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保護者から見た教師の専門性について

第3章 保護者から見た未就園児保育について

第4節  保護者から見た教師の専門性について

4)前掲書3)pp.9−15 5)前掲書2)pp.47−62

6)名須川知子・楠本洋子:r親育てプログラムの効果に関する研究一3年間の母親の子育て    意識の変容を中心に」r兵庫教育大学研究紀要』第38巻2011年 p.1−8

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終章

       総合考察

 本研究では先行研究を元に3つの調査を行い、幼稚園の子育て支援、特に未就園児 保育に求められる教師の専門性について探ってきた。

 まず、未就園児保育に必要な専門性として大きく「保護者理解」「未就園児理解」「遊 び力」「内省力」が挙げられると考えられる。

 1点目の「保護者理解」は、在園児の保育、いわゆるクラス運営にも求められてい る専門性であるが、在園児の保育よりも保護者を身近に感じながら保育をするので、

未就園児保育において重要な専門性であるといえる。教師を対象にした面接調査では、

保護者の実態や課題を把握しながら、より良い子育て環境を作ろうとしていることが 分かった。教師は、保護者の感じている行き詰まりに気付き、悩みに寄り添ったり、

発達の見通しを持たせたりしながら、園生活にスムーズに移行できるよう支援してい た。これは、未就園児保育の大きな特徴である。特に、園生活に対する不安や期待は、

保護者側の質問紙調査でも見られ、未就園児保育は、2,3歳児の未就園児を持つ保護 者にとって幼稚園という未知の世界を知るきっかけになっているといえる。また、保 護者について理解しようと保護者の立場で考えたり、保護者からの見方に気付いたり することも、教師が求められている専門性だと考えられる。

 今まで3歳児以上を主に保育してきた教師にとって、低年齢児の発達を知ったり、

家庭生活から集団生活への移行を理解したりすることは、教師自身が長期的な視野で 子どもの発達を理解することになり、より保育の幅を広げる効果が期待される。未就 園児保育において、発達を長期で捉えることのできるカ、すなわち「未就園児理解」

は、経験を踏まえて自分の保育を保護者に語ることを可能にし、保護者の信頼感を得 ることにつながると考えられる。今回の調査では、未就園児保育で作られてきた信頼 関係のべ一スが、入園後にも持続されるものであることも明らかになり、在園時に限

らず、長期にわたり保護者と共に子育てをしていけることが分かった。

 3点目のr遊びカ」は、r親子で楽しむ遊び」を計画、実行していく専門性である。

未就園児保育に求められているのは、子どもが楽しい遊びだけではなく、「保護者も楽        51

しめる遊び」、「家庭と幼稚園がっながる遊び」であることが分かった。従来、遊びを 子どもに伝える専門性を持っている教師だからこそ、遊びを通して、子育て支援のね

らいが達成できるよう、計画・実践していくことが求められている。同僚の教師や在 園児保護者(サポーター)と共に協議を重ねながら、遊びを展開していることが分か

った。

 そして、親の遊び直しにより、保護者が子どもを理解しようとする姿勢や子育てを おおらかに楽しめる余裕を生み出す効果があることを踏まえると、遊びをコーディネ ートしていく専門性は、大変重要であると考えられる。

 4点目は、「内省力」である。年次が低く若い教師は、担当就任当初、自身に子育て 経験がないことや未就園児の発達に詳しくないために、不安を感じやすいことが分か

った。しかし、活動を通し、保護者や未就園児とかかわったり、同僚の教師と協議を 重ねたりしながら、自分を見つめ直し、保護者とは違う立場から、共に子どもを育て ているのだと意識できるようになっていった。それが、教師としてのやりがいや保育 に対する自信となり、教師の成長につながっていると考えられる。教師を取り囲む環 境の変化と教師自身の気付きが相互に作用し、新たな課題を教師自身が見出だし、保 護者や子どもに対して新しい視点を生み出しているようだ。教師の「気付く力」、すな わち「内省力」は、教師が求められている専門性の一つであり、実践を通しての「気 付き」や「振り返り」が教師の専門性を伸ばし、保育の質を上げていく重要な要因で

あると考えられる。

 これは、「反省的実践者」というドナルド・ショーンが提唱した専門家像と一致して いる。保育用語辞典によると、ドナルドは、これまで保育者の専門性として一般化さ れていたのは、r技術的合理性」(technica1mtiom1ity)に基づくr技術的熟達者」

(technica1expert)であるとされていたが、それに対し、新たに「行為の中の省察」

(re且㏄tion in action)に基づく「反省的実践家」(renection practitio■er)という 概念1)を提唱した。つまり、教師は、保育を通して自分、あるいは仲間と共に振り返

り、保護者や子どもの姿をもとに自己と対話し、自分の保育を作っていくものである と考えられるということである。杉村ら(2007)も「保育の実践や質、専門性の向上 と振り返りや省察は密接な関係がある」2)としており、内省や省察が専門性の向上に 欠かせないものだと考えられる。

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 すなわち、これら4つの専門性を支える場を作っていくことが、教師の専門性と未 就園児保育そのものの質を向上していくものと考えられる。

 しかし、教師対象の面接調査において、「幼稚園の子育て支援」「幼稚園の未就園児 保育」について、その特徴や役割について語られることもあったが、「教師自身の専門 性」という視点を的確に語る教師はいなかった。つまり、「幼稚園」というハード面で なく、「教師」というソフト面についてである。教師は、自身の持つ専門性を認識しに

くいのではないかと考えられる。原因として、次の2点が考えられる。

 1点目は、未就園児保育をはじめ、幼稚園における子育て支援自体が過渡期にある こ二とに起因していると考えられる。現在もなお、子育て支援事業の運営方法や形態に ついて試行錯誤して展開している現状が調査により改めて明らかになった。教師自身 が自問自答しながら保育しているため、教師が自身の保育活動に意味を見出しながら、

少しずつ専門性を見出していくと考えられる。内省や省察を繰り返し、未就園児親子 とかかわる経験が増え、幼稚園における未就園児保育の運営システムが確立されるこ とで、教師は自身の専門性を認識しやすくなるのではないかと考えられる。しかし、

認識されていないが、教師の専門一性は、十分発揮されていた。

 2点目は、子育て支援事業や未就園児保育に対して、担当の教師の存在が周囲から の評価を受けにくいという点である。調査の中で教師が語ったように、【他の先生の 保奮を見れ昼い】(L)、【保育外の意識がある】(D)という状況がある。幼稚園の職員 の雰囲気として、【あなたのしていることは、すごいことなんだよって】(F)という お互いを認め合える職員組織を作り出していくことが、教師の専門性を支える最大の 基盤になると考えられる。太田(2009)は、自分の保育活動を最も理解し、協ノJして 欲しいのは、職場の同僚や上司であると考えられるとした」二で、職員組織が「育ちあ

える関係」として機能する重要性を主張している。調査した教師の発言からも、一緒 に組んでいる教師と具体的な保育内容や方法、保護者対応を協議したり話し合ったり することが、教師同士の距離を縮めたり、他の教師と意思疎通がしやすくなったこと で円滑に保育ができるようになること3)を示唆していた。

 つまり、教師の専門性を支えている土台は、良好な職員間の関係、すなわち同衡性 と考えられる。同僚性とは、学びへの展望とその研究過程を共有する人や集団(仲間)

そのものや質を表す概念4)である。嶋崎・森(1995)は、r保育技術に対する自信感」

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「円滑な対人関係能ノJの自信感」「園内の情緒的支援者保有」などが保育者の精神状態 の悪化を防ぐ要因になる5)と述べている。新しい専門性を急務に求められる教師にお いて、自分の仕事にやりがいを見いだせなかったり、幼稚園内で孤立したりしてしま

う状況は、教師のバーンアウトを引き起こすことが考えられる。そのためにも、教師 の専門性が伸ばせる環境作りが目下の課題となってくるだろう。太囲(2008)もまた、

保育者集団として、保育についての考え方を理解し、共有することで保育者同士の支 えあいを生み、保育者の成長を促すとしている。そのためには、保育者同士が自分を 素直に表現したり、意見を述べたりすることのできる雰囲気作り、保育者の孤立を防 ぐこと、同僚の仕事や園の仕事に対する感受性を高めることが協同的な保育の素地を 作ること6)を明らかにしている。

 以上のことを踏まえ、未就園児保育に求められる教師の専門性について図4に表し

た。

コミ ニケーション

コーティネ ドカ

保護者理解 未就園児理角

環境構成カ

遊びカ 内省力

小 枚との連乃

専門機関 の連携

同僚性

図4 未就園児保育に求められる教師の専Fヨ性       54

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