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プラズマ乱流物理学推進の大型プロジェクト プラズマ核融合力学部門

4 QUEST-NSTX-U 日米共同研究

2.4   代表的研究プロジェクトの実施状況

2.4.3   プラズマ乱流物理学推進の大型プロジェクト プラズマ核融合力学部門

伊藤早苗,藤澤彰英,稲垣 滋,永島芳彦,糟谷直宏,佐々木真,Maxime Lesur 所外共同研究者 4 名

プラズマ乱流物理学の開拓と核融合基礎科学への適用を視野に,大型プロジェクトが推進されている.

特別推進研究「乱流プラズマの構造形成と選択則の総合研究」(代表者:伊藤早苗,研究期間:平成 16 年 度~平成 20 年度)科学研究費基盤研究(S)「乱流プラズマの動的応答と動的輸送の統合研究」(代表者:

伊藤早苗,研究期間:平成 21 年度~平成 25 年度)が実施され,また,国立大学法人施設整備費補助金(文 部科学省,平成 24 年)により「直線プラズマ乱流ドック」が構築・拡充された.これらを基盤に大型プロジェ クトを実現している.組織としても,フランス CNRS・プロヴァンス大学(現在アクス・マルセイユ大学)・ 大阪大学・核融合科学研究所と共同し,日仏連携研究所 LIA336(共同所長伊藤早苗および S. Benkadda,

2007 年 10 月より)を開設し運営している.主幹教授センター「伊藤プラズマ乱流研究センター」(平成 21 年 10 月 1 日開設)が平成 26 年 4 月より学内共同教育研究施設「極限プラズマ研究連携センター」とし て設置された.こうした学内外・国内外の共同研究を軸に,プラズマ乱流物理学に新機軸を確立している.

学術の大型プロジェクト「非平衡極限プラズマ全国共同連携ネットワーク研究計画」を提案,推進している.

背景と目的

制御核融合を目指し,高温磁化不均一プラズマ研究が世界的に行われている.数十年の研究蓄積をへて,

経験的知識は蓄積してきた.しかし,物理的な理解との乖離もますます著しくなっている.伝統的には,

温度勾配 grad T と熱流q の関係としてq = - χ grad T(または輸送行列)のような単純な輸送関係が信じ られ,輸送係数χを線形不安定性に基づいて導き,温度等の局所的なパラメタの関数として表現しようと 努めてきた.すなわち「線形・局所・決定論的」なモデルが信じられて来た.しかし,拡散的過程として 定式化しているモデルを根本的に再検討する必要がある.1980 年代以降の核融合研究が,H モード(プ ラズマ閉じ込めが突然改善される現象)を基本とし発展してきたが,H モード発生の物理的機構について の伊藤早苗の径電場分岐パラダイムの描像は,線形不安定性や局所モデルの枠を超えたている.本研究の 目的は,高温磁化不均一プラズマにおける乱流と時空構造を解明することである.熱平衡状態からかけ離 れた乱流媒質に特有な乱流輸送にかかわる法則の定式化を目指す.

研究手法

本研究では,( 1 )多スケール共存乱流の統計理論,( 2 )大域的プラズマ乱流シミュレーション, ( 3 ) 非線形結合実測と動的・外部駆動応答実験,という理論・シミュレーション・実験研究を有機的に統合し た(図1).理論・シミュレーション・実験研究を有機的に統合する実験装置・研究システムとして,直 線プラズマ乱流実験装置 PANTA(Plasma Assembly for Nonlinear Turbulence Analysis を構築した

(図 2 ).

本手法により,プラズマ乱流に働く非線形機構を定量的に観測し,先進理論と比較するという新機軸を 開拓した.プラズマ乱流の動力学や乱流輸送の実態の理解に質的な進歩をもたらしている.

研究成果

( 1 )多スケール乱流の研究

ミクロなドリフト波揺動とともにメゾスケールやマクロスケールの揺動を含む系の理論を伊藤早苗を中 心に体系化し,多スケールの揺動が共存した乱流構造という描像を構築した.実験でも,藤澤による帯状 流と帯状磁場の検証,稲垣による長距離相関揺動の励起の発見,山田によるストリーマーの発見,永島に よる乱流の中の非線形結合の実測,など決定的な成果を得た.プラズマ乱流と乱流輸送研究のパラダイム シフトをもたらした.

( 2 )動的大域的輸送現象の研究

輸送法則の局所クロージャー(勾配と流束を局所的な関 係式で表す仮説)の破れを研究した.最近の成果を紹介す る.Correlation-hunting と呼ぶ多種多様な揺動信号の大 域的な相関を探査する方法を用いて,LHD にてプラズマ の半径サイズ程度の長い相関長を持つ長距離相関揺動を発 見した.この揺動は,空間的に遠く離れた微視的揺動に非 線形結合を通じて影響する.更に,本研究で開拓された条 件付き平均法を適用し,高精度高時間空間分解でプラズマ 温度計測を行う事で熱流と温度勾配の関係が(従来の)単 純な拡散的比例関係ではなく,ヒステリシスを伴うことを 発見した(図3).ヒステリシスは熱流の多価性を示して おり,この発見は,数十年来の拡散輸送仮説を覆す画期的 な成果である.従来謎とされていた輸送係数にまつわる「静 的な評価と変動伝播からの評価の乖離」(図3の点線と鎖 線の乖離)の問題を解決しうる.

この熱流と温度勾配の関係に現れたヒステリシスは,従 来に理論の枠組みでは理解出来ない.その物理機構解明の ため,速度空間の熱力学的な力(分布関数を変化させる割

図1:理論・シミュレーション・実験を統合して進める研究 図 2:直線プラズマ乱流実験装置 PANTA

図 4: 揺動と加熱源が結合する事で現れる,位 相空間に働く新たな熱力学的力の説明図.

図 3: LHD プラズマにおける温度勾配と半径方 向熱流の関係(緑色の実線).ヒステリシ スが発見された.従来の単純化された評 価(点線や一点鎖線)と比較する.

合)を新たに導入し,乱流輸送理論の枠組みを位相空間へと拡張した.このモデルを図4に示す.位相空 間に働く力により,加熱入力が直接揺動強度や乱流輸送に影響しうる事を示した.

( 3 )基礎プラズマを活用した乱流素過程の解明

理論研究では,多スケールの揺動が共存する乱流を表現する法則を「選択則」の形で表現するアプローチ を進め,プラズマの多スケール乱流の表式を得た.このプラズマ乱流の基礎過程を,PANTA 装置を用い 実験的に検証を行った.新たな実験法 • 解析法として,上述の条件付き平均法に加え,従来のフーリエ変 換法に替えウエーブレット変換法による動的現象の時間変化を追随する手法,乱流の統計的性質を抽出す る手法,等を開発し,PANTA 実験のみならず LHD 実験にも適用した.実験手法としては,バイアス印可 により揺動の時空間構造を変化させる事に成功した.更に,電極への印可電圧が閾値を超えると,プラズ マ内部の揺動場が遷移する事を発見した.PANTA では,揺動場について詳細な大域的同時計測を行う事 が可能である.実験観測に並行して,大域的非線形シミュレーション「数値直線プラズマ」,「乱流計測シミュ レータ」を開発し活用した.時空4次元データを総て取得し,時間発展や空間不均一な揺動の非線形結合 を観測し,特徴的ダイナミクスや法則を発見する上での道標を与える.

理論・シミュレーション・実験研究の有機的統合の例としてストリーマ構造に関する研究の進展を述べ る.ストリーマは帯状流と同様ドリフト波によっ

て形成される空間的に不均一な自己収束現象であ り,2008 年に本グループが発見した.ストリー マ形成を担う媒介波と呼ばれる揺動成分の時空間 構造の観測に成功した(図5).図5に示すよう な節を持った断面構造を形成する事は理論的に予 測されている.非線形結合の時空局在がプラズマ 乱流のダイナミクスを決定する重要な要素である 例を示した.

 

学術の大型プロジェクト

本研究で生まれたプラズマの遠非平衡性の描像を,広汎な対象へと普遍化する研究が展開している.プ ラズマ乱流,高エネルギー密度プラズマ,ナノ・バイオプラズマ等,これまで独立して発展してきた.し かし,非平衡的性質に着目する事でこれらの分野の先進研究を糾合して,非平衡極限プラズマの学理を確 立することが可能になる.その観点から,「非平衡極限プラズマ全国共同連携ネットワーク研究計画」を提 案し共同研究を推進している.本ネットワーク計画は,日本学術会議「学術の大型研究に関するマスター プラン」(平成 22,23 年)に取り入れられ,文部科学省の「ロードマップ」策定(平成 22 年)では優先 度が認められる 18 計画に盛り込まれる等高く評価された.更に,日本学術会議「学術の大型研究に関す るマスタープラン 2014 」(平成 26 年)では重点大型計画に取り入れられ,文部科学省の「ロードマップ 2014 」の策定(平成 26 年)では優先度が認められる 10 計画に盛り込まれる等,評価が一層高まっている.

図 5: PANTA におけるストリーマ形成を担う媒介波の二 次元断面図(左).数値直線プラズマシミュレータ で観測された媒介波の構造(右).