• 検索結果がありません。

3.8 トラブル事例による土壌汚染対策事業と一般建設工事の比較 11)

3.9.4 作業時の安全管理

今回の作業がこれまでに例のない遺跡発掘作業である.そして,当然遺跡を傷つけずに 汚染土壌を除去することが前提条件であるが,この発掘作業に対応した公害防止対策が必 要であった.このため,特に水銀が揮発性の高い物質であることに注意を払い,次の基本 方針を立てた.

①水銀による作業者および関係者への健康被害の防止

②水銀による周辺環境への二次汚染の防止

1)健康被害の防止

水銀による作業員および関係者への健康被害の防止に関し以下の項目を実施した.

a)作業員への周知と点検

現地監理(管理)者は,作業実施前に作業員等に対する安全講習会(2 時間程度)を実 施し,上記①,②について周知徹底を行った.

b)対象地への立ち入りの制限

対象地の周囲に万能鋼板(H=3.0 m)による仮囲いを設置し,関係者以外の立ち入りを

写真-1 発掘作業 写真-2 出土した水銀

30 制限した.

c)作業員の安全管理

作業中のヘルメット,ゴム手袋,ゴム長靴および防塵眼鏡や防毒マスクの保護具着用を 義務づけ,休憩時や作業終了後の手洗い,うがいの励行を義務づけた.また,作業着への 付着土壌の除去を徹底させた.これらの教育は作業前,朝礼,終礼および作業中逐次実施 した.保護具着用の状況を写真-3に示す.

d)ストレス解消のための休憩

作業員に対しては作業中の保護具着用による効率低下や慣れない作業であるためのス トレスの軽減を図った.具体的には、通常よりも休憩の回数を増やし(午前 2 回、午後 2 回、合計 4 回/日),休憩時間を長く(15~30 分間/回)した.

2)二次汚染の防止

水銀による周辺環境への二次汚染の防止に関しては,以下の項目を実施した.

a)仮囲いの設置

汚染土壌の除去作業の際,汚染土壌の飛散が外部へ及ばないよう対象地の周囲に仮囲い

(前述)を設置した.

b)対象地の養生および通路清掃

対象地の除去地点および運搬通路を除く範囲をベニヤ板やシ-トにより覆うとともに,

毎日の作業終了前に運搬通路の清掃を励行した.

c)汚染土壌の運搬

汚染土壌を除去地点から運搬する際,土壌が落下しないように慎重な運搬を行った.

d)長靴による汚染拡散防止

対策地で作業するための長靴を限定するとともに,長靴履き替えエリアを設置し二次汚 染防止を図った.

e)雨水対策

対象地への雨水浸透防止には,除去範囲をシ-トにて養生した.シート下に溜った雨水 はくみ上げて仮置きのタンクにストックした.この水は,土壌と同様に水銀のリサイクル 処理施設へ運搬し処理した.

写真-3 保護具着用

31

3.9.5 おわりに

その他注意を払った点は,作業した季節が初夏であったこと,健康被害防止のため防毒 マスクや防塵眼鏡等を着用していたことから作業員の暑さによる体力消耗が懸念された.

その対策として通常よりも休憩時間や回数を増やし,作業場所にテントを設置し熱中症防 止を図った.このような対策を実施したことにより,工程調整に苦労したものの,暑さに よる体調不良者を出すことは無かった.

以上,遺跡発掘作業において出土した水銀汚染土壌の汚染状況および除去作業について 述べた.遺跡を傷つけずに発掘の作業を基本として水銀汚染土壌による作業員の健康被害 を避ける方法により作業を進め,無事終了することができた.

32

【第 3 章の参考文献】

1)土木学会,建設マネジメントシリーズ 02 土壌・地下水汚染対策事業におけるリスクマ ネジメント―失敗事例から学び,マネジメントの本質に迫る―,2008年5月

2)環境省:油汚染対策ガイドライン,2006年,http://www.env.go.jp/water/dojo/oil/full.pdf 3)環境省:揮発性有機化合物による地下水汚染対策に関するパンフレット

「地下水をきれいにするために」,2004年,http://www.env.go.jp/water/chikasui/panf/pdf/p02.pdf

4)環境省:事業者のための地下水汚染対策,1997年

5)土壌の含有量リスク評価検討会:土壌の直接摂取によるリスク評価等について、2001年、

http://www.env.go.jp/council/toshin/t10-h1407/08.pdf

6)中杉修身:地盤環境汚染にかかわる化学物質と毒性、地盤環境汚染における指針の改定 と調査・対策技術の現状講習会講演資料、地盤工学会、pp.1-7、1999年

7)(社)土壌環境センター:土壌汚染と対応の実務、オーム社、p.155、2001年

8)環境庁:土壌・地下水汚染に係る調査・対策指針及び同運用基準の策定、1999年、

http://www.env.go.jp/water/dojo/ref01.html

9)下池季樹,島崎敏一:環境修復事業のマネジメントの体系化に関する研究,土木学会論 文集F4(建設マネジメント),Vol.67,№4,pp.131-143,2011年

10)土木学会建設マネジメント委員会環境修復事業マネジメント研究小委員会:CM方式に

よる環境修復事業について研究報告書,pp.4-5,2003年5月

11)下池季樹, 尾崎哲二 ,山内仁 ,笠水上光博:土壌汚染対策工事において発生した事

例によるリスクマネジメントについて,地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研 究集会第8回講演集,pp.429-430,2002年

12)山海堂,イラストでわかる土壌汚染,2003年3月 13)青森県HP,2012年2月

http://www.city.hachinohe.aomori.jp/index.cfm/9,4292,65,160,html

14)尾池響平,河田貴泰,寺見明久,古谷俊晃,羽田野裕子:新市場における土壌汚染解 析,2010年

http://www.risk.tsukuba.ac.jp/riskhp08/educ/group-work/2010/report/2010_group_04_final.pdf 15)東京都中央卸売市場HP,2012年2月

http://www.shijou.metro.tokyo.jp/toyosu/about/index.html

16)下池季樹:遺跡発掘調査と汚染土壌除去作業の同時実施事例;地下水・土壌汚染とそ の防止対策に関する研究集会第 16 回講演集,pp.421-423,2010

33

4.土壌汚染対策事業における失敗事例

1)