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電磁波技術の様々な社会展開

ドキュメント内 電磁波研究所 ビジョンとミッション (ページ 45-48)

2. 各プロジェクトにおけるビジョンとミッションの詳細

2.5. 電磁波技術の様々な社会展開

前述の4つの基幹プロジェクトに加えて、電磁波を用いた技術を幅広い分野に応用し、産業界に展開 するための研究開発を行っている。要素技術は萌芽的なものから成熟したものまで様々であるものの、そ れぞれ現時点での技術レベルで役立つ分野から、ユーザーとともに技術を育て、電磁波技術の実社会 での利活用拡大を推進している。ここでは主に3つの技術について紹介する。

(1) 時空間同期ネットワークによる IoT の進化 〜無線双方向時刻比較技術(ワイワイ)〜

時空標準研究室で実施されている無線通信機の時刻を同期する技術(ワイワイ)を、位置計測技術に 応用する研究を推進している。ワイワイ技術は日本標準時を協定世界時と比較するために用いられてい る衛星双方向時刻比較技術を身近に使える技術へと転用したものである。

通常の(片方向の)時刻伝送では時刻情報の伝搬にかかる時間が時刻の遅れとなってしまうが、双方 向比較技術では時刻情報を双方向に送り合うことで伝搬時間を計測し、精密に時刻差を計測する。この 電波伝搬時間の計測値は、アンテナの見通しがある近い距離ではそのまま距離情報となる。

当研究所では、無線通信機の通信電波を活用することで高精度な時刻同期と距離計測を身近に利用 できるデバイスを開発した。ミリメートル精度(精度は電波伝搬環境に依存)の距離計測を実現しつつ、小 型、安価、簡便の三拍子そろった技術は2017年の今他に類を見ない。

今後このデバイスを活用できる環境をととのえることで社会に対して時空間同期(時刻が同期され、相 互の位置関係が把握されている状態)という新たな価値を提供していくことを目指している。

Uberなどの新規サービスは無線通信技術に依存しているが、IoTのビジョンにより、人とモノを繋ぐこと で新たなサービスを創る流れは一層加速されつつある。しかしながら、IoT の実現に向けてはまだ解決し なければならない課題が主に3つある。

 無線トラフィックの渋滞緩和(自律分散型時空間同期ネットワークの構築)

 センサーデータおよび発信者の信憑性の確保(全センサーデータに時空間タグを)

 通信のプライバシーの確保(セキュリティーの強化)

この3つの課題に対して時空間同期が解決策を提示する。無線通信の交通整理にはかならず時空間情 報が必要となるだけでなく、物理世界の各種センサーからの膨大なデータに時空間情報がついて初めて デジタルツイン(サイバー空間に構築された物理世界のコピー)を構築することができる。デジタルツイン により物理世界の記録、解析、危険予知が可能となり、多くの新規サービスを構築していくことができる。

そして同時に、プライバシーを守りつつパーソナルデータを活用する仕組みおよび技術の開発も必要と なる。

具体的な活動は、既に試作したピコ秒精度の時刻同期技術に基づき、物体の位置をミリメートル精度 で計測する手のひらサイズのモジュール(図2.5.1)に改良を加えながら応用を展開していく。このモジュー ルを用いれば GPS を利用できない場所でも物体の絶対位置を三次元で計測できるため、土木・建築分 野への活用をポートフォリオとして推進している。

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応用を開発することで時空間同期 API の作り込みを加速し、時空間情報サービ ス開発環境を 2020 年末までに公開し、

時空間情報エコシステムを構築していく。

時空間同期の世界標準化、サービス開 発ベンチャーの誘発を通して人々の生 活を一変するサービスの構築を世界的 に活性化していく予定である(2023 年目 処)。

(2) 非破壊センシング: モノの内部を電波で観る技術を普及させる

人間の目では見えない物体内部の構造を電磁波で可視化する技術を開発している。周波数が低いと 解像度は悪いものの表面から奥深くまで観測でき、周波数が高いと表面付近を高解像で観測できる。そ のため非破壊検査では、対象にあわせて適切な周波数を選択するのが電磁波の理想的な使い方である

(図2.5.2)。マイクロ波は5GHz 帯までは地中レーダーと呼ばれ、コンクリート内部の欠陥検出等に用いら

れており、NICTの委託研究で開発された20 GHzは木造建造物の内部等に適している。近年開発が進 んだ赤外線やテラヘルツ波(500 GHz〜)は塗装の直下など表面付近の層構造の調査に適しており、世 界に先駆けて実施した文化財の非破壊検査等、様々な分野への応用を促進してきた。一方、その中間 の周波数帯で、建造物外装の健全性調査等に適すると期待できる 100 GHz 前後のミリ波帯は車載レー ダーへの応用は拡がっているものの、非破壊検査には使われていない。大型の据置型装置では、外壁 タイルの剥離を検出できることを実証しており、建造物の長寿命化に役立つ検査装置としての実利用に 向け、可搬型のイメージャーの開発を進めている。

図2.5.2 電磁波を用いた非破壊検査例

図2.5.1 ワイワイモジュール

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(3) 波面印刷技術

波面印刷とは設計した光の波面(振幅分布と位相分布)を自在に、軽量なフィルム上にホログラムとし て記録する技術である。図 2.5.3 は、入射光を設計した位置に集光させた例で、従来の精密機械加工で 製作される非球面レンズ等に変わる光学素子を開発できる。今後、精度を向上させることで、将来的には 宇宙空間および宇宙と地上間の光通信用の素子開発に貢献できる。また、従来の映像表示用途につい ては、車載用ディスプレイ等への実用化を目指し、技術移転・社会展開を進めている。

それぞれの課題における研究開発ロードマップを図2.5.4に示す。

図2.5.4 電磁波応用総合技術のロードマップ

研究課題 28年度 29年度 30年度 31年度 32年度 目標(32年度末)

wiwi技術の

実社会への応用 www技術を用いた製品・サービスが実現。

非破壊センシン

ミリ波イメージ装置を

外壁調査に応用。

波面印刷技術 通信用素子としての基礎実験を完了。

インフラ監視・測量への活用 技術移転

通信・IoT分野への応用

各種フィールド実験の成果の公開と

技術移転の促進 ミリ波イメージャーの開発

技術移転

波面印刷技術の精度向上

光通信用素子等への応用

図2.5.3 波面印刷技術を応用した光学素子

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