• 検索結果がありません。

人道支援者 Rodrigo R. Custodio の足跡

ドキュメント内 持続可能な人道支援には何が必要か (ページ 95-131)

はじめに

本章は、実践者へのインタビュー調査によって得られた証言を基軸に、被災地が求めて いる「持続可能な人道支援」の障壁となるファクターあるいは継続していくために必要な エレメントの検討を試みる。元 USAID ピナトゥボ火山噴火災害プロジェクト専門官

Rodrigo R. Custodio44(以下、Rod)の証言を軸に、実践者が直面してきたジレンマの要因を

整理し検討を加える。

Rodに対し2007年から2012年にかけて4回行った英語でのインタビューについては、

ビデオ収録された証言を忠実に翻訳した。これまで、長期に亘り人道支援に関わってきた 実践者に対する継続的なインタビュー調査を通じて、持続可能な人道支援に必要なファク ターを探る研究は、極めて少ないと推察される。

第1節 LRDC & TF実践者のインタビュー証言

筆者は、PampaNGO 代表者 Tootsie のアドバイスとコーディネートによって、以下の組 織とコンタクトを取り面会の許諾を得ることができた。

USAID資料室室長、ADB(Asian Development Bank : アジア開発銀行)、地域経済統合室 長、DSWD所長(Department of Social Welfare and Development 社会福祉・開発省)、NEDA

Ⅲ地域開発長官(National Economic and Development Authority 国家経済開発庁 第Ⅲ行政地 区)、PNDCC代表(Pampanga National Disaster Coordinating Council パンパンガ州国家災害 調整委員会)、PBSP執行代表理事(Philippine Business for Social Progress フィリピン社会開 発推進財団)、PDOH長官(Pampanga Department of Health フィリピン保健省)、PNRC代 表(Philippine National Red Cross フィリピン赤十字社)、パンパンガ州立図書館司書など、

44 Summary of Qualification: USAID’s Mt. Pinatubo Project

Disaster Management and Assessment Specialist ( July 1991-December 1996) (Preparedness, Mitigation, Prevention and Assessment)

Community Organizer for Human Uplift, Designs and Conducts Agri-Venture/Reintegration Seminars for Overseas Filipino Workers (OFWs), Practicing Farmer and Rural Development Worker, Models Organic Farming and Sustainable Agriculture, Manages a Luna Rural Development Center and Tour Farm

90

各関係機関の担当責任者から直接ピナトゥボ火山噴火に関する話を伺うことができた。

特に本論のキーパーソンとなるRod氏に対しては、数十時間に及ぶ4回のインタビュー を実施することができた。また、2007年3月24日にフィールドスタディーの一環として 開催された会議では、これまでの支援活動を通して知己を得ていたパンパンガ州サンフェ ルナンド市市長に、被災地域のNGO 代表に参加要請を依頼し、RodはじめDSWD 所長、

PampaNGO所属の各NGO代表や研究者、マスメディアなど23名がサンフェルナンド市に

参集し、ピナトゥボ火山噴火災害やラハールの副次災害をテーマに闊達な議論が行われた。

筆者は、特に元USAID ピナトゥボ火山噴火災害プロジェクト専門官を務めた Rodの豊 富な現場体験に基づく提言や、さらに膨大な関連資料を所蔵しているとの情報に触発され、

是が非でもLRDC & TF(Luna Rural Development Center & Tour Farm ルナ農村開発・農場視 察研究所)を訪れたいとの意向を述べた。幸運にも往訪の快諾を得ることができ、MNKF 事務局長とDSWD所長が帯同してLRDC & TFを訪れ、Rodへのインタビューが実現した。

Rodに対する質問事項の骨子は以下の通りである。

(1) Q: Have your organization received any financial/technical assistance from Foreign Governments, International Aid Organization or NGOs?

貴殿の組織は、外国政府、国際援助機関、NGOから資金/技術協力を受けたか?

(2) Q: What was the interphase / coordination of central and local Governments to each other if any, and their cooperation with NGO’s in the implementation of the disaster management program?

中央政府と地方自治体の連携による協働事例および災害援助対策管理プログラム の実施におけるNGOとの協力関係?

(3) Q: Was there any coordination / cooperation / partnership between foreign and local NGO’s in the implementation of their programs or did they do it alone and direct to the affected sector? Did the foreign and local NGO’s also coordinate and cooperate with the central and/or local Government?

国際NGOとローカルNGO の協調・協力が被災地域の支援活動に適合したか、も しくは被災地のNGOが単独にプログラムを主導したか?

(4) Q: What cooperation corresponding to each phase of disaster?

被災状況の局面に合致した支援の協力体制?

91

(5) Q: What concrete measures were taken and results?

どのように具体的な対策が取られ結果はどうであった?

(6) Q: What major state and key issues from foreign donors to humanitarian aids for Mt.

Pinatubo disaster?

ピナトゥボ火山噴火災害の人道支援に供与された海外援助資金の状況と注視すべ き重要課題?

1-1 人道支援の足跡

Rodは、ピナトゥボ火山噴火の被災地域となったヌエバ・エシハ(Nueva Ecija)州に、

1984年AMSF( Agricultural Managers and Services Foundation, INC.農業管理社団法人)を設 立し、農業従事者の増収を図るために情報提供や技術の習得、農耕の改善を促進させる実 践的な教育指導を始めた。1991年にUSAIDプロジェクト専門官の重責を担った Rodは、

本格的にピナトゥボ火山噴火災害の緊急人道支援活動に加わり、1996年まで被災地の最前 線で指揮・監督を務めていた。先ず、Rodの人道支援に関わるプロフィールについて紹介 しておく。Rodは、高校卒業時にCLSU(Central Luzon State University)から入学金と奨学 金の申し出を受けたが、勤労学生としてAIA(Araneta Institute of Agriculture後のアラネタ 大学)の農業専門科を選択した。大学卒業後、公務員試験にトップの成績で合格し、1958 年にはPACD(Presidential Assistance on Community Development大統領府地域開発援助機 関)の地域開発指導者の資格を取得し、ライフワークとなる目標を見出していた。Rodは、

1967年にUSAID からベトナム派遣兵や帰還兵のリハビリテーションをサポートする要員

としての任命を受け、1971年まで南ベトナムに派遣されていた。

1972年にはベトナムでの経験がかわれ、地域開発プロジェクトのアドバイザーとしてカ ンボジアに渡り、帰国後も USAID と良好な関係を保ち、食糧支援プログラムのプロジェ クト副代表に就任した。1991年にUSAID ピナトゥボ火山噴火災害プロジェクト専門官と なり、1996年まで緊急人道支援の指揮・監督を務め被災地の最前線に立ち続けた。USAID 退官後は、AMSF の後に LRDC & TF を設立して代表を務める傍ら、SEC に登録された NEDEX (Nueva Ecija Development Exchangeヌエバ・エシハ開発協同組合)の創設メンバ ーとして副代表に就任し、引き続き農業従事者の脆弱な環境を緩和するための、教育支援 事業を精力的に展開した。さらに高い向上心を持ったRodは、かつて叶わなかったCLSU

92

で有機化合物の培養増殖に関する同値論を学び、被災地域に堆積した火山灰に適合する農 作物の改良や土壌改良の研究に取り組み、2007年4月10日にCLSUの最高齢ディプロマ 取得者となった。

1-2 被災地域における農村開発スペシャリストに聞く

LRDC &TFは、農業従事者の貧困削減と生活向上を目的に掲げた、農村開発を指導する

総合施設として創設された。施設内には、4 ヘクタールの実験農場はじめ農業試験場、養 魚場、農業技術習得訓練所、農業資料館、図書館、乳幼児保育施設、会議場、会食営舎、

宿泊施設などが完備しており、貧農家の人々が数か月単位で研修プログラムを受けながら 貧困からの脱出を目指して滞在している。LRDC &TFは、ピナトゥボ火山噴火後の7年間 に、被災した3,000人以上の農民を実践指導して送り出し、700名の農業開発指導者を養成 して被災地の支援活動に派遣し、政府関係の技術指導者250名が滞在し、実地研修を受け ていた。

以下に、実践者とUSAID専門家の視座から得た、インタビュー証言の概要を併記する。

AMSFLRDC & TF の組織概要および農村開発や人道支援活動についての考え方

N―早速ですが、AMSFとLRDC & TFの組織概要と、農村開発や人道支援活動について

の考えをお聞かせいただけたら幸いです。

Rod―AMSF は、農村地域の貧困削減と社会的適応性の向上を改善するための、実践的

な教育指導を目的に設立しました。しかし、私が USAID ピナトゥボ火山噴火災害プロジ ェクト専門官を引き受けた時点で、被災地域の緊急人道支援プロジェクトに専念しました。

そしてUSAIDの退官を機に、LRDC & TFの活動を本格的に始動させました。ヌエバ・エ

シハ州は、フィリピン有数といわれる穀倉地帯の一翼を担っていましたが、ラハールによ って農耕地の大半が埋め尽くされ、耕作地への復旧がほぼ絶望視されていました。こうし た状況下で、被災農民の自立を啓発する教育や技術指導、農業経営管理などの支援活動を 積極的に行っています。被災地域に堆積した火山灰の活用方法や土壌改良の研究に取り組 み、ピナトゥボ火山噴火災害の被災農民を対象に、自然農法や有機栽培などの試験的農法 を指導しています。施設内の各エリアでは、有機栽培農法、稲作に用いる害虫駆除と捕肥

(魚糞)に適する食用魚類の養殖、有機飼料とストレスのない自然環境での養鶏、鶏糞や

93

堆肥のリユース、養豚および排泄物のガス燃料リサイクルシステムの実用化、カラバオ(水 牛)ミルクから高品質なオリジナル商品の試作など、多様なプロジェクトが行われていま す。国内外のドナーから提供された資金は、脆弱な農業従事者でも転用可能なエコロジー 農村開発プロジェクト事業の財源となっています。

LRDC & TFにおけるドナーからプロジェクトの選択や資金認定について

N―LRDC &TF は、どのようにしてドナーからプロジェクトの選択や承認が行なわれ、

資金援助が認定されていますか。

Rod―LRDC & TFは、CIDA(Canada International Development Assistanceカナダ国際開発 協会)から代替的な青少年のライブリーフッド支援研修が承認され、MISEREOR(ドイツ・

カソリック開発財団)には、小規模農家に対する資金貸付制度プログラムを支援していた だきました。また、乳幼児の保健衛生プロジェクトについては、私が自ら日本に出向き笹 川平和財団から直に支援の了承を取り付けました。USAIDから受けた資金では、生産性と 持続性のある農業改善事業を図るための農業用機材を整備し、さらに農業従事者とその世 帯所得の向上を目的とする、能力アップ研修を支援するプロジェクトを配置しました。私 たちの組織は、重要な資金供給源としてピナトゥボ火山噴火被災地域の発展に寄与する役 割も担ってきました。ピナトゥボ火山噴火当時は、16名の専従職員が被災地域の緊急人道 支援に携わっていましたが、現在は8名の職員がLRDC & TFの管理指導に従事していま す。困窮している農村地域の能力開発や社会への適応能力向上、独立独行の地域社会作り をビジョンに掲げ、農業従事者に対する実践的な技術・知識教育に基づく農耕の改善を明 確な使命としています。世帯収入を増やすために個々の受容能力に適応した、具体的なゴ ール設定を行い指導しています。

N―ありがとうございます。AMSFとLRDC & TFの役割については良くわかりました。

実は、ずっと資料室内に展示されている膨大な数のマテリアルが気になっておりました。

是非とも拝見させてください。

Rod―収録された記録映像ビデオフィルムは、火山噴火前の前兆や大爆発の瞬間を克明 に捉えたものから、大規模なラハールの猛威を映し出したものなど50巻くらいあります。

ここに並んでいるフォルダーには、甚大な被災状況や被災地域の実情を記録した写真とネ ガフィルムが約 6,000 枚収められています。ピナトゥボ火山噴火災害に関連する文献や資

ドキュメント内 持続可能な人道支援には何が必要か (ページ 95-131)