リンドラー座標 (t, x, y, z) における線素の式は、
dτ2 = h(x)dt2 −dx2 −dy2 −dz2, h(x) = (1 +ax)2 でした。この時空における粒子の運動を考えてみましょう。
粒子の運動方程式は、
duλ
dτ + Γλµνuµuν = 0
ですが、今の計量においては、接続係数 Γλµν は添字に 2 か 3 があると 0 になる ので、 du2
dτ = du3
dτ = 0 ∴ u2 = A, u3 = A0.
ここで A, A0 は運動の定数です。また、運動方程式の λ = 0 成分は、
du0
dτ + 2Γ001u0u1 = 0
を与えますが、Γ001 = g00Γ001 = g00 1
2∂1g00 = h0(x)
2h(x) に注意すると、
du0 + h0(x)
h(x) u0dx= 0 ∴ h(x)du0 +u0dh(x) = 0
∴ d(h(x)u0) = 0 ∴ h(x)u0 = B (定数)
を得ます。一方、線素の式を dy2 で割ると、運動が x-y 平面内(z = 0)に限られ ると仮定して、
µdτ dy
¶2
= h(x) µdt
dτ
¶2µ dτ dy
¶2
− µdx
dy
¶2
−1
ですが、上の結果から、dy/dτ = u2 = A および dt/dτ = u0 = B/h(x) なので、
これらを代入して、
1
A2 = B2 A2h(x) −
µdx dy
¶2
−1 ∴
µdx dy
¶2
= C
h(x) −D
を得ます。ここで C = (B/A)2 > 0, D = A−2 + 1 > 1 はやはり定数で、これが粒 子の軌道を与える微分方程式になります。
上の微分方程式は、
y = ± Z
dx s
h(x) C −Dh(x)
と変形されますが、この積分は素朴に ξ = C −Dh(x) で積分変数を ξ に置換す れば実行できて、結果、
y = ∓ 1 Da
pC −Dh(x) +E となります。E は積分定数です。この式は、
(x+a−1)2
D + (y −E)2 = C
D2a2 (C > 0, D >1 )
と変形してみればわかるように、中心が座標の特異面(地平面) x = −a−1 上にあっ て x 方向に長い楕円を意味しています。
ただし、地平面に到達するには無限の座標時間を要するため(∗)、軌道は事実上
x > −a−1 に限られ、すなわち半楕円になります。粒子はリンドラー座標(等加速
系)において楕円を描きながら地平面へと落下していき、地平面の近傍においては 軌道は地平面と垂直になります(図5)。
図 5: リンドラー座標における粒子の軌道
ちなみに、粒子でなく光の場合を考えると、それは高エネルギー極限の粒子と 同様のはずで、dτ →0 と考えればよいです。このとき A, B は共に限りなく大き くなり、D は 1 に収束します。よって軌道の式は、
(x+a−1)2 + (y−E)2 = C a2 となり、すなわち軌道は真円になります。
これら結果自体は、ローレンツ座標における直線的な世界線をリンドラー座標 に変換することで、もっと簡単に確かめられますが、ここでは計算演習をかねて、
リンドラー座標において運動方程式を解きました。
(*注) 線素の式から、dτ2 =h(x)dt2−dl2, dl2 =dx2+dy2. また、B =h(x)(dt/dτ)なので、粒 子の速さはdl/dt=p
h(x)(1−B−2h(x)) です。これはx→ −a−1 で 0 に漸近します。
8 電磁気学
ここでは特殊相対論から空間ベクトル表記の電磁気学を演繹します。また、マッ クスウェル方程式の一般解と巨視的な電磁気学について簡単に触れ、電磁気学の 基礎を与えます。電磁気学は歴史的には相対論の発見より先にほとんど確立して いたのですが、その整合性には相対論が必要であり、よって理論的には相対論の 中に属すると考えます。真空における光の速さ、および透磁率を 1 とする自然単 位系を採用します。
8.1 特殊相対論の基礎方程式
時空のローレンツ座標をxµ = (t,r)µ とします。t は時間座標、r は空間座標で す。粒子の運動方程式は、ローレンツ座標において、
mnduµn
dτn = qnFµν(xn)uνn.
ここで uµn = dxµn/dτn は粒子の固有速度、τn は固有時間です。
Fµν(x) = ∂µAν(x)−∂νAµ(x) は電磁場で、マックスウェル方程式、
∂µFµν(x) =jν(x) に従います。ここで、
jµ(x) = X
n
qn Z
dxµn δ4(x−xn) = X
n
qnvµnδ3(r−rn)¯
¯tn=t
は4元電流密度であり、これは保存カレントでした : ∂µjµ = 0. このことは電荷の 保存を意味します。vµn = dxµn/dtn は粒子の座標速度です。
これら方程式は、ローレンツ変換に対して不変(共変)であるのみならず、
A0µ(x) = Aµ(x) + ∂µχ(x)
という4元ポテンシャルの変換に対しても不変です。これをゲージ変換といいま す。実際、ゲージ変換は電磁場 Fµν を変えないので、特殊相対論の基礎方程式は 明らかに不変です。観測等により決定されるのは電磁場であり、4元ポテンシャル ではないわけです(少なくとも古典論においては)。
χ(x) はゲージ関数と呼ばれますが、これは任意の場であり、よってこの変換は 時空の各点で自由に行えます。このような変換は局所的(ローカル) であると呼ば れます。対してローレンツ変換のように、変換パラメータが時空の座標に依らな い場合、その変換を大域的(グローバル) であるといいます。局所的変換において 不変な理論は、力学的な場の自由度がその分だけ余計だと考えられます。この自 由度を利用して、場を減らしたり束縛することができます。