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特許権を巡る争訟には、特許そのものの成立あるいはその有効性を争うものと特許権の 侵害に係るものがある。

前者は特許という技術的・専門的な存在であるため、まず特許庁の判断が特許査定とし てなされ、それが不服の場合(出願人、第三者とも)、特許庁内の審判で争われ、それで も決着しない場合は裁判所(審決取消訴訟。行政事件)に行く。但し前述の技術的・専門 性から、東京高裁を第一審として争われる。

後者の侵害事件は、通常の不法行為の事件と何ら変わりなく、はじめから裁判所に係属

(民事事件)し、通常の地裁を第一審とし、最高裁まで争いうる。*1

なお特許庁内での争訟の手続きは専ら特許法の定めるところであるが、一旦裁判所に係 属すると、専ら民事訴訟法の律するところとなる。但し、特許の技術的・専門性等から、

特許事件に特殊なところは特許法に定めるところがある。

以下では、特許庁が行う処分(審判等)に係るもの(その取消訴訟を含む)と民事訴訟 である侵害訴訟とを分けて記述する。

1.特許庁内処分(審判等)

特許庁は、特許の出願や補正等に対し査定等々を行うが、これに不服のある者はまず特 許庁に対してその是正を求めて争うこととなる。そしてその争い方には、異議申立と審判 がある(なお場合によっては意見書提出が求められ、それで満足行く結果がえられるとき もあるが、ここでは置く)。

なお異議申立制度は、平成15(2003)年改正で廃止されたが、ここでは制度の変遷を俯 瞰しているので、触れることとする。

制度変遷に入る前に、上記改正前の異議・審判制度を慨述する。

<平成15年改正前>

異議申立は、何人も可能で、特許掲載公報の発行の日から6月以内に提起可能(平成6 年改正前は付与前異議であったことは既述のとおり)。またその請求理由は、補正範囲の 逸脱、条約違反、出願書類の記載違反等となっている(旧第113条)。また異議申立決 定への訴訟は、特許庁長官を相手のいわゆる査定系となる(第197条)。

他方、審判は、①拒絶査定への審判、②無効審判、③存続期間延長無効審判、④訂正審 判に分かれ、①拒絶査定への審判は当然拒絶査定を受けた者(出願人)が起こし、原則査 定謄本送達の日から30日以内に提起する(第121条)。②無効審判については、第1 23条列記の無効事由、具体的には前記の異議申立事由に違法な訂正等を含む、に該当す

るときに請求し得る。なお請求は、いつでも可能で、特許消滅後でも可能(同条第2項)。

但し請求人は、従前は利害関係人とされていた(平成15年改正で拡大。後述)。なおこ の無効審判の審決の取消訴訟は、無効申立人又は特許権者を相手とする対審構造となる(次 の③も同じ。第197条)。③の延長登録無効審判は、無効審判同様第125条の2に定 める事由に該当するとき請求できる。④訂正審判は、特許権者が特許成立後に明細書等を 訂正するため請求するが、異議申立や無効審判が特許庁に係属しているときは請求できな い(訂正審判は平成15年改正前は何時でも請求できたが同改正で無効審判継続中は同審 判手続内で行うよう改正、更に平成15年改正で、それまでは無効審決取消訴訟中にいつ でも請求可能であったが、同改正で取消訴訟提起から90日以内に期間制限された)。ま た訂正の内容も特許請求の範囲の縮減、誤記等の訂正、明瞭でない記載の釈明に限られる

(第126条)。

以上改正前の制度を見たが、それが平成15年改正でどう変わったかを以下に説明する。

<平成15年改正>

・異議申立の廃止

まず異議申立については、平成15(2003)年改正で廃止された。

この異議申立制度が廃止された理由は、要は、特許を巡る争訟が全体として長期化し、

ために特許権者の利益が害されている(特許は期限付きの権利である)ことから、この特 許庁内手続きも簡素・合理化し、迅速化する必要があったためである。特に異議申立は、

多くは第三者が、査定され成立した特許の有効性を争うものであるところ、有効性につい ては無効審判でも同様に争い得ることから、これを廃止し、無効審判に一元化したもので ある。ただし、異議申立が「何人も」請求可能であったところ、無効審判は従前、運用上 その申請者は利害関係人に限っていたことから、第123条2項に「何人も請求すること ができる」(編注;例外はある)と明文で追加・規定した。なお異議申立は特許公報発行後 6月内との期間制限があったが、無効審判はいつでも(特許消滅後も)請求可能であり、

この点からの問題はない(もっとも現実問題がどうなるかについて若干の心配はあるが、

その点は、3.プロパテントの評価のところで述べる)。

・異議申立廃止にともなう改正

上記の改正以外にもこの異議申立廃止にともない、かつては特許の取消決定を受けた権 利者は特許庁長官を相手に異議を提起できたが、無効審判の場合は当事者系であり、棄却 審決を受けた者は東京高裁に審決取消訴訟を提起することとなり、いずれにせよ特許庁長 官は、当事者としてこの審決取消訴訟に関与することはない(第179条但し書き)。よ ってこのような場合、特許庁長官の意見を反映させる余地はなくなった。このため特許庁 長官が被請求人とならない無効審判、存続期間延長登録無効審判、又はこれらの確定審決 に対する再審の審決に対する取消訴訟事件においては、裁判所が特許庁長官に対し法律適 用その他必要な事項について意見を求めることができ、また特許庁長官は、裁判所の許可 を得て、裁判所に対し当該事件に関する法律の適用その他必要な事項に意見を述べること ができる制度が設けられた(第180条の2)。

また異議申立廃止から、かつて東京高裁が専属管轄としていたその特許取消決定あるい

は異議申立手却下に対する訴えも、当然廃止された(第178条1項)。

・無効審判に係る変更

また無効審判制度を次のように改めている。

まず第123条2項で「何人」でも請求出来るようにしたことは前述のとおり。なお同 項ただし書きで、例外として前項第2号(38条違反)及び第6号に該当する場合(結果 として、請求は利害関係人に限られる)を定めるが、これらは権利帰属に係るものである ところ、これらは特許庁によるその行政処分の見直しとしての性格を受け継いでいると言 えよう。

またこの無効審判には請求時期に制限がないことは前述したが、異議申立が6月であっ たこと、請求人に従前のような制限がなくなったことから、その濫用が懸念される。この ため、審判における審判請求理由の記載方法及びその変更について、第131条2項で、

審判請求の請求理由は、「根拠となる事実を具体的に特定し、且つ立証を要する事実毎に 証拠との関係を記載する」こととした。これは従前民事訴訟法で行われてきた答弁の明確 化の流れを特許の審判においても導入したものとも言えよう。ところで第135条は、「不 適法な審判請求であって補正することができないもの・・・答弁書を提出する機会を与え ないで、審決を持って却下できる」とあるが、今後は第131条2項が加わったことで、

この取扱いが増えるものと思われる。これも迅速化・効率化に資すると思われる。

また第131条の2を新設したが、これは無効審判請求理由の補正に係る規定で、改正 前は第131条2項にあったが、これをこの新たな条文に移し、請求が認められる場合と して「(次項の)審判長の許可を得た場合」を加えた。即ち、本規定は、平成10年改正 で「要旨を変更する補正」は認めないこととしたが、これは無効審判で請求人が後に無効 理由を追加することが、その遅延の原因となっていたことによる。ただこのように禁止し ても、それと同じ理由で改めて新たな無効審判請求は可能であり、また追加請求の際の新 証拠が尤もな場合は職権での無効理由通知に発展するケースもあるところ、このような場 合は同じ審判手続で扱った方が効率的なためにこのようにした。なお「審判官が許可」は 二つの場合に限定されている(同条第2項)。その一(第1号)は、当該特許無効審判に 訂正請求があった場合に請求理由の補正をする必要が生じた場合である。特許権者が適法 に訂正を行うなら、請求人としてもその訂正された特許を争うに請求理由を補正すること は往々にして有り得よう。もう一つ(第2号)は、第1号のような理由はないが、請求人 が請求時に記載しなかった理由を追加する場合であるが、請求時に記載しなかったことに 合理的理由があり、かつ被請求人が合意したときに限られる。なお被請求人が同意しない 場合、請求理由の補正は行われないが、同じ理由により職権での無効理由通知は残されて いる。

・その他

また民事訴訟法の平成15年改正で知財訴訟に関し裁判官5人の大合議を導入したが

(後述)、特許法でもこれに合わせ審決取消訴訟事件について、5人の裁判官の合議体で 審理する旨の決定をその合議体でできることとした(第182条の2)。

なお訂正について、その請求時期制限(第126条第2項)および無効審判手続におけ

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