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第 2 章 低温下におけるワックス添加加硫ゴムのオゾン劣化メカニ

2.2 実験

2.2.1 試料

橋梁用ゴム支承のオゾン劣化挙動の検討には,実際のゴム支承に用いられる NR 2 mmtシートを用いた.NRシートの組成はISO 9924-1 “Rubber and rubber products - Determination of the composition of vulcanizates and uncured compounds by thermogravimetry - Part 1: Butadiene, ethylene-propylene copolymer and terpolymer, isobutene-isoprene, isoprene and styrene-butadiene rubber” 準拠の熱重 量測定により,NRが62.1 wt%,CBが21.9 wt%,灰分が4.3 wt%であることを確認 した.

低温下における加硫ゴムのオゾン劣化メカニズムの検討には,ジエン系ゴムのモデル としてイソプレンゴムを用いた.ゴムはJSR㈱製のイソプレンゴムIR2200,オゾン劣 化防止剤ワックスは工業的に汎用される大内新興化学工業㈱製のサンノック(混合ワッ クス,重量平均分子量Mw 910,数平均分子量Mn 870,融点73.2 ℃,いずれも実測 値)を用いた.Table 2-2の配合にてワックス以外の試薬をオープンロールで混練り後,

ワックスが完全に溶融する温度80℃でワックスを0.0,0.5,1.0,2.0,4.0 phrとそれ ぞれ添加し,160℃×8分間のプレス加硫にて1 mmtまたは2 mmtシートに成形した.

動的粘弾性(DMA)測定の tanδピークにより決定したゴムのガラス転移点は-52℃

であり,-30℃から40℃の範囲で十分なゴム弾性を有することを確認した(Figure 2-3).

Table 2-2 Compound formulation of isoprene rubber (Unit: phr)

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Figure 2-3 Temperature dependence of storage modulus E’, loss modulus E’’ and loss tangent tanδ measured by DMA for the vulcanized isoprene rubber with 4.0 phr wax.

32 2.2.2 ワックス皮膜の形成及びオゾン暴露

ゴム試験片は JIS K 6251“加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方”のダンベ ル状1号形を用い,試験片の標線間距離40 mmに対し伸張20%を付与した.ワックス のブルーム速度は,加硫ゴムに対するワックスの溶解度及び拡散速度の温度係数,すな わち加硫ゴムの暴露温度に著しく影響される8,9).そこで,ゴムを23℃又は40℃の大気 雰囲気下でそれぞれ72時間熱処理後,23℃で 24時間静置することによりワックス皮 膜をゴム表面に再現良く形成させた.ゴム表面に析出したワックス量は,薄い金属板で ワックス皮膜を物理的に擦り取ったときの,ゴムの重量減少から算出した.オゾン暴露 条件は,試験片の伸長20%を維持したまま,オゾン発生器(荏原実業㈱製OZSD-0008D), 小型低温恒温器(エスペック㈱製MC-711T),オゾンモニター(荏原実業㈱製EG-700E

Ⅲ)で構成されるオゾン暴露試験機を用い,温度-30℃,-15℃,0℃,10℃,23℃,

40℃の6水準,オゾン濃度50 pphmの静的条件にて24時間暴露した.なお,熱処理 及びオゾン暴露は外部からの光が遮断された状態で実施した.オゾン暴露後のゴム表面 は,㈱キーエンス製デジタルマイクロスコープVHS-2000(×20),又は日本電子㈱製走 査電子顕微鏡(SEM)JSM-5610LV(×500,×1500)にて観察した.

2.2.3 ゴム及びワックスの熱収縮率測定

ゴム及びワックスの熱収縮率は熱機械的分析装置(TMA)にて,メトラー社製 TMA/SDTA841eを用い,試験片形状5 mm×5 mm×1 mmt,荷重50 mN,温度23℃か ら-30℃,降温速度 5℃/min における厚さ方向の寸法変化を測定,23℃の試験片厚さ を基準とし,式(1)により算出した.

100

0 1

0

m m m

収縮率(%)=  …(1)

m0:23℃時の試験片厚さ(mm)

m1:各測定温度における試験片厚さ(mm)

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2.2.4 ワックス単体のDMA測定及び3点曲げ試験

DMA温度分散測定はアントンパール社製の応力制御型回転式レオメータMCR702,

板状固体ねじり測定システム SRFジグを用い,ワックスの溶融・固化にて短冊状に成 形した20 mm×5 mm×1 mmtの試験片を,クランプ間距離10 mm,周波数6.28 rad/sec,

振幅角0.005%,降温速度2℃/minにて40℃から-40℃における複素せん断弾性率G*

の温度依存性を測定した.

3点曲げ試験は,ティー・エイ・インスツルメント社製の動的粘弾性測定装置RSAⅢ を静的モードで用い,ワックスの溶融・固化にて短冊状に成形した40 mm×10 mm×1 mmt又は40 mm×10 mm×3 mmtの試験片を,支点間距離25 mm,曲げ速度1 mm/min,

温度-30℃,0℃,23℃,40℃にてそれぞれ測定した.

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