第 5 章 金 / シリコンナノアンテナを用いた赤外光シリコン光検出器のカットオフ波長の長
5.4 提案した赤外光検出器における中赤外光検知
5.4.1 光信号を変調することにより得られた中赤外検知特性
りも十分に長いためである。そして、同期検波測定を行う際、入射光に周波数変調をかけるた め、放射光は光学チョッパを通り、fo = 230 Hzに変調したものをデバイスに照射している。こ の評価では、光学応答として、光照射によって生じる開放電圧をデータロガー(DL850, Yokogawa,
Japan)で計測した。今回はソースメータ(2614B, Keithley, USA)からDCの逆バイアス電流Ib
をデバイスに印加することで、逆バイアス電圧の印可と等価になる処理を行った。逆バイアス 電流の値は、暗時の状態でVb = −5 Vと等価になるように選定した。逆バイアスは、光電流によ り正方向の電圧にシフトするが、光電流が逆方向電流と比較して非常に小さいため、ほぼ逆バ
Fig.5.8 シリコンナノアンテナ構造体を用いたプラズモン共鳴型シリコン赤外光検出器の
における、バイアス電圧を変化させた際の、同期検波測定を用いた中赤外光応答取 得結果
(a) 同期検波測定による中赤外光応答取得 (b) バイアス電圧に対する、光出力との関係
イアスがシフトしないと仮定し、本測定を行った。以上を通じて、時間領域の開放電圧波形を FFT変換し、横軸周波数、縦軸を電圧値とするグラフを,図5.7 に示す。
バイアス電圧が印加されていない状態では、230 Hzに変調された光信号は計測されていないが、
バイアス電圧を−5 Vに変えると、230 Hzの位置に明瞭なピークが得られた。バイアス電圧が印 加されていない場合には、ショットキー障壁高さは0.6 eVであり、カットオフ周波数は2.1 μm なので、応答がみられないのは妥当な結果である。また、バイアス電圧を印加すると信号が検 出されるのも、障壁の低下を反映して妥当な結果だといえる。アンテナを有しないデバイスで、
同様の実験を行ったところ、光信号は計測できなかったため、ナノアンテナ構造と逆バイアス Fig.5.9 シリコンナノアンテナ構造体を用いたプラズモン共鳴型シリコン赤外光検出器の
における、同期検波測定を用いた中赤外光応答取得結果
(a) 黒体炉からの放射エネルギ (b) 中赤外光応答結果
(c) 黒体炉の温度と、光応答出力との関係
電圧の双方が揃ったときに生じている現象ということができる。また、バイアス電圧による応 答振幅の変化を検証するために、バイアス電圧を変えたときの応答を計測した。図5.8 aは1 V ごとに逆バイアス電圧を変化させ
た。この結果から、逆バイアス電圧の大きさが増大するにしたがって、信号の振幅が増大する 傾向が認められる。図5.8 bに振幅と逆バイアス電圧の関係をプロットした。単調現象の傾向が 見て取れる。ただし、逆バイアス電圧が増大すると、暗時の電圧がノイズ成分として増大する ので、S/N的に最適なバイアス電圧があると考えられる。そして 、提案した赤外光検出器にお いて、中赤外光量に応じ光応答が変化するか否か、確認するため、図5.6のセットアップにて、
黒体炉の温度を500℃から800℃まで変化させたときの光学応答を取得した。その結果を図5.9 に示す。図5.9 aは、黒体炉の放射照度を黒体放射の式[61] より求め、その結果と、ロングパス フィルタの透過率を掛け合わせることにより算出した。この結果から、黒体炉の温度を 500℃
から800℃まで変化させると、中赤外光量が増加することが分かる。更に、図5.9 cに示したよ うに、変調周波数(230Hz)時の開放電圧に注目すると、黒体炉の温度が上昇するにつれ、開 放電圧が大きくなることが分かる。また、本実験では、逆方向バイアスを印加するため、バイ アス電流を印加した。そうすると、前述のように正方向へバイアス電圧がシフトする。そこで、
本実験における最大シフト量を見積もる。今回の実験では、出力電圧の最大値が-40dBVであっ た(図5.9参照)。出力がデータロガーの出力が-40dBV(7.75mV)である場合、データロガーの入 力インピーダンスが1MΩであるので、光電流は、7.75nA程度となる。この光電流がもたらす、
正方向への電圧シフト量は、図5.2(a)の電流電圧特性(温度T=30℃)のデータから見積もると、
V=-5V付近では、大凡10mV程度である。従って、バイアス電圧はほとんどシフトはせず、測
定対象であるナノアンテナ型赤外光検出器に逆方向バイアスがかかっているといえる。
以上を通じて、従って、提案した赤外光検出器は、中赤外光量に応じ、応答していることが 分かった。