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浅津ら 7)は,実験における終局変位や曲率分布から塑性ヒンジ長を逆算し,はらみ出し長と比 較することではらみ出し長と塑性ヒンジ長の関係を求めた。その結果,矩形断面橋脚の場合には 軸方向鉄筋のはらみ出し長と塑性ヒンジ長がよく一致することが明らかにされている。また円形 断面橋脚の場合には,はらみ出し長の 3~5 倍が塑性ヒンジ長に相当していると推定している。た だし,対象とした円形断面橋脚の数が少ないため今後の検討課題とされていた。

本研究では,矩形断面橋脚の他,円形断面橋脚の数を増やして解析を行っており,これらを基 にはらみ出し長と塑性ヒンジ長の関係について検討を行った。なお,これ以降の検討に用いる塑 性座屈解析におけるはらみ出し長の値は,実験値を最も良く推定していると考えられる軸方向鉄 筋の降伏後の剛性を 0 とし,かぶりコンクリートの拘束を表すバネを線形バネとしたケース 1 の 値を用いるものとした。

なお,本章の検討においては,検討対象とするデータ数を増やすため,本研究において塑性座 屈解析の対象とした供試体だけでなく,土研資料第 3748 号6)において検討対象とされた供試体の 一部についても対象とすることとした。土研資料第 3748 号の検討では,軸方向鉄筋のモデルに加 藤モデルが用いられているなど,解析条件が本研究の解析とは一部異なっているが,2.2(2)に示 したように,その影響は大きくないと判断したためである。

(1)矩形断面橋脚

1)終局変位から算定した塑性ヒンジ長とはらみ出し長の関係

平成 14 年の道示1)では,RC 橋脚の終局水平変位は式(5.1.1)で算出される。ただし,式(5.1.1) には軸方向鉄筋のフーチングからの伸び出しの影響が含まれていないため,これを考慮して書き 直すと式(5.1.2)のようになる。

   / 2

_ex y u y p p

u

      L hL

(5.1.1)

u y

 

p p

sp ex y

ex

u_

   L h L / 2 

_

     

(5.1.2)

ここに,

ex u_

:実験における終局水平変位(mm)

y:計算による降伏水平変位(mm)

u:計算による終局曲率(1/mm)

y:計算による降伏曲率(1/mm)

L

p:塑性ヒンジ長(mm)

h

:橋脚基部から載荷点までの高さ(mm)

ex sp_

:実験における軸方向鉄筋のフーチングからの伸び出しに起因する基部の回転による載 荷点の水平変位(mm)

塑性ヒンジ長は,式(5.1.2)を展開することによって式(5.1.3)として表せる。ここで,降伏変 位,降伏曲率,終局曲率は平成 14 年の道示に示された手法に従って算出した値である。

 

y u

ex sp y ex u

p

h h

L  

 

2

2

_ _

(5.1.3)

図-5.1.1に実験における終局変位から逆算した塑性ヒンジ長と解析によるはらみ出し長の関係 を示す。また表-5.1.1はそれぞれの値を整理したものである。なお,軸方向鉄筋のフーチングか らの伸び出しに起因する基部の回転による水平変位が計測されていない供試体は,その変位を終 局水平変位の 20~30%の範囲と仮定し,塑性ヒンジ長に幅をもたせて評価した。

矩形断面橋脚においては,浅津ら 7)の結果と同じくはらみ出し長と塑性ヒンジ長は 1:1 に近い 傾向がある(相関係数 0.813)。

0 200 400 600 800 1000 1200 1400

0 200 400 600 800 1000 1200 1400

塑性ヒンジ長実験値(mm)

はらみ出し長解析値(mm)

y=1.0x

図-5.1.1 実験終局変位から求めた塑性ヒンジ長と解析値(矩形断面橋脚)

表-5.1.1 実験終局変位から求めた塑性ヒンジ長と解析値(矩形断面橋脚) 15.0657.50119922.50446390 25.0346.04106513.48353420 35.6241.51115410.79-16.18324-394350 45.6547.69116813.66-20.49383-461400 55.6854.41116813.66-20.49326-391367 65.5942.675316.19-9.28276-334350 75.6370.162295.85-8.78277-330260 86.6139.43125811.51-17.26368-451500 96.6834.27126512.94-19.41533-656500 106.8228.00135911.86-17.8626-782500 118.3287.412213019.90399288 129.6371.652613723.40514272 139.5248.692513528.50797352 148.5568.202210821.6-32.4318-387288 155.6992.541513426.8-40.2321-379272 161.5230.664126157.31601810 1-a4.4455.22116713.21288355 4-a4.3761.8743610.13225297 5-a2.4622.51126620.80358473 6-a2.4958.7412934.55291303 7-a2.7245.451312434.47391371 8-a2.5939.151211220.61480460 9-a1.4712.504020233.3513101030 11-a5.53126.909719.92184244 12-a9.75119.302613121.30270228 13-a8.80172.80219532.1088163 14-a10.5983.622913024.50377243 15-a4.6788.41138525.62190273 注1) 土研資料第3748号の供試体No.については、本研究の供試体Noと区別するため「-a」を付している。

終局水平変位 (mm)伸び出しによる (mm)

終局変位から算出 した塑性ヒンジ長 (mm)

解析によ はらみ出し (mm)(ケ1)

伏曲率 10-6 rad/mm)終局曲率 10-6 rad/mm)降伏変位 (mm)供試体No.断面形

2)曲率分布から見た塑性ヒンジ長とはらみ出し長の関係

表-5.1.1に示した供試体のうち,本研究における No.1~2,11~13,16 供試体および土研資料 第 3748 号6)で検討対象とされた供試体については橋脚基部周辺の曲率を計測しており,この分布 から橋脚の塑性化の状況を把握することができる。実験で計測された曲率は,RC 橋脚のひび割れ の発生箇所等にも影響を受けて,局所的に大きくなる場合もあるが,一般には柱基部で大きくな り,柱基部より上方にいくにつれて小さくなる傾向にある。しかし平成 8 年および 14 年の道示で は,設計計算のための簡便なモデルとして橋脚の塑性曲率は,矩形ブロックとしてモデル化され ている。そこでここでは,塑性ヒンジ長とはらみ出し長との関係を確認するため,実験で得られ た塑性曲率と実験でのはらみ出し長を高さとした矩形ブロックモデルにおける曲率の大きさを比 較するものとした。

この等価な矩形ブロックにモデル化した場合の曲率は,式(5.1.4)で表される。なお,最下段の 位置で計測された曲率は,軸方向鉄筋のフーチングからの伸び出し分と考え,式(5.1.4)には含め ないものとした。

 

 

ex cr

y

y

L

h

_

exp

  

(5.1.4)

ここに,

exp:曲率計測値(1/mm)

y:道示による降伏曲率(1/mm)

h

:曲率の計測長(mm)

ex

L

cr_ :実験における目視で確認した軸方向鉄筋のはらみ出し長(mm)

各供試体の曲率計測値は,軸方向鉄筋がはらみ出す際の載荷ステップにおいて計測された値を 用いるものとした。ただし,供試体 No.16 および土研資料第 3748 号における供試体 No.9-a につ いては,軸方向鉄筋がはらみ出す時点での曲率が計測されなかったため,計測された範囲で最大 の曲率の値を用いるものとした。

図-5.1.2に実測曲率分布と矩形ブロックにモデル化した際の曲率分布を示す。また,図中に浅 津ら7)が提案している式(1.2.6)の簡易式により算出したはらみ出し長も示す。矩形断面では,実 測曲率分布とモデル化した矩形ブロックの塑性化範囲および大きさは概ね一致している。

供試体 No.1(矩形断面)

供試体 No.2(矩形断面)

図-5.1.2(1) 実験における曲率分布と矩形ブロックにモデル化した曲率分布

0

100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000

0 50 100 150 200 250

曲率(×10

-5

/cm)

橋脚高さ(mm)

はらみ出し長 簡易式

475mm

  :モデル化した曲率分布   :実測曲率分布

  :簡易式によるはらみ出し長

0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000

0 50 100 150

曲率(×10

-5

/cm)

橋脚高さ(mm)

はらみ出し長

簡易式 490mm

  :モデル化した曲率分布   :実測曲率分布

  :簡易式によるはらみ出し長

供試体 No.11(矩形断面)

供試体 No.12(矩形断面)

図-5.1.2(2) 実験における曲率分布と矩形ブロックにモデル化した曲率分布

0

100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000

0 50 100 150 200 250

曲率(×10

-5

/cm)

橋脚高さ(mm)

はらみ出し長 簡易式

327mm

  :モデル化した曲率分布   :実測曲率分布

  :簡易式によるはらみ出し長

0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000

0 50 100 150 200 250

曲率(×10

-5

/cm)

橋脚高さ(mm)

はらみ出し長 簡易式

294mm

  :モデル化した曲率分布   :実測曲率分布

  :簡易式によるはらみ出し長

供試体 No.13(矩形断面)

供試体 No.16(矩形断面)

図-5.1.2(3) 実験における曲率分布と矩形ブロックにモデル化した曲率分布

0

100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000

0 50 100 150 200 250

曲率(×10

-5

/cm)

橋脚高さ(mm)

はらみ出し長 簡易式

387mm

  :モデル化した曲率分布   :実測曲率分布

  :簡易式によるはらみ出し長

0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000

0 20 40 60 80

曲率(×10

-5

/cm)

橋脚高さ(mm)

はらみ出し長 簡易式

866mm

  :モデル化した曲率分布   :実測曲率分布

  :簡易式によるはらみ出し長

土研資料第 3748 号 供試体 No.1-a(矩形断面)

土研資料第 3748 号 供試体 No.4-a(矩形断面)

図-5.1.2(4) 実験における曲率分布と矩形ブロックにモデル化した曲率分布

0

100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000

0 20 40 60 80 100

曲率(×10

-5

/cm)

橋脚高さ(mm)

はらみ出し長 簡易式

358mm

  :モデル化した曲率分布   :実測曲率分布

  :簡易式によるはらみ出し長

0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000

0 50 100 150

曲率(×10

-5

/cm)

橋脚高さ(mm)

はらみ出し長

簡易式 479mm

  :モデル化した曲率分布   :実測曲率分布

  :簡易式によるはらみ出し長

土研資料第 3748 号 供試体 No.5-a(矩形断面)

土研資料第 3748 号 供試体 No.6-a(矩形断面)

図-5.1.2(5) 実験における曲率分布と矩形ブロックにモデル化した曲率分布

0

200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000

0 20 40 60 80 100

曲率(×10

-5

/cm)

橋脚高さ(mm)

はらみ出し長 簡易式

465mm

  :モデル化した曲率分布   :実測曲率分布

  :簡易式によるはらみ出し長

0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000

0 50 100 150

曲率(×10

-5

/cm)

橋脚高さ(mm)

はらみ出し長 簡易式

316mm

  :モデル化した曲率分布   :実測曲率分布

  :簡易式によるはらみ出し長

土研資料第 3748 号 供試体 No.7-a(矩形断面)

土研資料第 3748 号 供試体 No.8-a(矩形断面)

図-5.1.2(6) 実験における曲率分布と矩形ブロックにモデル化した曲率分布

0

200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000

0 20 40 60 80 100 120

曲率(×10

-5

/cm)

橋脚高さ(mm)

はらみ出し長 簡易式

398mm

  :モデル化した曲率分布   :実測曲率分布

  :簡易式によるはらみ出し長

0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000

0 20 40 60 80 100

曲率(×10

-5

/cm)

橋脚高さ(mm)

はらみ出し長 簡易式

467mm

  :モデル化した曲率分布   :実測曲率分布

  :簡易式によるはらみ出し長

土研資料第 3748 号 供試体 No.9-a(矩形断面)

土研資料第 3748 号 供試体 No.11-a(矩形断面)

図-5.1.2(7) 実験における曲率分布と矩形ブロックにモデル化した曲率分布

0

500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000

0 20 40 60 80 100 120

曲率(×10

-5

/cm)

橋脚高さ(mm)

はらみ出し長 簡易式 1057mm

  :モデル化した曲率分布   :実測曲率分布

  :簡易式によるはらみ出し長

0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000

0 50 100 150 200

曲率(×10

-5

/cm)

橋脚高さ(mm)

はらみ出し長 簡易式

253mm

  :モデル化した曲率分布   :実測曲率分布

  :簡易式によるはらみ出し長

土研資料第 3748 号 供試体 No.12-a(矩形断面)

土研資料第 3748 号 供試体 No.13-a(矩形断面)

図-5.1.2(8) 実験における曲率分布と矩形ブロックにモデル化した曲率分布

0

100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000

0 50 100 150 200

曲率(×10

-5

/cm)

橋脚高さ(mm)

はらみ出し長 簡易式

237mm

  :モデル化した曲率分布   :実測曲率分布

  :簡易式によるはらみ出し長

0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000

0 50 100 150 200

曲率(×10

-5

/cm)

橋脚高さ(mm)

はらみ出し長 簡易式

196mm

  :モデル化した曲率分布   :実測曲率分布

  :簡易式によるはらみ出し長

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