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特許権は、基本的には出願人による「特許請求の範囲(の記載)」(俗に「クレーム」

という)に対して付与される*1。なお特許権の範囲がこの「特許請求の範囲(の記載)」と されるのは、特許権は無体物であり、有体物のようにそのものの存在からその権利の範囲 が自動的に確定するのではなく、何らかの範囲を言葉(文言)で律する必要があるからで......

ある。

特にわが国のように「周辺限定説」*2 を採る国において、このクレームの文言はあたか も法令のように当該特許権の範囲を確定し、またその範囲を第三者に対して公示するとい う機能も持つ。この意味において、クレームの(言葉での)表現ぶりは極めて重要なもの となる。

よって出願人としては、この「特許請求の範囲の記載」で、如何に権利化したいものを 上手に出来るだけ広く記載(ないし表現)できるかが重要となる。ただ言葉(日本語)は、、、、、、、、、、

必ずしも技術的な内容を表現するにふさわしいとは言えず、ここに表現の工夫が必要とな り、その表現手法が柔軟である程、うまい表現ができる可能性は高くなる。

他方、特許権は出願に対し、特許庁内の審査手続きを経て、それが適切なものであれば 特許査定され、特許権が付与される。そしてこの出願・査定については、特許法において その手続き(申請様式やそこでの記述要件等含む)等がきちんと規定されており、いわゆ る様式行為に相当する。即ち、クレーム設定作業は、この手続規定に従うことが必要とな る。(これを「手続き要件」と言うこととする。)

また特許査定においては、その内容的にも、特許法29条以下で定める新規性・進歩性、

はもちろんのもと、上記の手続き規定内に定める要件、例えば「発明の詳細な説明の記載」

の要件(第36条第4項)や補正等の範囲(第17条等)といった意味内容についても適 切であることを要求される。そして当然、これら要求を満たして初めて特許権は有効なも のとして査定成立する。(これを「内容的要件」と言うこととする。)

なお特許権は、一端査定されれば終わりではなく、その査定後もその有効性や権利(ク レーム)範囲等が問題となる。即ち、一旦特許査定されたとしても第三者から当該特許査 定は誤りとして異議や特許権の無効審判の申立がある場合がある。またある特許権につい て侵害として提訴した場合に、提訴された側(侵害者側)から反訴の形で当該特許の有効 性(無効審判)が争われる場合も往々にしてある。このように無効を主張された場合、相

*1 なお正確には、拒絶査定された場合、出願人からそれを不服として拒絶査定不服審判(第121条)

もある。ただこの場合は、特許庁内での再度の審査ということで、訂正とかはない。

手方の主張する無効事由の回避ないし特許権が持つ問題点を治癒し、当該特許の(内容的 には修正されるが)有効性自体は維持しようとすることもある。それが訂正審判である。

そしてこの訂正審判も、特許権を「維持する」という観点からは重要な手続きである*1

以上、特許付与においては、「手続的な要件」と「内容的な要件」の二つがある。

以下においては、その各々の個々の要件について、如何に変遷してきたかについて、述 べることとする。なお記述に際しては、出願から査定、更に訂正審判も含めることとする。

1.過去の変遷

(1)手続き的要件

ア 出願

発明が十分に保護されるためには、その発明で創作した技術的思想が漏れなく十分な広 さでもって特許権化される必要がある。他方特許権は出願した特許請求の範囲(=クレー ム)に対し、審査等手続きを経て与えられるところ、出願人をして適切な表現・内容のク レームとして特許権が取れるよう手続的にも整備されていることが必要となる。

そこでまず出願は第36条にその様式や記載方式・内容等を定めるが、いずれにせよ出 願人として、適切かつ十分な内容のクレーム(の記載ないし表現)として出願できること が必要となる。

<クレーム(数)の記載>

(改善多項制の導入)

これは平成以前の話で、本稿の扱う平成後のプロパテント化とは直接関係ないが、特許 権強化(=内容の拡充)の観点からは重要で、また次の単一性にも若干関連するので、参 考までに記すこととする。

出願(特許権請求)の内容として、一つの出願で複数のことが記載できれば、当然、そ の内容は広くなるし、また発明を多面的に記述(表現)することができることから、その 内容をより多面的・包括的(要は漏れがないように)することも可能となる。

この点、大正10年法は一つの特許に複数の請求が記載できたが、昭和34年法(現行 法)制定の際に、(その理由は今ひとつ明らかではないが)一つに限る(単項制)とした。

ただこの単項制は、一出願に一発明を必須要件項(特許の目的、構成、効果のこと)で記 載することとなっていたが、これは我が国独自のものであり、また当然一特許権の範囲が 狭く、国際的ハーモナイゼーションの観点から、昭和50年改正で実施態様項(当該特許 の実施形態)も含めて良いことなった。更に昭和62年改正により、「改善多項制」が導 入された。この改正により、一出願で複数の独立した構成をそれぞれ請求項として記載で きるようになった。これにより一出願での発明(技術思想の創作)が複数の請求項で、よ

*1 この「改善多項制」が導入された理由は、それ以前の「多項制」では一つの発明に従属した実施態様

(実施態様項)のみが追加記載できるところ、この実施態様項は発明の内容を豊富にするにあまり有効 ではなかったためである。この改善多項制は、国際的にも調和(ハーモ)した制度として「請求項概 念」を導入し、この概念に当たるものは一出願で複数記載可能とした。因みに具体的条文改正としては 当時の3642号に「特許請求の範囲は請求項に区分すること」とした。この改善多項制では、従前 の実施態様項とは別に各請求項は別個独立のものとした。これにより一つの発明が複数の請求項で記載 でき、多面的な保護が可能となった。(次の注も参照)

*2 旧法では一つの請求項に記載された発明の一を「特定発明」を選び、その「特定発明」に対し各請求 項に記載される発明が第37条各号の要件を満たす場合に認めるとしていた。よって各請求項間には何 らの関係がない場合でも単一性を満たすとされていた。

り包括的・総合的に記することができることとなった*1

因みに、特許出願の平均項数は、全出願ベースで、2000年8.1項であったものが 年々増加し、04年には9.4項に至っている(特許年報2005)。

(単一性要件の改正)

しかしこの改善多項制も、その要件(=一の出願で出来るという「単一性要件」)は、

旧第37条に具体的に列挙されていたため柔軟性に欠け、他方 PCT(特許協力条約)で はその要件を規則レベルで定め柔軟な対応をしていたことから、平成15(2003)年改正に おいて同条を改正することとした。即ち国際ハーモの観点からの改正である。

この改正で単一性要件は柔軟に改訂できる省令事項とするほか、そもそもの考え方も、

一つの出願に含まれる各請求項に記載される発明について、「全てに共通する関係がある か否か」によって判断することとした*2。(なお単一性に係る審査基準は、平成15年12月 に改訂されている。)

以上の制度変遷を経て、一の出願で互いに相互密接に関連する発明群をまとめて出願で きることから、出願人にとっても自己の発明を多面的・網羅的に記述することができ、第 三者からもある程度まとまっているので分かり易く(即ち、他者にとって監視負担が減 る。)、また特許庁においても関連した事項として審査を効率的に行えるメリットがある。

具体的には、一の発明の特別な技術的特徴に対し、その他の全ての発明のそれぞれの特 別な技術的特徴が同一の又は対応するものかで判断する(2.2:審査基準の該当項。以下 同じ。)。なおこの判断は実質的に判断し、単なる表現上の異同に囚われないよう留意す るとされる。判断に際してはまずそれぞれの発明の「特別な技術的特徴」を把握し、これ らについて同一又対応するものかを判断する。なお単一性の要件を満たす場合でも、「特 別な技術的特徴」としたものが先行技術の中に発見されるなど発明の先行技術に対する貢 献をもたらすものでないことが明らかとなった場合には、事後的に単一性要件は満たさな くなる。

次いで単一性の類型判断として、基本的な類型(3.1)として、同一の場合(3.1.1.)、対応

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