第 3 章 関連研究
5.2 システム再構成機構
5.2.1 システム再構成機構とは
この節では,現在のヒューマノイドロボットが抱えている問題の解決につながると考え られるシステム再構成機構について述べ,ヒューマノイドロボットに適応できるかどうか 検討を行なう.
システム再構成機構とは,システムが動作しながらにして,そのシステムを構成する電 気・電子ハードウェアおよびそれに伴うソフトウェアを部分的に,環境や用途に応じて自 由に変更可能とする機構のことである.この機構は,コンピュータの分野において,USB [USB]やIEEE1394 [Association ]などの規格に対応した周辺機器をコンピュータに挿すだ けでシステムがそれを自動認識して使えるようにする「Plug-and-Play」や,またそれを電 源が入った状態で可能とする「Hot Plug」としてよく知られる.システムの拡張性や柔軟 性,ユーザに対する利便性の向上などの理由から,この機構はパーソナルコンピュータに限 らずニーズは高い.システム再構成機構の考え方は,未知の環境あるいは動的に変化する 環境に柔軟に対応しながら,継続した動作や作業を行うことが求められる惑星探査ロボッ トやレスキューロボットなどで既に採用されている.以下では,実用化レベル,研究レベ ルのシステム再構成機構の例を挙げ,その特徴と技術的課題を明らかにする.
5. 提案・設計方針 5.2. システム再構成機構
表 5.1: Plug-and-Playに必要な条件 対応に必要なもの 条件 説明
電気・電子ハード ウェア
機械的,電気的に 接続できること
コネクタの機械的な形状の規定や,信号電 位,タイミング,ハードウェアプロトコルな ど電気的な規定が必要である
電気・電子ハード ウェアor OS
接続の有無が判別 できること,分離 できること
機械構造,電気的な方法,ソフトウェアに より,接続/分離の有無を判別できることが 必要である.
電気・電子ハード ウェアand OS
何が接続されてい るか識別できるこ と
複数の識別子を用いて,システムへ接続さ れているデバイスを一意に識別する方法が 必要である
電気・電子ハード ウェアand OS
必要な情報につい て規定されている こと
接続されている機種に依存する必要情報の 内容の規定と,必要な情報を取りだす方法
(プロトコル)が必要である
OS リソースの割り当 てができること
接続機器にリソースが必要な場合,既存リ ソースと衝突しないように割り当てること が必要となる
OS デバイスドライバ の割り当てができ ること
接続された機器に対して必要なデバイスド ライバを自動的に見つけることが必要であ る.デバイスドライバと割り当てリソース が一致し,デバイスドライバが動作可能で なくてはならない
5.2.2 Plug-and-Play
システム再構成機構を実現した例として,Plug-and-Playがある.Plug-and-Playとは,
コンピュータの分野における周辺機器を拡張する際の自動コンフィギュレーション機能のこ とを指す.ユーザが電気・電子ハードウェアを挿す(Plug)だけで使用可能(Play)とすると いう機構である.この概念はそもそもMicrosoft社とIntel社により提案され,Windows95 で初めて導入された.Plug-and-Playは,拡張デバイスのためのI/Oアドレス,拡張メモ リ,割り込みチャネル,DMAチャネルなどのデバイスを管理する機構である.対象とし てはISAバスやPCIバス等数多くのバスインタフェースが含まれる.文献[ISA94]では,
Plug-and-Playを実現するためにシステムが備えなければならない条件を表5.1のようにま
とめている.表からも容易に推察できるように,Plug-and-Playを実現するためには電気・
電子ハードウェア及びソフトウェア両面からのサポートが必要である.そしてこのような Plug-and-PlayやHot Plugはその利便性から利用される領域が拡大している.
5. 提案・設計方針 5.2. システム再構成機構
5.2.3 モジュールロボット
Plug-and-Playの概念をロボットへ適応した,モジュールロボットというロボット技術が
ある.このモジュールロボットとは,「モジュール」と呼ばれるサブシステムの結合からな るロボットであり,周囲の環境に合わせてその機能や形態を変化させながら,その環境に 応じた移動方法や作業方法を行うことができるロボットの総称である.更に,モジュール ロボットは,物理的にもモジュール毎に着脱を容易な構造にすることによって,モジュール 単位での再利用や交換が可能になり,故障や仕様変更,システム拡張に対して柔軟に,低 コストで対応できる利点がある.
モジュールロボットに関する研究は次の2種類に大別することができる.1種類目は,シ ステムを構成するモジュールは基本的に一種類,あるいはあっても数種類で,非常に単純 な機能しか備えておらず,これらを多数接続することで,複雑な形態や動作を可能にする ロボットである.その代表的なロボットとして,M-TRAN [Kamimura et al. 01],Cebot [Kawauchiet al. 94],CONRO [Castano et al. 00],PolyBot [Yimet al. 00]が挙げられる.
2種類目は,システムを構成する各モジュールはロボットを構成するある機能を備えてお り,モジュールの追加や交換によって機能拡張や変更に対し,柔軟且つ低コストに対応する ことを目指したロボットである.その代表的なロボットとして,OPEN-R [Fujita et al. 99]
やMFMRS [Matsumoto et al. 02]が挙げられる.この種類のモジュールロボットにおいて モジュールの組み換え,すなわちシステム再構成は,新しい機能を持つモジュールを追加 したり,既存のモジュールを取り外したりすることによって,システム全体の機能を再構 築することを意味する.
これら2種類のモジュールロボットは,次の6つの項目によって,表5.2のように比較す ることができる.
• ロボットの種類
• 均質性:ロボットが同一のモジュールから構成されているか
• タイミング:システム構成の変更タイミングがオンラインかオフラインか
• 再構成能力:システム構成をロボット自身で変更できるかユーザが手動で変更するか
• 制御手法:モジュールロボットが集中制御システムか分散制御システムか
• 自律性:モジュール単体で自律して動作を行うことができるか
以下では,M-TRAN,Cebot,OPEN-Rの詳細を述べ,モジュールロボットの利点,欠 点を明らかする.
5. 提案・設計方針 5.2. システム再構成機構
表 5.2: 再構成可能なロボットの比較
タイプ 均質性 タイミング 再構成能力 制御手法 自律性