第 6 章 質点系・剛体 51
6.3 剛体
質点が集まった系というのは実の世の中のほとんどの物を指す。気体も液体も固 体もそうである。このうち、固体のように各質点の相対的な距離が不変な物を剛体 とよぶ。
質点の場合、位置を表すには3N の変数が必要であった。剛体の場合は剛体の一 点P1がどこにあるかを指定するのに3個、もう一つの点P2がどの方向を向いてい るのか指定するのに変数が2個、さらにP1P2を結ぶ直線の周りに何度回せばよいか を指定するのに1個で、合計たったの6個の変数を指定すればよい。これは大変な 簡単化である。
6.3.1 剛体の運動方程式
剛体は質点から出来ているがこれらは強固に固定されている。この固定の原因は 質点間の相互作用である。これは作用・反作用の法則を満たすので、
P˙ =F , L˙ =N (6.16)
が成立する。これは6個の方程式なので、先に述べた6個の変数がすべて決まる。
6.3.2 固定軸のまわりの回転
簡単な場合として軸が固定されている場合を考えよう。この回転軸をz方向にと ると、
L˙z =Nz (6.17)
となる。
Lz =
i
(ri×mir˙i)z (6.18) なので
ri =rizez+ri⊥e⊥i (6.19) r˙i =ri⊥θ˙ieθi (6.20) より
Lz =ω
i
mir⊥2i (6.21)
が得られる。そこで慣性モーメント Iz =
i
mir⊥2i (6.22)
第6章 質点系・剛体 54 とおくと、
Lz =Izω (6.23)
Izdω
dt =Nz (6.24)
となる。
回転の運動エネルギーはどうなるか?運動エネルギーは T = 1
2
i
mir˙i
となる。(6.20)よりこれは
T = 1 2
i
mir⊥2iθ˙= 1
2Iω2 (6.25)
となる。
このように剛体の場合、通常の質点の場合と以下のような対応関係がある。
質点 剛体 質量 m Iz
速度 v ω
加速度 α ω˙ 運動エネルギー mv2/2 Iω2/2
Problem 6.1 スケート選手が回転中、手を縮めると回転が速くなる。なぜか?
6.3.3 慣性モーメントの性質
ここで慣性モーメントのいくつかの性質を考えよう。
1.
I =IG+M d2 (6.26)
ここでIGは重心を通るある軸の周りの慣性モーメントで、Iはそれと平行に dだけ離れた軸の周りの慣性モーメントである。なぜならばxi, yiを重心から 測った座標として
I =
i
mi[(xG+xi)2+ (yG+yi)2]
= M(x2G+yG2) +
i
2mi(xGxi+yGyi) +
i
mi(x2i +yi2)
= M d2+IG
第6章 質点系・剛体 55 であるから。
慣性質量が動かしづらさを表していたように、慣性モーメントは回りにくさを 表している。つまり重心を通る軸が一番回しやすいということがわかる。
2. 薄い板の場合
Iz =
i
(x2i +yi2)mi (6.27) Ix =
i
yi2mi (6.28)
Iy =
i
x2imi (6.29)
となるので、
Iz =Ix+Iy (6.30)
である。
Problem 6.2 質量M、長さlの細い一様な棒の中心を通り、これに垂直な軸の回 りの慣性モーメントは?
Problem 6.3 円板の中心を通る軸(2種類ある)のそれぞれのまわりの慣性モー
メントは?
Problem 6.4 球の中心を通る軸の周りの慣性モーメントは?これより地球の慣性
モーメントを求めよ。
Problem 6.5 2原子分子の運動エネルギーを慣性モーメントを使って表せ。
6.3.4 実体振り子
剛体の軸を固定して軸を地面に平行にして微小振動をさせる。このとき(6.24)より Id2θ
dt2 =−M ghsinθ (6.31)
となる。振れ角が小さいとすると周期は T = 2π
I
M gh (6.32)
となる。I =IG+M h2なので T = 2π
IG+M h2 M gh = 2π
h g
1 + IG M h2
(6.33)
第6章 質点系・剛体 56 となる。このように単なる振り子の場合の2π
h/g よりも周期が延びることがわか る。つまり振り子の長さが
h→ I M h =h
1 + IG M h2
(6.34) と実効的になるわけである。
Problem 6.6 周期が一番短くなるのはどのような場合か?