第 3 章 関連研究
3.3 分散制御システム
集中制御システムで生じる問題の解決策の1つとして,分散制御システムの導入が挙げ られる.分散制御システムとは,図3.9のように,システム全体が複数のプロセッサから 構成されており,そのプロセッサ間で互いに通信を行いながらシステム全体の制御を行う システムのことである.この際,各プロセッサは自身の管理下のセンサやアクチュエータ などを独立して制御を行う.
代表的なロボットとして,ASIMO(本田技研工業) [Sakagamiet al. 02],HERMES(ドイ
3. 関連研究 3.3. 分散制御システム
Simulation Scheduler Collision
Detector
V-HRP Controller Script
Auditor
Controller main routine (hrpsys)
Plugin Plugin
Plugin Plugin
Output Motor Command Input Sensory Information Model
Loader Dynamics Pattern
Generator
Online Viewer
Simulation Adaptor
Real robot Adaptor Robot I/O library
ORB ORB
cyclic
٨ ٨
図 3.8: HRPのソフトウェア構成
ツBundeswehr大学)[R.Bischoff et al. 99],SmartPal(安川電機)[株式会社安川電機],トヨ タパートナーロボット(トヨタ自動車)[トヨタ自動車株式会社],QRIO(ソニー)[Ishida 04],
EMIEW(日立)[Hosoda et al. 06],HRP-3(産業総合研究所)[Akachi et al. 05]などが挙げら れる.以下では,分散制御システムの代表例としてASIMO,HERMESを取り上げて,分 散制御システムの情報処理能力,要素技術のシステム統合化技術の2点に関する利点・欠 点を明らかにする.
3.3.1 ASIMO
ASIMO[Sakagami et al. 02]は本田技研工業で研究,開発されている34自由度の全身型 ヒューマノイドロボットである.
ASIMOの情報処理システムは,図3.10に示すように,音源定位用,フレームグラバ用,
画像処理用,音声認識・音声合成用,ロボット制御・プランニング用,外部サーバアクセ ス用の複数のプロセッサから構成する.また,ASIMOの情報処理システムのプロセッサ 間通信は,画像処理などの大容量転送を行う通信にはPCIを,行動計画・動作実行を行う 通信にはEthernetを用いている.
特に注目すべきは,各アクチュエータが小型プロセッサを備え,その小型プロセッサ同 士がリアルタイム通信規格であるアークネット[ARC]を用いて体内LANを構築している 点である.このような形態の分散制御システムを導入することで,情報処理システムは,
細粒度のリアルタイム処理でアクチュエータを制御できる,アクチュエータ関係の配線を 省配線化ができる,メンテナンスや信頼性を向上できるなどの利点がある.また,画像処 理,音声処理等の機能毎にプロセッサを割り当て,並列処理することで,高度な環境認識・
3. 関連研究 3.3. 分散制御システム
Distributed Control System
Communication Line
Communication Line Signal Line Controller
Signal Line Controller
図 3.9: 分散制御システム
行動計画が,実現可能である.しかしながら,ASIMOが搭載する情報処理システムでは,
アーム制御,歩行制御,画像処理,音声処理などを含めたロボット全体の行動計画を1つ のプロセッサで集中的に処理している.そのため,システム全体の能力は,このプロセッ サの情報処理能力に依存してしまう恐れがある.
ASIMOは制御用OSとしてVxWorks[Wind River Systems]を使用している.VxWorsks は組込分野では大きなシェアを占めており,ロボット分野でも多くのシステムで採用され ている.
ASIMOは,要素技術をシステム統合化する技術として,Behavior-based Architecture
[Arkin 98]の概念に基づいた分散エージェント指向アーキテクチャに基づいた図3.11に示
す階層化したソフトウェアプラットフォームを提唱している.
3.3.2 HERMES
HERMES[R.Bischoff et al. 99]はドイツBundeswehr大学で開発された22自由度の車輪 移動式の上半身型ヒューマノイドである.HERMESは,屋内での運搬と対話などの対人 サービスの研究のプラットフォームとして開発されている.
HERMESの情報処理システムは,図3.12に示すように,1つの汎用プロセッサ,5つの
3. 関連研究 3.3. 分散制御システム
Microphone Speaker Camera
Ethernet
PCI Bus PCI Bus RS232c
Actuator Processor Processor
for Vision
Processor for Communication
Processor for Voice
Processor for Motor Control Frame Grabber Sound(DSP)
Sensor
図 3.10: ASIMOの電気・電子ハードウェア構成
DSP(TI社製TMS320C40)がリアルタイム通信規格であるCANバスを介して接続する構
成である.また,ASIMOの情報処理システムと同様に,各アクチュエータが小型プロセッ サを備え,その小型プロセッサ同士がCANバスを用いて体内LANを構築している点であ る.特に注目すべきは,HERMESの全身のアクチュエータは,小型プロセッサ,CANコ ントローラ,センサを備えたドライブモジュールとして,機械構造,電気・電子ハードウェ ア,ソフトウェアをモジュール化している点である.このドライブモジュールはモジュー
ル間でPlug-and-Playが可能であり,システムのメンテナンスや再構成が可能である点で
他のロボットよりも優れている.
しかしながら,HERMESの情報処理システムもASIMOと同様に1つのプロセッサでロ ボット全体の行動計画を処理している点が問題として挙げられる.
HERMESは,要素技術をシステム統合化する技術として,図3.13に示すSituation-oriented Architectureを提唱している.ソフトウェア構成のコアはBehavior-based Architectureに 基づいたSituation Assessment & Behavior Selection Moduleである.このソフトウェアモ ジュールは,タスクを実行するためのサブタスク実行の結果とタスク実行に関する知識を もとに,現在のsituationを評価し,次の行動を生成・実行する.プランニングの際に必要 なセンサ,アクチュエータ,マンマシーンインタフェース,知識データベースへのアクセ スのためにデバイスの抽象化を行っている.図3.13中のSensorimotor Skillsのようにネッ トワーク内の全てのデバイス同士がSituation Assessment & Behavior Selection Moduleか らの命令なしに協調できる機構を導入することで,行動の幅や性能がより向上すると考え られる.
3. 関連研究 3.4. 本章のまとめ
Command by Gesture Interact with Human Make Gesture with Talking
Dialogue
Interaction Manager 2D
Gesture 3D Gesture
Face Recognition
Voice Recognition Extract
Moving Object
Face Detection
Sound Source Detection
Camera Microphone
Control of Arm, Hand
Control of Head (Eye) Application
Planning Identifiable Level
Processing Intermediate Level
Processing Low Level Processing
図 3.11: ASIMOのソフトウェア構成
Processor for Data Server CAN Bus
DSP
for Control CAN Controller Processor
for Motor Control
DSP for Sound Microphone Speaker DSP for Vision Camera
Actuator Processor Sensor
図 3.12: HERMESの電気・電子ハードウェア構成