第 4 章 中国の小売チェーンにおけるフランチャイズによる店舗網の展開に関する研究
4.4 おわりに
ーナーからの抗議や離反を招き,加盟店数は減少していった.それに加えて,当初の予定と は異なり,加盟店の減少分を直営店で代替することはできなかった.さらに,加盟店オーナ ーから消費者ニーズを汲み上げることができなくなったこともあり,直営店を含めた同社 全体の店舗数や利益は減少している.
残る 1 社である百麗は,元々直営店を中心とした店舗展開により靴小売チェーンの中で 最多の店舗数と売上高を有するチェーンであり,グループ全体の売上高をみれば,現在でも その地位を維持している.しかし近年では,同社では自社で生産した製品よりも,〔ナイキ〕
や〔アディダス〕といった海外の有名スポーツブランド製品の代理店での販売額が,売上高 や営業利益の多くを占める状況になりつつある.同社が主に直営店方式で店舗展開を進め ることができた要因として,自社製品が主力であった時期でも海外スポーツブランドが主 力になった時期でも,販売する製品自体に高い商品力・ブランド力があったことが背景にあ る可能性が考えられる.
以上の分析結果をまとめると,対象企業では,①フランチャイズ方式から直営方式への移 行をスムーズに実施できたチェーンはみられないこと,②直営店方式で店舗網の拡大に成 功しているのは,海外有名ブランドの代理店事業等により,他のチェーンとの製品の差別化
に成功している企業のみであること,が指摘できる.
中国において,付加価値の高い製品やサービスを持つ企業には直営店方式は有効である が,軽工業や飲食業等に多く見られるような,製品やサービスの開発能力や技術力で他社と の差別化が図りにくい企業にとっては,フランチャイズ方式は依然として大きな役割を果 たしていると考えられる.特に急速に経済状況が変化している中小規模都市や農村部に進
出する際には,消費者の嗜好やニーズを見極めることのできる代理商や加盟店オーナーに,
出店する地域や販売する商品の選択を委ねざるを得ない状況があると考えられる.
一方,加盟店オーナーの立場からみると,賃金水準の低い被雇用者として雇われるよりも,
チェーンの加盟店という形で独立した業者として事業を営むことで,ある程度高い収入を 得ることが可能になる.このような背景があることに加え,本部が販売奨励金等を与える等 の施策を実施することで,加盟店オーナーの販売意欲がさらに高まり,不良在庫の消化がス ムーズに行われている企業の事例もみられた.その一方で本稿では,フランチャイズ方式を 縮小,あるいは廃止しようとするチェーンも存在していることが明らかになった.
一方,中国においてフランチャイズ方式を採用する企業が具体的にどのように上記の代 理商や加盟店オーナーを管理し,どのような問題点を存在しているのかを分析することが 必要になってくる.次章では,この課題を検討する.