第3章 :機能及び操作方法
3.1 垂直軸(VERTICAL)システム
3.1.2 MATH(演算)機能
3.1.2.2 乗算
乗算は下記のようにCH間で演算します。対象データはCH1、CH2に入力され ている信号です。
c) 乗算:(CH1のデータ)×(CH2のデータ)
CH間では設定条件が同一の状態ではありませんが、Math 演算では各CH独立 に測定したデータを乗算して、表示します。但し、単位はV2です。
3.1.2.3 FFT
Mathメニューの中にFFT演算があります。
(1) 概要、用途
デジタル・オシロスコープでは通常、観測信号を時間軸領域の波形のデータと して表示します。オシロスコープで取得したデータをFFT演算することで、観測 信号をスペクトラム・アナライザのように周波数領域で表示します。(図 3.1.17 参照)
他の周波数変換方式と比べてFFT演算方式が有利な点は、シングルショットの 信号や繰り返しの遅い信号に対しても演算ができることです。さらに、オシロス コープの持つ時間ドメインの記録機能と同様に高速で演算することができます。
また、バースト波形の解析、繰り返し波形の周波数解析、振幅解析などが可能 です。
図3.1.17 時間軸表示と周波数軸表示
電 圧
(V)
(2) メニュー
表3.1.5にFFT演算のメニュー、設定、内容を示します。
表3.1.5
FFTの重要な点
1 DC成分やオフセットのある信号の場合、FFT波形の大きさに誤りが生じること があります。DC成分を最小限に抑えるため、ソース信号に対して AC結合を選 んでください。
2 反復イベントやシングルショットイベントにおけるランダムノイズやエイリア ス成分を低減するため、オシロスコープのAcquisition(捕捉)モードをAverage(平 均)に設定してください。
3 ダイナミックレンジの大きな FFT 波形を表示するには、dBVrms スケールを使 用してください。dBVrmsスケールは、対数スケールで表示します。
dBVrms : 1Vrmsを基準としたdB
メニュー 設定 内容
Operate FFT FFT演算を設定します。
Source CH1 CH2
CH1をソースに設定します。
CH2をソースに設定します。
Window
Rectangle Hanning Hamming Blackman
FFTのウィンドを選択します。
各 Window の特徴については次ページ(3) を参照してください。
Display Split Full Screen
FFTの波形を画面下半分で表示します。
FFTの波形を全画面で表示します。
Scale VRMS
dBVRMS
“Vrms”を垂直軸の単位に設定します。
“dBVrms”を垂直軸の単位に設定します。
(3) FFT Windowの選択
4種類のFFT Windowを持っています。選択するWindowで周波数分解能と振幅 精度が異なります。表3.1.6を参考に最適なWindowを選択してください。
表3.1.6 Window
(窓関数) 特徴 最も適した測定
Rectangle
周波数解像度は最も高く、振 幅解像度は最も低いWindow です。Window がない場合と 本質的に同等です。
イベントの前後で信号レベルのほとん ど変わらないトランジェントやバース ト信号の測定。
周波数固定で振幅一定の正弦波や比較 的ゆっくりスペクトル変化している帯 域 幅 の 広 い ラ ン ダ ム ノ イ ズ な ど の 測 定。
Hanning Rectangular と比較して周波 数解像度が低下し、振幅解像 度が改善されています。
正弦波、周期的、帯域幅の狭いランダ ムノイズなどを解析します。
Hamming Hanning よりも周波数解像 度が若干高くなっています。
イベントの前後で信号レベルの大きく 異なるトランジェント信号やバースト 信号の測定。
Blackman
振幅解像度は最も高く、周波 数解像度は最も低いWindow です。
単一周波数の波形測定。
(4) FFT演算の対象データ数
本製品では、実際のMemDepth(メモリ長)の一部である表示部のメモリ長のデ ータを画面に表示します。Acquisitionメニューの中で、Normal/Long Memを選択
してMemDepth(メモリ長)を設定します。時間軸レンジ、サンプリングレート、
表示部のメモリ長(12div)、実際のメモリ長の関係は巻末の付録 1 の表 1、表 3
(Normal)、表2、表4(Long Mem)を参照してください。表示部(12div)の時 間軸のデータ数が600を超えた場合は、600データに圧縮、表示されます。
FFT波形の対象波形データ(計算ポイント数)についても、巻末の付録1の表1、
表3(Normal)、表2、表4(Long Mem)の表示部のメモリ長(12div)を参照し てください。
(5) 周波数範囲
本製品では、FFT 波形の周波数軸範囲は時間軸レンジ、サンプリングレート、
MemDepth(メモリ長)によって決まります。周波数軸範囲は基本的に0Hz~ナイ
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重要な用語 FFT解像度
サンプリングレートとFFTの点の数との関係で決まります。FFTの点の数を固定 した場合、サンプリングレートが低いほど解像度が上がります。
ナイキスト周波数
リアルタイムでデジタル化するオシロスコープにおいて、エイリアスを発生せずに 捕捉できる最大周波数を指し、通常はサンプリングレートの半分です。これをナイ キスト周波数と呼びます。ナイキスト周波数を超える周波数をサンプリングする場 合にはエイリアスが発生します。
FFT 演算するとき、データは連続しているものとして扱います。これにより入力 信号周期が演算範囲内に整数周期でおさまらないと、時間軸波形が不連続になり、
FFT 演算によって得られたスペクトルが広がってしまいます。これを漏れ(Leakage)
と言います。
解析する信号によって適切な FFT Windowを使用することにより、スペクトル漏 れを抑えることができます。
[例)] ①バースト波形 ②繰り返し波形
図 3.1.18 の①のように演算範囲内で収束し、a 点、b 点が連続するバースト信号 の場合にはスペクトル漏れが発生しませんが、②のように演算範囲の前後 c 点、d 点 で不連続になる繰り返し信号の場合にはスペクトル漏れが発生し正確な測定を行 うことができません。FFT Windowを使用すると②のような演算範囲の前後での不 連続点を小さくする処理を実施し、スペクトル漏れを抑えることができます。
図3.1.18 演算範囲での連続、不連続による周波数特性
(6)測定例
周波数500kHzの正弦波を測定し、FFT波形を表示させた例を示します。
正弦波の繰り返し測定では図3.1.19のWindowメニューをHamming(ハミン グ)に設定したほうがスペクトルの広がりが少ないことがわかります。
a) 測定系
周波数:500kHz 入力電圧:12Vpk
b) 正弦波のY-T(振幅と時間軸)波形とFFT波形
<測定条件> Memory Depth(メモリ長):5120 points Sampling(サンプルレート):100.00 MS/s
図3.1.19
Y-T波形とFFT波形 FFTウィンド:
Hamming(ハミング)
図3.1.20 YT波形とFFT波形 FFTウィンド:
Rectangular (レクタンギュラー) Y-T 波形
FFT 波形
Y-T 波形
FFT 波形