第 5 章 量子統計 43
5.8 フォトン、フォノン
最後にフォトンなど、質量が0の粒子の量子統計を復習しておこう。振動数f(角振 動数ω = 2πf)のフォトンの個々のエネルギーは
ϵ = ¯hω (5.85)
である。この整数倍のエネルギーしかフォトンはとれない。よって、
E({nν}) =∑
ν
ϵνnν (5.86)
となる。この場合、分配関数は
Z = ∑
{nν}
e−β∑νϵνnν
=
( ∞
∑
n1=0
e−βϵ1n1
) ( ∞
∑
n2=0
e−βϵ2n2 )
· · ·
= 1
1−e−βϵ1 · 1
1−e−βϵ2 · · ·
となる。⟨nν⟩ は
⟨nν⟩=
∑
{nν′}nνe−β∑ν′′ϵν′′nν′′
∑
{nν′}e−β∑ν′′ϵν′′nν′′ =−1 β
∂
∂ϵν logZ (5.87) となるので、
⟨nν⟩= 1
eβϵν−1 (5.88)
をうる。これがプランク(Planck)分布である。
ここでフォトンの状態密度を計算しておこう。ある波数k以下のフォトンの状態数は N(k) = 4πk3
3 V
(2π)3 ×2 (5.89)
である。最後の2は偏光の自由度で2倍した。ϵ= ¯hckを使うと N(ϵ) = V
3π2 ( ϵ
¯ hc
)3
(5.90) となる。よって、状態密度は
ρ(ϵ) = d
dϵN(ϵ) = V π2
ϵ2
(¯hc)3 (5.91)
となる。これより内部エネルギーは
E = ∑
ν
nνϵν
=
∫ ∞
0
dϵρ(ϵ)fB(ϵ)ϵ
= V
π2(¯hc)3
∫ ∞
0
dϵϵ3 1 eβϵ−1
= V
π2(¯hc)3(kBT)4
∫ ∞
0
dxx3 1 ex−1 となる。積分∫∞
0 dxx3ex1−1は、
∫ ∞
0
dxx3 1 ex−1 =
∫ ∞
0
dxx3e−x(1 + e−x+ e−2x+· · ·) = 6ζ(4) = π4 15 (Appendix参照)となる。こうして、
E = V π2
15(¯hc)3(kBT)4 (5.92) となる。こうして、単位体積あたりのエネルギー
E
V = π2
15(¯hc)3(kBT)4 (5.93)
をうる。
1秒間に単位面積を貫くエネルギーフラックスuは u= E
V ×c×
∫π/2
0 cosθsinθdθ
∫π
0 sinθdθ = c 4
E
V (5.94)
なので、
u= π2kB4
60¯h3c2T4 (5.95)
これがこれがシュテファン–ボルツマン(Stefan–Boltzmann)則である。ちなみに π2k4B
60¯h3c2 = 5.67×10−8J/m2 ·sec·K4 (5.96) をシュテファン–ボルツマン定数と呼ぶ。T4でエネルギーは増大するので、黒体輻射の エネルギーは温度とともに急速に増大することが分かる。
固体中の格子振動は真空中の光の似た振る舞いを示す。この場合、光の分散関係が ϵ = ¯hckだったのに対して、格子振動ではϵ = ¯hvkとなる。vは音速で103m/s程度で ある。すると格子振動による内部エネルギーは
E = V π2
10(¯hv)3(kBT)4 (5.97) となる。ここで分母の10は光が2方向しか偏光の自由度をもたないのに対して、格子 振動は3方向持つことからきている。これより、
CV = ∂E
∂T ∝T3 (5.98)
が得られる。これがデバイ(Debye)則である。
低温ではこのように電子比熱γT とこの格子比熱が存在する。十分低温だとこの電子 比熱が主要な寄与をするが、数K程度で多くの物質では格子比熱がまさってくる。こ の格子比熱はいつまでもT3で大きくなるのではなく、100K位で一定の値、3R程度に 落ちつく。これは3次元調和振動子の古典統計力学による比熱である。この温度では電 子比熱はまだ非常に小さいので多くの固体で比熱は3R程度となる。これをデュロン–
プティ(Delong-Putit)の法則と呼ぶ。
5.8.1 Planck 分布の別の導き方
Planck分布は別のやり方でも導出できる。ある領域にϵ1, ϵ2(> ϵ1)の準位をもった原 子とその間隔に対応するエネルギー¯hω =ϵ2−ϵ1の光子が存在とする。このとき,光 子の数をn,ϵi(i= 1,2)の状態をとっている原子数をNiとすると,
dn
dt =−AnN1+A(n+ 1)N2 (5.99)
となる。平衡状態の要請より,これを0とする。またN2/N1 = exp(−¯hω/kBT)である。
よって
n = 1
exp(¯hω/kBT)−1 をうる。
(5.99)式において,うまくN2 > N1という非平衡状態を作ったとする。(例:レー ザー発振のための逆転分布。)するとnは急速に大きくなり,n+ 1≈nと近似でき,
n ∝exp(A(N2−N1)t)
となる。これが逆転分布が起きているときの光子の数で,レーザーの原理である。