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光変調器を用いた電界センサの感度解析

2.1  はじめに

最近の半導体技術の進歩と共に,電子回路の高集積化,高速化が進み,様々な装置のディ ジタル化がなされている.このことにより,連続波に対する装置の耐力は向上したが,イン パルス性のノイズに対しては誤動作を起こしやすくなり,誤動作発生時の社会的影響も大き くなってきている.

このようなEMCの問題を解決するためには,装置近傍の電磁界や,インパルス性のノイ ズなど,我々を取り巻く電磁環境を正確に把握するための電磁界センサが必要である.その ため,アンテナエレメントに抵抗を装荷した電界センサや[1][2],FETを用いた電界センサ[3], 抵抗装荷したループアンテナを用いた磁界センサ[4],OPアンプを用いた磁界センサ[5]など が開発されている.さらにセンサと受信機とを結ぶ金属ケーブルのかわりに光ファイバを用 いた電界センサの研究・開発が進められており,LiNbO3結晶光変調器を用いたものや[6]-[10], LiNbO3基板上に形成されたMach-Zehnder干渉計を用いたもの[11]-[13]が報告されている.

これら光変調器を用いた電界センサは,アンテナ以外は非金属物で構成されるので,周囲 の電磁界を乱すことが少なく,広帯域で動作し,動作時間の制限もないため,EMCにおける 理想的な受信アンテナとして,その実用化が期待されている.

電界センサの設計を行うためには,あらかじめ理論解析によりどのような特性を有するか を求めておく必要があり,感度特性の解析技術の確立が必要である.しかし,光変調器を用 いた電界センサは,負荷が容量性である,光素子を用いている等,従来使用されているダイ ポールアンテナ等とは異なった構造をしているため,周波数特性や感度特性の測定や周波数 特性解析は行われてきているが,あらかじめ電界センサがどのような感度を持つかを設計す る方法やその結果に対する誤差要因については明らかにされていない.そこで本章では,

LiNbO3光変調器を用いた電界センサの感度特性の解析方法について述べる.まず,電界セン

サ部を等価回路で表し,この等価回路と光源部,光検出部のパラメータの値を理論解析と測 定により定め,それらの値から感度特性を求める方法について示す.次に,電界センサを作 製し,感度特性の測定結果と理論検討の結果との比較を行い,誤差要因を明確にして理論計 算方法の確立をはかる.

2.2  光変調器を用いた電界センサの構成

光変調器を用いた電界センサの構成を図2.1に示す.電界センサは大きく分けて光源部,

電界を検出するセンサ部,光検出部の3 つからなっている.各々の部分は偏波面保持ファイ バ(Polarization Maintaining Fiber)(光 源 部 〜 セ ン サ 部)と シ ン グ ル モ ー ド フ ァ イ バ

(Single-mode Fiber)(センサ部〜光検出部)で接続されている.センサ本体は,2本の金属ロッ ドが直線上に並べられ,その間にプラスチック筐体の中に収められた光変調器が挿入された 形となっている.光源には,半導体レーザー(LASER Diode:LD)やLD励起のYAGレーザ ー等が用いられている.また出力側の光検出器(Electro-Optic Converter:O/E変換器)はPIN フォトダイオードやAPD (Avalanche Photo Diode)等が用いられている.

光源からの出力光は偏波面保持ファイバを通り光変調器に入射される.この時,外部から センサ本体に電界が印加されるとセンサロッド間に電圧が発生する.この電圧により光変調 器を動作させることで,入射光に強度変調がかけられる.この強度変調光の変調度は,印加 された電圧に比例するので,それを光検出器によって電気信号に変換し取り出すことによっ て,センサに印加された電界強度に比例した値を得ることができる.

光変調器を用いた電界センサは,センサロッド部分以外は非金属物で構成できるため,従 来のアンテナに比べ測定使用とする電界を乱すことが少なく,正確な測定が可能である.

本研究においては,2 つの種類の光変調器をもちいた電界センサについて検討を行ってい る.まず1つは,電気光学効果を持つLiNbO3結晶[14]をそのまま利用した結晶型光変調器で あり,もう1つはLiNbO3基板上に光IC技術を用いて形成されたMach-Zehnder型光干渉計 を利用したMach-Zehnder型光変調器である.次節以降では,各々の光変調器の動作原理に ついて述べ,その後結晶型光変調器を用いた電界センサの感度特性解析について述べる.

2.2.1  結晶型光変調器の動作原理

図2.2に結晶型光変調器の構成を示す.z-cut LiNbO3結晶を図のように2つ並べ光学軸

(z軸)に電圧を印加する.入射した光は,偏光板によって光学軸に対し45 度傾いた直線偏 波光になり,結晶に入射する.入射光は結晶の異方性によって,結晶のなかで常光と異常光 に分かれてそれぞれ伝搬する.それぞれの光の電界は,

(

x

x E t

E = cosω −θ 2

0

)

(2.1)

(

z

z E t

E = cosω −θ 2

0

)

(2.2)

と表される[15][16].ここで,θx, θzはそれぞれの電界の位相シフトを表す項であり,(2.1),(2.2) 式より,2成分間の位相差∆θは以下のように表される[15][16].

( )

( )

y

d n V k y n n k

y n n k

c o e

o z x

z x

γ θ

θ θ

3 0 0

0

2 +1

=

=

=

(2.3)

ここで,no, neは印加電界のないときの常光及び異常光に対する屈折率,Vは結晶に印加され る電圧,k0は波数,γc

Sensor rod

Level Meter Single-mode 

fiber Polarization

maintaining fiber

O/E   converter Optical    

modulator

Plastic  case

Electric  field

Laser

Sensor Optical 

source

Photo-   detector 図2.1  電界センサの構成

LiNbO3 crystal

Babinet-Soleil compensator Analyzer(135 ゚)

Polarizer(45 ゚)

z

x

y x

z y

Optical fiber 45 ゚

Linear polarization Elliptical

polarization

Linear polarization

Electrode

(Amplitude modulation)

Graded index lens

LiNbO3 crystal

Babinet-Soleil compensator Analyzer(135 ゚)

Polarizer(45 ゚)

z

x

y x

z y

Optical fiber 45 ゚

Linear polarization Elliptical

polarization

Linear polarization

Electrode

(Amplitude modulation)

Graded index lens

図2.2  結晶型光変調器の構成

13 3

33 γ

γ

γ ⎟⎟

⎜⎜ ⎞

−⎛

=

e o

c n

n (2.4)

と表され,γ33, γ13は電気光学定数である.(2.3)式の第1項は,結晶の持つ複屈折により生じ る位相差であり,第2項は電気光学効果による位相差である.また自然複屈折は温度によっ ても変化するため,実際の変調器では,図2.2のように2 つの結晶を用い,互いの光学軸 が直交するように組み合わせている.この場合,位相差∆θは以下のように表される.

( )( )

⎟⎟

⎜⎜ ⎞

⎛ +

+

=

2 2 1 3 1

0 2

1

0 2

1

d V d

n k n

n

k o e o c l l

l

l

γ

θ

(2.5)

ここで,l1,l2はそれぞれの結晶の長さ,d1, d2は結晶の幅である.(2.1)〜(2.5)式より,結晶中 の合成電界を求めると次式のようになる.

( )( ) ( )( )

{ }

1

cos 2 1

1 1

2 1 1 2 2

2

0 2

0

∆ =

− + + +

⎟⎟

⎟⎟

⎜⎜

⎜⎜

⎛ +

⎟⎟

⎟⎟

⎜⎜

⎜⎜

θ

z x

z x

z

x E E E E

E E E

E

(2.6)

この(2.6)式より,結晶中の光の偏光状態は楕円偏光波となっていることがわかる.結晶の光

学軸に対し135度傾いた検光子により出力光が取り出されることを考慮し,(2.6)式の座標系 を45度回転させると,次のような式が得られる.

1 sin 2

' cos 2

'

2

0 2

0

=

⎟⎟

⎟⎟

⎜⎜

⎜⎜

⎛ + ∆

⎟⎟

⎟⎟

⎜⎜

⎜⎜

θ θ

E E E

Ex z

(2.7) ここで,Ex', Ez''は座標回転後の電界成分である.この式より,検光子から取り出される光出 力は以下のように与えられる.

⎭⎬

⎩⎨

⎧ ⎟⎟

⎜⎜ ⎞

⎛ +

=

⎟⎠

⎜ ⎞

= ⎛ ∆

π

π θ θ

V E V

E I

0 2

0 2 2 0

cos 2 1

sin 2

(2.8)

ここで,

( )(

1 2

0

0 =k no ne l −l

)

θ

(2.9)

⎟⎟⎠

⎜⎜ ⎞

⎛ +

=

2 2 1 1

3 d d

V n

c e

l l

γ λ

π (2.10)

Iout optical bias angle   not tuned

output signal

input signal

-Vπ Vπ V

Electrode Voltage optical output power

(a) Liner polarization (b) After modulation (c) Zero optical bias

Iout

optical bias  angle tuned

output signal

input signal

-Vπ Vπ V

Electrode Voltage optical output power

(d) Circular polarization (e) After modulation (f) π/2 optical bias 図2.3  偏波状態と光変調器出力

で表され,Vπは位相差∆θπだけ変化させるために必要な電圧であり,半波長電圧と呼ばれ る.また,θ0はオプティカルバイアス角と呼ばれ,図2.3及び後述のように変調器の動作 点を決定する値である.この(2.8)式が光変調器の変調度を表す最も基本的な式である.

(2.9)式において,l1=l2とすることでθ0を零にすることができるが,実際にはl1とl2は完全に 等 し く は な ら な い た め ,θ0は 有 限 の 値 を と る . 従 っ て バ ビ ネ ・ ソ レ イ ユ 位 相 補 償 器 (Babinet-Soleil Compensator)により,θ0をπ/2となるように調整すると,(2.8)式は次のよう に表される.

⎭⎬

⎩⎨

⎧ ⎟⎟⎠

⎜⎜ ⎞

⎝ + ⎛

=

π

πV V I E 1 sin

2

2

0 (2.11)

さらに,Vπ>>Vであるならば,サイン関数の性質により(2.11)式は以下のように近似される.

⎭⎬

⎩⎨

⎧ +

=

π

π

V E V

I 1

2

2

0 (2.12)

従ってVπ>>Vが成立する範囲では,印加電圧の大きさに比例した光変調出力が得られること

がわかる.

図2.3に結晶から出力される光の偏光状態を示す.バビネ・ソレイユ位相補償器がない 場合,変調がかかっていない状態での出力は,図2.3(a)のような光学軸に対して 45 度傾 いた光になる.変調がかかると同図(b)に示すような楕円変更で出力される.変調器の出力は 135 度傾いた偏光板によって取り出されるため,電圧と光出力の関係は同図(c)に示すような 動作状態となり,変調器の動作における線形性が悪く,感度も悪い状態となる.そのため,

実際の光変調器では,変調器の線形性,感度がよくなる状態で使用できるように,バビネ・

ソレイユ位相補償器が挿入され,変調がない場合の光出力を同図(d)のような円偏光の光が出 力されるようになっている.これにより,入射光が変調された場合の偏光状態と印加電圧に 対する光出力の関係は同図(e),(f)のようになり,見かけ上,結晶にバイアス電圧が印加された 状態になり,線形性と感度が最もよくなる.この偏光状態を変え,見かけ上バイアス電圧が かかった時と同じ状態にすることを”オプティカルバイアス”を加えるという.

2.2.2  Mach-Zehnder型光変調器の動作原理

Mach-Zehnder型光変調器の外形を図2.4に示す[17][18].これは,LiNbO3基板上にTi を拡散させ光導波路を形成し,Mach-Zehnder型干渉計を構成したものである.

今,次に示す式で与えられる光が導波路に入射したとする.

( ω

θ )

=E t

E 0cos (2.13)

入射した光は,図中の導波路の分岐点であるa点で2 つの光E1, E2に分かれ,それぞれの導 波路を通り,b点で再び合成される.このときE1, E2は複屈折による位相の変化をうける.変 化した位相分をφ1, φ2とすると,b点でのそれぞれの導波路における光の電界強度は以下の式 で与えられる.

(

1

0

1 cos

2 ω −φ

= E t

E

)

(2.14)

(

2

0

2 cos

2 ω −φ

= E t

E

)

(2.15)

電極に電圧Vが印加されると,電気光学効果により導波路の屈折率が変化し,それにより,

導波路を通る光は±∆φの位相変化を受ける.これにより,(2.14), (2.15)式は以下のように与 えられる.

(

ω −φ −∆φ

= 0 1

1 cos

2 t

E E

)

(2.16)

(

ω −φ +∆φ

= 0 2

2 cos

2 t

E E

)

(2.17)

LiNbO

3

substrate Electrode

Ti diffusion

optical waveguide Polarization

maintaining

fiber Single-mode

fiber Sensor rod

a b

LiNbO

3

substrate Electrode

Ti diffusion

optical waveguide Polarization

maintaining

fiber Single-mode

fiber Sensor rod

a b

図2.4  Mach-Zehnder型光変調器の構成 但し

π

π

φ V

= V

(2.18)

l

33

2 3γ λ

π

ne

V d

= Γ (2.19)

であり,Vπは半波長電圧,ne, γ33はLiNbO3の異常光に対する屈折率及び電気光学定数,Γ 印加電界低減係数,λは光の波長,dは電極間隔,lは電極長である.(2.16), (2.17)より,b点 で合成される光の電界強度E'は次のようになる.

( ) ( )

⎟⎠

⎜ ⎞

⎛ − +

⎟⎠

⎜ ⎞

⎛∆ + −

=

∆ +

− +

= +

=

cos 2 cos 2

2 cos 2 cos

'

2 1 2

1 0

2 0

1 0

2 1

φ ω φ

φ φ φ

φ φ ω φ

φ ω

t E

E t E t

E E E

(2.20)

(2.20)式より,変調後に得られる光の平均出力は次のように表される.

⎭⎬

⎩⎨

⎧ ⎟⎟⎠

⎜⎜ ⎞

⎛ +

+

=

⎭⎬

⎩⎨

⎧ ⎟⎟

⎜⎜ ⎞

⎛ + −

=

ϕ π

φ π φ

π π

V V E

V E V

P

cos 2 1

cos 2

2 0

2 2 1 0

(2.21)

ここで

ϕ

=

( φ

1

φ

2

)

2であり,オプティカルバイアス角を表す.従って,

ϕ

=

( φ

1

φ

2

)

2=

π

2 Vπ>>Vの条件が成立するとき,この(2.21)式は次のようになる.

Optical   Modulator

Photo-detector Iin

Iout

Vout

η Za

E  he

Sensor  rod

Vc

η

η

Vπ, ϕ

Optical   source Zm

m

f

図2.5  光変調器を用いた電界センサの等価回路

⎭⎬

⎩⎨

⎧ +

=

π

π

V V P E 1

2

2

0 (2.22)

(2.22)式より,Vπ>>V では,結晶型光変調器と同様に,印加電圧に比例した光変調出力が得 られる.

2.3  電界センサの等価回路

2.2節で述べた図2.1のような構成の光変調器を用いた電界センサから出力される光 強度は以下の式で与えられる.

( ) ( )

⎭⎬

⎩⎨

⎧ ⎟⎟⎠

⎜⎜ ⎞

⎛ +

+

= π ϕ

Vπ

t V t I

Iout in 1 cos c

2 (2.23)

但し,Vπは半波長電圧である.ϕはオプティカルバイアス角であり,図2.3に示したように,

変調器の電気−光特性の線形性など光変調器の動作状態が決定される.印加電圧が半波長電 圧よりも十分に小さく(Vπ>>V ),オプティカルバイアス角が90度に近い値であれば,(2.23) 式の時間変動項は次のように表される.

( ) π ( ) ( ) ϕ

π

2 V t sin V t I

Iout = in c (2.24)

この式から出力光の強度変調の度合いは変調器に印加された電圧に比例するので,これを光 検出器で検出することにより,印加された電界に比例した値を得ることができる.電界セン サの感度は,Vπが小さい程,より低い値の電界を検出することができる.(2.10)式,(2.19) 式より,半波長電圧Vπは電極間隔が小さいまたは電極長が長いほど小さな値となる.

光変調器を用いた電界センサを等価回路に置き換えると図2.5のように表すことができ る.ここで, は光変調器の入力インピーダンス, はセンサロッドの駆動点インピーダ ンス,V

Z&m Z&a

eはセンサロッドに平行な電界により生じる誘導起電力,ηdは光検出器の変換効率,

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