(1)副校長・教頭の職務
副校長・教頭の職務に関しては、学校教育法で次のように規定している。
これにより、副校長と教頭の職務は、図1のように表すことができる。
図1 副校長と教頭の職務
① 副校長の職務
図1のように、副校長は、教頭と同様に、上司の補佐機能と代理・代行機能がある。しか し、教頭が校務を整理する機能にとどまるのに対して、副校長には「命を受けて校務をつか さどる」機能がある。
ア 校長を助ける
「校長を助ける」とは、校長を補佐することであり、このことを法律で規定している意味 は、副校長・教頭の職務の範囲が校長の職務の全体に及ぶということである。校長の職務は、
「校務をつかさどり、所属職員を監督する」ことであるから、副校長・教頭の職務は、学校 の業務全般の処理はもちろん、所属職員の監督にも及ぶことになる。
<学校教育法第37条第5項>
副校長は、校長を助け、命を受けて校務をつかさどる。
<学校教育法第37条第6項>
副校長は、校長に事故があるときはその職務を代理し、校長が欠けたときはその職務を行 う。この場合において、副校長が二人以上あるときは、あらかじめ校長が定めた順序で、そ の職務を代理し、又は行う。
<学校教育法第37条第7項>
教頭は、校長(副校長を置く小学校にあっては、校長及び副校長)を助け、校務を整理し、
及び必要に応じ児童の教育をつかさどる。
<学校教育法第37条第8項>
教頭は、校長(副校長を置く小学校にあっては、校長及び副校長)に事故があるときはその 職務を代理し、校長(副校長を置く小学校にあっては、校長及び副校長)が欠けたときは校長 の職務を行う。この場合において、教頭が二人以上あるときは、あらかじめ校長が定めた順序 で、校長の職務を代理し、又は行う。
(※同法第49条により、第37条の規定は、中学校に準用される。)
副校長
校長の補佐
校長の代理・代行 命を受けて 校務をつかさどる
教頭
校長(副校長)の補佐
校務の整理
児童生徒の教育
校長(副校長)の代理・代行
「校長を助ける」ことにおいて、留意すべきことは、校長に力を貸し、危難を免れさせた り、校長の職務がよりよく遂行できるように導くことである。簡潔に表現すれば「助言」「進 言」「助力」をすることである。そのために、学校全体の動き、教職員の状態、各分掌の進 み方等に目を配りながら、校長の意を体して、重点目標や経営の重点等が各教職員に十分に 理解され、実施されるように、主体的に働きかけることが大切である。また、学校全体の様 子や教職員の活動状況を適切に把握しながら、校長に資料等の情報を提供し、校長が適切な 判断を下すことができるようにしていくことも大切なことである。特に、副校長は、学校経 営要綱に示された内容の実現に向けて、主体的、積極的に関わることが求められる。
イ 校務をつかさどる
校長がつかさどる「校務」とは、一般的に
○ 運営管理 ○ 物的管理 ○ 人的管理
の3つに整理できる。なお、「つかさどる」とは、公の機関やその職員が、職務として一定 の事務を担当することであり、管理するという意味合いも込められている。したがって、校 長を補佐する職務を有する副校長は、この校務の一部を、校長の命を受け、管理することに なる。
これまでの学校運営においては、教頭が整理した校務の決裁を校長が行っていたが、副校 長に命じられた校務については、教頭が整理した校務を副校長が決裁することになる。
副校長がつかさどる校務とは、例えば、次のような事項である。
(例)・ 教職員の服務管理 ・ 一定の学校行事の承認 ・ 一定の補助教材の設定
・ 一定額以下の予算の執行 ・ 契約の締結 ・ 授業時間割の臨時変更
・ 事務処理に伴う調査の実施 等
ウ 校長に事故があるときはその職務を代理し、校長が欠けたときはその職務を行う
※ 内容については「② 教頭の職務」エの項目参照
② 教頭の職務
ア 校長・副校長を助ける
副校長の職務の項で述べたことと同様の職務が教頭にも求められる。例えば、次のような ことが考えられる。
○ 校長の校務全般にわたる提案・具申
○ 校長の学校経営上必要な資料・情報等の準備・提供
○ 校長の経営方針の、教職員への周知徹底
○ 教職員の意向・要望の収集及び校長への情報提供
また、副校長を助ける上でも、副校長に決裁が委ねられている事項についても、主体的、
積極的に情報提供や助言、進言、助力を行うことが大切である。
校長・副校長を助ける上での留意点は、次のようなことである
○ 校長の学校経営のための意思決定に必要な情報を、正確かつ迅速につかみ、校長や副 校長に報告すること。
○ 校長の意図を教職員に理解させ、校長の学校経営を円滑にすること。
○ 学校運営上の問題点、阻害事項を的確に把握し、その解消に努めること。
○ 学校内のすべての状況を把握し、統合しながら現時点だけでなく、将来の展望のもと
に企画・立案し、実践していくこと。
イ 校務を整理する
「校務」とは学校運営上必要な全ての事務を指している。学校教育の管理、所属職員の管 理、学校施設の管理、学校事務の管理等が考えられる。したがって、教頭は学校運営上必要な
全ての事務を補佐することになる。
具体的な内容としては、次のようなことがある。
○ 組織、運営に関すること
・ 諸会議の企画、立案 ・ 公文書などの処理 ・ 教職員の服務に関する事項等
○ 研修、研究に関すること
・ 主任との連携による企画、立案、運営 ・ 教職員の校外研修計画等
○ 予算経理に関すること
・ 校内の施設、設備の管理 ・ 学校予算の編成や執行に関する事項等
○ 渉外に関すること
・ PTA関係、地域の行事との連絡調整 ・ 学校施設の目的外利用に関する事項等
教頭は、全ての校務に関与しているが、関与の仕方として「教頭自身が直接関与する内容」
「教務主任、事務職員等と連携して関与する内容」「他に任せ、助言する程度の内容」があ る。
これらの「校務」を「整理する」とは、学校運営について、校長を補佐するため、総合的 な調整機能を果たすことを意味する。学校は、校務分掌として多くの部門に分かれて仕事を している。教頭は、これらの部門の仕事の調整を図り、校務が円滑に遂行されるようにしな ければならない。さらに、校長が意思決定をするために、最終決定の前に、問題点を吟味し、
校内の意見を取りまとめ、解決策を用意するなど、必要な資料や情報を提供したり、意見を 具申したりすることが大切である。
ウ 必要に応じて児童生徒の教育をつかさどる
教諭の休暇や研修等において欠ける学級の授業に対処するために、教頭自らが児童生徒の 教育を行うことができる。
エ 校長に事故があるときはその職務を代理し、校長が欠けたときはその職務を行う
「校長に事故があるとき」とは、校長が長期又は遠隔の旅行、病気その他何らかの事由で その職務を、校長自らが行い得ない場合を言う。個々の具体的な事柄においては、県教育委 員会の一般的な指示のもとに、市町村教育委員会が判断していくことになる。
また、「校長が欠けたとき」とは、校長が死亡したり、退職・転任したり、失職したりなど して後任の校長が発令されず、校長が欠員になっている場合をいう。「校長の職務を行う」と は、教頭の名において校長の職務を行うことである。
(2)副校長・教頭に求められる資質・能力
① 重点目標及びその達成のための具体的方策を各担当や各教室まで届ける組織・運営力 副校長・教頭は、学校が組織体として「学校力」を発揮するよう努めることが大切である。
そのために、年度の重点目標及びその達成のための具体的方策が校務分掌の各担当や各教室で 授業を実施する担任または教科担当者に周知され、日々の教育活動において反映されるよう組織・
運営を充実させる必要がある。
学校には、校務分掌組織という全体を示す組織図があるが、詳細に見れば中小の組織体が組み 合わさった集合体である。そして、それぞれの組織が教育活動の充実に向け機能している。副校 長や教頭はこれらの組織が年度の重点達成に向けて機能するよう指導、助言する役割を任されて いる。
また、これらの組織ではそれぞれに運営(PDCA)がなされており、副校長・教頭はそれぞ れの進捗状況を常に把握し、必要に応じて指導、助言することが重要である。
このような組織・運営力が発揮されることによって、教職員が共通の目標に向かって日常的協 働的に努力し、「学校力」が発揮される。
② カリキュラム・マネジメントに関するリーダーシップ
副校長・教頭は、校長の方針の下に、校務分掌に基づき教職員が適切に役割を分担しつつ、相 互に連携しながら、各学校の特色を生かしたカリキュラム・マネジメントを行うよう努める必要 がある。カリキュラム・マネジメントとは、学校教育に関わる様々な取組を、教育課程を中心に 据えながら組織的かつ計画的に実施し、教育活動の質の向上につなげていくことであり、カリキ ュラム・マネジメントを効果的に進めるためには、教育課程経営の状況を常に把握し、主幹教諭、
教務主任と連絡調整を図ることが大切である。
例えば、教育課程については主幹教諭、教務主任が、予算・経理については学校事務職員が、
その他の領域においては各主任や校務分掌担当者が実務に当たるが、副校長・教頭は「全校的な 観点からの調整」「管理者としての調整」が求められる。
そこで、カリキュラム・マネジメントに関するリーダーシップを発揮するためにも、次のよう なことが大切である。
○ 児童生徒や学校、地域の実態を適切に把握し、教育の目的や目標の実現に必要な教育の内 容等を教科等横断的な視点で組み立てていくこと
○ 教育課程の実施状況を評価してその改善を図っていくこと
○ 教育課程の実施に必要な人的又は物的な体制を確保するとともにその改善を図っていく こと
③ 教職員の指導力育成に関するリーダーシップ
学校の教育目標達成に向けて、教育活動が最適に展開され、校務が円滑に進むためには、
教職員一人一人の教育者としての資質、能力が高まることが重要である。そのために、副校 長・教頭は、教職員のよき相談相手であり、よき指導助言者であるべきである。
特に、教育活動の充実のために、副校長・教頭として、次のようなことが大切である。
○ 教科指導に関して、当該校の重点目標達成のための進捗状況を把握すること。
○ 児童生徒の実態を把握、分析し、当該校の課題を明確にすること。
○ 授業観察を通して、教職員の特性を見極め、努力を認めること。
○ 教職員自身が自己の課題を把握し、ライフステージに応じた研究・研修の計画を立案できる ように、教職員育成指標、自己評価等を活用した職能成長を進めること。
○ 校内において、OJTが実現できるように、創意工夫すること。