4.3 施工時における失敗事例 11)12)
4.4.3 リサイクル埋め戻し材による土壌汚染問題
平成14 年7 月に東海地方の工事現場で放射能が検出されたことを皮切りに,各地で不法 投棄まがいの上場化学メーカーA 社のリサイクル製品である埋め戻し材(以下,埋め戻し 材F)の利用現場が発見された.放射能のみならず,環境基準値を超過する六価クロムなど も検出されている.(表4.13参照)
表 4.13 経緯
時 期 出 来 事 平成13年8月 「F」の販売開始
平成15年9月 県リサイクル製品認定
平成17年3月 県が工場立入調査(販売方法ほか)
同年4月 「F」の製造・販売を中止 同年6月 認定取り下げ願いを受理
六価クロムの土壌環境基準超を確認 同年8月 検討委員会設置
同年10月 社内調査結果の報告(不正製造)
同年11月 廃棄物処理法違反で告発
撤去着手~ 対象量約100万トン
この件に関する行政の対応は一貫せず,特に平成15 年にリサイクル製品として認定した X 県は,当初住民団体との話し合いに応じないなど誠意ある対応とはいえない態度を取っ た.また,A 社側の対応も埋め戻し材F の撤去方針で他県を優先するなど,製造責任を認 めた企業の態度ではなかった.問題の根本原因は,大きく分けて2 つと考える.
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① コンプライアンス(法令遵守)の欠如
A 社には,酸化チタン製造工程で発生する副産物である廃硫酸をそのまま公共水域に排 出するという事件を起こして摘発された過去がある.塗料などに利用される酸化チタンの 需要が増大する中,周辺への公害拡散を省みず強行した愚行であったと推量される.
A 社側の説明によると,埋め戻し材F 自身が同じく酸化チタン製造工程における副産物 の「リサイクル製品」ということになっている.今回の事件には,過去の事件に対する反 省はなかったのであろうか.
② 廃棄物処理に関連する法体系の不備
廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下,廃掃法)の条文では,大量生産に伴い産業 廃棄物が大量に発生するという前提のもとで法体系が成り立っている.
また,産業廃棄物の定義をばいじんなど数項目に限定しているなど,現状に合わない面 も有している.例えば,企業活動に伴って排出されるオフィスの紙ごみなどは,一般廃棄 物という扱いになり,地方自治体の責任で回収されるなどといった矛盾点も指摘されてい る3).
埋め戻し材F は,廃掃法で規定された産業廃棄物の中では「鉱さい」に該当すると考え られる.産業廃棄物と捉えると,放射能や六価クロムの溶出の可能性が大きいため,管理 型処分場への搬入が前提となる.ところが,これに「リサイクル」の名目を与えると,法 的には「商品」として自由に流通することになるのである.
廃棄物の処理方法として「リサイクル」の考え方が取り入れられたのは,ごく最近のこ とであり,廃掃法もその変化に対応し切れていない.今回の埋め戻し材F をめぐる事件は,
このような法体系の「スキ」を突かれたという面も決して否定できない.
4.4.4 まとめ
4.4では,土壌汚染問題によりリスクが顕在化した事例を整理するとともに,リスクマネ ジメントの観点から考察した.事例の4.4.1については重要事項説明義務の点で問題が発覚 し,事例の4.4.2については措置後の瑕疵として汚染が判明した.
土地の売買を伴うケースにおいては,事後に民事的に問題となることがあり,法律等に基 づく行政手続よりも民間契約に制限される範囲が拡大している傾向が認められる.そうし たことを踏まえて技術面ならびに法務面での環境整備を進めてゆくことが必要である.
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4.5 失敗事例からの考察と対策のポイント
土壌汚染対策事業の調査から計画,施工段階での失敗事例から,その各段階での対策ポ イントを示す.
最後に,ある土壌汚染対策工事において発生した近隣の住民とのトラブルの事例を示し,
対応した対策を述べる.またトラブルの原因について検討し土壌汚染対策工事において留 意すべき点を指摘する.
(1)調査時の対策ポイント
資料等調査の失敗の多くは土壌調査時に顕在化する.ここでは単純なミスや技能不足に よる失敗事例も見られるが,ほとんどが情報不足によって生じている.発注者にその原因 のあることは勿論であるが,作業を進める調査担当者は対象地の見聞により有益な情報を 得ることや発注者から対象地に係る情報をできるだけ取り出す工夫が必要であろう.
土壌調査では多くの失敗事例を収集した.全般に調査担当者の勉強不足,経験不足に起 因する事例であった.しかし,土壌ガス調査での失敗事例は土壌ガス調査の限界を示して おり,今後の精度の向上に期待したい.また,ボーリング時におけるVOCs の二次汚染は 防がねばならず,二次汚染に対する意識向上とともに防止技術の向上が期待される.土壌 試料のハンドリング時のコンタミネーションに注意を払う必要があることは言うまでもな い.
関係者間のコミュニケーションにおいては,正確な情報を後手にならないように公開す ることがトラブルを回避するポイントであろう.
(2)計画時の対策ポイント
対策の計画では,その前提となる土壌調査結果などの条件を正確に把握することが重要 である.そのため計画段階で再度,施工向けの土壌調査を実施した事例もあった.さらに,
工法の十分な理解が必要であり,加えてあらゆる工法を公平な目で評価する能力とスタン スが求められる.
また,この段階においても関係者間のコミュニケーションによる相互理解と情報交換が 重要である.住民による反対活動を回避したいといった消極的な姿勢ではなく,コミュニ ケーションによって新たな情報を得て,対策計画の条件にするといった積極的な姿勢が望 まれる.
(3)施工時の対策ポイント
施工計画でのミスは対策工事で顕在化する.取り上げた事例は初歩的なミスによるもの であった.土壌汚染対策事業は土木工事的な側面と有害物質を取り扱ういわば廃棄物処理 的な側面を合わせもつ.施工計画の担当者はこの両面を理解することが大事である.
施工時では多様な失敗事例が取り上げられた.単に経験不足や認識不足を原因とする失 敗のほか,有害物質を取り扱うことによる事故やトラブルや健康被害,また対策工事にお ける浄化確認法の不備による失敗,化学物質の使用による失敗など土壌汚染対策事業の代 表的な失敗が見られた.これらの失敗を防ぐには,経験などを通じて施工担当者の技量を 高めることが重要であろう.
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施工時のコミュニケーションの失敗事例では,初歩的な確認不足による失敗もあるが,
基本的には住民や発注者との適切なコミュニケーションの不足が原因であった.
施工後の失敗事例では初歩的なミスが失敗の原因となった事例がほとんどであった.た だし,遮水壁など長期的な期間で浄化を図る場合には,その浄化能力の劣化の確認方法を 確立させておく必要がある.
【4 章の参考文献】
1)尾崎哲二,下池季樹,藤長愛一郎,三村卓,佐鳥静夫,角南安紀,松川一宏:環境修復 事業における失敗事例とその考察,建設マネジメント研究論文集Vol.14,pp. 179-190,2007
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