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ケース2

6.2 今後の課題

3)RC 橋脚における軸方向鉄筋のはらみ出し長と塑性ヒンジ長の関係

軸方向鉄筋のはらみ出し長と塑性ヒンジ長の関係を明らかにするため,塑性ヒンジ長を終局変位 から逆算し,これとはらみ出し長の関係を検討した。また,実験の曲率分布の実測値と曲率分布を 矩形ブロックにモデル化した場合の塑性曲率が生じる領域の高さの比較を行った。その結果,矩形 断面の供試体については軸方向鉄筋のはらみ出し長と塑性ヒンジ長が概ね一致することが分かっ た。円形断面およびインターロッキング断面の供試体については,塑性ヒンジ長がはらみ出し長の 1~6 倍となり,はらみ出し長により塑性ヒンジ長を直接的には評価できないことが分かった。

4)円形断面橋脚の塑性ヒンジ長の推定

曲げ破壊する RC 橋脚の柱基部の断面のように曲げを受ける場合には,円形断面橋脚の場合も圧 縮領域は断面の限られた領域であるため,矩形断面橋脚の場合と同様に帯鉄筋の曲げ剛性により拘 束する状態の方が実現象に近いと推測され,さらに直径が大きな実大橋脚では,円形の帯鉄筋の曲 率は大きく,帯鉄筋は矩形断面橋脚とほぼ同様の挙動を示すものと考えられるため,矩形断面橋脚 と同様に帯鉄筋バネを帯鉄筋の曲げ剛性を基に設定することを提案した。この仮定に基づき塑性座 屈解析を行うと,塑性ヒンジ長を比較的良く再現できることが分かった。

5)塑性ヒンジ長の算定式

円形断面橋脚の帯鉄筋バネを矩形断面橋脚と同様に,帯鉄筋の曲げ剛性を基に求め,塑性ヒンジ 長の算定式を式(5.4.1)のように提案した。また,軸方向鉄筋の塑性化領域の範囲から塑性ヒンジ 長の上限値として,0.15h(h:橋脚高さ)を設定した。

参考文献

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