7. ブラウンフィールドに対する新しいマネジメント手法導入 1)
9.1 結論
土壌や地下水の汚染について調査および浄化対策を行う土壌汚染対策事業が近年,民間 企業を中心に取り組まれてきている.しかし,我が国では土壌汚染対策事業に関する蓄積 が豊富というわけではなく,また,その対策は高額なコストを要すること等,多様なリス クを伴うことが明らかになってきており,土壌汚染対策事業の効率的なマネジメント手法 の確立が求められる.このような背景から,本研究は土壌汚染対策事業に対して最適なマ ネジメント手法を導き出すことが研究の目的であった.
第 2 章の既往研究のレビューについては,既往研究を整理にしたところ,本研究のよう な土壌汚染対策事業に対するマネジメントに関する研究はされていない.土壌・地下水汚 染に関する既往研究では,土壌・地下水汚染に関するリスクにおいて,有害物質に対する リスクやその健康リスクの個別の研究は多数ある,また,汚染土壌で流動化できない土地 であるブラウンフィールド問題を焦点にした研究論文もある.一方,マネジメント手法に 関する既往研究では,地方自治体の CM 方式活用事例,建設事業のリスク,建設事業に対
する PFI/PPP 等に関する研究やリスクマネジメント手法等の様々な研究論文がある.また
環境に関する既往研究では,環境コーディネーターについての既往研究があるが,これは 環境領域全体に対する必要な組織や人材についての研究であり,土壌汚染対策事業に特化 したマネジメントに関する研究は本研究だけである.これにより,本研究の位置付けを明 確にした.
第 3 章の土壌汚染対策事業の特徴については,まず,土壌汚染の歴史概説で主な土壌汚 染年表を示した.また土壌・地下水汚染のメカニズム,健康に与える影響,調査対策の手 順,一般建設事業と土壌汚染対策事業の比較,土壌汚染対策事業の受注ケース,そして,
トラブル事例による土壌汚染対策事業と一般建設工事の比較示した.
第 4 章の土壌汚染対策事業における失敗事例では,調査時における失敗事例,計画時に おける失敗事例および対策における失敗事例を土壌汚染対策事業の実務者により洗い出し 整理した.そして,社会的重大問題となった失敗事例を示し,考察と対策のポイントを述 べた.
第 5 章の土壌汚染対策事業におけるリスクマネジメントでは,各段階における土壌汚染 対策事業のリスクを抽出し,そのリスクについて分析をした.そして回避策や対応策を検 討した.
第 6章の土壌汚染対策事業への CM方式導入では,土壌汚染対策事業の特徴,土壌汚染 対策事業の各段階における失敗事例およびリスクの抽出,その回避策・対応策の検討等、
第5章までの研究内容を踏まえ, CM方式を導入する理由と必然性について示した.その 具体的な方法は,様々な事業執行形態に対して,導き出した土壌汚染対策事業の重要事項 を比較項目とした.比較方法は定量的な評価方法を採用し,各事業執行形態について 5 段 階評価で点数を付け,合計の点数が高い事業執行形態が土壌汚染対策事業に適するとした.
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これにより比較した事業執行形態の中で CM 方式が適していると結論付けた.また,土壌 汚染対策事業への CM 方式導入による顧客満足度向上の可能性を調査結果から,土壌汚染 対策事業を円滑に執行するために重視する上位の項目が,土壌汚染対策事業の重要事項と 共通する.したがって,土壌汚染対策事業へのCM方式導入が適していることを裏付けた.
さらに,土壌汚染対策型のCM業務を提示した.
第7章のブラウンフィールド(以下,BF)に対するマネジメント手法導入では,BFの現 状,BF の原因・影響と各種取り組み,またPFI等のマネジメント手法については,PFI の 定義,事業方式,歴史や現状と課題を示した.一方,BFの利用方法では,選択し得る土地 利用用途,海外および日本の事例研究を記した.管理手法では,BFサイトの再生地を利用 する場合の管理方法について,地下水拡散,土壌,飲用水,ガス等について述べた.さら に,ケーススタディでは,スーパー堤防をモデルとした 3 つのケーススタディの検討や桑 名市立図書館の PFI 事例について公表されている情報をもとに,リスク管理と掘削除去の 対策費用を算出した.そして,有効な土地活用の方法および新規事業創出の可能性等の提 案について,PFI的なマネジメント手法を検討し新たな仕組みを提案した.また具体的な土 地利用方法と新事業創出では,BFでの有効な土地活用ができる事業を提案した.
第8章の土壌汚染対策事業のマネジメントの体系化では,6章までの研究により土壌汚染 対策事業に CM 方式導入が適していることが導き出された.それを体系化し図化により表 現した.その体系化の作成方法は,抽出・整理した多種多様なリスク項目を土壌汚染対策 事業におけるリスクマネジメントを構成する要素と考え,CMRとの関係をリスクマネジメ ント概念図で表現した.そして,その概念図に「事業構想→調査段階→対策段階→新たな 土地利用」の循環を事業サイクルとして位置づけ,土壌汚染対策型の CM 方式(対策計画 マネジメント;CM-Ⅰ,情報公開サポートマネジメント;CM-Ⅱおよび対策工事マネジメ ント;CM-Ⅲ)を関係づけた.そして,土壌汚染対策事業におけるマネジメントの体系を 図化した.しかし,その事業のリスクを整理するとPhaseⅠ,Ⅱの「調査段階」の領域でも 多くのリスク項目が抽出されている.したがって,土壌汚染対策型CM方式の領域はPhase
Ⅲの「対策(計画・施工)段階」に加え,より上流側である「事業構想」やPhaseⅠ,Ⅱの
「調査段階」からの関与が必要であると考える.これらから,土壌汚染対策事業全域のマ ネジメントはCMよりも,事業の構想・事前評価の段階から関与する PMのマネジメント 手法の導入が最適であることが導き出された.
さらに,土壌汚染対策事業にはPM方式が最適であることを豊洲新市場の事例について検 証した.それは,築地・豊洲の沿革から土壌汚染対策事業の問題点を抽出し,その問題点に ついて検証した.これにより,土壌汚染対策事業にはPM方式が最適であることが豊洲新市 場の事例からも検証された.
以上から,本研究の結論は,土壌汚染対策事業に対して最適なマネジメント手法が PM 手法であることを明確に示した.
また,研究の概念を体系的に図化することは,現状の問題点や今後の課題が浮上してく る効果がある.それゆえに本研究で導き出した概念は,その他の複雑で困難な事業に対し ても活用できる.すなわち,本研究の成果は汎用性が高いと考えられる.
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9.2 今後の課題
表 9.1 各マネジメントの定義
コンストラクションマネジメントConstruction Management
プロジェクトマネジメント Project Management
プログラムマネジメント3)
Program Management
定義
「建設生産・管理システム」の一つ であり、発注者の補助者・代行者で あるCMR(コンストラクション・マネージャー)が、
技術的な中立性を保ちつつ発注者 の側に立って、設計の検討や工事発 注方式の検討,工程管理,コスト管 理などの各種マネジメント業務の 全部又は一部を行うもの。
発注者のために、可能な限り効果的 な方法によりプロジェクトの成果 を実現させるプロセス。具体的に は、プロジェクトのすべてにわたり 包括的なマネジメントを行うこと をいい、この役割を担う主体をPM R(プロジェクト・マネージャー)という。
CMよりも上流側の段階も含まれ る。
全体使命を達成するために、外部環 境の変化に対応しながら、柔軟に組 織の遂行能力を適応させる実践力 である。この実践力の役割は、プロ ジェクト間の関係性や結合を最適 化して全体価値を高め、使命を達成 する統合活動である。
土壌汚染対 策事業にお ける領域
主に対策段階 構想・調査・対策 個別事業の統合
土壌汚染対策事業は新しく,経験の少ない事業であるため,個別の事業間で必要な知識 や技術等を共有することが必要となる.そのため,その個別の事業を統合してマネジメン トを行うプログラムマネジメント(PM)の手法導入の有効性について検討・分析すること が,今後の研究の課題である.
コンストラクションマネジメント(CM),プロジェクトマネジメント(PM)およびプ ログラムマネジメント(PM)の各マネジメントの定義を表 9.1に示す.また,土壌汚染対 策事業のプログラムマネジメント概念図を図 9.1に示す.
最後に土壌汚染対策事業の最適マネジメントの推移を図 9.2に示した.