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パネルディスカッション

ドキュメント内 経済経営研究叢書68 (ページ 46-90)

「アジア諸国に学ぶ我が国の観光立国政策」

パネリスト 鄭 保壘 金 應相 井上 朱美

アスラフ・アドナン

(通訳:清水 貴美子)

コーディネーター 貴多野 乃武次

(司会) それでは、定刻になりましたので、第Ⅱ部パネルディスカッション を始めさせていただきます。

本フォーラムは「アジア諸国に学ぶ我が国の観光立国政策」というタイトル を掲げ、パネリストに中国、韓国、タイ、マレーシアといったアジアの国々の 観光部局の大阪駐在の方がたをお招きしました。

最初に、パネリストのご紹介をさせていただきます。中国国家観光局大阪駐 在事務所所長、鄭保壘様、タイ国政府観光庁大阪事務所アシスタントマーケティ ングマネジャー、井上朱美様、韓国観光公社大阪支社長、金應相様、マレーシ ア政府観光局大阪支局副支局長、アスラフ・アドナン様と、アドナン様の通訳 をしていただきますマレーシア政府観光局大阪支局、マーケティング・マネー ジャー清水貴美子様です。コーディネーターは、神戸大学経済経営研究所に非 常勤講師として勤務していただき、ツーリズムの共同研究者でもあります阪南 大学教授、貴多野乃武次が行います。それでは貴多野先生、よろしくお願いい 29

たします。

(貴多野) ご紹介いただきました貴多野でございます。今日はいろいろなハ プニングがありました。まず、今日はタイの井上さんにお越しいただいていま すが、皆さんがたにはマーケティングマネージャーの金森さんとご案内してい ました。ところが金森さんがご病気とのことですので、同じマーケティング担 当のマネージャー井上さんに急遽お越しいただきました。井上さんよろしくお 願いします。

また、マレーシアは支局長さんにお願いしていたのですが、支局長さんが急 遽本国へ帰らなければならなくなりましたので、副支局長のアドナンさんにお 願いすることになりました。アドナンさん、よろしくお願いします。アドナン さんは英語でお話しされますので、清水さんに通訳をお願いします。清水さん はマレーシア観光局の大阪支局でマーケティング・マネジャーをされています。

さらに、実はコーディネーター役はもともと私ではなく、ツーリズムの共同 研究者でいらっしゃいます研究所の小西先生でした。ところが、小西先生はつ い最近身内にご不幸がございまして、ほとんど眠っておられませんので、私が 急遽代役しました。しかし小西先生は、今日は無理を押して会場に駆けつけて くれました。

そんなこんなでいろいろありましたが、これから5時15分まで長丁場にな りますが、4ヵ国の皆さんがたのいろいろなお話をお伺いして、我々は大いに 学びたいと思います。

我が国は2003年に観光立国を宣言しました。ただ、そのことの効果は徐々 に現れているとはいいながら、まだ十分とは言えません。2010年には訪日客

を1,000万人にしようというわけですが、我が国がインバウンド・ツーリズム

で主に対象にしているのはやはりアジア、特に東アジア諸国です。この東アジ ア諸国はそれぞれの国でインバウンド・ツーリズムを精力的に推進されていま 30 アジア諸国に学ぶわが国の観光立国政策

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す。

たとえば、2004年、訪日客は614万人ですが、中国は、香港、マカオ、台 湾人旅行者を除いて1,693万人、韓国は、海外在住の韓国人や乗務員を含んで 582万人が訪問しています。また、タイは1,174万人、マレーシアは隣国シン ガポールからの旅行者を除いて618万人が訪問しています。いずれにしろ、す ごい人数を我が国以上にインバウンドで集めておられます。はじめに、その辺 の事情について順次15分ぐらいずつお伺いします。

中国の鄭所長さんからお願いします。

(鄭) 中国の観光、特に中国の観光政策についてご紹介させていただきます。

まず、中国の観光業の仕組みですが、観光業の仕組みは国によって違います。

日本では、観光は国土交通省の所管ですが、中国では、中央政府の国務院に国 家観光局が設けられています(図2−1参照)。国家観光局は副総理の管轄下に あり、トップは観光大臣です。国家観光局の下に海外駐在事務所が20あって、

図 2−1

第2章 パネルディスカッション 31

日本には2つ、アメリカにも2つありますが、ほかの国には1つしかありませ ん。海外駐在事務所設置の目的は、観光交流を重視しているからです。また、

地方政府の下に観光局があります。

これから、中国の観光政策について、観光業の発展戦略、観光業の現状、観 光業の将来性、中日観光交流の4点から説明します。

中国観光業の発展戦略

中国の観光業は2005年までほとんど変わらなかったのですが、2006年は変 わりました。2006年1月1日からスタートした「第11回5ヵ年規画」のなか に新しい中国観光業の発展戦略を入れました。以前は「5ヵ年計画」でしたが、

今度は「規画」と変えました。その理由は、以前は社会経済、計画経済でした が、これからは市場経済ということで、「規画」にしたのです。絶対これはやっ てはいけないというようなイメージになります。大ざっぱな目途、目標を立て て、具体的な計画などはやらないというイメージになりました。

これまでは、①優先的に国際観光業(インバウンド)を発展させる、②積極 的に国内観光業を発展させる、③段階的に海外観光業(アウトバウンド)を発 展させるのが観光の戦略・政策でした。

今年1月1日からスタートした「第11回5ヵ年規画」の新しい中国観光の 戦略・政策では、第1項目は変わりませんが、第3項目と第2項目の順位が入 れ替わりました。つまりインバウンドをいちばん重視するのは変わらないので すが、次に国内観光業よりもアウトバウンドを発展させることにしたのです。

その理由は、莫大な外貨備蓄を後ろ盾にして、国民の海外観光を推進すること によって、双方交流を推進し、国民に海外を理解させることにあります。なぜ なら、国民に現代化というものがどんなものか実際に見てもらわないと、中国 政府が実施している現代化政策が分からないからです。

国内観光については、量より質のほうを重視するようになりました。つまり 32 アジア諸国に学ぶわが国の観光立国政策

観光サービスの楽しさ、ホスピタリティなどを重視するようになったのです。

戦略1「優先的に国際観光業(インバウンド)を発展させる」のに2つの目

玉があります。一つは北京オリンピック、もう一つが上海万博です。

中国はアジアの大陸国です。2005年、中国入国者数は1.2億人で、そのうち 外国人観光客は4,680万人です。この中には香港、マカオ、台湾の人を含んで います。上海万博が開かれる2010年には、外国人観光客は7,050万人になり、

世界第3位になる見通しです。

戦略2「規範的に海外観光業(アウトバウンド)を発展させる」ことによっ

て、国際交流を促進し、国民の見識を広めます。

今、中国はお客さんを送り出す重要なマーケットに成長しています。アジア では中国が1位です。2005年の中国の出国旅行者数は3,100万人でしたが、2010

年には6,150万人を予想しています。

戦略2を具体化する政策として、第一に海外旅行業を経営する旅行社の数

(2003年5月現在、528社)を増やします。第二に海外の観光目的地を増やし ます。そのために外交当局あるいは観光当局の交渉を通して外国と観光協定を 結びます。

観光協定には2つの問題があります。一つは中国人を受け入れるかどうか、

観光ビザを発行してくれるかどうかです。もう一つは協定を結んでから、どん な旅行社に資格を与えて経営させるか、どのようにお客さんを送るか、受け入 れるか、といった具体的な業務に関わる問題があります。今協定を結んでいる 国と地域は71で、目的地は117ヵ所です。

また、中国人の海外旅行を促進するため、国内のパスポートの発行手続きの 簡素化を進め、普通は2週間、緊急な場合は3日間でパスポートを入手できま す。さらに第4の措置として、国民が海外旅行で使える制限金額を増やし、2002 年から従来の制限額2,000アメリカドルを5,000ドルにしました。

戦略3「全面的に国内観光業をグレードアップし、発展させる」ために、特

第2章 パネルディスカッション 33

に観光インフラの整備、経営レベルのアップ、観光サービスの向上、観光にお ける安全と救助体制の確立などを図ります。国内観光客は、2005年の実績は 12億1,200万人で、2010年には17億人に成長する見通しです。

中国観光業の現状

中国観光業の概要(2004年)を説明します。観光業および関連業界の会社 の数は30万社以上あります。内訳は、ホテル28万軒(星クラスホテル10万 軒、旅館18万軒)、観光バスおよび観光輸送サービス会社6,122社などです。

優秀観光都市、つまり一定の基準に達して、そのような名称を授与された都市 183、観光名所3,409ヵ所、世界遺産34件(約60ヵ所)です。旅行社は1万4,927 社、その約1割1,364社が国際旅行社です。

観光業および関連業界に勤める従業員は約4,000万人、観光業の総生産は

6,840億人民元で、国内総生産の約5% を占めています。この10年間、2桁台

の成長を続けています。

中国観光業の将来性

中国観光業は世界で一番豊富な資源と高い成長率で、世界各国の注目を集め ています。WTO(世界観光機関)は、2020年、中国は年間2.1億人の外国人 観光客を受け入れる世界一のインバウンド国になり、一方毎年1.3億人から1.5 億人の中国人観光客を送り出す世界で第4番目のアウトバウンド国になると予 測しています。

こうした目標を達成するために、中国国家観光局では次のような対策をとっ ています。

(1)旅行業分野で対外開放を実行し(日本の旅行業者の多くが既に中国に進出 しています)、競争体制を導入することによって、中国系旅行会社の体質を 改善します。

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