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動物実験に関する安全指針

ドキュメント内 2017 安全対策マニュアル .indd (ページ 94-103)

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第4節  動物実験に関する安全指針

 4.  1 はじめに

  生物系学科における研究では,薬効の評価や薬物代謝,薬物動態の解析など医薬品開発に 直接関連した分野だけでなく,抗体産生をはじめとする免疫学的研究や各種酵素の生体内で の働き,個体レベルでの遺伝子発現機構など,生物現象そのものを理解する上でも,動物実 験は不可欠である。動物実験における倫理や動物の保護などについては,「動物の愛護及び 管理に関する法律」が定められており,これを受けて環境省告示として「実験動物の飼養及 び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」,文部科学省告示として「研究機関等における動物 実験等の実施に関する基本指針」などの指示がなされている。また,これらの法律や告示を 受けて,実験動物管理委員会では,実験動物の扱いや倫理に関する規定を定めているほか,

各種の実験動物を使用する学会では,動物実験に関する指針を定めている。動物実験に関す る倫理規定についてはこれらを遵守した実験を行う必要があるが,動物実験に伴う危険と安 全指針について触れられているものは少ない。しかし,人獣共通感染症によって動物から実

生物的要因

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Ҭ֦I֨ ȉ֊ŷΨ‚Վĭqüʃ̗ϋȎüŷΨ 験者に感染するような危険が常にある事,また,動物間相互の感染は,実験データのばらつ

きを引き起こすだけでなく,倫理的側面からも好ましくない事などを考慮し,実験者だけで なく動物の安全についても十分配慮した実験がなされるべきである。また,毒性や発癌性の 高い薬物を動物に投与する場合には,そのような薬物が実験者に対する危険とならないよう な措置を講じなければならない。ここでは,最も危険度の高いと思われる動物感染実験と人 獣共通感染の間遠を中心に,動物実験の安全について示す。

 4.  2 動物実験における感染事故の原因

 ⑴ 感染動物実験

   実験動物に何らかの病原微生物を感染させる実験を行う頻度は,比較的低いと考えられ る。しかし,弱毒化あるいは無毒化した微生物を adjuvant として動物に接種したり,ヒ トの癌細胞を動物に接種して担癌動物を作製したりする実験では,感染動物実験と同様の 危険が伴う事を念頭に置かなければならない。

   感染実験に用いる病原体の人体に対する危険度については,微生物を用いた実験の項目 を参照の上,それと同様の注意を払って実験を行わなければならない。しかし,同じ病原 体であっても,用いられる動物種や接種経路が異なれば,病原体の増殖率や排出様式が異 なる場合がある事,動物体内での増殖によって人体に対する病原性が増強する場合がある 事など,in vitroの実験以上の注意を払わねばならない。in vitroの実験では,病原微生 物のヒトヘの感染,周辺への拡散の機会は実験操作時のみに限られるのが通常であるが,

感染動物実験では,病原体接種から実験終了まで日・週・月の単位の時間的経過が必要で あり,その間動物の給餌・給水・ケージ交換などの飼育作業を続けなければならない。従っ て,病原体が尿・糞・唾液などに排出されている場合,実験・飼育環境中には絶えず感染 性のエアロゾルが拡散している危険性がある。また,動物の解剖時には,血液・体液・臓 器中の増殖した病原体に実験者が接触する危険性が考慮されなければならない。更に,動 物による咬傷,引っかき傷や,注射器・メスなどによる創傷による感染の機会は動物実験 に特徴的な問題である。従って,感染事故発生の危険性は,通常のin vitroの実験よりも はるかに高いと考えるべきである。また,in vitroの実験では,病原体のヒトに対する危 険性を中心に考えればよいが,動物実験では,これに加えて他の実験動物に対する感染防 止も十分考慮されなければならない。

 ⑵ 実験動物からの人獣共通感染症病原体による感染

   実験に供される動物が,微生物学的に統御された場で生産され,厳重に品質管理されて おり,しかも,飼育環境も十分クリーンな状態に維持できれば,このような問題が発生す る危険率は十分に低くなる。しかし,現実には,conventional 動物を使用する機会も多く,

動物飼育環境も決してクリーンとは言えない状態であるため,実験動物がヒトに対して病 原性を有する微生物を保有している場合があり得る。特に,通常では動物に対して病原性 を発揮せずに潜在している病原体があるので,細心の注意を持って動物を扱う必要がある。

ラットにおける腎症候性出血熱(HFRS;hemorrhagic fever with renal syndrome;流行 性出血熱)ウイルス汚染は,これまで多くの大学の動物実験施設で深刻な問題を発生させ,

国立大学職員の死亡例まである事は,繰り返し報道されている。また,マウスやハムスター のリンパ球性脈絡髄膜炎(LMC;1ymphocytic choriomeningitis)ウイルス汚染も,典型 的な事例と言える。

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 4.  2 動物実験における感染事故の原因

 ⑴ 感染動物実験

   実験動物に何らかの病原微生物を感染させる実験を行う頻度は,比較的低いと考えられ る。しかし,弱毒化あるいは無毒化した微生物を adjuvant として動物に接種したり,ヒ トの癌細胞を動物に接種して担癌動物を作製したりする実験では,感染動物実験と同様の 危険が伴う事を念頭に置かなければならない。

   感染実験に用いる病原体の人体に対する危険度については,微生物を用いた実験の項目 を参照の上,それと同様の注意を払って実験を行わなければならない。しかし,同じ病原 体であっても,用いられる動物種や接種経路が異なれば,病原体の増殖率や排出様式が異 なる場合がある事,動物体内での増殖によって人体に対する病原性が増強する場合がある 事など,in vitroの実験以上の注意を払わねばならない。in vitroの実験では,病原微生 物のヒトヘの感染,周辺への拡散の機会は実験操作時のみに限られるのが通常であるが,

感染動物実験では,病原体接種から実験終了まで日・週・月の単位の時間的経過が必要で あり,その間動物の給餌・給水・ケージ交換などの飼育作業を続けなければならない。従っ て,病原体が尿・糞・唾液などに排出されている場合,実験・飼育環境中には絶えず感染 性のエアロゾルが拡散している危険性がある。また,動物の解剖時には,血液・体液・臓 器中の増殖した病原体に実験者が接触する危険性が考慮されなければならない。更に,動 物による咬傷,引っかき傷や,注射器・メスなどによる創傷による感染の機会は動物実験 に特徴的な問題である。従って,感染事故発生の危険性は,通常のin vitroの実験よりも はるかに高いと考えるべきである。また,in vitroの実験では,病原体のヒトに対する危 険性を中心に考えればよいが,動物実験では,これに加えて他の実験動物に対する感染防 止も十分考慮されなければならない。

 ⑵ 実験動物からの人獣共通感染症病原体による感染

   実験に供される動物が,微生物学的に統御された場で生産され,厳重に品質管理されて おり,しかも,飼育環境も十分クリーンな状態に維持できれば,このような問題が発生す る危険率は十分に低くなる。しかし,現実には,conventional 動物を使用する機会も多く,

動物飼育環境も決してクリーンとは言えない状態であるため,実験動物がヒトに対して病 原性を有する微生物を保有している場合があり得る。特に,通常では動物に対して病原性 を発揮せずに潜在している病原体があるので,細心の注意を持って動物を扱う必要がある。

ラットにおける腎症候性出血熱(HFRS;hemorrhagic fever with renal syndrome;流行 性出血熱)ウイルス汚染は,これまで多くの大学の動物実験施設で深刻な問題を発生させ,

国立大学職員の死亡例まである事は,繰り返し報道されている。また,マウスやハムスター のリンパ球性脈絡髄膜炎(LMC;1ymphocytic choriomeningitis)ウイルス汚染も,典型 的な事例と言える。

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