第 4 章 輝度勾配方向ヒストグラムを利用した放射歪の自動補正 26
4.3 歪パラメータの探索
図 4.7: 歪パラメータの探索手順
次に,探索する歪パラメータの範囲について考察を行う.2.2節で述べたとおり,
本手法では画像の歪補正を行う際に画像スケールの正規化を行っている.そのた め歪パラメータが小さすぎる場合や大きすぎる場合においては画像に変化が現れ ない.そこで,ここでは画像の歪を変化させた際に画像中の最も大きく変位する 点について注目する.歪による変位が最も大きくなる点は画像スケールの正規化 の仕方によって変化してくる.例えば画像四隅の位置が変わらないように正規化 を行った場合,画像長辺の中点が最も大きく変位する点となり,画像の上辺,下辺 の中点の位置が変わらないように正規化を行った場合,画像四隅の点が最も大き く変異する点となる.ここでは後者のような正規化を行ったと想定し,解像度が 1024×768,320×240の画像について歪パラメータ(κ1, κ2)をそれぞれ独立して 変化させた際の画像四隅の点の変位を求め,歪パラメータの範囲を決定した.画 像四隅の点の変位を表したものが図4.8である(ただし画像四隅の点の変位は全て 等しいため,ある一点についてのみ変位を示している).
図4.8のグラフよりどちらの解像度においてもκ1 : 10−8 ∼ 10−2, κ2 : 10−14 ∼ 10−6の範囲において画像四隅の点が大きく変位している事が確認できる.そこで,
本論文ではこれらの範囲を歪パラメータ(κ1, κ2)の探索範囲として設定する.
4.3. 歪パラメータの探索 35
図 4.8: 放射歪による画像四隅の点の変位(上:κ1による変位,下:κ2による変位)
次に,実際の歪パラメータの探索手順の詳細について述べる.基本的な歪パラ メータの探索方法としては本節の始めで述べたとおりであるが,以下では歪パラ メータの変化のさせ方,複数画像の結果の処理方法など,より詳細な手順につい てまとめる.
1. κ1を10−8 ∼10−2,κ2を10−14 ∼10−6の間で粗く変化させたときの全ての組 み合わせについてエントロピーを計算する.具体的にはκ1 = 1.0×10−8,2.0× 10−8,3.0×10−8, ...,1.0×10−7, ...,9.0×10−3,κ2 = 1.0×10−14,2.0×10−14,3.0× 10−14, ...,1.0×10−13, ...,9.0×10−7のように変化させる.一つの例として,歪
画像に対して粗い探索を行うと図4.9のようなエントロピーの変化が見ら れる.
2. エントロピーが最小値となる時の(κ1, κ2)の組み合わせを求める.この時,エ ントロピーが単調増加や単調減少する(極値を持たない)画像に関しては信頼 性の低い画像(人工物が十分写っていない画像)として以降の処理を行わず除 外する.
3. (1)〜(2)の処理を複数枚(実験では100〜300枚程度)の画像に対して行い,各 画像で得られた(κ1, κ2)の2次元ヒストグラムを作成し最頻値を求める.こ の時,得られた最頻値以外の結果が出た画像に関しては除外し,以降の処理 を行わない.
4. 得られた(κ1, κ2)付近でそれぞれのパラメータを細かく変化させ探索を行 う.例えば,3.で得られた最頻値が(3.0×10−6,3.0×10−11)の場合,κ1を 2.0× 10−6 ∼ 4.0×10−6 の範囲で1.0×10−7刻みで,κ2を2.0×10−11 ∼ 4.0×10−11の範囲で1.0×10−12刻みで探索を行う
5. (3)同様,各画像で得られた(κ1, κ2)の2次元ヒストグラムを作成し最頻値を 求める.
図 4.9: 歪パラメータを変化させた時のエントロピーの例
以上のような手順で有効数字2桁まで歪パラメータを求める.設定した(κ1, κ2) の範囲,および想定している画像の解像度において,有効数字2桁まで求めると,
正解値に最も近い値で歪補正を行った際の画像上の全ての点の丸め誤差は1ピク セル以下となるため,精度的には十分であると考えられる.