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乳幼児期に形成される,主たる養育者とのアタッチメントによって,養育者以外の人と の対人関係の在り様に違いがあること,アタッチメントと適応的な状態が関連することが これまでに報告されてきた。

たとえば,Pierrehumbert, Iannotti, Cummings, and Zahn-Waxler(1989)は,2歳時 と5歳時に,母親とのアタッチメントスタイルの測定,及び,一番仲の良い遊び相手との 遊び場面の観察を行った。その結果,2 歳時に測定した母親とのアタッチメントスタイル が安定していた子どもは,不安定だった子どもよりも,一貫して遊び相手に対して応答的 であることが明らかになった。また,Waters, Wippman, and Sroufe(1979)は,子ども が 15 ヶ月の時に,子どもの母親に対するアタッチメントスタイルを測定した。そして,

その2年後に幼稚園の教室場面における子どもの行動を評定した結果,幼稚園での仲間関 係が有能であると評定された子どもは,全員 15 ヶ月時に安定型と分類された子どもであ ることが明らかになった。さらに,LaFreniere and Sroufe(1985)は,母親に対するア タッチメントの分類が12ヶ月時から18ヶ月まで変わらなかった子どもの4~5歳時の特

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徴として,安定型の子どもは社会的に有能であり,クラスメイトに好かれており,特にア ンビバレント型の子どもよりも社会的参加と社会的権威が高く,回避型の子どもよりもネ ガティヴな情動表出が低いという結果を報告した。そして,Erickson et al.(1985)は,

子どもの示す問題行動について調べた結果,安定型の子どもは,回避型,アンビバレント 型の子どもよりも,全般的に問題行動を示すことが少ないことを示した。このように,ア タッチメントの安定性は,子どもの社会性の高さや問題行動の少なさと関連があることが いくつかの研究で示されてきており,アタッチメントが対人関係の形成にとって重要であ ることが示唆されている。

また,Carlson et al.(1989)は,43組の乳児とその母親のアタッチメント関係を検討 した。43組のうち22組はネグレクトを含む虐待により保護サービスを受けており,対照 群である21組は,保護サービスを受けていなかった。2群とも社会経済的レベルは低く,

85%は児童扶養世帯補助(日本における生活保護と類似したサービスであると思われる)

をその当時受けていた。15%は過去にその補助を受けたことがあった。乳児の月齢は11.8 ヶ月から16.1ヶ月,性別は21人が男児,22人が女児で,2群における月齢や性に有意差 はなかった。虐待群の母親には,Giovannoni and Becerra(1979)が作成した虐待行動チ ェックリスト(93 項目)を実施し,各項目における虐待の加害者を明らかにするために,

いつその虐待行動を把握したのか,ソーシャルワーカーに尋ねた。そして,ソーシャルワ ーカーによると,乳児のうち2人(9%)は他人による身体的虐待,13人(59%)は母親 によるネグレクト,6人(27%)は母親による情緒的に不適切な扱いを受けていた。また,

そのうちの4人(18%)はネグレクトと情緒的虐待を受けていた。そして,7人(32%)

についてはソーシャルワーカーの示唆を得られなかった。両群に対してSSPを実施し,乳 児のアタッチメントスタイルを検討した結果,母親に対して安定型のアタッチメントスタ イルを示したのは,男児よりも女児が有意に多かった。また,虐待を受けていた乳児より も対照群の乳児が有意に多かった。さらに,D 型アタッチメントスタイルを示したのは,

女児よりも男児が有意に多く,対象群よりも虐待を受けていた乳児が有意に多く,虐待を 受けた乳児の81.8%がD型アタッチメントスタイルを示したにもかかわらず,対照群でD 型アタッチメントスタイルを示したのは 19.1%であった。このように,Carlson et al.

(1989)の研究から,不適切な環境に置かれることでアタッチメントスタイルは不安定型 が築かれ易くなること,特に虐待的環境に置かれることでD型アタッチメントスタイルが 築かれ易くなることが示された。また,Carlson et al.(1989)の研究から,同じような虐

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待的環境に置かれたとしても,安定型のアタッチメントスタイルやD型アタッチメントス タイルの築かれ易さが男女で異なり,性差が存在することが示された。

Solomon and George(1999)は,母親の安心基地としての自己表象は,安定したアタ ッチメントスタイルを有する子どもの母親と,不安定なアタッチメントスタイルを有する 子どもの母親とでは異なるという予測に基づき,調査を実施した。調査対象は,144 組の 母子であり,未婚,あるいは離婚した母親 93 名と,対照群である結婚生活を継続中の母 親51名,及び,それらの母親の第一子(平均は15.9ヶ月。男児79名,女児65名)であ った。なお,夫がいない群(未婚,離婚による)の 44 組は,少なくとも子どもの父親が 月に1度訪問し,泊まる。49組は,少なくとも子どもの父親が月に1度訪問するが,泊ま らない。

子どもに対してはアタッチメントスタイルを分類するためにSSPを実施した。母親に対 しては子どもにとっての安心基地の程度を測る尺度や自分や子どもとの関係など,養育を 測定する半構造化面接を実施した。また,夫がいない母親に対しては,子どもの父親が子 どもに会うために訪問する時の気持ちや父親の訪問のスケジュール,子どもの父親が訪問 した際,子どもに心理的サポートや保護をどの程度提供できているかを測る尺度も実施し た。それらの調査の結果,父親が月に1度は泊まる家庭の子どものアタッチメントスタイ ルは,安定型が7名,回避型が6名,アンビバレント型が2名,D型が29名であった。

父親が月に 1 度,訪問するものの泊まらない家庭の子どものアタッチメントスタイルは,

安定型が19名,回避型が13名,アンビバレント型が2名,D型が18名であった。そし て,それらのアタッチメントスタイルは,安心基地尺度と強い関連があった。また,母親 の心理的保護や安心基地は,アタッチメントの安定性と有意な関連があることが明らかに なった。このように,離婚が母親の養育に対する行動方略や,子どもにとっての安心基地 としての自己表象を妨害しうることが明らかになった。また,母親の安心基地としての自 己表象は,安定したアタッチメントスタイルを有する子どもの母親と,不安定なアタッチ メントスタイルを有する子どもの母親とでは異なるという予測が支持された。

Masten and O’Connor(1989)は,統合失調症の母親を有するなど環境的なリスクが高 い子どもの事例を報告し,乳児期の発達に関連する脆弱性,ストレス,リジリエンス,ア タッチメントの観点から検討した。それによると,サラ(仮名)は統合失調症の既往歴を もつ母親から生まれたが,生後15ヶ月頃に遺棄され,里親のもとで暮らすことになった。

最初の里親家庭では,父親にアタッチメントを形成したが,その父親は病死したため,サ

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ラは異なる里親家庭に移った。サラには,最初の里親家庭では,正常域の運動発達が確認 されていたものの,新しい里親家庭に移ったあとの生後15ヶ月から30ヶ月にかけてはほ とんど成長しなかった。また,最初の里親家庭においては言葉を発していたにもかかわら ず言葉が出なくなり,社会的なやりとりも失われ,遊ぶこともしなくなった。しかし,30 ヶ月の頃,入院し医療的な介入がなされた後,徐々に新しい里親の母親にアタッチメント 行動を示し始めた。そして,身体的,社会的な成長も見られるようになり,正常域の発達 水準に再度入るようになった。サラの発達遅滞は,潜在的に脆弱性をもった子どもが感受 性の強い時期に,主な養育者を喪失したことによる二次的なうつ病であると考えられた。

主な介入として,適切な養育者の確保や安定して支持的な家庭環境による保護を行った。

サラの事例から,逆境的な環境での経験,特に生後 15 ヶ月頃に主たる養育者を失うとい う外傷的な経験が,結果として,依存性抑うつの臨床像に当てはまる症状を呈したり,心 理社会的な小人症に結びついたりすることを示唆した。施設病が形成されてしまうことを 防ぐ介入や養子縁組処置によって好意的な養育環境へ配置することで,成長や心理学的機 能における回復が見られた。なお,3 年半後の追跡調査でもポジティヴな発達を維持して いた。

中村・内田(2007)は,中学生における精神的健康の指標の1つとしてリジリエンスを 取り上げ,家族へのアタッチメント(この研究においては,「アタッチメント」ではなく「愛 着」と表記されていたが,本研究では他の表現と統一するためにアタッチメントと表記す る)や親友へのアタッチメントがリジリエンスに及ぼす影響過程を検討した。方法として は,関東地方にある公立中学校の1,3年生798名(有効回答数,675 名)を対象に,幼 少期の親へのアタッチメント,親友へのアタッチメント,リジリエンスを測定する尺度を 実施した。因子構造は,家族へのアタッチメント尺度が,「分離への不安」「不信・拒否」

「安心・信頼」の3因子,親友へのアタッチメント尺度が,「安心・信頼」「分離への不安」

「不信・拒否」の3因子,リジリエンス尺度が,「熟慮性」「関係志向性」「実行性」「楽観 性」の4因子であった。分析の結果,中学生では家族へのアタッチメントにも増して親友 へのアタッチメントがリジリエンスに強く影響を及ぼすこと,女子では「家族への安心・

信頼」が高いほど「関係志向性」が高まること,男子では「家族への安心・信頼」が高い ほど「熟慮性」が高まることが明らかになった。

Arend, Gove, and Sroufe(1979)は,乳児期(0~1.5歳くらい)から幼児期(5歳く

らい)にかけての縦断研究を行い,18か月時におけるアタッチメントの安定性や2歳時に

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