業・大 学によ る適切 な在留 管理が 期待できる。

*外国人労働者が想定した以上に定着率が高かったため、自発的 な帰還の促進とともに、在留管理の徹底、制度の整備充実が求 められた。

■登録情報の 連邦政府での 一元管理とデ ータベース化

外国人登録のうち定められた情報は連邦政府に集約され、3か 月以上の滞在経験を有する者、特別な事情を有する者の情報は 外国人中央登録簿に登録される。

・外国人中央登録簿の情報はデータベース化され、必要と権限に 応じてこれを活用することができ、また統計化されて広く政策 検討に活用される。

・登録情 報の 一元管理 により 、在留 管理や 政策検 討への 情報の 活用が可能となる。

*不法在留者対策として、在留許可要件の厳格化等、規制を強化 することが求められた。

■滞在許可制 度の強化

・仏国籍の子どもの父母に対する滞在許可証付与の要件である正 規滞在の期間が2年から3年に、仏国国籍取得の要件が婚姻後 2年から4年に延長に、家族呼び寄せの要件が正規滞在1年か ら1年半にそれぞれ延長された。

・滞在許 可の 要件強化 により 不法滞 在者の 減少が期待できる。

資料)三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成

(3)社会的統合に関する取り組み

社会的統合政策では、独仏において言語講習等を中心とした事業が実施されている が、英国では社会的統合の積極的な対象は難民が中心である。これに対して、我が国 では統一的な社会的統合政策は実施されておらず、一部の地方自治体の独自施策にと どまる。

各国の特徴的な取り組みとしては、英国の入国する外国人への英語力証明の義務化、

独国の新規移民に対する独語及び独国一般常識の統合コースの受講義務付け、仏国の 滞在外国人に対する仏国の基本理念と仏語、日常生活知識等の研修の受講を義務付け る、国または県知事との受入・統合契約の導入等が挙げられる。

図表- 62 社会的統合に係る各国の取り組み状況について

取り組み

日本

■国による社会的統合政策は実施されていない。

受入後の社会的統合に関する包括的な施策は行われていない。ただし、外国人が多く居住す る地方自治体では、独自の取り組みを実施している。

■外国人子女に対する義務教育の規定はなく、社会的統合に関する関する包括的な施策は行わ れていない。ただし、外国人が多く居住する地方自治体では、外国人子女に対する独自の取 り組みを実施している。

英国 ■一般の新規移民に対する社会的統合は、歴史的経緯からも優先度が低い。

■外国人子女に対する教育の義務規定はない。

独国

■原則として、独語を話すことのできない新規移民に対し、統合コースの受講が義務付けられ ている。

統 合 コ ー ス に よ る 言 語 及 び 独 国 社 会 の 常 識 と い っ た 基 礎 項 目 以 外 の 統 合 政 策 に つ い て は 州 政府に権限と責任が委譲されている。

■外国人子女が義務教育の対象年齢に当たる場合、就学義務が課される。

仏国

■1年以上滞在する外国人が国(県知事)と結ぶ「受入・統合契約」を実施している。

同契約は、外国人に共和国の基本的理念の尊重、契約が定める言語講習等の研修の受講を義 務付けるものである。

■外国人子女も仏国人の子女と同様、教育の義務が定められている。

資料)三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成

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