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第7節

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Soc. 1984, 106, 7150.

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ビアリールカルボン酸の分子内アシル化反応

によるフルオレノン類の合成

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第1節 緒言

フルオレノン骨格は天然物、医薬品、有機発光材料などに鍵構造として含ま れていることから1)、その効率的な合成法の開発は重要な研究課題である2)。フ ルオレノンの一般的な合成法としては、ビアリールカルボン酸やその誘導体の

Friedel-Crafts型分子内アシル化反応が古くから知られている。しかしながら、そ

れらの方法では、当量以上のルイス酸の添加が必要であった。例えば、Scheme 3-1 の例では反応を効率よく進行させるために大過剰のAlCl3を必要としている3a)。 また、次の例ではカルボン酸を系中で酸塩化物に変換し反応性を向上させてい るが、当量以上のSnCl4を添加して反応を行なっている(Scheme 3-2)3b)。 Scheme 3-1

Scheme 3-2

ビアリールカルボン酸を用いた触媒的なフルオレノン合成法としては、固体

酸であるNafion®によるFriedel-Crafts型分子内アシル化反応が報告されている

(Scheme 3-3)4)

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Scheme 3-3

一方、遷移金属錯体を用いたビアリールカルボン酸からの触媒的なフルオレ ノン合成はこれまでに報告されていない。以下には、ビアリールカルボン酸以 外の基質を用いた遷移金属触媒による合成法を参考までに挙げる5)。初期の例と しては、Pd触媒による2-ヨードベンゾフェノンの分子内環化反応が報告されて

いる(Scheme 3-4)5a)。また、Larockらは一酸化炭素を用いたカルボニル化環化

反応によるフルオレノン合成を達成している(Scheme 3-5)5c,5d)。最近では、ベ ンゾフェノンを基質としたPd触媒による脱水素型の酸化的環化反応も報告され るようになった(Scheme 3-6, Scheme 3-7)5f,5g)

Scheme 3-4

Scheme 3-5

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Scheme 3-6

Scheme 3-7

第 2 章において、著者は 2-アリロキシ安息香酸からジベンゾフラン類を合成 する脱カルボニル的環化反応がRh触媒により効率良く進行することを見出して いる。本研究では、上記の触媒系をビアリールカルボン酸へ適応したところ、

脱カルボニル化を伴わない環化反応、すなわち分子内アシル化反応が進行し、

フルオレノン類が得られることを新規に見出した(Scheme 3-8)。本反応は、遷 移金属触媒によるビアリールカルボン酸からのフルオレノン合成の初めての例 である。以下、第2節では反応条件の最適化および基質一般性について述べる。

そして、第3節では反応機構について述べる。

Scheme 3-8

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第2節

反応条件の最適化および一般性の検討

1. 反応条件の最適化

基質としてビフェニル-2-カルボン酸(1a)を用い、2-アリロキシ安息香酸 の脱カルボニル化的環化反応における最適条件(触媒: Rh(acac)(cod) (5 mol %)、 添加剤: KI(50 mol %)、Ac2O(300 mol %)、反応温度160 ℃)の下、検討を行 った(Scheme 3-9)。

Scheme 3-9

その結果、脱カルボニル的環化反応により生成すると考えられる4aは本系に おいては全く確認されず、カルボニル基が保持された生成物、フルオレノン 2a が 56%の収率で得られた。しかしながら、この時無水酢酸由来であると考えら れるメチルエステル3aの副生が12%ほど確認された。3aが生成する機構は以下 のように考えられる(Scheme 3-10)。

Scheme 3-10

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原料のカルボン酸とAc2Oが反応し、原料由来の酸無水物が生成後、アセチル 基のカルボニル炭素-酸素結合がRhへ酸化的付加し、アセチルロジウム種が生 成する。ここで脱カルボニル化反応が起こり、メチルロジウム種が生成、続く 還元的脱離によりメチルエステルが得られるものと考えている6)

前述の検討により、ビアリールカルボン酸を基質として用いた場合には、分 子内アシル化反応が進行し、フルオレノンが得られることがわかった。そこで、

反応の選択性および収率改善を目的とし、種々の触媒を用いて検討を行った。

結果をTable 3-1に示す。

Table 3-1

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1価のRh触媒を用いて検討を行った結果、[RhCl(cod)]2あるいわ[Rh(OH)cod)]2

触媒を用いた場合に2aの収率が若干向上した。また、すべての系において3a は10%程度生成しており、触媒の違いによる活性に差はなかった(entry 2-5)。0 価、2価、3価のRh触媒を用いた場合、2aの収率および選択性に低下が見られ た(entry 6-8)。Rh以外の触媒としてIr、Pd、Ni触媒を試したところ、これらの 触媒系においては目的の反応は全く進行しなかった(entry 9-12)。

検討の結果、触媒による選択性の向上は図れなかったが、本反応はRh触媒で のみ進行することが明らかとなった。そこで、 [RhCl(cod)]2触媒を用いた系にお いて、添加剤による反応制御を試みた。結果をTable 3-2に示す。

Table 3-2

Ac2Oのみを添加した場合、2aの収率は大きく低下したことから本反応におい てもKIの添加は必須である(entry 2)7)。Ac2Oの代わりにPiv2Oを用いて検討 を行ったところ、対応するエステルの生成は確認できず、2aが選択的に得られ ることがわかった。また、収率の向上も見られた(entry 3)。Piv2OとKIを併用 した場合には、収率にさらなる向上が見られた(entry 4)。

検討の結果、添加剤にPiv2Oを用いることでエステルの生成を抑制できること が明らかとなった。これはピバロイル基の立体障害により、酸化的付加段階が

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不利になったためであると考えられる。したがって、以後の検討ではAc2Oに代 えてPiv2Oを用いることとした。

さらなる収率の向上を目指し、KIとPiv2Oを用いた系において、配位子の検 討を行った。結果をTable 3-3, 3-4に示す。

単座ホスフィン配位子の検討

Table 3-3

PPh3を添加した場合、触媒活性に変化は見られなかった(entry 2)。様々なト リアリールホスフィンを用いて検討を行ったところ、2aの収率は大きく低下し

た(entry 3-6)。トリアルキルホスフィンを用いた場合も2aは低収率に留まった

(entry 7-8)。

検討の結果、単座ホスフィン配位子による収率向上は困難であることがわか った。

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二座ホスフィン配位子の検討

Table 3-4

配位子としてDPPEを用いた場合、原料が完全に消失し、2aが 95%の収率で 得られた(entry 3)。DPPEと同じ架橋炭素数の配位子として、DPPBz、DPPEn、 DCPEを用いて検討を行ったが、活性はDPPEに劣る結果となった(entry 9-11)。 バイトアングルの大きな配位子は、本反応には適さない(entry 12-13)。

検討の結果、DPPEを用いた場合には反応が定量的に進行することが明らかと なった。したがって、以後DPPEを最適な配位子として検討を行うこととした。

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続いて、反応時間と反応温度に関して検討を行った。結果をTable 3-5に示す。

Table 3-5

反応温度を 10 ℃下げ、150 ℃で反応を行った場合、収率に低下が見られた。

また、温度を上げた場合においても収率の低下が確認された(entry 2-3)。よっ て、最適な反応温度は 160 ℃とする。反応時間を短縮するにつれ、原料の回収 率が増し、収率は低下する傾向が見られた(entry 4-5)。よって、最適な反応時 間は20時間とした。

なお、触媒量についても検討を行ったが、1.5 mol %、0.5 mol%と減らすにつ れ原料が残存し、収率の低下が見られた。

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以上の検討結果より、触媒: [RhCl(cod)](2 2.5 mol %)、配位子: DPPE(5 mol %)、 添加剤: KI(50 mol %)、Piv2O(300 mol %)、反応温度: 160 ℃、反応時間: 20 時 間の条件を最適条件とした。

2. 基質一般性

最適条件を用いて、様々なビアリールカルボン酸からのフルオレノン合成を 検討した。以下に結果を示す(Scheme 3-11)。

Scheme 3-11

ベンゼン環上のパラ位に電子供与基を有する基質の場合、反応は問題なく進 行し、対応するフルオレノン2b2cがそれぞれ90%、85%の収率で得られた。

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電子求引基を有するビアリールカルボン酸についても検討を行ったところ、ア セチル基を有する基質においては、収率に低下が見られたが、CF3基を有する基 質においては、高収率で対応するフルオレノンが得られた(2d, 2e)。ハロゲン 置換基としてフッ素基を有する基質の場合、反応は問題なく進行した(2f)。一 方、塩素置換基を有する基質の場合、反応性に低下が見られ、40 時間の長時間 の反応においても収率は76%に留まった(2g)。また、臭素基を有する基質にお いては、160 ℃では反応はほとんど進行せず、反応温度を 180 ℃に上げ検討を 行ったが、環化体は中程度の収率であった(2h)。本系においては、原料の残存 と還元体と見なすことができるフルオレノンが 10%程度生成していることを確 認している。反応点が一点となる基質として、ベンゼン環上のメタ位にメチル 基を有する基質を用いて検討を行ったところ、反応は問題なく進行した(2i)。 また、反応点に立体障害を有する基質を用いた場合、立体障害の少ない炭素-

水素結合上で反応が進行した生成物のみが選択的に得られた(2j)。安息香酸側 のベンゼン環上の置換基として臭素基を有する場合、中程度の収率で対応する ブロモフルオレノンが得られた。

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