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対象:一般成人 レベル:初級終了〜中級へ入る前 類別:文法・読解 使用時間目安:40 〜 60 時間 目標:初級教材を終了(約300時間)したあと、中級へスムーズに移行できるように必要な文法項目を学習し、

   読む力、書く力をつける。

構成:全 10 課…本文のテーマ「ファストフード」「地震」「最近の子ども」「日本のイメージ」など    巻末に「漢字練習」、「本文(ルビなし)」を収録。

各課の構成:話しましょう、本文、ことば・ことばの練習・QA、学習項目、学習項目の練習、

      チェックシート、聴解タスクシート、作文

 初級から中級へのスムーズな移行を目標とした教材です。各課

250

300字程度の読

み物を読み、中級への足がかりとなる文法項目を練習し、併せてテーマについてまとまっ た文を書く力をつけていくことを目指しています。

 N4レベル以上の漢字を巻末の「漢字練習」で取り上げています。本文に登場する漢字と、

その関連語の漢字練習を行い、本文をルビなしで読めることを目指して作成されました。各課 の新出漢字は10 〜

20字程度です。また、「学習項目」の語法や文型についての簡単な説明部

分と、別冊の「ことばの訳」に4か国語(英語・中国語・韓国語・ベトナム語)の翻訳がつい ています。第2版では、本文、文型、語彙を見直し、より使いやすくなるよう改訂しました。

[無料補助教材]教える際の注意点、手順、発展練習の例などを課ごとに

         簡潔に提示した「教師用ガイド」

         

http://www.3anet.co.jp/ja/5535/

コースデザイン

ひとくちメモ

初中級レベルの作文指導

  -『中級へ行こう 日本語の文型と表現59』を使って-

東京語文学院日本語センター 専任講師

川崎香織

 私が教えている日本語学校では『中級へ行こう 日本語の文型と表現 59』を使った授業の中で、作 文指導にも力を入れています。大学や専門学校の入試では、自分の意見や状況を論理的に説明するよう な作文が求められますが、作文に苦手意識を持つ学生が少なくありません。そこで、『中級へ行こう』

の課末の作文を利用し、丁寧に時間をかけて指導することにしました。

 この授業では、書く順番(全体の構成)の理解と、段落ごとにどんなことを書けば作文になるのかを 知ること、短くても関連のあるまとまった文章を書くことを目的としました。 

 各課の授業の流れは  ① 文型導入

 ② トビラのページで課のテーマについて話す  ③ 新しいことば・表現の導入

 ④ 本文読み  ⑤ QA  ⑥ 作文

と、ほぼ教科書の内容の順番通りにすすめ、最後の作文を丁寧に行っていきます。教科書 1 冊(全 10 課)に使う時間はだいたい 1 課に 6 時間、全 30 回程度となります。

 作文の授業は、以下のようにすすめました。

 ① トビラの話題や本文を踏まえて、テーマを確認する。

 ② 第一段落と関連付けながら、教科書の指示や質問をヒントに意見を出し合う。

 ③ 全体を踏まえて、テーマについての感想を考える。

 ④ 実際に作文を書く。教師が個別にアドバイスをしながら書き進められるようにしました。

   一回目の授業では原稿用紙の使い方も確認しました。

 課末の作文は教科書にある質問や指示をヒントに書くようになっていますが、作文が苦手な学生に とっては、これだけでは書き進めることができませんでした。そこでこの教科書の各課のテーマについ て、段落や書く順番を意識した細かい質問を作りました。以下は 2 課(テーマ「災害」地震、台風、洪 水、大雨、大雪など)の例です。

質問票の例: 

 1)あなたの国には、どんな災害がありますか。

 2)あなたは、どうですか。

   ① 災害を経験したことがありますか。

   ② どんな災害でしたか。どんな気持ちでしたか。

   ③ 災害のとき、どうしましたか。

   ④ 災害のあと、どうでしたか。

 3)災害について、どう思いますか。

 教科書の 2 課は以下のようになっています。おそらく作 文を苦手としない学習者は教科書にあるヒントで十分にま とまった文章が書けると思います。

 作文指導の授業では、初めに質問票を利用し、書く順番

(全体の構成)を確認し、段落ごとに口頭で意見を出し合 うなどして書く内容を意識させました。ポイントとなるの は、この質問票のナンバリングです。

2 課の質問票の例をご覧ください。

1)2)3)は段落を表しています。

2 課の例の場合、1)は第一段落となり、テーマの提示を することになります。

2)は第二段落となり、自分のテーマに関する説明です。

2)の①〜④が書く内容のヒントになる質問です。できる だけ考える流れに沿うように並べました。

3)の第三段落は全体のまとめになっています。全体のま とめであることを意識させるとうまくいきました。

 上記の指導をしない場合、初めに台風の話を書き、第三段落では洪水の感想を書くなど災害の羅列と なることもありました。課によっては学生に提示するテーマも工夫しました。例えば 2 課では「地震」

の経験がない学生もおり、自国での災害につなげました。また 6 課「発明」では「わたしの国で発明さ れたもの」が作文のテーマとして提示されていますが、自国で発明されたものが思い当たらない学習者 もおり、このときは「世界にある、すごいと思う発明」について書かせるようにしました。

 学生は 10 回の作文を通して、各テーマについて考察し、一貫性のある文を書く経験を積み上げてい きます。この段階では単純でやさしい内容です。しかし、出来の良し悪しはあっても、まずは、構成の ある文章を「書けた」という経験を得ることが、学生にも教員にも大きな喜びだったように思います。

 6 課以降は日本留学試験を意識して四段落構成にしました。5 課までに三段落構成で練習を重ねてい たためか、四段落構成への移行はスムーズだったように思います。

 今回のこの授業は、日本語を学ぶ学生たちにとってなにが大変で、教える教師は何をすべきなのかを 見直す良い機会ともなりました。この作文指導が、近い将来彼ら学生にとっての成果になることを心か ら願い、授業も工夫し、見直しながら行っていきたいと思います。

*こちらは『中級へ行こう 日本語の文型と表現59』(初版)を使った授業例です。

 当社ウェブサイト「特別連載 日本語教科書活用講座26」より一部を改変して掲載しています。

平井悦子 三輪さち子 

[著]