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中国法における制度の主要立法目的の調整

第 三 章 中 国 法

第三節 中国法における制度の主要立法目的の調整

形式的提訴請求手続

株主が代表訴訟を提起する前に、会社に対して提訴請求(前霞程序)をしなければ ならないことについては、もはや異論がない。例えば、新会社法の制定前、上記最 段の意見募集稿の第 45条 は 会 社 に 対 す る 提 訴 請 求 を 要 求 し て い る 新 会 社 法 の 第 152条 1項も による提訴議求手続を要求している問。

697上海高級人民法院「関於審理股東派生訴訟紛糾案件的若干意見J2007年9月 18日。

698最高人民法院「関於適用《中華人共和国公司法》若干問題的規定(ニ) (征求意見稿) J (2007)

699最高人民法院「関於適用《中華人共和国公可法》若干問題的規定(四) (征求意見稿) J  (2009)

700 例えば、王林清:顧東偉『新公司法実施以来熱点問題適用研究~ 423頁(人民法院出 版社、 2009):劉冬京・前掲注 (656) 114真。

701また、王保樹・前掲注 (684)第 170条参照。

702ただし、立法の文言上は日本会社法 847条 1項と同様に「訴訟の提起を請求すること ができるj というような表現を使用しているため、提訴諦求手続が株主の自主的選択に任 せるという意味合いを実務界に与えたようである。馬鋒「新公可法中的股主代表訴訟制度j

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中国会社法は日本法と同様に、株主総会によって選任される取締役会と監査役会が 併存する二重的経営監督機構を採用しているため、日本法と同様に、会社のどの機関 に対して提訴請求をすべきであるか、つまり、提訴請求の宛先についてはしばしば議 論の対象となる。この問題について、新会社法の制定前の見解であるが、詳縮に提案 を行っている者がいる703。その提案によると、会社の支配人、従業員及び第三者が会 社の利益を侵害した場合、提訴請求を受けるのは会社の代表機関である取締役会であ り、取締役会が提訴を拒絶したり、怠ったりすれば、株主が提訴できる。取締役が会 社の利益を侵害した場合は監査役会に提訴請求して、監査役会が提訴を拒絶したり、

怠ったりすれば、株主が提訴できる。この二つの場合に対して、監査役が会社の利益 を侵害した場合は、会社の法定の監査機関である監査役会の監督権限の弱化を防止す るために、取締役会に提訴請求するのではなく、取締役会に株主総会を招集させ、提 訴しようとする株主が監査役(会)に対するの起訴案を株主総会に提出して、可決さ れたら、取締役会に訴訟の代表権限を授権し、逆に、否決されたら、株主が代表訴訟 を提起しでもいい。責任追及の対象に応じて提訴請求の宛先を変えるというような制 度設計は日本法を約締させるが、株主総会が訴訟の提起を否決した場合にも株主によ る代表訴訟の提起を認めるというのは、訴訟管理権限があくまでも株主にあるという 考え方を極端に示している。

すでに言及したように、新会社法の第 152条は株主総会に対する提訴請求を要求し ていないが、上記提案と同じ発想、に基づいて提訴請求の宛先を定めている。まず、取 締役または高級管理人員が責任追及の対象である場合は、監査役会に対して、書面に て人民法院への提訴を請求することができる7040 次に、監査役が責任追及の対象であ る場合は、取締役会に対して、書面にて人民法院への提訴を請求することができる。

と記会社法改正前の提案と同様、監査役が経営監督機関であること、監査役が責任追 及される場合は通常取締役との共謀による監督義務の違反であることを考慮して、こ の規定に対して疑問を提示し、関係機関すべてが問題とされる不正行為と利害関係を 有する場合は株主総会に提訴請求すべきであるとする見解がある705。さらに、新会社 法は、これらの会社経営者以外に、「他人j の会社に対する責任も代表訴訟の対象とさ れているため、後述するように、この「他人J の意味については学説上争いがあるが、

この「他人j の を追及する場合は会社のどの機関に対して提訴請求を行うのかに ついて明文の規定がない。この場合は取締役会に対して行うべきであるという意見が ある706。また、まず取締役会に対して提訴請求を行って、取締役会が拒絶したら、次 人民法院報 2006年4月 12日7版。

703彰 真 明 ほ か ・ 前 掲 注 (683) 81真。

704新会社法第 119条では、監査役会は会社法 152条の規定に基づいて取締役と高級管理 人員に対して訴訟を提起する権限があることを明記している。

705沈 貴 明 ・ 前 掲 注 (687) 61‑66 

706部俊海・前掲注 (653) 265 

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に監査役会に提訴請求をするという提案もある7070 これらの見解に対して、 f他 人j の 中 に は 、 支 配 株 主 な ど も 含 ま れ て い る た め 、 提 訴 請 求 の 宛 先 を 一 律 に 決 定 す べ き で は ないという見解もある7080

確 か に 、 提 訴 請 求 の 宛 先 に 関 す る 制 度 設 計 は 会 社 自 身 に よ る 訴 訟 の 提 起 ま た は 会 社 内 部 で の 救 済 を 促 進 す る と い う 意 味 で は と て も 重 要 な 問 題 で あ り 、 な る べ く 会 社 の 各 機 関 の 間 の 権 限 分 配 関 係 そ 考 慮 す る 上 で 、 責 任 追 及 の 対 象 と 独 立 す る 機 関 を 選 択 す る 必 要 が あ る 。 し か し 、 会 社 の 機 関 が 株 主 の 書 面 に よ る 提 訴 議 求 を う け た 後 、 訴 訟 の 提 起を拒否した場合に、または、請求された日から 30 日以内に訴訟を提起しなかった場 合 に 、 ま た は 直 ち に 訴 訟 を 提 起 し な い と 会 社 に 回 復 し が た い 損 害 を 生 じ る 恐 れ が あ る 場 合 に は 、 提 訴 請 求 を し た 株 主 は 会 社 の 利 益 の た め に 、 白 己 の 名 義 で 直 接 提 訴 で き る という条文の文言からも明らかなように、会社側が訴訟の提起を拒否した場合、ある い は 、 提 訴 し な か っ た 場 合 に は 、 会 社 側 の 判 断 が 一 切 尊 重 さ れ ず 、 株 主 が 直 ち に 代 表 訴 訟 を 提 起 で き る こ と に な っ て お り 、 解 釈 上 か ら も 取 締 役 会 ま た は 監 査 役 会 のJ意見を す る 余 地 が ま っ た く な い 。 し た が っ て 、 日 本 法 と 同 様 、 中 国 法 が 責 任 追 及 の 対 象 に 応 じ て 異 な る 提 訴 請 求 の 宛 先 を 定 め て い る こ と は あ く ま で も 会 社 自 身 に よ る 訴 訟 の 提 起 を 促 す と い う 機 能 に と ど ま り 、 提 訴 請 求 手 続 は 訴 訟 管 理 権 限 の 分 配 メ カ ニ ズ ム と し て 機 能 す る こ と を 予 定 し て お ら ず 、 形 式 的 な 手 続 で あ る 。 会 社 法 改 正 前 か ら 、 学 説 に お い て も 、 中 国 現 段 階 で は ア メ リ カ 法 の よ う な 訴 訟 管 理 権 限 の 分 配 メ カ ニ ズ ム を 採 用すべきではないとする意見が多い7090

二 被 告 範 聞 の 限 定

中 国 で は 、 後 述 す る よ う に 、 会 社 経 営 者 の 義 務 違 反 は も ち ろ ん 、 支 配 株 主 あ る い は 実 質 的 支 配 者 に よ る 会 社 利 益 の 侵 害 と い う 現 象 は と く に 深 刻 で あ り 、 こ の よ う な 実 態 に対処するために、ぜひとも支配株主を代表訴訟の対象とすべくという考え方がある。

例えば、最高院の上記意見募集稿の第43 条は支配株主を代表訴訟の対象にすべきであ り、その 46 条2項によれば、裁判所は原告株主が代表訴訟を提起する際に利益相反取 引 の 相 手 方 在 被 告 あ る い は 第 三 者 と し て 訴 訟 参 加 さ せ る こ と を 認 め る べ き で あ る と 提 案 し て い る 。 ま た 学 説 の 中 で も 、 代 表 訴 訟 の 対 象 範 囲 を 広 く 認 め る べ き で あ る と い う 意見が多く見られる710。 こ れ ら の 意 見 に 対 し て 、 支 配 株 主 が 会 社 に 損 害 を 与 え 、 会 社

707蒋 大 興 「 股 東 代 表 訴 訟 中 的 “ 公 可 意 志 第 四 届 亜 州 企 業 法 制 論 壇 f股東派生訴訟的

理論与実務~ 19(2007 、上海)。

708沈 貴 明 ・ 前 掲 注 (687) 64

709例えば、方鉄道「米、 B 股東代表訴訟制度比較及対我図的啓示j 江西財経大学学報 2003 年第 2期 ; 劉 桂 清 ・ 前 掲 注 (654) 176 頁 ; 劉 金 華 ・ 前 掲 注 (656) 188 支;王林清

=顧東偉・前掲注 (700) 424 頁。

710例えば、合培忠「論股東派生訴訟在中国的有効適用J北京大学学報(哲学社会科学版) 第 521(2002) 彰真明ほか・前掲注 (683) 81-82 頁。

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が訴訟を提起しない場合においても、株主は取締役に対してのみ代表訴訟を提起でき るという意見もある7110 2004年の政府の改正草案では、会社経営者の損害賠償責任に 限定しているが、その後、全人代の法制工作委員会は 2005年 6月に開催した会社法 改正の専門家座談会において、この問題について怠見を求めた結果、アメリカ法のよ

うに、限定すべきではないという意見が出された7120

最終的に、新会社法 152条 1項では、会社の業務を執行する際に、法令または定款 に違反し、会社に損害を与えた取締役、監査役及び高級管理人員が代表訴訟の対象と されているに加えて、その第 3項では、会社の利益を侵害した「他人j も代表訴訟の 対象とされている。この「他人j の範囲について、呉体的な規定がないため、学説上、

争いがあるG アメリカ法と同様に、会社に損害を与えた全ての者が対象となるという 無 限 定 説 が あ る こ れ に 対 し て 、 こ の 「 他 人j の範囲について、支配株主あるいは 質支配者に限定すべきであり、会社の利益を侵害した全ての者であるべきではなく、

漠然に「第三者Jというべきではないという限定説714が多数説となっているようであ る。また、支配株主と実質支配者に限らず、発起人、清算人及び会計監査人も「他人」

の範間に入るべきであると主張する見解も多い7150 これらの限定説の理由は株主代表 訴訟の違法行為抑止機能を重視しながら、会社経営に対する株主の過度な干渉を危倶 するところに求められようO

いずれにしても、新会社法では支配株主の損害賠償責任も明文で定めている (20条、 21条)ため、立法者の意図は明確であるため、支配株主あるいは実質支配者が代表訴 訟の対象範囲に入ることについては異議がなく、中国の実情にも栢応しい立法である

と評価すべきであろう。また、発起人、清算人及び会計監査人も内部者と見倣される べきことについて異論がないであろう。しかし、支配株主以外の第三者についても代 表訴訟の被告とする必要があるのかについては主要立法目的の調整制度と関連するた め、立法による解決が必要である。

711王保樹・前掲注 (684)第 168条。

712劉俊海・前掲注 (653) 255頁参照。

713例えば、劉俊海・前掲注 (653)255~256 頁;越継明ヱ呉高臣・前掲注 (647) 13 

714顧功転ほか・前掲注 (679) [王保樹発

715察立東「論股東派生訴訟中被告的範囲」当代法学第21巻第 1期 159頁参照 (2007); 

劉桂清・前掲注 (654) 178頁・事JI金華・前掲注 (656) 125頁。

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