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二重閾値法 (double thresholding)

ドキュメント内 その定量的イメージング計測法に関する研究 (ページ 132-188)

白血球を正しく認識し,夾雑物の誤計数を低減するために「二重閾値法」というアルゴリズムを ICC法に実装した.Fig. 3.25はこのアルゴリズムの原理についての説明図である.図中,緑色 の領域(■)は標準的な白血球の信号プロファイル,灰色の領域(■)は典型的な夾雑物の信号 プロファイルを示している.3.4節で述べたように,夾雑物の信号プロファイルは図のように歪曲 した形状を取ることが多いことがわかっている.そのため,プロファイルの上方では白血球と夾 雑物の差異は少ないが,下方では差異が大きくなっている.

Fig. 3.25. Relation between signal profiles of leukocyte and dust with two different thresholds

Fluorescence intensity [A.U.]

Leukocyte Dust

wd2

wl2

Distance [µm]

0 + 16 +32 + 48 - 16

- 32 - 48

Upper threshold

Lower threshold wl1

wd1

3.6.1.1. 上方閾値の決定  白血球信号のピーク強度をImとし,プロファイル形状がGauss分布 に従うと考えた.さらに,大きな数に対するPoisson分布がGauss分布で近似できる(Watson

2001)ことから,白血球信号プロファイルをPoisson分布で近似できると考えた.Poisson分布で

は,標準偏差(SD)は平均(mean)の平方根に等しいので,平均値が与えられれば直ちに標準 偏差を見積もることができる.標準的な白血球蛍光画像の信号プロファイルを作成した際に用 いた145個の白血球信号プロファイルを調べた結果,そのピーク強度の平均値Imと標準偏差 SDは,各々,Im = 100.20(256階調),SD = 8.97であった.平均値の平方根が標準偏差に近い 値であることがわかったので,SD= Im として見積もることにした.すると,白血球信号のピー ク強度がIm ± SDの範囲内に入る確率が68%,Im± 2SDの範囲内に入る確率が95%,Im ± 4SD の範囲内に入る確率が99.99%となる.したがって,白血球を99.99%以上の信頼性で認識する ためには,上方の閾値をIm – 4SD = Im−4 Im と与えればよい.

3.6.1.2. 下方閾値の決定  図中,青線(⎯⎯)で示した上方閾値のみでは白血球と夾雑物を

完全に区別することができない.これは,Fig. 3.25からわかるとおり,この高さでは白血球と夾 雑物の信号プロファイルの幅wulwudはほぼ同じになっており,両者の差が検出できないから である.

0 10 20 30 40 50 60 70 80

0 32 64 96 128 160 192 224 256 Pixel Intensity [levels in 256 levels]

Frequencies [%]

Fig. 3.26. Histogram of pixel intensities of an image obtained by the ICC method.

Typical histogram of intensities of each pixel of a fluorescence image obtained by the ICC method is shown. The peak nearby 32 levels indicates the background. The lower threshold is calculated by this value of background plus some margin.

画像の全画素の信号強度ヒストグラムを作成し,その強度のピークを採ることによって背景光 強度を見積もる.Fig. 3.26 に画像の全画素の信号強度ヒストグラムの例を示す.このヒストグラ ムでは,32付近にピークを持っており,キュベット内部の背景光強度がレベル32程度であるこ とがわかる.

  このようにして,背景高強度が求められたら,その値にマージンを加え,その値を下方閾値 として決定することができる.下方閾値は,Fig. 3.25 中の赤線(⎯⎯)で示されている.この高さ は白血球の信号幅wllと夾雑物の信号幅wdlの差異が大きいため,容易に両者を区別し,白血 球のみを認識することができる.

  これまでのICC法では,白血球を背景光から区別して識別する,いわゆる2値化の際,1つの 閾値(上記上方閾値)しか用いなかった.この高さでは,白血球と夾雑物の差異が小さく,両者 を区別することができなかった.この下方閾値を用いると,白血球と夾雑物の区別は容易にな るが,逆に値が低すぎて,背景光のばらつき等を白血球と誤認識してしまう危険性が大きく,

下方閾値単独では用いることができなかった.そこで,上述した上方,下方2つの閾値を同時 に用いることによって,白血球を正しく認識するようにした.

 

  Fig. 3.27は典型的な(i) 白血球と(ii) 夾雑物の信号強度の2次元分布を示したものである.

この例では,上方閾値は145,下方閾値は 128と設定された.図中,上方閾値よりも高い信号 強度を持つ画素は緑色に,情報閾値よりも低く下方閾値よりも高い画素は灰色に塗られている.

白血球,夾雑物の緑色画素の数は,各々,6個と7個になっており,ほぼ同じになっている.こ れに対して,灰色画素については,白血球では,緑色画素領域を取り囲む灰色画素領域の 面積は小さいが,夾雑物については,緑色画素領域に対する灰色画素領域の面積が非常に 大きくなっていることがわかる.これは,上方閾値による2値化では,白血球と夾雑物の間にほ とんど差がないため区別がつきにくいが,下方閾値を用いれば両者の面積には大きな差が得 られことを示している.

131 132 131 132 130 128 126 125 127 127 126 129 129 128 122 125 125 124 125 124 125 128 128 128 124 123 121 125 122 125 126 129 129 126 124 123 125 136 144 137 124 124 128 131 126 127 121 132 149 158 146 128 127 130 130 128 128 123 132 146 155 148 128 123 127 128 131 128 123 127 133 137 135 126 128 128 124 127 127 127 126 124 124 127 122 119 123 129 128 125 124 125 129 128 128 126 126 129 129 128 130 127 127 125 128 126 124 124 127 125 129 130 127 128 128 128 128 128 131 135 130

128 128 127 124 122 125 127 128 129 128 127 126 127 129 124 120 124 132 135 128 125 128 131 130 125 119 124 131 142 140 138 133 129 127 124 122 124 138 146 148 140 129 122 128 130 123 123 131 145 153 145 133 125 124 125 128 124 130 141 149 145 131 124 122 118 128 129 124 128 134 135 131 125 122 124 127 129 128 128 130 132 128 124 120 125 128 128 126 126 129 128 124 128 125 128 130 129 129 128 128 130 128 128 128 126 128 128 131 128 127 124 127 127 125 127 128 133 131 129 125 125

(i) Leukocyte (ii) Dust

Fig. 3.27. Differences in area size between a leukocyte and a dust under the thresholdings

  本アルゴリズムでは,この傾向を利用している.すなわち,SUを上方閾値よりも大きい信号強 度を持つ画素数(Fig. 3.27における緑色画素領域の面積に相当),SLを上方閾値よりも小さく,

下方閾値よりも大きい信号強度を持つ画素数(Fig. 3.27 における灰色画素領域の面積に相 当)とし,その比SL/SUを白血球と夾雑物を区別する指標に用いる.

  Fig. 3.28は,白血球(●),夾雑物(■)の上記SL/SU比をSLに対してプロットしたものである.

調査の対象としたすべての白血球のSL/SU比が夾雑物の SL/SU比よりも小さくなっていた.そし て,白血球と夾雑物を区別するための参照値を見出した.参照値は,図中破線(− − −)で示し てある.

  実際の処理では,画像を上方閾値によって2値化処理し,このとき得られたオブジェクトを白 血球と思われる候補オブジェクトとし,その面積SUを取得しておく.そして,候補オブジェクトの 元信号に対して下方閾値処理を実行し,その面積SL を取得後,各候補オブジェクトに対して SL/SU比を計算した.もし,SL/SU比がこの参照値よりも大きい場合,そのオブジェクトは夾雑物と 認識し,小さい場合は白血球と認識し,これを計数する.

SL

0 5 10 15 20 25 30

0 5 10 15

Area size of objects bineraized with the lower threshold [pixels]

The ratio of the area sizesSL/SU

Fig. 3.28. Demarcation between leukocytes and dusts by the area ratio SL/SU.

The ratio of the area with the lower threshold SL, to the area with the upper threshold, SH, were plotted against SL. The closed circles represent the data of leukocytes, and the open squares represent dusts. SL/SH of leukocytes are found to be lower than that of dusts, so that the discrimination level can be determined as shown with the dashed line.

  以上説明した二重閾値法アルゴリズムのフローチャートをFig. 3.29に示す.

Recognition of leukocytes as usual with the local thresholding

Store the each area size, SU of objects recognized as leukocytes.

Extract the raw data in and around the objects, of which size is 16 x 16 pels.

Operating the lower threshold to the extracted raw data.

Store the each area size, SL of the objects binarized with the lower threshold.

Calculating the ratio of SL to SU about each object.

Ratio SL/SU < the reference value ?

The object is recognized and counted as the leukocyte.

The object is not recognized as the leukocyte but the dust, so that it is not counted.

Fig. 3.29. Flow chart of the double thresholding algorithm

3.6.2. 局所的閾値法 (local Thresholoding)

ICC 法では,前節で説明した二重閾値法に加え,局所的閾値法も併用している.これは,PC 試料を測定する場合,レーザーをキュベット側面から照射するため,背景光に不均一になって しまうことへ対処したものである.

  局所的閾値法のフローチャートをFig. 3.30に示す.まず,ICC法で得られる640 × 480画素 サイズの画像を40 × 40画素サイズの192個(12行 × 16列)のサブ・ブロックに分割する.

  次に,それぞれのサブ・ブロックにおいて,ヒストグラムを作成する.作成されるヒストグラムの

例をFig. 3.31 (b)に示す.Fig. 3.31 (c)は,すべてのサブ・ブロックにおけるヒストグラムをFig.

3.31 (a)の元画像に重ねて表示したものである.キュベットの円形状に合わせてヒストグラムが

分布していることがわかる.

  作成されたサブ・ブロックごとのヒストグラムから,各々のサブ・ブロックにおける背景光強度 を計算する.各サブ・ブロックごとの背景光強度から,背景光分布を得る.得られた背景光分 布をFig. 3.32に示す.

  このようにして得られた背景光の強度分布に対応させて,各サブ・ブロックにおける閾値の 程度を決定する.

Histograms are created in each block

The image is divided into 192 blocks 40 x 40 pixels

Background in each block are calculated by searching the peak of the histogram

Thresholds are determined from the background in each block.

Fig. 3.30. Flow diagram of the local thresholding.

(a) Raw image data

0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8

0 32 64 96 128 160 192 224 256 Pixel Intensity [levels]

Frequency

(b) Signal intensity histogram

Fig. 3.31. The histograms used in the local thresholding algorithm.

The Images used in the local thresholding algorithm are shown. (a) Raw image data of the platelet blood product obtained by the ICC method with the side illumination. (b) One histogram of pixel intensity of a sub-blocks. (c) All histograms at each sub-block are shown

(c) All histograms placed on the raw image (a) Raw image data

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16S1 S2 S3 S4 S5 S6 S7 S8 S9 S10 S11

S12 34-36

32-34 30-32 28-30 26-28 24-26 22-24 20-22 18-20 16-18 14-16 12-14 10-12

Fig. 3.32. Background intensity distribution

In the ICC method, the excitation laser beam is incoming from the left side and across the middle of the cuvette. It can be found that the backgrounds values are higher than the surroundings along the laser track.

 

3.7. 重畳した白血球の数え落とし補正

前述したとおり,ICC法における白血球計数機能には2つの問題点 (1) 夾雑物の誤計数

(2) 遠心後のキュベット周縁領域において重畳した白血球の数え落とし

があった.前節ではこのうちの前者の解決方法として画像解析アルゴリズムについて述べた.

ここでは,後者の解決方法,すなわち,3.5節で行った遠心処理の数値シミュレーションの結果 を利用した補正方法について述べる.

  実際にキュベットに混入する白血球の数密度nと実際に測定で得られる白血球数密度m

間にEq. 3.2の関係が見出された.

m = 0.00049 n3 – 0.030 n2 + 0.87 n + 0.11. (r2 = 1.00). (3.2) 計数値mは白血球数密度が5 個/µl以上の範囲で理想値nから解離し,低くなってしまう.し かし,幸いなことに,Fig. 3.22の結果からわかるように,計数値mは理想値nに対して単調に 増加していた.

  したがって,Eq. 3.2nについて解けば,すなわち,Eq. 3.3によって数え落としを含むと推 定される計数値mから真値nを逆算することができる.

n = 0.0045 m3 + 0.082 m2 + 0.91 m + 0.034. (r2 = 1.00) (3.3)

  このEq. 3.3を用いることによって,白血球数密度の高い場合にICC法に発生する数え落と

しをそのすることができ,その測定範囲を拡張することができる.

  以上,3.63.7 節で説明した方法によって,ICC 法の正確性と線形性を向上することができ る.

3.8. 材料と方法

開発された白血球認識アルゴリズムの効果を確認するために実際の血液試料を用いて実験 を行った.ICC法によって測定される白血球数を従来法であるNageotte法による血球計数値,

および,フローサイトメータによる計数値と比較し,ICC法の白血球計数機能を評価した.実験 は,PC試料,RC試料の両方について行った.

3.8.1. 血液試料の調製

血液は健常なボランティアより採血した.実際の血液製剤の調製法にしたがい,抗凝固剤とし て,PC試料の場合はACD-A液,RC試料の場合はCPD液を用いた.採血された血液は150 Gで15分間室温にて延伸された.

3.8.1.1. PC 試料  遠心後,上清,すなわち多血小板血漿 (PRP) を取り出し,別容器に集め

た.その後,残りを再度1500 Gで5分間室温にて遠心し,上清の乏血小板血漿 (PPP) を取り

出した.PPPをさらに0.2 µmφ孔のフィルタ (Steradisc,倉敷紡績㈱社製,日本) にかけ白血球

を完全に除去した.このPPPを希釈液として用い,上述したPRPの希釈系列を調製し,PC試 料とした.

3.8.1.2. RC 試料  赤血球製剤には,日本でもっともよく用いられている赤血球製剤である

RC-MAPを用いた[2, 3].最初の遠心後,下層である赤血球層から低分子タンパク質と白血球を

含むバッフィ・コート層を除去した.これにあらかじめ調製したMAP液を加え,RC-MAPを調製 した.PC試料と同様に,必要量のRC-MAPを採っておき,残りを未熟児用の赤血球製剤用白 血球除去フィルタ (RC-NE01J, 日本ポール㈱社製, 日本) に 2 回通し,白血球を徹底的に 除去した.この2回フィルタ処理されたRC-MAPを希釈液として,さきほど採り置いたRC-MAP を希釈して,希釈系列を調製し,RC試料とした.

3.8.2. 白血球計数

上記のようにして調製された血液試料中に混入する白血球を (i) Nageotte法,(ii) フローサイ トメトリ法,(iii) ICC法によって計数した.以下,各々の方法について説明する.

3.8.2.1. Nageotte[12]  従来法の1 つであるNageotte法の結果を比較対象とした.Nagotte 法の測定は以下の手順で行った.

(1) PC試料  50 µlのPC試料に200 µlのTürk液 (277-09491, Lot: LG875,和光純薬㈱社 製,日本) を加え,よく混和し,白血球を染色した.5 分間静置した後,混和溶液を Nageotte チャンバに注入した.1個のNageotteチャンバの試料室の容積は50 µlなので,正味の試料

ドキュメント内 その定量的イメージング計測法に関する研究 (ページ 132-188)

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