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加盟店オーナーの概要とオーナーになった経緯

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 75-79)

第 4 章 中国の小売チェーンにおけるフランチャイズによる店舗網の展開に関する研究

5.3 フランチャイズ方式の導入と管理体制

5.3.1 加盟店オーナーの概要とオーナーになった経緯

省はともに商工業に従事する人々が多く,これらの地域の出身者らは中国で最も知名度が

高い商人集団の1つになっている.しかしながら,温州地域と山東省の事業者では事業戦略 や商習慣がかなり異なっているとされており(周・張,2013),同省には省内に本社を置く

地場の靴メーカーも複数存在している.このような条件があるにもかかわらず,同社は山東

省にて192店と比較的多くの店舗を有している.この店舗数は,省内に本部を持つ地場の靴 メーカーを凌ぐ数である(インターネットによる店舗数検索による).また,山東省では意

爾康の販売店のうちフランチャイズ方式による店舗が約 65%と高い比率を占めており,残

りの約35%は地域代理商が経営する直営店である(M2).そのため,温州地域に本社を置く

意爾康が,加盟店支援のノウハウや店舗展開の手法を,どのようにして展開しているのかと いう点を検討するために適切な対象地域の1つであると考えた.

ーたちの多くは90年代前半期に商売を始めているが,当時はまだ改革開放政策が軌道に乗 り始めたばかりの時期で物資が乏しかったため,商品を仕入れることができれば販売は容

易であったという.しかしながら1990年代後半期に入ると,山東省では経済発展にともな

い消費者の生活水準が向上し,日用品程度のものであれば市場に十分な量の商品が供給さ れるようになり,市場競争が激しくなっていった.その一方で製品に対する消費者のこだわ りも強くなり,ブランド品に対する関心も高くなっていった.そこで,同社を含むアパレル 企業では価格競争に巻き込まれることを避けてブランド力を高めるために,店舗網のチェ ーン化による全国展開を進める企業が増加していった.具体的には加盟店や直営店等によ り自社商品のみを扱う専門店を設立・拡大していった.

図9:意爾康の運営体制の概念図

意爾康は創業して間もない時期には,全国に存在する同郷の温州出身者の販売網を利用 して,全国各地で製品を販売していた.経営が安定した後は,これらの同郷の卸売業者との 取引を強化し,省や市レベルの販売を統括する地域代理商として契約を結び,同社のブラン ド使用や製品販売に関して大きな権限と責任を与えている.例えば,地域代理商は,管轄地

域内において本部に代わって同社の直営店を運営することも認められている39(図9). さらに,現在の商標名が採用された翌年に当たる1996年にはフランチャイズ方式を導入 する計画を公表し,参加するオーナーらを募りはじめた.2000 年頃から実際にその計画が 実施されると,店舗数の拡大が急速に進んでいった.前述したように同社は,他の紳士靴チ ェーン店の進出が少なかった地方都市や農村部での店舗展開に力を入れることで,市場で のシェアを急速に拡大していき,単一ブランドのチェーンとしては,中国最大のチェーンに まで発展していった.ここで注目したい点は,意爾康では同郷者による地域代理商を通じ て,フランチャイズ方式を導入する前から取引があった卸売・小売業者を勧誘して加盟店の オーナーになってもらったという点である.その他には,知人からの紹介で,既に開店して

いた同社の加盟店を引き継いで,事業に参入したというケースもある(N16).

このように同社が以前から取引があった卸売・小売業者を加盟店として組織化する戦略 を採った背景としては以下の点が挙げられる.意爾康本部側からみると,各販売店を同社製 品のみを扱う加盟店として組織化することは安定した販売網を確保すると同時に,製品の ブランド力を高めるために大きなメリットがあったと考えられる.同社では,この方針を徹

39 同社では本部が運営する直営店は,本部がある浙江省内等の一部地域に限られているという(M1)

底させるために,違反した加盟店には厳しい罰則を設けると共に,方針に従う加盟店には手 厚い支援を行うようになった.具体的には,他社製品を扱う店舗が見つかった場合には,オ ーナーに対して警告し,改善がみられない場合は契約を取り消すことや,オーナーらに対し て行ってきた経済的支援を削減することもあったという(M4).実際にオーナーらへのイン タビュー調査でも,他社製品を取り扱っていたため注意を受けたり,本社から受けていた経

済的支援が削減されたり注意を受けたことがあったという(N1,N2).

これに対して,オーナー側からみても,他のマイナーなブランドを複数扱うよりは,ある 程度ブランド力のある特定のメーカーの製品のみを扱う専門店になった方が,店舗の外観 や設備を高級化すること等で販売単価や利益率を高められるというメリットがあった.そ こで,いくつかあった国内の大手ブランドの中でも,当時既に取引があった意爾康の加盟店 を営むことにしたという.またオーナーらにとって,同社との契約は多くの指導料(ロイヤ リティ)を徴収される先進国のフランチャイズ・チェーンに比べると,指導料の負担がない ため,参加する際の心理的障壁が低かった点も挙げられる.

ただし,特定のブランドの製品だけを扱うフランチャイズ契約を結ぶことには,販売でき る商品の選択肢が減るというデメリットも存在している.オーナーの中には,意爾康の製品 のみを扱うよりは,複数のブランドの製品を扱った方が品揃えも良くなり,顧客が他社製品

と比較検討できるため,有利であると考える人もいた.例えばN5の場合は,当初は他のブ ランドも扱う一般的な小売店として 2 年間ほど同社の製品を扱った後に,同社とフランチ

ャイズ契約を結ぶことにしたという.N1,6,13,17も同様に当初はフランチャイズ契約を 結ぶことに消極的であった.しかし,1990 年代後半の時期には他の著名ブランドも相次い

で意爾康と同様にフランチャイズ方式を導入していったため,オーナーらも,いずれかの大 手チェーンの加盟店になるか,フランチャイズ方式を導入していないブランドを複数取り 扱うかという選択肢のうち,結果的に意爾康の加盟店になることを選択したというのが実 状であった.

その一方で,フランチャイズ契約を結ぶことは,契約締結時やその後に本部との交渉を行 う際に,オーナー側にとって有利な契約条件を得られやすいという側面もあった.実際に意 爾康では,卸売・小売業者らを自社の加盟店オーナーとして取り込むために,フランチャイ ズ契約を行う際の条件を,オーナーらが契約を結びやすい緩やかなものにしている.山東省

の場合は,①契約期間は一般的なフランチャイズ契約よりも短く 1 年ごとに更新していく 形式になっている点,②契約に際してオーナー側が支払う保証金の金額を1 万元と低めに

設定し,契約違反等がなければ,契約期間を終えた後に全額を返還する点,が挙げられる

(意爾康地域代理商とN5 の契約書の内容による).加えて,Ⅳで述べるように,加盟店オ ーナーに対する様々な支援も行っている.その一方で同社では,加盟店オーナーに対して販 売目標等の面では厳しいノルマを設定することで,同社製品の売上高を拡大していった.

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