つ 。
第三節 アメリカ法における制度の主婆立法目的の調整
一 取 締 役 会 に 対 す る 提 訴 請 求 要 件 1 提 訴 請 求 手 続 の 役 割
原 告 株 主 が 訴 状 に お い て 、 取 締 役 た ち 若 し く は 同 等 の 会 社 機 関 か ら そ の 希 望 す る 訴 訟 を 獲 得 す る た め の 努 力 、 及 び 努 力 が 失 敗 し た 、 又 は 、 努 力 を 行 わ な か っ た 理 由 を 体的に主張しなければならない。ほとんどの州制定法は第一節で検討した 1881年の Hawes事件判決で連邦最高裁によって確立された連邦民事訴訟規則 23.1の文言にな らって、このような訴答手続との原良J[(pleading rule)を規定している2270 このよう な 規 定 の 媛 昧 な 文 言 は 具 体 的 に 何 を 意 味 す る の か に つ い て そ の 後 の 裁 判 所 の 解 釈 が 一 致 し な い 。 し か し 、 株 主 が 派 生 訴 訟 を 提 起 す る 前 に 取 締 役 会 に 対 し て 会 社 自 身 が 訴 訟 を提起するよう請求しなければならないという取締役会に対する提訴請求手続がこの 規 定 か ら 推 論 的 に 導 か れ る こ と に つ い て 裁 判 所 の 見 解 が 一 致 し て い る 。 ま た 、 必 要 の ない場合にはこの手続が免除できることも含意する228 。 本 章 第 一 節 で す で に 検 討 し た よ う に 、 派 生 訴 訟 は 二 重 性 質 が あ り 、 株 主 が 派 生 訴 訟 で 主 張 す る 訴 訟 原 因 の 一 つ は 会 社 に 属 す る 。 し た が っ て 、 取 締 役 会 に 対 す る 提 訴 請 求 手 続 は 会 社 の 経 営 が 取 締 役 会 に よって行われているという会社法の基本原則を反映している229 0
問 題 は こ の よ う な 文 言 が 提 訴 請 求 手 続 し か 意 味 し な い の か 。 も し そ う で あ れ ば 、 提 訴請求手続は単なる f会社内部救済枯渇J (exhaustion of intra‑corporate remedies) の 理 論 と し て 理 解 さ れ る こ と に な り 、 株 主 の 提 訴 請 求 を 受 け て 、 会 社 が 訴 訟 を 提 起 す れば、株主は訴訟手続から排除されることになるが、取締役会が提訴を拒絶したり、
ま た は 原 告 株 主 が 提 訴 請 求 の 無 益 を 主 張 し た り す れ ば 、 株 主 が 白 動 的 に 派 生 訴 訟 を 提 起できることになる230 0 そうであれば、提訴請求手続の役割は、会社自身による訴訟 の提起を促すことだけになる。
しかし、ほとんどの裁判所は、この訴答手続との原則は少数株主が取締役会の意思
227 See, e.g., Fed. R. Civ. P. 23.1(b)(3); De.l Ch. Ct. R. 23.1(a); N..Y Bus. Corp. Law 9626(c); Ca.l Corp. Code 9800(b)(2).
228 提訴請求の免除を初めて認めたのは連邦最高裁が下した次の判決のようである。
Delaware
&
Hudson CO. v. Albany&
8usquehanna Railroad Co., 213じ.8.435(1909). See Carole F. Wilder, The Demand Requirement and the Business Judgment Rule: Synergistic Procedural Obstacles to 8hareholder Derivative Suits, 5 Pace L. Rev. 633, 640 (1985).229 See Dennis J. Block, Stephen A. Radin & James P. Rosenzweig, The Role of the Business Judgment Rule in 8hareholder Litigation at the Tu rn of the Decade, 45 Bus.
Law. 469, 471 (1990); Fischel, supra note 85, at 17.1
230 See Kenneth B. Davis, Jr., The Forgotten Derivative Suit, 61 Vand. L. Rev. 387, 397 (2008); Fischel, supa note 85, at 169.
‑45綱
に 反 し て 派 生 訴 訟 を 提 起 で き る か と い う 原 告 適 格 (standingrequirement)の 問 題 を も 意 味 す る と 解 釈 し て い る つ ま り 、 本 稿 で 言 う 訴 訟 管 理 権 限 分 配 の 問 題 を 含 ん で いる232 0 そ の た め 、 取 締 役 会 が 株 主 の 提 訴 請 求 を 拒 絶 し た り 、 ま た は 原 告 株 主 が 提 訴 請 求 の 無 益 を 主 張 し た り す れ ば 、 株 主 は 自 動 的 に 派 生 訴 訟 を 提 起 で き ず 、 訴 答 手 続 の 段 階 で 具 体 的 な 事 実 を 主 張 し て 取 締 役 会 の 提 訴 拒 絶 の 不 当 性 ま た は 提 訴 請 求 の 無 益 を 証 明 し な け れ ば な ら な い 上 記 制 定 法 の 文 言 は 取 締 役 会 に 対 す る 提 訴 請 求 手 続 を 要 求 し て い る だ け で は な く 、 原 告 株 主 が 訴 訟 管 理 権 限 を 得 る た め の 重 要 な 実 体 法 上 の 要 件でもある234 0 提 訴 請 求 手 続 の 役 割 は 訴 訟 管 理 権 限 を 分 配 す る た め の 手 続 的 補 助 で も ある235 0 よ っ て 、 連 邦 裁 判 所 で 派 生 訴 訟 を 提 起 す る 場 合 は も ち ろ ん 連 邦 民 事 訴 訟 規 則 が 適 用 さ れ る が 、 派 生 訴 訟 の 利 用 に 関 す る 取 締 役 会 と 提 訴 株 主 と の 訴 訟 管 理 権 限 分 配 の問題は、訴因が連邦法の公序と抵触しない限り、会社設立の準拠する外!の会社法を 適用する236 0
2 提 訴 請 求 手 続 の 妥 当 性 の 問 題
以 と の よ う に 、 提 訴 請 求 手 続 の 直 接 目 的 は 派 生 訴 訟 が 提 起 さ れ る 前 に 取 締 役 会 に 判 断 の 機 会 を 与 え る こ と で あ る が 、 取 締 役 会 の 意 思 と 提 訴 株 主 の 意 思 が 衝 突 す る 場 合 に 訴 訟 管 理 権 限 を 分 配 す る た め の 補 助 的 役 割 も 果 た せ る 。 そ の た め 、 提 訴 議 求 手 続 自 体 の妥当性は重要な争点ではない。ここでは簡単に概観する。
ま ず は 提 訴 請 求 手 続 の 形 式 の 問 題 で あ る 。 通 常 は 書 面 の 形 式 で 行 わ れ る が 、 判 例 で は 会 社 側 と 協 議 す る 際 に 口 頭 で そ の 旨 を 伝 え て も よ く 、 裁 判 所 は 提 訴 請 求 手 続 の 形 式 に寛容的である237 0RMBCA ~ 7 .4 2 および ALI 原理~ 7.03(a)は 書 面 に よ る 提 訴 請 求 を 推 奨 し て い る 。 ま た 、 提 訴 請 求 の 内 容 は 少 な く と も 、 不 正 行 為 者 の 特 定 、 不 正 行 為 に 関 す る 事 実 的 根 拠 の 説 明 、 会 社 に 損 害 が 発 生 し た こ と の 説 明 、 及 び 、 救 済 策 を 請 求 す る旨を含まなければならない238 0 ALI 原理~7.03(a)は 合 理 的 な 明 確 さ を も っ て 主 要 な 求 原 因 事 実 を 取 締 役 会 に 通 知 す る こ と を 推 奨 し て い る 。 提 訴 請 求 手 続 上 の 不 備 が あ り 、 あ る い は 、 提 訴 請 求 を ま っ た く し な か っ た 場 合 は 通 常 、 却 下 さ れ る が 、 原 告 株 主
231 See Fischel, supra note 85, at 168備170.
232 See Tamar Frankel & Wayne M. Barsky, The Power Struggle between Shareholders and Directors: The Demand Requirement in Derivative Suits, 12 Hofstra L. Rev. 39 (1983).
233 ただし、裁判所の職権調査事項ではないため、通常、被告取締役側が防訴抗弁として 主張されない限り、争点にならない。また、取締役ではない被告でも提訴請求要件を理由 とする防訴抗弁を主張できる。 SeeKaplan v. Peat, Marwick, Mitchell
&
Co., 540 A.2d 726 (De.l 1988).234 したがって、本稿では、提訴請求手続と提訴請求要件を区別して使用している。
235 See Davis, supra note 230, at 396.
236 See Kamen v. Kemper Finanial Services, Inc., 500 U.S. 90 1( 991); Erie Railroad v. Tompkins, 304 U.S. 64 (1938).
237 See Ferrara et, a.l supra note 96, ~3.03 at 3・6.
238 See Ferrara et, a.l supra note 96, ~3.03[2] at 3帽10.
‑46駒
が提訴請求手続を補完的に行えば、訴状の修正または新しい訴訟の提起が認められる。
次は取締役会の返答期間が問題になる。取締役会は提訴請求に返答するにあたって、
関 連 事 実 に 対 す る 調 査 や 検 討 を す る た め の 一 定 期 間 が 与 え ら れ る べ き で あ る 。 ど の ぐ らいの期間が適切であるかについて、判例法が明確な基準を示さなかった239。 多 く の 州制定法も明確な規定がなく、一部の州は RMBCA
S
74.2.(2)に倣って 90B
関を定め ているが、90日が経過しでも会社が裁判所に期間の延長を求めることができる2400ALI 原理 S7.03(のも取締役会又は委員会が合理的な期間内に返答しなければ、原告株主が 提 訴 で き る と い う よ う に 回 定 の 期 間 を 推 奨 し て い な い 。 裁 判 所 は 調 査 の 必 要 性 と 訴 訟 遅延の可能性との間で均衡を保ちながら、返答期間の合理性を判断することが求めら れる2410二 1970年代以前の訴訟管理権限の分配状況
上 述 し た よ う に 、 ア メ リ カ 法 で は 、 訴 訟 管 理 権 限 の 分 配 は 取 締 役 会 に 対 す る 提 求 要 件 を 通 じ て 行 わ れ る 。 具 体 的 に は 、 提 訴 請 求 手 続 が 免 除 さ れ た ら 、 株 主 の 提 訴 判 断 が 裁 判 所 に 尊 重 さ れ 、 訴 訟 管 理 権 限 が 原 告 株 主 に 分 配 さ れ る こ と に な る 。 逆 に 、 免 徐 が 認 め ら れ な か っ た ら 、 通 常 訴 訟 が 却 ド さ れ る こ と に な り 、 訴 訟 管 理 権 限 が 取 締 役 会 に 分 配 さ れ る こ と に な る 。 ま た 、 提 訴 請 求 手 続 が 実 際 に 行 わ れ 、 か つ 、 取 締 役 会 が 提 訴 を 粧 絶 し た 場 合 、 裁 判 所 が 取 締 役 会 の 提 訴 拒 絶 の 判 断 を 妥 当 な 意 思 決 定 と し て 重 す れ ば 、 訴 訟 管 理 権 隈 が 取 締 役 会 に 分 配 さ れ る こ と に な る 。 逆 に 提 訴 請 求 の 拒 絶 が 不 当 で あ る と し て 裁 判 所 に 尊 重 さ れ な か っ た ら 、 株 主 の 訴 訟 提 起 が 認 め ら れ 、 訴 訟 管 理 権 限 が 株 主 に 分 配 さ れ る こ と に な る 。 こ こ で は い く つ か の ア メ リ カ の 論 稿 の ま と め を通じて、 70年代以前の判例法の状況を概観する。
1960年のある研究ノートは以下のようにまとめている242。まず、提訴請求の免除に つ い て 、 過 半 数 の 取 締 役 が 訴 え ら れ て い る 不 正 行 為 者 で あ る 場 合 や 過 半 数 の 取 締 役 が 被 告 の 支 配 下 に あ る 場 合 に は 、 裁 判 所 は こ れ ら の 場 合 に お け る 取 締 役 の 自 己 利 益 を 無 視 で き な い こ と を 理 由 に 、 一 致 し て 提 訴 請 求 の 免 除 を 認 め て き た 。 こ れ に 対 し て 、 取 締 役 の 過 半 数 は 名 目 的 に 利 害 関 係 が な い 場 合 に は 、 彼 ら が 同 僚 の 被 告 に 対 し て 公 平 な 判断を行うことが期待できるかについて、当時ではまだこれに関する判例がないが、
利 害 関 係 の な い 取 締 役 会 が 向 僚 取 締 役 の 行 っ た 取 り 消 し で き る 取 引 を 承 認 す る こ と が できるというアメリカの支配的ルールから考えれば提訴請求が要求されるだろうと。
ま た 、 こ の よ う な 場 合 に も 取 締 役 会 が 提 訴 を 受 け 入 れ る 合 理 的 な チ ャ ン ス が 与 え ら れ
239 See Ferrara et, a.l supra note 96, ~3.03[4] at 3嶋1.1
240 See, e.g., Ariz. Rev. Stat. Ann. ~ 10・742;Me. Rev. Stat. Ann. tit 1与C,~753 , 754; Wisc. Stat. Ann. ~ 180.0742, 180.0743; Va. Code Ann. ~ 13.1‑672.1(B).
241 See Ferrara et, a.l supra note 96, ~3.03[4] at 3‑12.
242 See Note, Demand on Directors and Shareholders as a Prerequisite to a Derivative Suit, 73 Harv. L. Rev. 746, 753醐754,759‑760 (1960ト
欄 47聞
るべきであり、何よりも提訴請求手続白体が僚-単である。次は提訴請求が行われた場 合の取締役会の返答の効力についてである。取締役会が提訴を受けいれる場合、派 訴訟が排除され、取締役が会社の名義で提訴する。取締役会の提訴拒絶の判断につい て、被告が取締役、業務執行役員またはその他の会社の代理人である場合には裁判所 がこれを尊重せず、派生訴訟が提起できるようであるが、第三者を被告とする場合に はたとえ取締役会の提訴拒絶の判断が不合理で、あっても裁判所に尊重され、派生訴訟 が妨げられることになるだろう。
次に、 Fischelの研究結果は以下のようになるG まず、提訴請求の免除243 について は以下の四つに分けてまとめている。①取締役らは不正行為者(第三者を含む)に支 配されている場合に、大半の裁判所はこれを根拠付ける特定の事実が示されたら、提 訴請求を免徐する。②取締役らに明らかな利益相反が存在する場合には提訴請求が免 除される。③過半数の取締役が詐欺や自己取引に従事した場合には提訴請求が免除さ れるが、問題の取引を承認ないし黙認した場合には判例の立場が分かれている。これ だけでは提訴請求を免徐するには十分ではないというのは支配的な見解である。④一 部の判例では、取締役らが明らかに訴訟の提起に反対する場合には提訴請求が免徐さ れる。そして、提訴請求拒絶の効力244 については以下の五つの場合に株主の提訴を妨 げない。①取締役らが不正行為者に支配されている場合や問題の取引に利害関係を有 する場合には取締役らの提訴拒絶の判断が派生訴訟を妨げない。②過半数の取締役が 問題の取引に参加した場合には取締役会が提訴を距絶しでも株主は派生訴訟の提起が 許される。また、第三者に関する判例でも、取締役らが問題の取引に参加した場合に は派生訴訟の提起が認められる。③取締役らが明確な訴因を不当に主張しない場合に 一部の裁判所は株主の提訴を認めた。しかし、多数の判例は株主が主張する訴因に対 する審査を拒絶する。なぜならば、このようなことをすれば、裁判所が取締役のかわ りに判断することになるからである。④政府との取引が憲法違反であるという事例245
で連邦最高裁が特別に株主の提訴を認めた。⑤取締役会が提訴を拒絶すること自体が 違法行為を構成する場合(例えば企業の政治献金を規制する連邦法)には経営判断原 則が適用せず、株主が提訴できる2460
最後に、 CoffeeとSchwartzのまとめによれば、裁判所は取締役会が派生訴訟を終 了させる経営判断権限を認識しているが、経営判断原期の適用はもっぱら第三者を対 象とする訴訟で適用され、経営者を対象とする訴訟ではめったに適用されない。特に 経営者の自己取引を黙認している事件では、例え取締役らが被告に支配されていなく
243 See Fischel, supra note 85, at173綱182.
244 Id., at 193帽198.
245 Ashwander v. Tennessee Valley Authority, 297 U.S. 288 (1936ト
246 Miller v. American Telephone & Telegraph Co., 507 F.2d 759 (3d Cir. 1974ト
暢 48‑