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中国証券監督管理委員会の調査と行政措置

ドキュメント内 中国上場企業の情報開示に関する研究 (ページ 40-43)

第 3 章 中国上場企業の情報開示の実態及び課題

3.2 中国上場企業の情報開示の実態

3.2.1.2 中国証券監督管理委員会の調査と行政措置

銀広夏の架空取引の疑惑があるとの指摘を受け、CSRCの調査が行われた。2002年4月に公

開されたCSRCの行政処罰決定書は、銀広夏の違法事実を以下のようにまとめた31

① 銀広夏は1998年-2001年にかけて、累計10.5億人民元にのぼる架空売上を計上し、

0.48億人民元の費用を隠することで、7.72億人民元の架空利益を計上した。そのうち、

1998年-2000年度の3年間はそれぞれ0.178億、1.78、5.67億人民元を不正計上した。

CSRCの行政処罰決定書によれば、銀広夏は、中国「会計法(1999年改正)」第13条 を違反し、「証券法(1998年)」第177条、及び「株式発行と取引の暫時管理条例」第 74条に定められている虚偽陳述行為を犯した。

② 銀広夏は深圳広夏フロッピーアクセサリー有限会社(中国語:深圳广夏軟盤配件有限 公司)という子会社の解散に関する重要事実を隠し、同子会社の関連取引をめぐる重要 情報も開示されなかった。また、設備投資のために 1999年に調達された 3.04億人民元 のうち、1.2億人民元は他に使われた。更に、2000年度アニュアルレポートに開示され た新たな子会社の出資金額について、銀広夏は虚偽開示をしていた。

こうした行為に対して、CSRCの行政処罰決定書は、銀広夏は「証券法(1998年)」

第177条、及び「株式発行と取引の暫時管理条例」第74条に定められている虚偽陳述行

為を犯した、と記載した。

上述の深刻な不正会計/虚偽開示行為により、場企業監督当局としての中国証券監督管理委 員会は銀広夏にたいして、過去3会計年度の財務情報の修正を命じる同時に、60万人民元の 罰金を課した。

更に、銀広夏の関連経営者は中国司法機関に移送され、刑事責任が追求された。そのう ち、天津広夏の最高財務担当社であった董博は、虚偽財務会計報告書を届け出る罪(中国語:

31 中国証券監督管理委員会のホームページより

http://www.csrc.gov.cn/pub/zjhpublic/G00306212/200804/t20080418_14333.htm

39 提供虚假財会報告罪)として、3年懲役と罰金10万人民元に判決された。その他の銀広夏と 天津広夏の関連経営者3人はそれぞれ2年半の懲役と罰金が処せられた32

3.2.1.3 「銀広夏」の会計操作/虚偽開示をめぐる議論

表3-3aは銀広夏が開示した財務指標、表3-3bは中国CSRCの要請に従って修正した後の 財務指標である。2001年8月まで、銀広夏は深刻な会計操作をしたことが分かる。こうした銀 広夏の会計操作は中国の投資家に膨大な損失を与えた。しかし、中国証券市場では、米国のよ うな株主集団訴訟制度の環境が育っていないので、こうした虚偽開示による損失は投資家の自 己責任となってしまう。

表3-3a 銀広夏:当初に発表した財務指標 一株当た

り利益

純資産 利益率

主力事業の 売上高

主力事業の

営業利益 純利益 総資産 一株当た り純資産

2001年半期 -0.039 -3.77 7251 1916 -1953 220960 1.03

2000年度 0.827 34.56 90899 57826 41765 315130 2.39

1999年度 0.51 13.56 52604 20858 12779 242990 3.73

1998年度 0.405 15.35 60938 22769 8915 - 2.64

1997年度 0.225 10.1 32432 5086 4664 - 2.23

出典:何(2004)

表3-3b 銀広夏:修正後の財務指標 一株当た

り利益

純資産 利益率

主力事業 の売上高

主力事業の

営業利益 純利益 総資産 一株当た り純資産 2001年度 -0.78 - 14520 2691 -39444 139056 -1.66

2000年度 -0.27 - 13026 57826 -13582 142960 -0.67

1999年度 0.51 13.56 38358 20858 12779 219183 3.73

1998年度 0.27 11.4 60628 22769 5847 152199 2.33

1997年度 0.18 8.62 32432 5086 3937 100435 2.07

出典:銀広夏の修正後のアニュアルレポートより筆者作成

一方、銀広夏の不正開示を巡って、担当監査法人の役割が果たされていなかったことも議論 の中心となった33。この事件が発覚して1ヶ月後、銀広夏の監査を担当した中国の「中天勤会 計事務所」は、中国財政部による業務停止の命令を受けた。翌年の2月、中国公認会計士協会 により同会計事務所の営業免許が抹消され、その後解散に追い込まれた。また、銀広夏の監査 を担当した二人の公認会計士は1998年、1999年、2000年の監査業務において必要な監査手続 を行っていないにも関わらず、財務諸表に対して「無限定適正意見」を提出していた。これに より、この二人の公認会計士の資格が抹消された。その後中国寧夏回族自治区銀川市中級人民 法院(裁判所)は「重大な職務怠慢罪」の判決によりこの二人をそれぞれ2年半と2年3ヶ月 の懲役と罰金を科した34

32 最高人民検察院 「最高人民検察院公報」 2004年第5号

http://www.jianfazhiku.com/ReadNewsAll.asp?newsid=17956

33 張(2006)

34同注32

40

3.2.2 「漢王科技」のインサイダー取引

「漢王科技」は1998年に設立された通信設備業界の企業であり、中国の「人間とコンピュ ータの相互作用(Human Computer Interaction)」分野における先駆的な民間企業である。

3.2.2,1 「漢王科技」のインサイダー取引の詳細

2010年3月に、漢王科技は深圳証券取引所中小ボードに上場した。上場1年後、漢王科技の

インサイダー取引が発見された。王(2012)は漢王科技のインサイダー取引を以下のようにま とめている35

2011年3月18日、漢王科技は2010年度のアニュアルレポートを開示し、当年度の純利益は

8790.16万人民元と開示した。しかし、その後判明されたように、主力製品である「電子書籍

の端末」は売れ行きが悪いということについて言及しなかった。

2011年3月21日、高級管理者数人は当社の株式持分を減らした。

2011年4月1日-26日、株式持分2千万株(持株比率18.69%)であり、元株主上位2位の

「上海聯創創業投資有限公司」は67.2元の高値で100万株を売り出した。

2011年4月15日に行われた株主総会の議決により、漢王科技は2011年4月28日に1対2の 比率で株式分割を行い、株式総数が倍増した。

4月29日、漢王科技の第1四半期報告書が開示され、同上半期では9千万-9.8千万の純損 失との業績予想が開示された。

5月17日、漢王科技は売上の42%に占める主力製品の電子書籍端末が15%-40%減価したこ と、を臨時報告書より開示した。

「上海聯創創業投資有限公司」は5月18日に20.93元で800万株を売り出した。

深圳証券取引所は、漢王科技の株式が5月27日と5月30日の2取引日において、2日連続 で株価が前日終値に対して20%以上異常変動したため、株式異常変動が生じていると判断し た。

「上海聯創創業投資有限公司」は5月30日-31日の2日で、22.9元の平均株価で66.3万株 を売り出した。

2011年5月30日-6月24日、中国証券監督管理委員会北京監(督)管(理)局は、漢王科

技のインサイダー取引の疑惑に対して立入り調査を行った。

5月31日、漢王科技臨時報告書より、株価異常変動により株式取引が1時間停止したことを 開示した。

35 20122月に開催された第4回取締役会秘書役の研修会の配布資料である「株式取引とインサイダー取引の

予防(股份买卖与内幕交易防控)講演者:王海燕(深圳証券取引所創業ボード会社管理部)」p42

41 図3-2 「漢王科技」の株価(2011年3月1日-5月31日)

出典:「Yahoo Finance」の株価データより筆者作成

注:2011年4月28日に行われた1対2の株式分割により、漢王科技の株式総数が倍増し、株価が半分になっ た。

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