3. RUI を用いた情報世界へのインタラクションシステム
3.6. 力覚提示装置としての RUI システム
3.6.4. 入力方法の比較および評価
実装したエアホッケーアプリケーションでは,エアホッケーを行うキャラクタを操作す る方法として,実世界に存在するRUIと情報世界内のCGアバタとの間で形状同期を行っ ている.これにより,操作者は直接的・直感的にCGアバタを操作できると共に,力覚提 示を得ることが出来る.
従来,このようなCGアバタを操作するアプリケーションにおいて,最も多く用いられ ている入力機器はジョイパッドやジョイスティックである.そこで,ジョイパッド等に用
実験としては,被験者に入出力方法の異なるエアホッケーアプリケーションを体験して もらい,それぞれの体験の後にアンケートに回答をしてもらう.入出力方法としては,ジ ョイパッドのボタンやスティック,RUIを用いてCGアバタを操作する3種類の入力を用 意した.そして,それぞれの入力方法において情報世界側からの出力の有無も考慮し,表 3.6にあるように合計6種類のものを用意した.ボタンとスティックによる入力方法では情 報世界からの出力として,パックがマレットに衝突した際にジョイパッドを振動させるフ ォースフィードバックを提示する.RUIによる入力方法ではパックがマレットに衝突した 際に,マレットを持っている腕が反力によって動くことでフォースフィードバックを提示 する.これら6種類の入出力方法において評価を行った.
表 3.6 比較する入出力方法
入出力方法 入力方法 出力方法
1 ボタン 出力無し
2 スティック 出力無し
3 RUI 出力無し
4 ボタン 振動
5 スティック 振動 6 RUI RUIの動作
入力方法としてRUIを用いた場合は,実世界のクマのぬいぐるみの外観を有したロボッ トと情報世界のクマのCGアバタで形状同期を行うことで,ロボットの両腕を動かすこと による直接入力を可能とする.ジョイパッドのボタン,スティックによる操作には,ソニ ー社のアナログコントローラ(DUALSHOCK2)を使用した.この際の入力方法に関して,
次に説明する.
ボタンによる操作では,2つのボタンを使用してCGアバタの両腕を操作する.図 3.22 のようにボタンを押していない場合,CG アバタは両腕を広げた状態となっており,右側 のボタンを押すと CG アバタの右腕が前方向へ閉じる.同様に左側のボタンを押すと CG アバタの左腕が前方向へ閉じる.そしてボタンを離すと,離した方に対応する腕が元のよ うに広げた状態となる.つまりボタンによって腕を開閉することで操作を行う.
スティックによる操作では,2つのスティックを使用してCGアバタの両腕を操作する.
図 3.23のように,スティックを傾けていない状態ではCGアバタは両腕を広げた状態とな っており,スティックを傾けると傾けた方向へCGアバタの腕先が向くように動作する.
左右のスティックがそれぞれCGアバタの左右の腕の動作に対応する.つまり,腕の角度 を指示する直接性はボタンよりも増すことになる.
図 3.22 ボタンによるCGアバタの操作
図 3.23 スティックによるCGアバタの操作
具体的な実験内容としては,合計8名の被験者(20代の学生,男性7名,女性1名)
にディスプレイの前に座ってもらい,クマの操作方法を簡単に説明する.その説明後3分 間,クマのCGアバタを操作してもらいエアホッケーアプリケーションを楽しんでもらう.
そして3分後,30項目あるアンケートに対して,項目に関して非常にあてはまる場合を 7,どちらともいえない場合を4,まったくあてはまらない場合を1,といったように7 段階評価で回答をしてもらう.入出力方法1~6すべてを各被験者に体験してもらい,ア ンケートを回答してもらった.
体験してもらう入出力方法の順番に関しては,被験者の内半分の4名は1,2,3,4,
5,6の順で,残り半分の4名は逆の6,5,4,3,2,1の順に体験をしてもらった.
図 3.24 実験の流れ
図 3.25 実験の様子
アンケート結果に関して,各設問において出力の有無(2水準)と入力方法(3水準)
の2要因の分散分析を行った.アンケートの結果を表 3.7に示す.
表 3.7 入出力方法に関するアンケート結果
入出力方法
番号 内容
1 2 3 4 5 6
Q1 このゲームは分かりやすかった5.9 5.4 5.9 5.9 5.4 6.1
Q 2 クマを思い通りに動かすことができた4.6 3.6 5.3 4.1 3.6 5.5
Q 3 この操作の仕方は複雑だと思う2.3 4.6 2.5 2.6 5.4 2.0
Q 4 このようなコントローラは苦手だ2.8 3.9 2.4 2.9 4.1 2.9
Q 5 このようなコントローラは動かしやすい4.3 3.6 5.0 5.3 3.1 4.5
Q 6 操作するのに混乱した2.9 5.1 2.5 3.0 5.4 2.9
Q 7 このようなゲームは新しいと思う2.8 3.0 5.0 2.9 3.8 5.3
Q 8 このゲームをまたやりたい3.4 2.9 4.5 3.6 2.8 4.3
Q 9 このクマには感情のようなものがある2.6 2.5 4.1 2.5 2.4 2.9
Q 10 このゲームをまだやりたかった
3.4 2.5 4.1 3.9 2.8 4.0
Q 11 このフォースフィードバックは分かりやすかった
2.3 1.8 3.0 3.1 4.3 5.5
Q 12 クマの動かし方をすぐに理解することが出来た
6.4 4.4 6.0 6.3 4.3 6.4
Q 13 このゲームの途中で飽きた
4.4 5.4 3.4 4.0 5.1 3.6
Q 14 このクマと一緒に楽しめた
3.4 2.6 4.4 3.1 2.6 4.0
Q 15 このゲームをやって疲れた
3.5 4.9 2.8 3.6 4.8 2.3
Q 16 クマの動きがかわいらしかった
4.6 3.8 5.0 3.6 3.6 5.1
Q 17 クマを動かすことが楽しかった
3.8 3.8 5.5 3.9 4.1 5.4
Q 18 自分の意図した通りにクマを動かすことが出来た
4.3 3.5 5.4 4.0 2.6 5.3
Q 19 もっとこのクマと遊びたい
3.6 3.3 5.1 3.4 2.6 4.9
Q 20 クマがエアホッケーを行うのが理解できない
3.5 3.5 3.1 4.0 3.4 3.1
Q 21 このようなぬいぐるみは苦手だ
2.6 2.5 2.6 3.0 2.8 2.1
Q 22 パックを打ったときに強い反力を感じた
1.4 1.4 1.6 4.0 3.8 5.5
Q 23 このクマと意思疎通ができた気がした
3.0 2.4 3.4 3.0 2.1 3.0
Q 24 このクマに親しみを感じた
3.3 3.1 4.5 3.4 2.5 4.8
Q 25 パックを打ったときに力を感じることが出来た
1.3 1.6 1.6 4.3 4.5 6.4
Q 26 このフォースフィードバックは新しいと思う
2.6 2.3 2.9 2.5 2.5 5.3
Q 27 このコントローラは親しみやすい
5.3 3.8 4.9 4.5 3.4 5.1
Q 28 このフォースフィードバックは意味が理解できない
4.0 4.0 4.0 3.8 3.1 1.8
Q 29 この操作の仕方は新しいと思う
2.4 3.6 5.1 2.5 3.1 5.5
Q1「このゲームは分かりやすかったか」やQ20「クマがエアホッケーを行うのが理解で きない」といったゲーム自体に関わる項目では有意差はなく,否定的な結果が無かったた め,今回のエアホッケーアプリケーション自体が実験に影響を及ぼすことは無いと考えら れる.
まず,二つの要因のうち「出力の有無」の主効果が有意であったものは,フォースフィ ードバックの分かりやすさや,強い反力を感じたか,といったフォースフィードバックに 関する項目のみであった.つまり,今回のアプリケーションでは,出力の有無が操作の直 感性や操作性,クマへの親しみやすさなどに対して影響を及ぼさなかったことが分かる.
入力方法に関して評価が高かったものは「ボタン」と「RUI」による入力であった.表 3.8 のように,スティックはボタンやRUIによる入力に比べて分かりづらく,疲れるという結 果となった.各設問における分散分析結果とLSD法を用いた多重比較の結果は表 3.9のよ うになった.
表 3.8 入力方法に関する設問のアンケート結果
入出力方法
番号 内容
1 2 3 4 5 6
Q 3 この操作の仕方は複雑だと思う2.3 4.6 2.5 2.6 5.4 2.0
Q 12 クマの動かし方をすぐに理解することが出来た
6.4 4.4 6.0 6.3 4.3 6.4
Q 15 このゲームをやって疲れた
3.5 4.9 2.8 3.6 4.8 2.3
表 3.9 入力方法に関する設問の分析結果
番号 分散分析結果 多重比較結果 (MSe:誤差の平均平方)
Q3 F(2,14)=12.96,p<.01 ボタン=RUI<スティック(MSe=2.91,5%水準)
Q12 F(2,14)=7.24,p<.01 スティック<ボタン=RUI(MSe=2.77,5%水準)
Q15 F(2,14)=6.85,p<.01 RUI<スティック(MSe=3.13,5%水準)
出力に関して最も評価が高かったものは「RUI」であった.表 3.10のようにRUIを用い た場合には,ボタンやスティックによるものに比べてフィードバックが分かりやすいとい う結果となった.また,各設問における分析結果を表 3.11に示す.
表 3.10 出力に関する設問のアンケート結果
入出力方法
番号 内容
1 2 3 4 5 6
Q 11 このフォースフィードバックは分かりやすかった
2.3 1.8 3.0 3.1 4.3 5.5
Q 25 パックを打ったときに力を感じることが出来た
1.3 1.6 1.6 4.3 4.5 6.4
表 3.11 出力に関する設問の分析結果
番号 分散分析結果 多重比較結果 (MSe:誤差の平均平方)
Q11 F(2,14)=11.97,p<.01 ボタン=スティック<RUI(MSe=0.914,5%水準)
Q25 F(2,14)=8.78,p<.01 ボタン=スティック<RUI(MSe=1.84,5%水準)
CGアバタに対する印象に関しても最も評価が高かったものは「RUI」であった.結果と 分析結果をエラー! ブックマークが自己参照を行っています。と表 3.13に示す.
表 3.12 CGアバタに対する印象に関する設問のアンケート結果
入出力方法 番号 内容
1 2 3 4 5 6
Q 16 クマの動きがかわいらしかった
4.6 3.8 5.0 3.6 3.6 5.1
Q 17 クマを動かすことが楽しかった
3.8 3.8 5.5 3.9 4.1 5.4
表 3.13 CGアバタに対する印象に関する設問の分析結果
番号 分散分析結果 多重比較結果 (MSe:誤差の平均平方)
Q16 F(2,14)=5.75,p<.05 ボタン=スティック<RUI(MSe=1.37,5%水準)
Q17 F(2,14)=6.66,p<.01 ボタン=スティック<RUI(MSe=1.96,5%水準)
これらの結果より,スティックを用いた場合はボタンよりも腕の操作の直接性が増し,
操作者の意図した通りに操作できる手法かと考えられたが,実際は複雑さを感じさせ,混 乱を生じさせる操作法であった.つまり,直接的な操作が入力に適している訳ではなく,
操作者にとって理解しやすいかどうかが影響していると考えられる.
また,出力の評価に関してはRUIが最も評価が高い結果となったが,これは振動による 出力ではなく,RUIが動くという出力が効果的であったのではないかと考えられる.また,
出力が各腕に対応している点や,CG アバタとインタフェースの同期という直接性が高い ことが影響しているのではないかと考えられる.
つまり,RUIを用いた場合,既存のジョイパッドを用いた方法と同等以上に操作性は良 く,出力の分かり易さや効果に関してはより優れていることが確認できた.そして同時に,
CGアバタに対する親しみや印象を向上させられるということも確認できた.