第 4 章 輝度勾配方向ヒストグラムを利用した放射歪の自動補正 26
4.4 歪によるエントロピーの変化
実験で使用した画像には放射歪が含まれないため,順方向の歪を加えると図
4.11(左)のような画像に,逆方向の歪を加えると図4.11(右)のように過剰に歪補
正された画像となる.
図 4.11: 放射歪による画像の変化(左:順方向の放射歪画像,中央:撮影画像,右
:逆方向の放射歪画像)
歪の付加を行った際に探索により求められた歪パラメータが0もしくは非常に小 さな値の時に輝度勾配方向ヒストグラムのエントロピーが最小となれば本手法の 仮定が有効である画像といえる.実際に285枚の画像に対し前節で設定した歪パ ラメータ(κ1, κ2)の範囲で歪を付加したときにエントロピーが最小となる(κ1, κ2) のペアを2次元ヒストグラムにまとめたものが図4.12,4.13である.なお,図のヒ ストグラムは粗い探索により得られた(κ1, κ2)から作成したものである.画像に放 射歪が発生しているかどうかについては前節同様,画像四隅の点の変位で判断す るものとする.ここでは変位5画素までは誤差として歪が発生していないものと すると,歪が発生していない時にエントロピーが最小となる画像の枚数は123枚 であり,約4割の画像で提案手法の仮定が有効であると言える.本手法では単一 の画像からではなく,複数枚の画像から統計的に歪パラメータの推定を行うため,
4割程度の画像で仮定が満たされていれば本手法は有効に機能すると考えられる.
なお,本実験における歪パラメータの最小値は(κ1, κ2) = (1.0×10−8,1.0×10−14) であり,厳密には0ではないが,この時の四隅の点の変位は十分小さく実験結果 に影響を与えないと考えられる.
また,図4.12,図4.13においてそれぞれの歪パラメータが0に近い時にエント ロピーが最小となった本手法での仮定が有効である画像,歪を与えた時にエント ロピーが最小となる本手法の仮定が有効でない画像の例を図4.14,4.15に示す.
図4.14の画像を見ると,本手法の仮定で設定したとおり建物や看板,電柱,横 断歩道などが多く写っており,またそれらの多くが水平や垂直な直線で構成され ていることが確認できる.これらの画像では式(4.5)の重み関数が適切に機能し正 確な歪パラメータの推定が行えているものと考えられる.
これに対し,図4.15の本手法が有効でない画像では樹木などの自然物が多く写っ ており,水平または垂直な直線で構成される人工物がほとんど写っていない.道路 の白線やガードレールが人工物として写っているがこれらは画像中心に向かう方 向の直線であり,4.2節で述べたように放射歪により直線の方向が変化しない.そ
4.4. 歪によるエントロピーの変化 39
図 4.12: 画像に順方向の歪を与えた時にエントロピーが最小となる(κ1,κ2)の2次 元ヒストグラム
図 4.13: 画像に逆方向の歪を与えた時にエントロピーが最小となる(κ1,κ2)の2次 元ヒストグラム
のため画像中に利用できる人工物がほとんど存在せず適切な歪推定ができなかっ たのではないかと推測される.
図 4.14: 提案手法が有効である画像例
図 4.15: 提案手法が有効でない画像例