第3章 インタビュー事例調査
第三節 一目惚れの出会い
【ケース3】心さんと准さん
場所:台中市東区建興街
時 間;8月18目、8月29目、9月4日(3回)
17:30〜18115<勤務終了後、毎回約45分>
インタビュー対象者(インワォーマント):准さんと心さん
世代構成:母親(世帯主)、息子(准さん、1人子)、本人(心さん)、
娘さん(雅筑ちゃん5歳、雅亭4歳)
○ベトナム人花嫁について
夫婦の生年:本人(心さん)1984年(24才)、夫.(准さん)1966年(42才)
ベトナム人花嫁の台湾滞在時間:6年 出身地:南ベトナム(HoChiMinh市)
中国語のレベル1できる。 台湾語:少し。.(通じるが発音が聞き取りにくい)
宗 教:仏教・
職業:工場の従業員、喫茶店の手伝いさん、(ベトナム滞在時)
台湾では、旋盤工場(平目)、姑の雑貨店の手伝う 夫婦の学歴:本人 小学校(10才)、准さん:中学校(15才)
兄弟姉妹:3男1女の1番目
(1)はじめに
准さんの家は雑貨店を経営している。私の実家の仕事の関係で、よく准さんの家で買い 物をする。買い物をするとき、たまに、台湾人ではないような1人の女性と、この店の中 で会ったりレた。また、昔は准さんの母親が店の仕事牟していたが、現在は息子が店のマ メターになっている。尋ねセみると、息子は外の仕事牽辞めて、ベトナム人の女性と結婚 して、家の店を手伝っているという。何回も店で買い物していると、ベトナムのお嫁さん とも話しができるようになった。彼女は優しい性格の持主である。そこで、今回、インタ ビューを申し込むことにした。
現在、子どもは2人いて、毎日小学校と幼稚園に通っている。店は朝市の中にある。朝 市の営業時間に合わせて、朝7時に開店、夜6時頃に店を閉める。普段はお休みがなく、
新年や伝統的な節句(お墓参り、端午、お祭りなど)の日だけが、休みである。
(2)ベトナムの生活と実家の家族構成
心さんの家族は4人兄弟だが、両親は離婚した。父親は再婚し、後妻とのあいだで新た に5人の子どもを授かった。したがって現在、兄弟はあわせて9人である。心さんの兄弟
は実の母親(父親からみて先妻)と生活している。父親と先妻である母親とは、全然会っ ていない。会うといっも喧嘩ばかりするという。性格が合わないので15年前に離婚した。
母親は1人で心さんたちを育て、一緒に暮らしてきた。心さんの兄弟たちは、中学校を中 途でやめると、職場や農業の仕事をし始めた。家には父親がいないので、14才のとき、
皆はそれぞれ家計を支えるために」生懸命働いて稼いできた。父親は、家出をしたときに、
賭博でこしらえた借金を母親に残して出て行った。多額の借金は今でも3分の1が残って いる。3亨万円だという。
父親がいないことにはもう慣れたという。ただ、不満なρは、父親が残した借金をこの 家に押し付けて去っていたことである。心さんは長女なので、何か考えないと、この家を 助けることはできないと思って、外国人と結婚することにした。
(3)准さんの婚前生活
准さんの学歴は高くないので、工場での組立工、警備員など単純作業の仕事をやってき た。また、定職には就かず、アルバイトで稼ぐことも多かった。稼いだ給料では自分の生 活費を賄えず、よく母親からお小遣いをもらっていた(台湾では、給料の一部分を両親に 渡すことが、社会的に望ましいこととされている)。遊興心があったのでパチンコ、えび 釣りなど、とりあえず友達との付き一合いが一番大切だと思って、家にはあまり帰らなかっ た。母親は、ひとり息子なのに結婚もしないで外でぶらぶらしていることに我一1曼できず、
6年前、准さんに結婚することを説得した。准さんは、最初、何人かの台湾人女性と付き 合ったが、なかなか進展しなかった。だんだん准さんも疲れてきて諦めた。しかし、母親 はだれよりも自分の息子の結婚を心配するものである。母親は、結局、仲介会社に連絡し て、ベトナムヘお嫁を探しに行くこととなった二
(4)婚姻
准さんはベトナムヘ行ったとき、自分が好きなタイプの女性がいなかったので、そのま ま台湾に帰ってしまった。母親はあれこれと説得し、准さんは再びベト才ムに行った。そ のとき、准さんは今の奥さんに一目惚れし、1週間ベトナムに滞在して付き合って後に、
結婚の話をしたそうだ。
(5)心さんの台湾での生活
来合当初、台湾の生活習慣に全然貫れなかったという。台湾の料理を作るのも食べるの も好きではなかった。姑も心さんのご.とを怒った。でも、こんな我がままではだめだとい
うことは自覚していた。もし自分が変わらないのならば、主人に離婚される恐れがあるこ とも自覚していた。その後、家事や料理、店の手伝いなどをやるようになった。1年日と 2年目の夏休みに帰国した。それ以降は、ベトナムヘ帰国しなかった。実家に毎月約2 万5千円を送金している。心さんの母親は、若いときにい一ろいろと苦労をしたが、今は心
さんの仕送りで生活もずいぶん楽になったという。
子どもが保育園、小学校に行くようになると、心さんも自分の時間が持てるようになっ
たので、外で仕事を始めた。今年7月から、近所の人の紹介で旋盤やライン製造の工場で 働いている。土曜日や日曜日には、店で客を接待する。
子どもは授業が終わってから、自習教室に行かせて、宿題もそこで終わらせる(家では 勉強をしない。両親に聞いても分からない)。分からないところがあれぱ、教室にいる先 生に聞けばいい。7時半に家に帰ると、後は休むだけでよい。
土目には、店は早く終わるので、午後3時に子どもを連れて、一山の方に行ったり、スー パ]にショッピングに行ったりする。夜市に行くと、子どもはたいへん喜ぶ。
姑には自分白身の生活があり、あまり息子の家族とは出かけない。店は主に息子が経営 しているから、姑はよく友達と旅行したりする。息子の家庭をあまり干渉しない。
心さんは、台湾に来て、最初は確かにいろんな不便なことや不安などがあったという。
しかし、居住地と家の仕事などの条件が、自分の能力を高める大きな助けとなった。ベト ナムにいたときは、あまり話をするこ一ともなく、また商売の仕事もしたことがなく、どち らかというと無口だった。今は、嫁いだ家が商売をしており、いろんなひととの関係も親 しくなっていった。
准さんは、心さんと結婚してよかったと考えている。最初はベトナム人など外国人との 国際結婚は怖かったが、嫁をもらってから、本当に幸せだと思っている。やはり台湾の若 い女性はこんな風にはできない。我がままで、気が強い人が多い。今は子どもも2人いる。
必ず子どもも幸せにしてあげたいと考えてい・る。
(一6)中国語の勉強
心さん自身は勉強が好きではないので、中学校中退で仕事を始めた。台湾に来て、中国 語を話せるようになるまで、3か月間だけ学校に通ったが、後は、店で客と会話すること で、だんだん上宇になっていった。ただ、漢字は読めないので、子どもに教えることがで
きない。
(7)【ケース3】の考察
【ケース3】は、幸せな結婚生活を送っている、成功した事例である。一ただし、家族は 仲良くやっているが、子どもの教育では大きな問題が存在する。生計の問題はこの家庭で
はあまり見られないが、父親と母親の学歴や生活の水準、.また、嫁の中国語レベルでは、
子どもの教育やコミュニケーションでいろいろと障害が生じよう。今後とも、子どもに生 じた学校での問題は、全部先生に任せるというのだろうか? そうすると、子どもの能力 は落ちてしまうのではないだろうか? さらには、台湾全体の子どもの学力にも影響をも たらすことも考えられるのではないだろうか?
(8)補足調査
時間:1月5目 17時45分〜18時45分
インタビュー対象者:准さんと心さんインタビュー場所:准さんの自宅(大智市場内)
①心さんの仕事場
私と約束した時間に現れなかったため、何かあったのかと思いながら、雑貨店の品物を 見ていた。1O分ぐらい待っていると、心さんの顔が疲れた感じで現れた。目も赤い、泣 いたのかなと思った瞬間、挨拶をしてくれた。彼女に最後会ったのは3か月前のことだっ た。大丈夫ですかと聞くと、rう.ん、ちょっと工場の人にいろいろ言われたから、家に帰 って泣いた!」という痘事が返ってきた。いろいろって何だろうと疑問に思っていると一、
心さんが説明した。
.工場にはたくさんの外国人がいて、フィリピン人やタイ人、ベトナム人が働きに来てい る。心さんが」番嫌いなのはフィリピン人だそうだ。仕事のとき、,ちゃん.とやらなくて、
怠け者で、よく休んだり、喋りながら作業をしたりする。心さんは正義感の強く、この状 況を見るとマネージャに訴えたりするという。それゆえ、フィリピン人に嫌われ、仕事が あがった後に大喧嘩をした。数日後の話だが、そのフィリピン人は作業時に不注意で大ミ スを起こし、首になったそうだ。
.心さんはその工場で楽しくやっている。一白分の国の人も働いており、昼休みのとき皆で お弁当をシェアして食べたり、故郷の話をしたgできる所である。心さんの台湾の家は食 料品の雑貨店をやりながら、ベトナムの食材も少し輸入して売っている。工場で知り合っ たベトナム人の友人たちは、よく心さんに商品を頼んで買っている。心さんは友人にとて も優しく、割引をした り、おまけで小さなプレゼントをあげたりする。
②准さんの雑貨店
昼間の客も多いが、夕食の時間になると更に多くなる。家で料理を作っている母親やお ばさんたちは、材料や調味料が足らなくなる.と、准さんの店に買いにくる。
奥さんが家に帰ってきたら手伝う?と一尋ねると、「はい、忙しいとき手伝ってくれて、
また2階に夕食の用意をするよ!」と准さんが言った。工場から帰って、疲れるているに もかかわらず、また家の家業と家事をこなしていることに感心する。
家族のコミュニケーションはどうか、者とよく話をするか、どんな話題が多いか准さん に聞いた。rうん、普通だよ、毎日一緒に住んでいるから。でもね、彼女(心さん)はよ く怒るね!何だか分からない、多分プレッシャーがあるみたい」(実は最初会った時、
私もちょっと彼女のことを怖がっていた!と思い出した)。
どんなことで怒るのか尋ねると、「工場から帰ってきて気分が悪ければ、私と喧嘩した り、娘たちが宿題をやらない時、処罰したりする!」と准さんは言った。多分、工場の環 境は彼女に嫌な気持ちを与えたかもしれない。
心さんの性格は分かりやすい。照れるタイプだそうだ。友だちになる前はあまり話して くれない。友だちになれぱ何でも話す。しかしながら、2人のあいだのコミュニケーショ ンはあまりよくなさそうだ。准さんはいろいろと家のことを干渉するので、何か起こると 喋り続けたりする。このことが、心さんに煩いと言われたりする。一.