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便益移転(原単位法など)

7 -1

便益移転法(原単位法など)の概要

便益移転(benefit transfer)とは、費用便益分析を行う際に新たに調査を実施せずに、

既存研究事例を用いて対象となる財・サービスの便益評価を行うことである。

便益移転には、大きく分けて、(1)既存研究の平均評価額を移転する方法、(2)便益 関数を移転する方法の2つがある。

便益移 転(

benefit transfer)と は、費用便 益分 析を行 う際 に新た に調 査を実 施せ ずに、過去

の研究 にお いて推 計さ れた既 存の 評価額 を、 いま問 題と なって いる 場に適 用し 財・サ ー ビ ス の便益 評価 を行う こと であり 、主 なもの に原 単位法 があ る。

便益移 転に 関する 研究 は米国 にお いて盛 んで ある。 その 理由は 、

1981

年 の大統 領令

12291

により 、影 響の大 きい 新たな 規制 はすべ て費 用便益 分析 を必要 とす ること にな ったた め で あ る。こ れに より、 米国 環境庁 は独 自に費 用便 益分析 のガ イドラ イン を作成 した が、調 査 研 究 予算に は限 りがあ るこ とから 、「既 存の方 法論 や研究 を用 いるこ とが できる 」と したた め で あ る。(Desvousges et al.(1992))

便益移 転の 方法に は大 きく分 けて 2つの もの がある 。1 つは、 過去 の研究 例で すでに 得 ら れてい る1 人あた り平 均評価 額を 移転す るも の(原 単位 法)で あり 、もう 1つ は、便 益 関 数 そのも のを 移転す る方 法であ る。 前者に は簡 便さが あり 、一方 、後 者の方 法は 人口分 布 や レ クリエ ーシ ョン地 のも つ特性 の違 い等を 考慮 できる ため 、より 正確 な便益 移転 を期待 でき る 。 参考)

平 均 評 価 額 を 移 転 す る 方 法 に 関 し て は 、

1970

年 代 に 入 り 研 究 者 が 便 益 関 数 移 転 の 方 法 を 開 発する まで 、プロジ ェ クト評 価で は主に 1日 あたり の平 均評価 額を 用いて 推計 をおこ なう 方 法

(unit value method: 原単位 法) が採用 され ていた .実 際に

Loomis(1992)が オレゴ ン州 の 川

釣 り 需 要 に つ い て 調 べ た と こ ろ 、 便 益 関 数 移 転 に よ る エ ラ ー が 、

0.93~17.5% で あ っ た の に 対

し、平 均評 価額を 用い た便益 移転 による エラ ーは

3.51~ 39.07%で あ った。 ただ し、Loomis

の 分析結 果の 中には 平均 評価額 移転 による もの の方が エラ ーが小 さい 場合も あり 、その優 位 性 は 絶対的 なも のでも 断定 的なも ので もない 。

( 出 典 : 竹 内 憲 司 ; 「 環 境 評 価 の 政 策 利 用 」 、 頸 草 書 房 、 1999)

7 - 2

平均評価額の移転の方法(原単位法など)

便益の平均評価額の移転の方法は、既存評価結果のうち、評価対象の属性や環境レベル が近似しているものを収集して、その WTP 平均値を移転するものである。

この方 法は 、既存 評価 結果の うち 、評価 対象 の属性 や環 境レベ ルが 近似し てい るもの を 収 集して 、そ の

WTP

平 均値を 移転 するも ので ある。(こ の手法 は比 較的簡 便で あり 、1970年代 に便益 関数 移転の 方法 が開発 され るまで 、プ ロジェ クト 評価の 分野 では「 原単 位法」 と し て 使用さ れて いた。)

しかし なが ら、WTPは 評価事 例ご とに変 動が 大きく 、し かも類 似事 例とい って も、調査 方 法やそ の環 境レベ ルは 大きく 異な ること が多 い。そ のた め、メ タ分 析(そ れぞ れの評 価 事 例 の

WTP

を 被説明 変数 、各評 価研 究に関 する 属性や 方法 論など を説 明変数 とし て回帰 分 析 を 行うこ と) を使用 する ことに より 、各評 価事 例の

WTP

の決定 要因 を探り 、そ の結果 得 ら れ た関数 に各 評価事 例の 属性を 対応 させ、新規 評価対 象の

WTP

を予 測 するこ とが 必要と なる 。

表 7 -1 メ タ 分 析 の 一 覧 Smith & Huang

(1995)

Smith & Kaoru (1990)

Smith & Osborne (1994)

Walsh, Johnson and Mckean

(1992)

手 法 HPM TCM CVM TCM,CVM

対 象 財 全 浮 遊 粒 子 状 物

質 (TSP

レ ク リ エ ー シ ョ

可 視 度 レ ク リ エ ー シ ョ

変 数 の 数 15 21 7 15

最 大 の 係 数 を も つ 変 数 ( + )

1960 年 の セ ン サ ス デ ー タ

国 立 公 園

環 境 質 の 変 化 塩 水 、 遡 上 釣 り 最 大 の 係 数 を も

つ 変 数 ( ― ) OLSに よ る 推 定 切 断 さ れ た 最 尤

法 に よ る 推 定 自 由 回 答 方 式 南 部 地 区

モ デ ル OLS OLS OLS OLS

サ ン プ ル 数 86 399 97 287

R2( 決 定 係 数 ) 0.688 0.45 0.729 0.36

出 典 : 竹 内 ( 1999)

7 - 3

便益関数の移転の方法

便益の便益関数の移転の方法は、類似の研究事例で評価した便益関数があるとき、その 関数 に そ の まま 新 規 評 価対 象 の 属 性デ ー タ を 代入 す る こ とで 、WTP を 推 定 する も の であ る。

この方 法は 、類似 の研 究事例 で評 価した 便益 関数が ある とき、 その 関数に その まま新 規 評 価対象 の属 性デー タを 代入す るこ とで 、WTPを推定 する もので ある 。そ の際 、既存研 究 調 査 の際に 得ら れた評 価者 の属性 情報 と同様 の情 報が新 規評 価対象 でも 得られ ると は限ら な い 。 そのた め、 便益移 転を 行いた い対 象での デー タ利用 可能 性にあ わせ て以下 のよ うに移 転 手 続 きを変 化さ せる必 要が ある。

=

=

NG

j

g jw N W

1

=

= NG

j

g j

j w

P W

1

π

=

= NG

j j jw P W

1

た だ し 、

W

: レ ク リエーショ ン便益の集 計額 : 社会属 性集団の数

NG

: 属性 集団のレク リエーショ ン参加者数

N

j

: 属 性 集団

P

j

j

の 人 口

π

j : 属性 集団

j

の レ ク リ エ ー シ ョ ン 参 加 率 : 参加 者の平均便 益

w

g

: 属性 集団

w

j

j

の 平 均 便 益

既存評 価対 象にお いて 、人口 分布 やレク リエ ーショ ン地 が備え てい る特徴 に対 する考 慮 が 十分で なけ れば、 便益 関数移 転の 有効性 が損 なわれ るこ とにな る。

7 - 4

便益移転適用の留意点

便益移転法を適用する際には、以下の点に留意が必要である。

①非市場財は、政策対象地と既存評価地で同一でなければならない。

②環境変化の程度は類似していなければならない。

③支払意思額と補償受入意思額を入れ替えてはならない。

④評価対象が影響をもつ範囲設定は類似していた方が望ましい。

⑤人口的特徴は類似していた方が望ましい。

評価を 実際 に行う にあ たり、 さま ざまな 制約 から非 常に 多くの 箇所 の評価 を短 期間で 実 施 するよ うな 場合が ある とすれ ば、 すべて の対 象に対 して 、新た に評 価を実 施す るより も 代 表 的な2 、3 の地域 につ いて詳 細な 調査を 行い 、それ に基 づき便 益移 転を行 う方 が、全 体 と し て評価 額の 精度は 高く なる可 能性 すらあ ると いえる 。

また、 環境 問題は 地域 内にお いて 開発派 と自 然保護 派と いった 立場 の違い によ って、 激 し い意見 の対 立をみ るこ とが多 くあ る。そ のよ うな環 境問 題に関 係し た評価 を行 う際に 、WTP を尋ね る質 問は住 民感 情を逆 撫で する危 険性 がある ため 、調査 自体 を実施 でき ない場 合 が あ る。そ のよ うな場 合に は、類 似の 他地域 にお いて得 られ た便益 関数 に、新 規評 価対象 の 属 性 データ を外 挿する こと により 評価 を行う こと も可能 とな る。

移転さ れた 便益評 価額 を安定 的に 信用で きる ものに して いくた めに は、便 益移 転の条 件 を 含め、 統一 した体 系的 な手続 きを 制度化 する 必要が ある が、既 存研 究にお ける 意見を 総 合 す ると便 益移 転実施 の条 件とし ては 、上記 の5 つをあ げる ことが でき る。( 竹内

1999)

付表)とりまとめの様式例

1)表明選好 法(CVM or コンジョイント分析)

外部経済評価 結果報告

○評価 手法 : 共通項 目

①事業 名 :

②事業 箇所 :

③事業 概要 :

④事務 所名 :

⑤評価 年度 : ⑥評価時 点:

個別項 目

⑦評価 項目 :

⑧調査 範囲 :

⑨支払 意思 額

支払意 思額 (平均値・中央値、単 位(個人、世 帯 等)):

支払意 思額 の推計手 法 :

⑩拡大 範囲

拡大対 象数 :

拡大範 囲と設定理 由:

⑪総便 益

総便益(単 年度): 総便 益(評価期 間): 評価 期間:

詳細項 目

⑫調査 実施 日 :

⑬サンプル

抽出方 法: サンプル数: 回収数: 回収率:

⑭質問 形式

回答方 式: 支 払形態: 支払 方法:

⑮プレテスト

実施回 数: 実 施対象(数): 確認内 容:

⑯調査 実施 方法 :訪問 or郵送・・

その他

⑰添付 資料 :使用 した アンケ ート 用紙、 事業 内容が 分か るパン フレ ット等

⑱その他の意見

そ の他特 筆すべ き点 ・解説 に対 する意 見等

2)トラベルコスト法

外部経済評価 結果報告

○評価 手法 :トラベルコスト法 共通項 目

①事業 名 :

②事業 箇所 :

③事業 概要 :

④事務 所名 :

⑤評価 年度 : ⑥評価時 点:

個別項 目

⑦評価 項目 :

⑧調査 範囲

対象範 囲(誘致圏):

対象範 囲の設定理 由:

⑨訪問 頻度 や魅力度の指標(訪問 頻度関 数等 ) :

⑩推定された需要曲 線 :

⑪当該 施設 で推計される需要(1 人 あたり年間 施設利 用回 数等):

⑫競合 施設 :

⑬ゾーン特 性:

⑭総便 益

総便益(単 年度): 総 便益(評価 期間): 評 価期間:

その他

⑮添付 資料 :事業 内容 が分か るパ ンフレ ット 等

⑯その他の意見

その 他 特筆す べき 点・解 説に 対する 意見 等

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