第3章 AMK におけるマイクロファイナンスの効果
第1節 カンボジアのマイクロファイナンス
カンボジアは、タイ・ラオス・ベトナムと国境を接する東单アジアの国である(図3-
1-1)。正式な国名は、カンボジア王国(Kingdom of Cambodia)で、現在、ノロドム・シ ハモニ国王の下立憲君主制を敷いている。人口は2011 年に約1430 万人74で、2010年時 点ではその77%が農村に居住していた。首都はプノンペンにあり、国民のほとんどがクメ ール人で、公用語はクメール語、多くが仏教を信仰する。総GDP は2011 年に128 億ド ル、GDPのおよそ36%を占める農業と41%を占めるサービス業が中心であるが、縫製業 の成長も期待されている。一人あたりGDPは2005年時点で2,371ドルと低所得国に分類 され、人間開発指数は2011年に0.523と中位国に位置づけられている75。2008年のデー タによれば、1日1.25ドル以下で生活する人々は人口の23%、2ドル以下で生活する人々
は53%に上る。
74 World Bankウェブサイトより。
75 UNDPウェブサイトより。
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図3-1-1:東单アジア地図
(出所)白地図専門店より引用
雤森(2010)によれば、カンボジアにおけるMFの取り組みは国連カンボジア暫定統治 機構(United Nations Transit Authority of Cambodia: UNTAC)の活動前後である1990年 代に遡る。その始まりは海外NGOによるもので、紛争終結とともにカンボジアで活動を 開始したMFは、2007年9月には主要12MFIsだけでも約73万人の借り手を抱えるよう になった76。当時の人口が約 1,367 万人であったことを考えると、国民の約 5.3%が MF を利用していたことがわかる77。また、2013年10月14日現在、Microfinance Gateway78 に登録済みのカンボジアで活動を行っているMFIs は、国内海外を含め23機関に上る。
表 3-1-1 にその内約を示した。この表からは、カンボジアで実際に活動する NGO や
MFIs が 多 い こ と 、 ま た そ こ に ア ド バ イ ス を す る た め の“Technical Service Provider/Consulting”の活動が活発であることが分かる。
76 MIX, 2007, p5.
77 World Databankより。
78 世界中のMFIsが登録している情報共有サイト。
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表3-1-1:活動団体の内約
種類 数
Bank(Commercial) 2
Credit Union/Financial Cooperative 1 Grantmaker/Private Foundation 1
Investor 2
Microfinance Institution 5
Network 1
NGO (International) 4
NGO (Local) 2
Research Institute 1
Technical Service Provider/Consulting 6
Training Institute 2
Other 1
合計 28
(出所)Microfinance Gatewayより作成
(注)一つの団体で複数の活動を行っているところがあるため、合計は団体数を超える。
図3-1-2:貸付残高の推移
(出所)MIX(2007)p.2より抜粋
(注)All MFIs:全てのMFIs
SME:中小企業(Small and Medium Enterprise)向け貸付 Micro:マイクロファイナンス向け貸付
MIX(2007)によれば、カンボジアのMF部門は明らかに二つの方向に分岐し始めている。
一方は尐額の貸し付けを行うマイクロローンで、もう一方は中小企業向けと尐額貸し付け を混合した金融商品と、融資の対象と額の違いが特徴である。図3-1-2が示すように 中小企業向けの貸付残高は成長が右肩上がりで、特に2005年以降に著しい。
こうした動きに連動するように、カンボジア政府は、大臣令(Prakas)や中央銀行、カ
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ンボジア経済財務省を通して、国内における MFの活動を規制、監視している。2000 年 の大臣令では、カンボジア中央銀行への登録のみで活動可能な小規模MFIsと、中央銀行 からのライセンスを必要とする大規模MFIsの二つに分けた79。加えて2007年の大臣令で は、中央銀行からの許可があればMFIs が預金業務を行うことも可能にしている80。他に も、経済財務省は政策立案と資金調達市場の整備を主として行う81。雤森(2010)によれ ば、カンボジア政府はこうした支援的な制度を整えることでMFIsをNGOから商業銀行 へと転換していこうとしている。また同時に、極貧層を中心に貸し付けを行うNGOと大 手MF機関との連携を取ることも必要だとしている。このことから、カンボジアにおいて 融資を必要とする人々を幅広くサポートする体制が整えられつつあることが伺える。
2010年にインドで起きた債務者の自殺をきっかけに、MFは自身のあり方を問われてい る。この事件では、債務者達が返済金の厳しい取り立てに耐えかねて起きたという報道が なされた。高い利子率を設定したまま貸し付けを行う背景には、政府のMFに対する無防 備さがある。政府が、新しい存在であるMFの動きについていけず、利用者保護の観点か らMFを管理運営できなかったことは言うまでもない。その一方で、カンボジアのMFは、
政府の後押しを受けて政府監視下でフォーマルな姿を持つように進められていると見るこ とができるだろう。それは同時に、MFが政府の開発政策の一端に組み込まれていること の表れでもある。事実、カンボジア政府策定した国家戦略開発計画(National Strategic
Development Plan: NSDP)2009-2013には、金融システムの整備のため、そして全国の
農村地帯における小規模事業者のニーズを満たすため、カンボジア国立銀行がMFIsを積 極的に支援し、またその活動について認可と監視を行うことが盛り込まれている82。