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ピナトゥボ火山噴火災害に供与された人道支援の事例

ドキュメント内 持続可能な人道支援には何が必要か (ページ 64-95)

はじめに

ピナトゥボ火山噴火直後の緊急人道支援事業は、NDCC(National Disaster Coordinating

Council国家災害調整評議会)の構成機関であるDSWDが主要な役割を務め、政府中央レ

ベルから地方自治最小単位のバランガイまで、DCCs(Disaster Coordinating Councils災害 調整委員会)が組織化されて行われた。フィリピン政府は噴火災害の甚大さを勘案し、ピ ナトゥボ火山噴火災害に対する緊急支援・復興・復旧事業を統括する機関として、DBM

(Department of Budget and Management予算・管理省)大臣を議長とするTFP(Task Force Pinatuboピナトゥボ災害対策委員会)を設立した。TFPはCBDRO(Community-Based Disaster Response Organizations社会基盤施設委員会)、RERP(Resettlement Emergency Response Program再定住対策委員会)、LEAP(Livelihood Enhancement and Peace Program 自立・自活強化推進委員会)、SSC(Social Service Councils社会奉仕委員会)の四委員会 と各主幹の DPWH(Department of Public Works and Highways 公共事業・道路省)、DTI

(Department of Trade and Industry 通商・産業省)、DENR(Department of Environment and Natural Resources 環境・天然資源省)、DSWDで構成されていた。

1992年10月20日には、深刻な副次災害に対応すべくピナトゥボ救援基金(Mt. Pinatubo Assistance Resettlement and Development Fund) 法令(第7637号)を策定し、TFPに代わる 担当機関としてMPCが設立された。MPCは2000年まで存続するものと規定され、法令 によって計上されたピナトゥボ救済基金100億ペソ(当時の換算で約500億円)の管理を 含め、緊急・救援復旧事業の指導・管轄・開発のマスタープラン策定や、海外援助などの 主要な受諾機関として、中枢的役割を担っていた(津田・田巻2001)。

フィリピン政府によって地方自治基本法が1991年に制定され、地方自治体も各国政府 や国際機関から直接援助を受けることが可能となる。海外からの開発援助は、飛躍的に増 大し、二国間や多国間の政府開発援助資金を被災地域のNGOや地方自治に直接供与する 援助体系が潮流となっていった。

MPCは、MPC-NGO Deskを設置して、被災地域のローカルNGOとネットワークシステ ムの構築を図り、DSWDを主導とする人道支援プロジェクトの連携強化を促進した。

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第1節 被災地域のローカルNGOが実施した緊急人道支援

1-1 PampaNGOに対するアンケート調査の実施に関する概要

ピナトゥボ火山噴火直後から被災地域の人道支援に深く関わってきた R.I.-255 地区と R.I.-381 地区は、R.I.本部の方針に伴う地区分割によって、R.I.-2550 地区とR.I.-3810 地区 に再編された。被災地域でのアンケート調査を実施するにあたり、地区再編に伴う友好関 係の継続について若干危惧したが、両地区の歴代PDGやP.P.などクラスメート(同一年度 の役職についた会員同士を総称し、組織内での地位を明示する目的から、氏名の前に必ず

PDGや P.P.などが表記される)の協力を得て、対象とするローカル NGO の代表者たちと

コンタクトをとることができた。R.I.-3810地区は、マニラの中心を拠点とする名門クラブ が多数在籍する、アジアで最初にR.I.が創設された地区であり、またアジア初のR.I.会長を 輩出するなどフィリピンのリーダー的存在である。R.I.-3810地区は、国内外の様々な地区 と友好姉妹提携合意書を取り交わし、ピナトゥボ火山噴火被災地域のR.I.-3790地区に対し ても、積極的にWCSを展開していた。

筆者が要請した被災地域の人道支援に関するアンケート調査は、2007 年 1 月 27 日に

Nutrilinc から正式に許可された。アンケート調査を受諾してくれた Nutrilinc 代表の

Rosemarie ”Tootsie” Johnston Herrera(以下、Tootsieとする) は、被災地域の組織連合体で あるPampaNGO(The Pampanga Association of Non-Governmental Organizations, Inc.パンパン ガNGO組織連盟)代表はじめ、R.I.-3790地区 セントラル・パンパンガロータリークラブ のP.P.や、国際的な女性支援組織のQuota International Pampanga(以下、Q.Iとする)のP.P.

を歴任し、現在HealthDev の代表を務めている人道支援のエキスパートである。アンケー ト調査は、ピナトゥボ火山噴火災害被災地域のローカル NGO に対し、日本や欧米諸国か ら供与された国際緊急援助の事例収集と共に、公式参考資料40に記述された国際緊急援助 との比較検証に基づく、実態解明を主要な目的とした。

フィリピンは、開発途上国におけるNGO の先進国と言われ、「真のNGO と他を区別す る目的」で1991年12月CODE-NGO (Caucus of Development NGO Networks)を発足させ、

10の全国団体にNGOを結集させていた。政府は、NGOに対するODA資金の供与や免税

40 “PINATUBO”MULTI-SECTRAL CONSULTATIVE CONGRESS: JICA Activities on Central Luzon Infrastructure 1991-1993

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処置を行ない、NEDA(National Economic and Development Authority国家経済開発庁) が 主導する開発計画作成委員に、ローカル NGO や地方自治体の参加を図り協力関係を強化 していた。

ピナトゥボ火山噴火災害に対する緊急人道支援は、被災地域住民の生命と安全を最優先 に確保するため、各国政府はじめ国際機関や国際 NGO と被災地域 NGO との連携によっ て、最も必要とされた緊急救援物資などの支援が迅速に実施されていた。ピナトゥボ火山 噴火災害の被災地域に対して、アメリカ・イギリス・フランス・ドイツ・オーストラリア・

カナダ・オランダ・オーストリア・ノルウェー・スペイン・イスラエルの各国政府および、

国際NGOのOXFAM(イギリス)・NOVIB(オランダ)・CARE(アメリカ)・MSF(フラン

ス)・ユニセフや国際赤十字社など多くの国際援助機関から、被災地域のNGOに資金や技 術支援などが直接供与されていた具体的な事例が明らかとなっている(Guzman 1991;15)。

オランダは、土壌改良の農業専門家を派遣し、イスラエルは、砂漠地帯の農業技術経験 を有する専門家を派遣して被災地域に直接技術協力を行う等、欧米各国政府も様々な形態 の緊急援助を実施していた。カナダや豪州政府の国際緊急援助は、NGOやPO(民衆組織)

に直接資金を供与し、市立病院復興・被災地域復興の資金協力を行っていた。UNCHRは、

州立病院の修復を支援、英国政府は DOH を通じて病院機材の提供、イスラエル政府は地 域保健・幼児教育分野の専門家を派遣していた(津田・田巻 2001; 26-27)。

各国政府や国際機関および国際NGOは、公平・中立な判断基準を定め、PampaNGOに 加盟する先駆的NGOの公約に基づく1)主要な活動、2)展望、3)使命、4)目標などの ステートメントや、これまでの優れた事業活動実績と経験を評価・検証して、資金供与を 決定していた(UNDRO 1992; No.1-8)。

PampaNGOに公式登録された被災地域のNGOは、個々に崇高な活動目標を掲げ、「貧困

削減」「飢餓と病気」「環境破壊」「女性の人権保護」「自立支援」「農業開拓」など被災地域 の最前線に立って活動を展開し、海外との連携も密にしていた。

Nutrilinc代表のTootsieと筆者は、アンケート調査の研究に関する以下の合意書に署名を

行った(MOAを参照)。

Memorandum of Agreement (MOA): Meeting with NGOs of Central Luzon Prepared by:

NUTRILINC Executive Director Rosemarie Johnson-Herrera Confirmed by: Researcher Kazumasa Nakada

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アンケート調査の依頼に際し記名記述を求める場合は、回答者のプライバシーに配慮し 匿名性の確保に努めると共に、プライバシー保護の具体策を提示し、事実に基づく意見回 答をしても本人に問題が及ばないことや、原文の一言一句に添削を行なわない旨を明記し た公式合意文書に署名し、事前に許諾を取り交わした。

① アンケート調査に参画したローカルNGOは、PampaNGOに所属しSEC(Securities and Exchange Commission証券取引委員会)に登録された、DSWD(Department of Social Welfare

Development 社会福祉開発省)の正式認可を受けた組織であった。

* PDRN (The Pampanga Disaster Response Network, Inc.パンパンガ州災害対策ネットワーク)

* AMSF(Agricultural Managers and Services Foundation, Inc. 農業管理社団法人)

* CONCERN (Central Luzon Center for Emergency Aid and Rehabilitation, Inc.

中部ルソン緊急援助・復興支援センター)

* HIDS (Health Integrated Development Service, Inc. 健康促進統合事業)

* SACOP(Social Action Center of Pampangaパンパンガ社会活動センター)

* ADAP(Assistance Development Association of Pampanga, Inc. パンパンガ開発援助協会)

* HealthDev(Health Alternatives for Total Human Development総合開発健康・促進機構)

* IMA(Ing Makababaying Aksyon Foundation, Inc. イーマ財団)

* PSWDO(Provincial Social Welfare and Development Officeパンパンガ州社会福祉・開発省)

② アンケート調査の回答は、15の質問項目すべてについて自由記述という形式を取った。

1)組織の概要

2)海外の政府や国際機関・NGO等から資金や技術協力を受けたことがあるか

3)プロジェクトの選定と承認のプロセス 4)ピナトゥボ火山噴火災害援助の動向

5)JICA、USAID、CEBEMOなどのODA/ NGOよって、海外からピナツボ火山噴火災害に

供与された資金援助政策の状況と注視すべき重要な課題 6)ピナトゥボ火山噴火災害の緊急援助傾向の歴史

7)日本の緊急援助成策と他国との相違点

8)フィリピンの災害対策調整機構の体系は、どのような援助連携の系統によってピナトゥ ボ火山噴火災害に適応して行ったのか

9)防災上の基本的な位置付けは何であったか

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10)その基本方針とガイドラインの内容はどうであったか

11)中央政府と地方自治体の連携による協働の事例、および災害援助対策管理プログラム の実行におけるNGOとの協力関係はどうであったか

12)被災地域に対し、国際NGOとローカルNGOの協調/協力/パートナーシップが、支援

活動にどう適合したのか?もしくはそれぞれのNGOが単独にプログラムを主導して行 ったのか?また、国際NGOとローカルNGOは、中央政府および被災地自治体と協調・

協力があったのか

13)被災状況の局面に合致した支援協力体制とは 14)具体的な実施案件の結果と評価

15)教訓や提案

以上の 15 項目について質問したが、回答書の内容は全項目について詳細に記述してい る組織もあれば、特定の項目のみ回答を寄せている組織もあり、記載項目や表記方法など は個々の組織によって異なっていた。本項では、組織の概要や取組みを示すとともに記述 内容を整理し、特記すべき支援活動事項を取り上げ、回答結果より本論のテーマに関係が 深いと思われるポイントについて整理を行った。

1-2 持続可能な人道支援活動の制約と限界

1-2-1 PDRN (The Pampanga Disaster Response Network, Inc.

パンパンガ州災害対策ネットワーク)

PDRNは、1991年5月ピナトゥボ火山が大噴火を起こす直前に設立された。1992年4月 には、DSWDの正式認可NGO法人として認証番号ANO92-01347を取得し、SECに登録・

認証された。PDRNは、9名の常勤と緊急支援体制時に平均10から15名のボランティア の参加を得て運営され、1)CBPOs(Community-Based People’s Organizations)地域拠点の 住民組織)とBDCCs (Barangay Disaster Coordinating Councils) 村落災害連絡協議会)を組織 強化、2)脆弱な家族に自立自活の機会を提供、3)被災した家族と地域社会への適時適 切な対応を提供、4)災害の迅速な対応政策を促進するために、政府や他の NGO が連携 して影響力を及ぼせるような組織編成を行うことを目標に掲げ、災害に対する脆弱性や 様々なリスク軽減を図るための持続可能な開発促進プロジェクトを使命としていた。

ドキュメント内 持続可能な人道支援には何が必要か (ページ 64-95)