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     社会科…授業構成

本章では、リーガルマインドを育成する社会科授業構成の原理を考察し、

その原理に基づいて授業モデルを作成する。

第1節 リーガルマインドを育成する社会科授業構成の原理

本節では、リーガルマインドを育成する社会科授業構成の原理について、

1 主題の設定、2.事例の選定、3.授業過程、の3点から考察する。

1.主題の設定一基本的人権と公共の福祉の意義一

(1)基本的人権の保障と限界

 基本的人権の保障とは、田口精一氏によれば「人権の享有に関し現在およ び将来において妨害を受けることがないように、その安全を保持し、侵害に 対抗して各人の権利・自由を保護すること」Dである。そのため、立憲主義 の原則・権力分立の原則・法の支配の原則などが定あられている。日本国憲 法においても、基本的人権の保障を強化するために、「個人の尊厳と人権の 不可侵を宣言し、三権分立に合せて裁判所の法令審査権をも認めている。」

2)といえる。

 それでは、日本国憲法における基本的人権の保障は、何らの制約も加える ことのできない絶対的な権利であろうか。また、制約されることがあるとす れば、それはいかなる場合に、いかなる根拠に基づいて制約されるのであろ

うか。

 日本国憲法第12条後段では「又、国民は、これ(この憲法が国民に保障 する自由及び権利:平田)を濫用してはならないのであって、常に公共の福 祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」と規定し、第13条後段では「生 命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しな

い限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と規定して いる。さらに、第22条第1項では「何人も、公共の福祉に反しない限り、

居住、移転及び職業選択の自由を有する。」と規定し、第29条第2項では

「財産権の内容は、公共の福祉に=適合するやうに、法律でこれを定める。」

と規定している。

 佐藤出山によれば、日本国憲法においては「明治憲法のように、権利や自 由を本来、法律の範囲内におけるものとするのではなく、ただ一つの枠とし て、r公共の福祉』という観念を認めた」3)のである。すなわち、日本国憲 法は、「一方において基本権の尊重の実現を図りながらも、他方において、

その制約の必要があることを認め、r公共の福祉』という」4)基準を示した のである。

(2)基本的人権と公共の福祉

 日本国憲法では、公共の福祉のみを基本的人権の限界と制約の根拠として いるが、公共の福祉とはどのような意味をもつものであろうか。

 現代社会における人間は社会的共同生活を営んでおり、基本的人権もこれ を前提として成立するものである。佐藤氏によればrr公共の福祉』とは、

このような社会的共同生活の利益を意味する」もので、「国民の権利や自由 には、当然にこの意味における公共の福祉による制約が存する」のである5)。

 しかし、現代の価値観の多様な社会にあっては、社会的共同生活の利益が 何であるのかを判断することは難しく、何が公共の福祉であるのかを判断す

るには慎重でなければならない。つまり、基本的人権の限界の問題は「基本

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的人権と公共性」の論争、あるいは、「基本的人権と基本的人権」の論争を 扱った判例など、具体的な問題において検討する必要がある。よって、基本 的人権の限界については、訴訟における裁判所の判決内容を探求することに より、具体的な基準を明確にすることが必要といえる。

2.事例の選定

 リーガルマインドの育成に適した判例としては、大阪空港公害訴訟、名古 屋新幹線訴訟、「宴のあと」事件などがあげられる。

(1)「基本的人権と公共性」の論争を扱った判例

①大阪空港公害訴訟

 本判決は、住民の被害と空港の公共性を考慮して、午後9時から午前7時 までの飛行差し止あ請求、過去及び将来の損害賠償請求についての判断を求 める事例として取り上げられる。

②名古屋新幹線訴訟

本判決は、住民の被害と新幹線の公共性を考慮して、減速請求、過去及び 将来の損害賠償請求についての判断を求める事例として取り上げられる。

(2)「基本的人権と基本的人権」の論争を扱った判例

①「宴のあと」事件

 本判決は、表現の自由とプライバシーの権利を考慮して、謝罪広告請求、

精神的苦痛による損害賠償請求についての判断を求める事例として取り上げ

られる。

3.授業過程

 リーガルマインドを育成する社会科授業構成にあたって、次のような授業 過程を基本型として設定する。

(!)授業過程の基本型

L事実の把握(原告、被告の主張)

ll.問題の発見(争点の抽出)

m.直観的判断(争点に関する生徒の暫定的な判断)

IV.裁判所の判決の探求(裁判所が判決に至った過程の理解)

V.対立する判決の探求(対立する判決の過程の理解)

VI. IV・Vの相違点の明確化(争点に関する相違点のまとめ)

va.合理的判断(争点に関する生徒の最終的な判断)

田.討議(討議によって、判断を修正する)

事i薙認識過程

面値判断過程

(2)大阪空港公害訴訟における授業過程

具体的に、大阪空港公害訴訟を事例に取り上げて授業過程を示すと以下のようにな

る。

1.事実の把握【第1時〜第4時】

 原告・被告の主張をもとに住民が何を訴え、国が何を主張しているかを把握する。

主な問いと説明を以下のように設定する。

①原告の主張の把握〔第1時〜第2時〕

ア 過去・将来の損害賠償請求についての主な問いと説明  A 「 なぜ、原告は損害賠償を請求したのだろう。」

 原告は、航空機の発着回数が増え大型ジェット機の就航が始まったので騒 音が増大し精神的被害・日常生活の妨害・身体的被害が発生していること、

及び大幅な規制を行う見込みがないので被害が継続すると推定されることを 理由に、過去の損害賠償、将来の損害賠償を請求した。

A−1 「なぜ、大阪空港の騒音は次第に激しくなっていったのだろう。」

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 B滑走路の使用開始にともない航空機の発着回数が=増え、大型ジェット機 の就航が始まったので騒音が増大した。

A−2 「原告は、航空機の騒音によりどのような被害を受けたのだろう。」

 原告は、航空機の騒音により不快感や恐怖感・聴力・睡眠妨害・日常生活 の破壊などの被害のほか、高血圧・耳鳴り・胃腸障害・心臓病・鼻血等の被 害を受けている。また、大幅な規制を行う見込みがないので、将来にわたっ て被害が継続すると推定される。

イ 差し止め請求についての主な問いと説明

 B 「 なぜ、原告は飛行差し止めを請求したのだろう。」

原告は、家族の団らん・睡眠などの大切な時間を守る必要があること、及 び大阪空港の国際線・国内線とも極めて公共性が低いことを理由に、午後9 時から午前7時までの飛行差し止めを請求した。

B−1 「なぜ、午後9時から午前7時までの飛行差し止めを請求したのだろう。」

原告は、身体的・精神的被害や日常生活の破壊など様々な被害を受けてお り、家族の団らん・睡眠などの大切な蒔間を守るために、午後9時から午前 7時までの飛行差し止めを請求した。

B−2 「飛行差し止めによっそ、大阪空港の公共性は損なわれないのだろうか。」

 大阪空港の国際線における利用者数は少なく、東南アジアの国々との往来 に利用されているに過ぎない。また、国内線においても航空の役割は低く、

観光目的の利用が多いので大阪空港の公共性は損なわれない。

②被告の主張の把握〔第3時〜第4時〕

ア 過去・将来の損害賠償請求についての主な問いと説明

 A rなぜ、被告は損害賠償を支払う責任はないと主張しているのだろう。」

被告は、住民の被害が航空機騒音によるものと認められないこと、及び騒 音対策を今後より一層強化するため住民の被害軽減が予想されることを理由 に、過去及び将来の損害賠償は認められないと主張した。

A−1 「被告は、住民の被害についてどのように主張しているのだろう。」

航空機騒音は一過性の騒音であり、繰り返し騒音にさらされると慣れが生 じ、身体への悪影響を防止する。よって、住民の被害は、航空機騒音による ものと認めることはできない。

A−2 「被告は、今後どのような騒音対策を行う予定なのだろう。」

 国は各種の公害防止対策を行っており、今後より一層強化する予定なので 住民の被害軽減が予想されるから、将来の損害賠償は認められない。

イ 差し止め請求についての主な問いと説明

 A 「なぜ、被告は飛行差し止めを行う必要はないと主張しているのだろう。」

 被告は、大阪空港は国際線・国内線とも乗降命数の増加が著しく公共性が 高いことを理由に、飛行差し止めば認められないと主張した。

A−l r被告は、大阪空港の公共性についてどのように主張しているのだろう。」

 大阪空港は、国際線乗降客数及び日本の全空港に占める国際線乗降客数の 割合も増加している。また、大阪空港の国内線乗降客数は増加しており、日 本の全空港に占める国内線乗降客数の割合も第一位である。将来的にも、札 幌一東京一大阪一福岡一那覇を結ぶ骨格路線ならびに東京・大阪を中心とす

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