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人口減少時代における農村再生論の現在

ドキュメント内 ̶縮小論的な視点から ̶    (ページ 55-61)

 

  高齢者や他出子の分析は、農村・農業の維持における役割に関するミクロな視点での一つの試みであ る。それなりに意味があると考えられるが、同時に、よりマクロな側面から農村社会の将来も考え直す必要 も生じてきている。 

  農村再生論人口論的側面のマクロな部分においては、さまざまな要因が働いており、その中でも近年も っともメディアや行政によって取り上げられているのは、都市農村交流論的な事業等である。人口交流論 的事業や活動や政策は、以前から展開されており、基本的には地域の振興、活性化を経済的な発展の 枠組みで捉えるものが多い。これらの多くの事業や活動は農村部での定住人口が増加しないのならば、

都市人口を導入し、経済的・人口的・文化的に農村活性化をはかろうという考え方を前提に構想され、必 ずしもむらに住む人の数を維持しようという目的が中心的に展開されているわけではない。主に、経済的 効果を狙っているため、人口量の多い都市部から観光客・交流客といった「客」を吸収することがメインとな っている。近年、都市農村交流やグリーン・ツーリズムなどをはじめとした人口交流論をベースとした活動 が盛んとなっており、全国各地において政策的に展開され、農村再生がこれらの活動をもとに図られてい る。が、これらの活動が多くの成果をあげていることは少ない。また、これらの事業・活動等はむらの活性 化・振興を目的にしているのは事実であるが、その内容が曖昧であり、「対象」つまり、誰を対象としている のかは定かではない。例えば、経済発展を重視するものもあれば、(徳野の言い方で言えば)「非経済的 な目的」12、すなわち文化や環境等を重視するものもある。さらに、誰が地域のどのレベル・種類の活性化 を担うかというところも確定しておらず、例えば単純に外発的要因(都市のひと)に依存するのか、それとも 内発的要因(在村者)を重視するのかは確定されず、漠然と事業が進展している現状である。 

 

図7  徳野の都市農村交流活動の類型図(徳野、2008) 

   

  このように、内容の曖昧さや対象の不確実性などがこれらの活動や事業が成果をあげられない原因とな っているといっても過言ではない。この件に関して、徳野(2008)は都市農村交流やグリーン・ツーリズムを 内容と対象者の側面から分析し、その内容や対象者から、上記の活動・事業の類型化を行っている。 

  都市農村交流をする際に、対象となる人々は多様であり、それぞれの対象者に適切な活動内容を明確 にした方が、効率が良くなる。まず、第1類型は非経済的な資源であり、農村が軸となる。というのは、具体 的には他出している子ども世代や婚姻による家の存続を意味している。都市との交流による農村の活性 化や発展というのは、多くは経済的な側面のみで考えられがちではあるが、他出子やその家族による親

(実家)へのサポート体制も非常に重要である。さらに、日本全体もぞうだが、農村社会において最もシリア スな問題の一つは後継者・担い手問題である。そして、この問題は経済的な支援によって解決される次元 の問題ではない。そこで、何よりも地域に子どもが生まれるかが問題であり、その問題の解決において重 要な存在は「母親」となる可能性のある女性たちである。婚姻は、そこで重要となってくる。このように、他出 子によるサポートが日常生活の安定化に貢献し、さらに、Uターン等によって将来の地域の再生に貢献す る可能性もある。婚姻も最も根本的なところ(少子化問題の解決)で地域の将来再生に貢献すると見られる。 

(徳野貞雄, 2008a,67) 

集落住民が軸となるもう一つの交流を徳野は第2類型と呼んでいる。第2類型の活動は集落住民が中心 的な役割を担い、地域の活性化に貢献する活動である。徳野はこの類型の活動を「言葉は悪いが〈都市 の人たちをダシにした、農村集落の住民の活性化のための交流活動〉である。当然、都市住民の交流者 にもメリットがある」と説明している。具体的には、農産物直販、農産物加工、農作業体験、大豆オーナー 制度、働くアウトドアの植林活動、石焼き体験、棚田の石積み講習会、家庭料理大集合活動、田んぼの学 校、自然環境学習研修などの地域それぞれの特性も含めている多様多種の地域活動/イベントが例とし てあげられる。これらの第2類型の活動はやや経済的に得もするが、農地の今後や農村の存続に関しては ほとんど有効性もっていない(徳野貞雄,同書,69)。 

次の類型の活動は基本的には自然と深く接触したい、または農業の意味を問い直したいという都市住 民が軸となる活動であり、現在マスコミがもっとも注目したがる交流活動である。徳野はこの類型の活動を 第3類型と呼び、その内容を「都市化・産業化の進展した現代社会のあり方に疑問をもち、自然との関係や 環境問題および人間としての生のあり方を自ら問い直すなかで、農業や農村社会のもつ価値を再評価・

再発見し、積極的に農山村社会へ働きかけを行っている都市の人々との共鳴活動」だと考えている。具体 的には、景観保全活動やIターンによる新規就農、また伝統食や文化掘り起こし活動等があげられる。これ らの活動は、都市側住民が中心的に行われることが多く、農地や自然の保護の担い手として考えられるこ ともある。しかし、これも第2類型の活動と同様に一時的な担い手確保法として考えられても持続性は不明 であり、確実的な集落再生への貢献としては位置づけられ難い(徳野貞雄,同書,72)。 

第4類型の活動は都市農村交流活動の中でもっとも経済的目的が強い活動とであると同時に、一般的 にグリーン・ツーリズムだと総称される活動でもある。この類型の活動の特徴としては徳野が「不特定多数 の都市住民を対象として、都市人にとっては〈非日常的世界と化したがゆえに、魅力的となった農業・農村 の日常〉を資源として、都市の人口量と経済力を農山村に呼び込む活動」だと定義している。具体的には、

農産物直販所、農家レストラン、農家民宿、温泉施設、道の駅なとの一般的に最も知られている活動のこ とである。これらの活動は一定の所得や収益をあげることが狙いであり、現実的には一定度の収益をあげ ているとこもあれば、あまり目的に達していないところもある。一つ言えるのは、これらの活動で地域が経済 的に活性化し、就業機会が増加し、よって他出している子どもやIターン者が続々と戻り、人口も増えたとい う事例、あるいはその傾向のある事例はほとんど見られていない。農村再生論的にみれば、今日を維持し ていく上で経済効果的な役割があるかもしれないが、農村を再生する上でこれらの活動はあまり期待でき ないだろう(徳野貞雄,同書,74)。 

そして、最後に第5類型として総合事業型活動があげられている。第5類型の都市農村交流活動は非常 に実現・実行難度の高い活動であり、数も非常に少ないのである。簡単に言えば、上記の第1類型の活動 から第4類型までのすべての交流活動を何らかの形で一つの枠組みの中で内包している事業体のことで ある。徳野は、具体例として「モクモクファーム」(三重県伊賀)や「ぶどうの樹」(福岡県岡垣町)をあげてお り、これらの事業体を「地域に根ざした『農の6次産業型』形態を軸に都市農村交流事業にまで拡大・展開 している事例」だと言う(徳野貞雄,同書,76-77)。この類型の活動は経済的な収益もあげると同時に、地域 の活性化にも貢献し、農村・農業の担い手・後継者問題にも大きく貢献するだろう。全体的にみると、第5 類型の交流活動は農村を再生していく上で最も可能性のある類型であり、最も期待できるものである。が、

現在においてこのような総合的な事業を行っている事例が全国でも非常に少なく、かなりの経営能力やリ ーダーシップが要される。さらに、農業に関する知識や観光業を読み解く能力もこのような事業を興す上 で非常に重要だろう。ここでの最も重要な課題は、このようなパースペクティブをもつ人材が、どれほど存 在しているかという点にあると徳野は指摘している。 

以上の徳野の分析でも分かるように、日本における都市農村交流のスタンスは人口交流による農村の 活性化である。ここで、大きいなことが見逃されている。それは、「人口を増やす」ことによって農村を活性 化させることである。日本社会全体が2005年から人口減少を経験し始めており、農村のみならず都市部に おいても今後人の数が減る。このような現状のなかで「都市人口との交流による人口増加型経済活性化モ デル」はどこ/いつまで農村の再生問題をカバーできるのかが疑問であり、不明確である。そして、これら の活動の多く(徳野の言う分類で言えば第3および第4類型の活動)は外発型であり、都市住民が加わらな い限り実施できない仕組みになっている。一方、農村再生論の最も根本的な要素である家や集落をどうす るかという問題は都市人口で解決できることはどこまで可能なのかも納得のある答えは出ていない。 

ドキュメント内 ̶縮小論的な視点から ̶    (ページ 55-61)

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