獲得された安心感の各下位尺度得点の平均,及び,獲得された安心感の5つの下位尺度 得点における総合得点の平均を従属変数とし,アタッチメントの3クラスター,及び,リ ジリエンスの2群(High群,Low群)を独立変数として,2要因の分散分析を行った(表 3-10)。
表3-10 各群の獲得された安心感下位尺度得点の平均,及び,総合得点の平均
リジリ エンス High
リジリ エンス Low
リジリ エンス High
リジリ エンス Low
リジリ エンス High
リジリ エンス Low
群① 群② 群③ 群④ 群⑤ 群⑥
人数 47 11 14 56 28 23
被献身感 4.13 (1.13)
3.06 (1.18)
5.00 (1.23)
3.99 (1.18)
3.99 (.95)
4.07
(1.33) 6.07** 10.62*** 3.60* 獲得的
安心基地
3.75 (1.09)
2.75 (1.11)
4.31 (1.44)
3.31 (1.20)
3.56 (1.18)
3.43
(1.23) 2.32 n.s. 11.64*** 2.06 n.s.
感謝・恩 4.28 (1.29)
3.18 (1.55)
4.63 (1.13)
3.59 (1.10)
4.09 (1.05)
3.84
(1.04) 1.03 n.s. 14.73*** 1.86 n.s.
負い目 3.37 (1.09)
2.70 (.76)
3.73 (1.05)
3.44 (1.03)
3.11 (.81)
3.32
(1.19) 3.10* 1.90 n.s. 1.97 n.s.
代理親 3.22 (1.23)
2.41 (1.41)
3.59 (1.48)
2.90 (1.18)
3.09 (.99)
2.90
(.99) 1.35 n.s. 7.26** .88 n.s.
獲得された 安心感
18.75 (4.44)
14.10 (5.34)
21.26 (4.83)
17.24 (4.48)
17.84 (3.47)
17.55
(4.85) 4.05* 14.39*** 3.18 *
( )内は標準偏差 *** p < .001 , ** p < .01 , * p < .05 , n.s. = not significant
安定型クラスター アンビバレント型
クラスター 中庸クラスター
アタッチ メント (クラスター)
F値
リジリエンス F値
交互作用 F値
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その結果,獲得された安心感の各下位尺度得点の平均値は,被献身感において,アタッ チメント要因とリジリエンス要因の主効果,及び,交互作用が有意であった(アタッチメ ント:F(2, 173)=6.07,p <.01;リジリエンス:F(1, 173)=10.62,p <.001;交互作 用:F(2, 173)=3.60,p <.05)(図3-16)。また,アタッチメント要因,リジリエンス要 因,交互作用の効果量を求めた結果,アタッチメント要因とリジリエンス要因の効果量は 中程度であり,交互作用の効果量は小程度であった(アタッチメント:η2= .06;リジリエ ンス:η2= .06;交互作用:η2= .04)。
獲得的安心基地においては,リジリエンス要因の主効果が有意であった(F(1,173)
=11.64,p <.001)。アタッチメント要因の主効果と交互作用は有意でなかった(図3-17)。
また,アタッチメント要因,リジリエンス要因,交互作用の効果量を求めた結果,リジリ エンス要因の効果量は中程度であり,アタッチメント要因と交互作用の効果量は小程度で あった(アタッチメント:η2= .03;リジリエンス:η2= .06;交互作用:η2= .02)。
感謝・恩においては,リジリエンス要因の主効果が有意であった(F(1,173)=14.73,
p <.001)。アタッチメント要因の主効果と交互作用は有意でなかった(図 3-18)。また,
アタッチメント要因,リジリエンス要因,交互作用の効果量を求めた結果,リジリエンス 要因の効果量は中程度であり,アタッチメント要因と交互作用の効果量は小程度であった
(アタッチメント:η2 = .01;リジリエンス:η2= .08;交互作用:η2= .02)。
図3-16 各群における被献身感得点の平均
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図3-17 各群における獲得的安心基地得点の平均
図3-18 各群における感謝・恩得点の平均
負い目においては,アタッチメント要因の主効果が有意であった(F(2,173)=3.10,
p <.05)。リジリエンス要因の主効果と交互作用は有意でなかった(図3-19)。また,アタ
ッチメント要因,リジリエンス要因,交互作用の効果量を求めた結果,効果量は小程度で あった(アタッチメント:η2 = .04;リジリエンス:η2 = .01;交互作用:η2 = .02)。
代理親においては,リジリエンス要因の主効果が有意であった(F(1,173)=7.26,p
<.01)。アタッチメント要因の主効果と交互作用は有意でなかった(図3-20)。また,アタ
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ッチメント要因,リジリエンス要因,交互作用の効果量を求めた結果,効果量は小程度で あった(アタッチメント:η2 = .02;リジリエンス:η2 = .04;交互作用:η2 = .01)。
そして,獲得された安心感における5つの下位尺度の総合得点の平均においては,アタ ッチメント要因,及び,リジリエンス要因の主効果が有意であった(アタッチメント:F
(2,173)=4.05,p <.05;リジリエンス:F(1,173)=14.39,p <.001)。さらに,交 互作用も有意であった(F(2,173)=3.18,p <.05)(図3-21)。
図3-19 各群における負い目得点の平均
図3-20 各群における代理親得点の平均
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図3-21 各群における獲得された安心感総合得点の平均
次に,交互作用において有意な差が見られた獲得された安心感の被献身感の平均得点に
おいて,Bonferroni法により単純主効果の検定を行った。その結果,有意な差は見られな
かった。なお,性別と学部を交絡因子として設定し,群間の差を検討したが,有意な性差 や学部差は存在しなかった。
第4節 第3章の考察
本研究では,幼少期に形成された主な養育者とのアタッチメントはリジリエンスと関連 すると仮定した。また,「アタッチメントの安定型下位尺度得点とリジリエンスには正の相 関関係があり,アタッチメントの不安定型下位尺度得点とリジリエンスには負の相関関係 がある」(仮説①),「アタッチメントが不安定であるにもかかわらずリジリエンスが高い群 は獲得された安心感が高い」(仮説②)という2つの仮説を設定し,それらを検証した。
まず,仮説①を検証するためにリジリエンスとアタッチメントの相関関係を分析した結 果,アタッチメントの安定型下位尺度得点は,リジリエンスの全ての下位尺度得点と有意 な正の相関があった。特にリジリエンスの肯定的な未来志向や新奇性追求との関連が感情 調整よりも相対的に強かった。一方,不安定型アタッチメントであるアンビバレント下位 尺度得点はリジリエンスの全ての下位尺度得点と有意な負の関連があった。特にリジリエ ンスの感情調整との関連が相対的に強かった。そして,不安定型アタッチメントである回 避下位尺度は,リジリエンスの新奇性追求と有意な負の関連があったものの,その関連は
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弱く,リジリエンスの他の下位尺度とは関連がなかった。このように,仮説①は部分的に 支持されたものの,リジリエンスとアタッチメントの相関は中程度から弱いものであった ため,アタッチメント以外の要因もリジリエンスと関連することが示唆される。
新奇性追求とは,新たな物事に興味や関心をもったり,それに挑戦したりすることであ り,アタッチメント理論における探索行動と関連する概念であると思われる。探索行動は,
安心基地,すなわち,その基地にたどりついた時に自分は歓迎され,体にも心にも栄養を 与えられ,もし苦しんでいるのなら安心感を与えてもらえるだろうという確信をもって戻 ることのできるところがある場合に活性化されると言われている(Bowlby,1988)。すな わち,安心基地がないと心的なエネルギー補給ができないため,外界を探索することがで きにくい。アタッチメントの安定得点は,リジリエンスの新奇性追求との関連が相対的に 強かったことから,安心基地が獲得されている可能性が考えられる。一方,アンビバレン トや回避得点は新奇性追求と負の相関をもっていたことから,不安定型アタッチメントの 人々は,安心基地を十分にもっていない可能性が考えられる。安心基地が十分にあるとい うことは,自分を歓迎し,心身ともに栄養を与えてくれるところがあるということである。
そのように自分に安心感を与えてくれるところがあるということは,現在はもちろん,未 来における不安感を減少させることになると思われ,それによって肯定的な未来志向も高 まることが推察される。このポジティヴな循環によって,安定型はリジリエンスの肯定的 な未来志向とも関連があったものと考えられる。
不安定型アタッチメントであるアンビバレント得点はリジリエンスの感情調整と負の関 連が見られ,これはアンビバレント型の特性と関連していると考えられる。すなわち,
Ainsworth et al.(1978)によると,アンビバレント型の子どもの養育者は,時々は,そ
の子どものアタッチメント欲求に応じてくれるが,その応じ方が一貫していないため,子 どもの側からすれば,いつ,どのような形でアタッチメント欲求を受け入れてもらえるか の予測がつきにくいことから,子どもはいつ離れて行くともわからない養育者の所在やそ の動きに過剰なまでに用心深くなり,できる限り自分の方から最大限にアタッチメント・
シグナルを送出し続けることで,養育者の関心を自らに引き付けておこうとするようにな ると指摘されている。自分のアタッチメント欲求を最大限に表現するということは,泣い たり,怒ったりというようなネガティヴな感情を激しく表出するということであり,この ような傾向が,感情調整力の弱さと関連しているものと考えられる。
次に,仮説②を検証するため,調査協力者をアタッチメントにおける3つの型やリジリ
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エンス得点の高低によって,安定型でリジリエンスが高い群,安定型でリジリエンスが低 い群,アンビバレント型でリジリエンスが高い群,アンビバレント型でリジリエンスが低 い群,中庸型でリジリエンスが高い群,中庸型でリジリエンスが低い群の 6 群に分類し,
各群における獲得された安心感得点を比較した。その結果,アタッチメントが中庸型の群 においては,獲得された安心感の全ての下位尺度,及び,総合得点において,リジリエン スが高い群と低い群の間で差がなかったものの,アンビバレント型においては,獲得され た安心感の負い目以外の4つの下位尺度において,リジリエンスが高い群は低い群よりも 有意に高い得点を示した。そのため,アンビバレント型においては仮説②が概ね実証され,
不安定型アタッチメントであるアンビバレント型は,両親以外の重要な他者から得た安心 感によって,リジリエンスを高めたり,潜在していたリジリエンスを発揮させたりできる 可能性を示唆している。
以上のように,第3章では以下に示す3つの結論が見出された。すなわち,①アタッチ メントの安定得点とリジリエンス得点には正の相関関係がある,②アタッチメントのアン ビバレント得点とリジリエンス得点には負の相関関係があるが,アンビバレント型でリジ リエンス得点が高い人は,両親以外の重要な他者から得た安心感が高い,③アタッチメン トの回避得点はリジリエンス得点と関連がなく,両親以外の重要な他者から得た安心感が リジリエンスを高くさせることもない,という3つの傾向が明らかになった。
これらの結論から,安定したアタッチメントを形成することが,つらい出来事から回復 する力にとって重要であることが実証された。また,もし不安定なアタッチメントが形成 されたとしても,アンビバレント型の場合は,重要な他者の存在や支援によって,リジリ エンスを向上させ得ることが示唆された。しかし,回避(中庸)型のアタッチメントが形 成された場合は,重要な他者による支援がリジリエンスの向上という点では功を奏さない ことが示唆された。先述したように,アンビバレント型の子どもの養育者は,Ainsworth et al.(1978)によると,子どものアタッチメント欲求に対して一貫性はないものの,時々は 応じてくれる一方,回避型の子どもは,アタッチメント行動をとっても,養育者からそれ に対する反応が得られない場合が多く,それどころか,子どもが泣いたり近接を求めてい ったりすればするほど,この型の養育者はそれを忌避してますます離れていく傾向がある と指摘されている。そのため, Ainsworth et al.(1978)によると,回避型の子どもはア タッチメントのシグナルを最小限に抑制することによって養育者との距離を一定範囲内に 留めておこうとすることが指摘されている。このように,回避型はアンビバレント型と比