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代替法での評価の概要

-1-1 代替法の概要

代替法は、評価しようとする財・サービスと同等の機能を有し、代替することが可能と 考えられる財・サービスの価格をもってその価値とするものである。

CVM 、コ ンジョ イン ト分析 、T CM、 ヘド ニック ・ア プロー チ等 の手法 は、 何らか の 意 味で対 象と なる財 ・サ ービス にか かわる 市場 の情報 を活 用して 効用 を推定 して いる。 こ れ に 対して 、間 接的な 推論 から効 用を 計測す る手 法とし て、 代替法 、防 止支出 法、 再生費 用 法 、 被害費 用法 などが ある 。

表 6-1 間接的 な推 論から 効用 を計測 する 手法

代替法 は、 非市場 財に 対する 受益 者の厚 生変 化をこ れと 近似す ると 考えら れる 市場財 の 価 格で評 価す る方法 であ る。代 替法 は、評 価し ようと する 財・サ ービ スと同 等の 機能を 有 し 、 代替す るこ とが可 能と 考えら れる 財・サ ービ スの価 格を もって その 価値と する もので あ る 。

(対象 とな る環境 サー ビスと 全く 同一の サー ビスを 提供 する市 場で 取引さ れる 財は、 そ の 環 境財と 完全 代替関 係に あると いわ れる)

項 目 名 内 容

代 替 法

評 価 し よ う と す る 財 ・ サ ー ビ ス と 同 等 の 機 能 を 有 し 、 代 替 す る こ と が 可 能 と 考 え ら れ る 財 ・ サ ー ビ ス の 価 格 を も っ て 価 値 と す る 。 た と え ば 下 水 道 に よ る 水 洗 化 の 価 値 を 個 別 の 浄 化 槽 の 価 格 か ら 求 め よ う と す る も の で あ る 。

防 止 支 出 法 状 態 を あ る 水 準 に 保 つ た め に 支 出 す る 費 用 を も っ て 便 益 と す る 。 再 生 費 用 法 悪 化 し た 状 態 を も と に も ど す た め の 費 用 を 便 益 と す る 。

被 害 費 用 法

河 川 の 氾 濫 や 土 砂 崩 れ な ど や 交 通 騒 音 に よ る 被 害 な ど の 額 を 被 害 に あ う 可 能 性 の あ る 住 宅 や 工 場 、 オ フ ィ ス な ど の 資 産 額 や 人 の 治 療 費 に よ っ て 求 め よ う と す る 方 法 で あ る 。

-1-2 代替法の手順

①代替財の決定

①代替財の決定

②代替財の機能分析

②代替財の機能分析

③代替財の量を明確 に

③代替財の量を明確 に

④便益の推計

④便益の推計

市場財を用いて間接的に環境財の価値を計測する 方法である。

・他の手法は方法論は異なるが何らかの形で評価対象 の価値を直接把握しようとしている

複数の機能をもつ自然資源の価値を代替する市場 材をみつけることは困難

・評価対象は限定される

代替財による代替の量を確定することは困難

・一本の木と酸素ボンベは比較できても世界中の木

(=酸素がなくなる)とは比較できない

わが国では農業の公益的機能評価での適用例が 多い

・地域属性や便益のダブルカウントに注意

⑤結果の解析と報告

⑤結果の解析と報告

①代替財の決定

①代替財の決定

②代替財の機能分析

②代替財の機能分析

③代替財の量を明確 に

③代替財の量を明確 に

④便益の推計

④便益の推計

市場財を用いて間接的に環境財の価値を計測する 方法である。

・他の手法は方法論は異なるが何らかの形で評価対象 の価値を直接把握しようとしている

複数の機能をもつ自然資源の価値を代替する市場 材をみつけることは困難

・評価対象は限定される

代替財による代替の量を確定することは困難

・一本の木と酸素ボンベは比較できても世界中の木

(=酸素がなくなる)とは比較できない

わが国では農業の公益的機能評価での適用例が 多い

・地域属性や便益のダブルカウントに注意

⑤結果の解析と報告

⑤結果の解析と報告

図 6-1 代替法 の実 施手順 と留 意点

-1-3 理論面から見た留意点

当該施設と完全代替関係にある施設は少ない。したがって、使用する範囲についても十 分留意する必要がある。

代替法 は、 直感的 に理 解しや すく 、住民 など への説 明も 容易に なる と思わ れる が、完 全 代 替可能 な財 が存在 し、 かつ代 替す るため に必 要とさ れる 代替財 の量 が明確 にで きる場 合 以 外 は、誤 差が 大きく なる ことが 指摘 されて いる 。たと えば 、野生 動物 や生態 系等 は、人 工 物 で 置き換 える ことが でき ない、すな わち、(完 全)代 替物 が存在 しな いため 、代 替法で 評価 す る ことは 難し い。

また、 理論 的な観 点か らみる と、 代替法 で評 価する ため には市 場財 と評価 対象 が完全 代 替 の関係 にあ ること に加 えて、 かつ 代替さ れる 市場財 をゼ ロより も多 く消費 して いるこ と を 仮 定する 必要 がある とい われる 。

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代替財の決定

評価すべき当該施設を明確化するとともに、当該施設と代替関係にある施設・財・サー ビス選択する。

CVM 、コ ンジョ イン ト分析 、T CM、 ヘド ニック ・ア プロー チ等 、これ まで の手法 は 、 顕示的 か新 たな表 明か の違い はあ ったも のの 、評価 対象 そのも のに 対する 支払 意思額 を 直 接 尋ねて いる もので あっ た。代 替法 は、対 象と なる項 目と 同等の 役割 をする 市場 財を定 め 、 そ の価格 をも ってそ の評 価しよ うと するも ので ある。 した がって 、評 価すべ き当 該施設 を 明 確 化する とと もに、 当該 施設と 代替 関係に ある 施設・ 財・ サービ スを 明確に して おく必 要 が あ る。

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代替財の機能分析

明確化した代替材をどの程度投入すれば、計画されている(評価対象となっている)施 設と同等の機能を果たすことができるかといったことを分析するために、まずは、代替材 の個々の能力に関する機能分析を行う必要がある。

機能の 分析 とは、 たと えば評 価対 象が日 照障 害で、 日照 障害に よる 外部不 経済 の一部 を 暖 房エネ ルギ ー消費 量の 増加で 評価 しよう と考 えてい ると する。 この とき、 日照 障害の あ る 家 屋の暖 房を 電力に よっ てまか なう とすれ ば、 市場財 とし て電力 が選 定され るこ とにな る 。 次 のステ ップ として は、 どの程 度の (費用 の) 電力が 日照 に変わ り得 るのか 、に ついて 定 量 的 な分析 を行 うこと が必 要とな る。

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代替財の量

上記で明らかにした、代替材の個々の能力・機能をもとに、代替材をどの程度投入すれ ば、計画されている(評価対象となっている)施設と同等の機能を果たすことができるか という、代替材の投入量を明確にする。

【事例 】

いま 、非市 場財で ある 日照の 家屋 暖房能 力を 市場財 であ る暖房 にか かる電 力量( = 3時間 分の 暖房時 間の 増加 )とし て代替 させ るとし よう 。こ のとき 、以 下の関 係 式 を 用いれ ば暖 房量の 増加 、すな わち 日照の 価値 の試算 がで きるこ とに なる。

日照に よる 暖房量 =( 暖房必 要日 数)×( 日 照障害 によ る追加 暖房 時間: 3時 間)

×(3時 間 分の電 力消 費量)×( 電力単 価/ 時間)

(参考 :日 本エネ ルギ ー経済 研究 所(2001))

この事 例で は、日 照障 害によ り必 要とな る追 加的な 暖房 時間3 時間 が、「 代替 材の量 」に 相 当する 。

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便益の推計

導出された代替財の量と貨幣価値を掛け合わせることによって、当該施設の便益を算出 する。

代替財 の投 入量を 論理 的に導 くこ とがで きれ ば、そ れと 投入す るた めに要 する 単価を 掛 け 合わせ るこ とによ って 、総便 益は 簡単に 求め ること がで きる。 上記 の事例 では 、計算 式 に よ って示 して いるよ うに 、代替 材の 量すな わち 追加暖 房3 時間に 、そ の3時 間分 の電気 代 を 掛 け合わ せた 金額が 、日 照阻害 によ る一日 あた りの家 屋暖 房に関 する 外部不 経済 として 評 価 さ れる。 年間 の外部 不経 済を算 出す るには 、一 日の金 額に 年間暖 房必 要日数 を乗 じれば よ い こ とにな る。

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代替法適用時の留意事項

代替法で評価を実施する場合には、導出された代替財の量が評価対象施設の効果を過不 足なく代替しているかどうかのチェックを十分に行う必要がある。

前ペー ジの 日照障 害が 追加暖 房に 全て代 替で きるか どう かには 、議 論の余 地が あるこ と は 明らか であ ろう。 この 例で言 えば 、原単 位は 単に日 照障 害によ る外 部不経 済を 暖房費 が 増 加 すると 仮定 して代 替さ れてい る。 暖房費 用は 、住宅 の密 集度合 い等 の周辺 土地 利用状 況 等 に よって も異 なるで あろ うし、 単に 熱量の みで 言うな ら、 場合に よっ ては、 反対 に夏期 の 冷 房 費用の 節約 にも言 及し なけれ ばな らなく なる かもし れな い。ま た、 この事 例で は日照 が 遮 ら れるこ とに よる精 神的 な被害 等は 、基本 的に 計測で きな いこと にな る。

実際問 題、 当該事 業の 効果を 他の 施設整 備に 完全に 一対 一対応 で代 替する には 、ある 程 度 は仮想 的な 状態を 想定 せざる を得 ないこ とが 極めて 多い 。機能 的な 代替性 とそ の機能 の 価 値 が等価 でな いとす れば 、計測 結果 からは 完全 に誤差 を排 除する こと はでき なく なる。

したが って 、本解 説( 案)に おい ては代 替法 の適用 は、 他の手 法の 適用が どう しても 困 難 な場合 のみ に行う こと として いる 。

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