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マウス血漿中 morphine に対する金牛草の作用

ドキュメント内 ならびに抗 Morphine 作用に関する研究 (ページ 75-83)

第2章の行動実験において、morphineによる種々な作用を金牛草が抑制するという興 味ある知見が得られた。従って、本結果のメカニズムを解明するために、PT-E投与にお

けるmorphine血漿中濃度の変化を、高感度蛍光発色法を用いてHPLCで測定した。

 

       

1 節  マウス血漿中morphine の蛍光定量法

  Morphineの定量法については、これまでに多くのHPLC法が開発されてきたが、感度、

選択性、操作時間、再現性の面などに欠けていたケースが多い。その中から、morphine がベンジルアミンと選択的に反応し、強い蛍光誘導体を生成するという方法を利用して、

血漿中morphine濃度の測定方法を確立した。本方法は、高感度(検出限度は10 fmolで

ある、S/N=3)、再現性が優れ、試薬と反応溶液が安定で、操作が簡便などの特性が持て る。

  1.1 実験材料および実験方法 1.1.1 試薬

標準溶液: 塩酸モルヒネ(武田薬品工業)を水に溶かして0.01 Mになるように調整し、

冷暗所保存。使用前にそれぞれの濃度に水で希釈して使用。

0.5 MベンジルアミンDMF溶液: ベンジルアミン53.6 µlにDMF溶液を加えて全量を 1.0 mlに調整。

100 mMフェリシアン化カリウム溶液: フェリシアン化カリウム32.9 mgを水1.0 mlに 溶解し、遮光して1日以内に使用。

20 mMホウ酸塩緩衝液 (pH 7.0): ホウ酸124 mgに水を加えて全量100 mlに調整した 水溶液と、4ホウ酸ナトリウム(10水和物)763 mgに水を加えて全量100 mlに調整した 水溶液を混合し、pH 7.0とする。

15 mMリン酸塩緩衝液 (pH3.0): リン酸二水素ナトリウム(2水和物)4.68 gに水を加 え全量2 Lに調整した水溶液と、リン酸 (85%) 435 mlに水を加え全量500 mlに調整した 水溶液を混合してpH 3.0とする。

1.1.2 HPLC条件

送液ポンプ: LC-10AD

      カラム: Cadenza CD-C 18 (150 × 4.6 mm, 粒径3 µm)

      移動相: アセトニトリル-15mMリン酸塩緩衝液(pH 3.0)[7:13 (v/v)]

流速: 1.0 ml/min       検出器: RF-10AXL

      蛍光検出: Ex. 348 nm, Em. 467 nm

1.1.3 基本操作

      morphine添加の血漿50 µl + エタノール100 µl        

      3分間撹拌

      3000×gで5分間遠心分離をして除タンパク

上清部をO−リング付きスクリューキャップチューブに取る

      + 0.5 MベンジルアミンDMF溶液100 µl       + 20 mMホウ酸塩緩衝液 (pH 7.0) 200 µl       + 100 mMフェリシアン化カリウム液100 µl

      100℃で50 分間反応        

最終反応液を氷水で冷却し反応を停止       その50 µlをHPLCに注入

 

1.2 実験結果

上記の方法により、HPLCクロマトグラムでは血漿中のmorphineはきれいに分離され、

定量を妨害するようなピークは観察されなかった (Fig. 28)。また、morphine標準溶液を 本方法に従い反応させ、濃度に対するピーク面積から検量線を導いた。少なくとも2-10 µMの範囲で良好な直線性を示した (y = 23185χ - 682 r = 0.999)。

0 5 10 15 20 0 5 10 15 20

morphine

A B

Time (min) Time (min)

Fig. 28. Chromatogram of Drug Free Plasma (A) and Morphine Added Plasma at 1.0 nmol/ml (B)

0 5 10 15 20 0 5 10 15 20

morphine

A B

Time (min) Time (min)

Fig. 28. Chromatogram of Drug Free Plasma (A) and Morphine Added Plasma at 1.0 nmol/ml (B)

2 マウス血漿中morphine 濃度に金牛草の影響

  第1節で確立した血漿中morphine濃度の測定方法を用いて、金牛草投与によるマウス 血漿中morphine濃度の変化を測定した。

2.1 実験方法

2.1.1 実験動物: 6週齢のddY系雄性マウス(25-30g;九動、佐賀)を用いた。

2.1.2 薬物および投与方法

塩酸モルヒネ、PT-Eの調製および用量は第2章第1節と同様である。

マウスにmorphine 10 mg/kg を皮下投与 (s.c.) し、その30 分前に予めPT-E 300 mg/kg を経口投与 (p.o.) しておく。また、比較対照群には、morphine 10 mg/kg のみ投与した。

2.1.3 採血および処理法

Morphine投与30, 60, 90, 120, 180 分後に、前もってヘパリン注射液を注射筒内に塗布 しておく注射器を使って、それぞれ心臓採血を行う。採取した血液をシリコンコーティ ングしたマイクロチューブに移して、4℃, 5000 rpmで10 分間遠心分離を行い、上清の 血漿を -40℃で保存する。

2.1.4 基本操作

第1節と同じ要領で採取したマウスの血漿中morphine濃度を測定した。

2.1.5 結果の統計処理: Mann-Whitney’s U testを使用した。

2.2 実験結果

マウス血漿中のmorphine濃度は、morphine投与後30 分をピークとして平均6 µMま で上昇するが、その後徐々に減少して、180 分値では全く0.5 µM以下になった。それに 対して、PT-E 300 mg/kgを前処置すると、morphine投与30 分後には4 µMになり、有意 に抑制された。180 分値では完全に体内から消失していた。

Concentration (µM)

Time (min)

morphine (n=10)

morphine+PT-E 300 mg/kg (n =10)

Fig. 29. Influence of PT-E on Concentration of Morphine in Mice Plasma

0 2 4 6 8

0 30 60 90 120 180

p< 0.05, ∗∗p< 0.01 vs. morphine

Concentration (µM)

Time (min)

morphine (n=10)

morphine+PT-E 300 mg/kg (n =10)

Fig. 29. Influence of PT-E on Concentration of Morphine in Mice Plasma

0 2 4 6 8

0 30 60 90 120 180

p< 0.05, ∗∗p< 0.01 vs. morphine

3 節  血漿中MorphineHysteresis

これまでに、金牛草がmorphineの鎮痛作用ならびに血中濃度に対する影響効果につい て検討した。その結果を利用して、morphine 血中濃度と作用効果との時間的ずれを検討 するために、縦軸に第1章でmorphine の鎮痛作用の結果を薬物効果として、一方、横軸 に血中濃度に対してプロットした。その結果、反時計回りのhysteresis loopになった。ま

た、morphine および金牛草の作用部位は、鎮痛効果と血中濃度が相対的ではないことか

ら、血液 compartment に含まれないことが分かった。

 

2.0 4.0 6.0 8.0

10 20 30 40 50 60 70

0

Latency (sec)

Serum concentration (µM)

morphine (n=10)

morphine+ PT-E 300 mg/kg (n=10)

Fig. 30. Hysteresis Plots

2.0 4.0 6.0 8.0

10 20 30 40 50 60 70

0 2.0 4.0 6.0 8.0

10 20 30 40 50 60 70

0

Latency (sec)

Serum concentration (µM)

morphine (n=10)

morphine+ PT-E 300 mg/kg (n=10)

Fig. 30. Hysteresis Plots

4 3 章の小結

第2章の結果から、金牛草はmorphineの種々な薬理作用を抑制することがわかった。

その作用メカニズムは、これまでの実験からoppioid µ 受容体に直接作用するとは考え難

く、morphineの吸収もしくは代謝過程に作用するものと推測された。従って、本章では、

マウス血漿中morphine濃度を測定し、金牛草の作用メカニズムを検討した。

Morphine濃度の定量では、種々の方法がある。本実験で用いたベンジルアミンと

反応させる蛍光測定法は優れている。また、通常のfilterろ過より、実験に用いたエタノ ール除タンパク法はmorphineの吸着を防ぐ長所もある。

マウス血漿中morphine濃度は、morphine投与後30 分に、およそ6µMでピークとなり、

60 分で半分まで減少し、180 分後には0.5 µM以下となった。この値は文献29, 30) とほぼ 一致した。これに対して、金牛草を前処置しておくと、30 分値から有意に抑制され、120 分にはほとんど消失した。血漿中morphine濃度は、金牛草により低下し、徐々に消失す る形態から、金牛草morphine解毒作用のメカニズムの一つとして、morphine吸収阻害、

もしくはmorphine代謝促進に働くことが明らかとなった。さらに、薬物動態学的な検討

を行ったところ、薬効(縦軸)は血中濃度(横軸)に対してプロットし、測定時間の順 に点を結ぶことにより描いた線が反時計回りのhysteresis loopになったため、金牛草の作 用部位は血液 compartment 以外にあることが推測でき、脳あるいは髄液中などに作用す ると考えられる。

以上の結果から、金牛草の作用メカニズムの一つに、morphine吸収の阻害または

morphine代謝の促進に働くことが明らかとなり、血液循環促進作用などによって腎血流

の促進に伴う尿中排泄、腸管循環の促進による便排泄などが推測された。 

ドキュメント内 ならびに抗 Morphine 作用に関する研究 (ページ 75-83)

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